アンダーカバー(UNDERCOVER)は、デザイナー高橋盾(Jun Takahashi)が1990年代初頭に設立した日本のファッションブランドです。アンダーカバーは、ストリートファッションと高級ファッションの要素を組み合わせた独自のスタイルで、長年にわたりファッション界に大きな影響を与えてきました。
UNDERCOVER の歴史
創業期(1990年代初頭)
UNDERCOVERは1990年に高橋盾(Jun Takahashi)によって設立されました。東京・文化服装学院でファッションを学んでいた高橋は、当時の日本におけるストリートファッションシーンの中で頭角を現し、既存の枠にとらわれない独自のスタイルを確立していきました。この時期のUNDERCOVERは、ストリートウェアとパンクカルチャーをベースにした前衛的なデザインが特徴で、ブランドの初期のコンセプトは「カオスとバランス」と表現されることが多いです。
特に1994年に開催された初のランウェイショーは、強烈な個性と創造力を持った作品が揃い、ファッション業界に衝撃を与えました。この頃からUNDERCOVERは、ストリートファッションの枠を超えたハイファッションブランドとしての地位を築き始めました。1990年代後半には、渋谷のショップ「NOWHERE」も運営し、UNDERCOVERは徐々にコアなファン層を獲得していきました。
おすすめコレクション:
1994年AW “Underman”
このコレクションは、UNDERCOVERの原点とも言える作品で、ファッションとアートの境界線を曖昧にするアプローチが特徴。シュールでディストピア的なモチーフが多く、後の作品にも通じるテーマが見られます。
2000年代前半:パリコレ進出と国際的評価
2002年、UNDERCOVERはパリコレクションに初参加し、国際的な注目を集めます。このパリ進出がブランドの転換点となり、高橋盾の独創的な美学はより広い層に知られるようになりました。この時期のデザインは、テクニカルな要素とアヴァンギャルドな感性を取り入れつつも、より洗練されたものへと進化しました。特に、ディテールに対する徹底したこだわりと、服作りにおける機能性と美しさの両立が評価されています。
おすすめコレクション:
2003年AW “SCAB”
「SCAB」コレクションは、破壊と再生というテーマが強調され、切り裂かれた布や縫い直されたディテールが印象的な作品です。高橋はこのコレクションで、破壊的な美学とクラフトマンシップの両立を見事に実現しています。ストリートとハイファッションの融合が具現化された一つの到達点と言えるでしょう。
2010年代:コンセプトアートとファッションの融合
2010年代に入ると、UNDERCOVERはさらにアート的な要素を強く押し出すようになります。高橋盾はコレクションごとに一貫したストーリーやテーマを持たせ、ファッションを通じて物語を伝えることに力を入れました。特に映画や音楽、文学からのインスピレーションを強く受けたコレクションが多く、服が単なる商品ではなく、感情や思想を表現する手段として機能しています。
この時期の作品は、よりダークでミステリアスな雰囲気を持つことが多く、アンダーカバーらしいディストピア的な世界観が顕著に表れています。
おすすめコレクション:
2016年AW “THE GREATEST”
このコレクションは、音楽と映画へのオマージュが強く、70年代のパンクムーブメントやクラシック映画の要素が取り入れられています。特に、アイコニックな「グレイテストヒッツ」Tシャツや、アウターウェアの巧妙なレイヤードスタイルが話題となりました。
2020年代:デジタル時代のUNDERCOVER
2020年代に入ると、UNDERCOVERはデジタルファッションショーやコラボレーションを積極的に展開し、ますますグローバルな存在感を示すようになりました。特に、ナイキ(NIKE)やサカイ(Sacai)とのコラボレーションは、ブランドの新しいファン層を取り込むきっかけとなっています。
2020年にはパンデミックの影響で、ファッション業界全体が大きな変化を余儀なくされましたが、UNDERCOVERはその中でも斬新なデザインを発表し続け、ますます進化を遂げています。この時期のコレクションは、サステナビリティや社会問題に対するメッセージ性が強く、未来志向のデザインが目立ちます。
おすすめコレクション:
2021年AW “Creep Very”
2021年秋冬コレクション「Creep Very」は、異質で不気味な雰囲気が漂う一方で、テクスチャーやシルエットに対する細やかな配慮が光ります。ポストアポカリプス的なテーマとともに、アンダーカバーらしい独創的な世界観が表現されています。
アンダーカバーの美学:カオスとバランス
UNDERCOVERのコラボレーション戦略
UNDERCOVERは数々のブランドやアーティストとのコラボレーションでも知られています。特にナイキとのコラボレーションは、ストリートファッションとスポーツウェアの融合を象徴するもので、スニーカーヘッズや若いファッション愛好家からも支持を集めています。また、サカイとのコラボレーションは、テーラリングと実験的なデザインの融合が評価されました。
他にも、アートや音楽からの影響を受けた作品作りが多く、例えば、故マルコム・マクラーレンやセックス・ピストルズ、ジョン・ケージといったアーティストに対するオマージュがコレクションに反映されています。ファッションだけでなく、幅広いカルチャーに根ざしたデザインが、UNDERCOVERの魅力です。
おすすめコレクション総括
- 1994年AW “Underman”:UNDERCOVERの原点とも言える前衛的なスタイル。
- 2003年AW “SCAB”:破壊と再生をテーマにしたアイコニックなコレクション。
- 2016年AW “THE GREATEST”:音楽や映画にインスパイアされたレトロな要素が特徴。
- 2021年AW “Creep Very”:ポストアポカリプス的な雰囲気と未来志向のデザイン。
UNDERCOVERは、創業から現在に至るまで、常にファッション業界の最前線で独自の道を切り開いてきました。そのデザインは単なるファッションにとどまらず、アートやカルチャーとの深い関係性を持ち、次々と新しいスタイルを生み出しています。