TTT MSW(ティー)

DOMESTIC BRAND

TTT MSW(ティー)は、2013年にデザイナーの**玉田翔太(Shosuke Tamada)**によって設立された、日本・東京を代表するモダン・ストリートウェア・ブランドです。ブランド名の「TTT」は当初の名称であり、後に「Modern Street Wear」を意味する「MSW」が加えられました。このブランドを理解することは、2010年代半ばから現在に至るまでの、東京のストリートシーンがいかにして「既存のカテゴリー」を破壊し、新しい価値観へと移行したかを知ることに他なりません。

ヘルムート・ラングがかつて都会的な緊張感をミニマリズムに宿らせ、ルメールがパリの静寂を追求し、シュタインが緻密な空間美を構築する中で、TTT MSWが提示したのは**「ジャンルレス、ボーダーレス、そして圧倒的なエモーショナル(情緒的)なストリート」**です。ハイファッションの知性と、ストリートの躍動感、そしてユースカルチャーの危うい美しさを同時に内包するそのプロダクトは、現代のファッショニスタたちにとって「自分たちの時代を象徴する制服」として熱狂的に支持されています。ここでは、東京発のこの異才ブランドが描く、新しいストリートウェアの深淵を詳述します。


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1. デザイナー玉田翔太の軌跡:ポップアップから世界へ

TTT MSWの成功の核心には、デザイナー玉田翔太の、固定観念に縛られない自由な感性と、コミュニティを大切にする独自の姿勢があります。

  • キャリアのスタートと独学の精神玉田は、伝統的なファッションスクールでの教育をメインとするのではなく、ストリートの現場でその感性を磨いてきました。2013年、若干20歳でブランドを始動。当初は自身が着たいと思う服を作り、友人たちとのコミュニティの中で販売する「ポップアップ」形式で徐々にその名を広めていきました。この「現場主義」こそが、TTT MSWが持つ圧倒的なリアリティの源泉です。
  • ドーバー ストリート マーケットでの評価ブランドの転機となったのは、世界で最も影響力のあるセレクトショップの一つ、**ドーバー ストリート マーケット(Dover Street Market)**での取り扱いが始まったことでした。川久保玲をはじめとするファッション界の巨星たちが集う場所で、玉田の「モダン・ストリートウェア」は、新しい時代のラグジュアリーとして正当な評価を受けました。

2. デザイン哲学:ジャンルレスとモダン・ストリートウェア

TTT MSWのデザインを貫くのは、**「既存のジャンルに当てはまらないこと」**そのものです。

  • Modern Street Wear(MSW)の定義玉田が掲げる「モダン・ストリートウェア」とは、90年代のいわゆる「裏原宿」的なストリートとは一線を画します。それは、より繊細で、知的な遊び心があり、そして性別の境界を感じさせないスタイルです。ストリートの力強さを持ちながら、ドレッシーな素材使いや、クチュール的なディテールを恐れずに取り入れるその姿勢は、ファッションにおける新しい合理性を提示しています。
  • エモーショナルなグラフィックと色彩TTT MSWのプロダクトを彩るのは、どこかノスタルジックで、しかし見たことのない鮮やかなグラフィックや色彩です。音楽、映画、インターネット文化。リネッツ(ERL)がカリフォルニアの光を描くように、玉田は東京というカオスな都市の中で生まれる「感情」を、衣服というキャンバスに描き出しています。

3. ニットウェア:TTT MSWという物語の核

ブランドを象徴する最も重要なカテゴリー、それが**「ニットウェア」**です。現在、東京の街中でTTT MSWのアイコンを見かけない日はありません。

  • フラワー・カーディガンとグラフィカル・ニット花柄やボーダー、独特な幾何学模様を配したカーディガンやプルオーバーニットは、ブランドのシグネチャーアイテムです。モヘアやコットンなど、シーズンごとに厳選された素材を使い、ジャガード織りで表現される複雑な模様は、一着で主役級の存在感を放ちます。この「一目でTTT MSWと分かる」強力なアイデンティティが、多くの若者の心を掴みました。
  • 性別を越える包容力これらのニットは、男性が着ればポップなエッジが立ち、女性が着ればエレガントで柔らかな表情を見せます。サイズ感や配色の絶妙なバランスにより、ジェンダーレスなワードローブとして完璧に機能しています。

4. カテゴリ別・アイコニックな定番アイテム

TTT MSWのコレクションは、ニット以外にも多種多様な「現代のスタンダード」で構成されています。

カテゴリ代表的なアイテム特徴と魅力
ニットFlower Knit Cardiganブランドの象徴。花柄の刺繍や編み地が特徴で、毎シーズン完売必須の人気。
デニムEmotional Denimヴィンテージのディテールを残しつつ、独自の加工や刺繍を施した感情的な一着。
アウターTailored Jacketストリートの感性で再解釈されたジャケット。セットアップでの着用も人気。
アクセサリーPiercing / Necklaceブランドロゴや独特なモチーフを配したジュエリー。ストリートな装いに気品を添える。

5. ミニマリズムブランドとの対比:ストリートの「動」とミニマルの「静」

本サイトで紹介している他のブランドと比較すると、TTT MSWの立ち位置は非常に**「躍動的で外向的」**です。

  • シュタイン(Stein)との対比シュタインが無機質で緻密な「静寂の空間美」を追求するのに対し、TTT MSWはもっと有機的で、感情が溢れ出すような「動的な美」を追求します。シュタインが建築的であるなら、TTT MSWは音楽的です。
  • ルメール(Lemaire)との対比ルメールがパリの詩的な静寂を表現するなら、TTT MSWは東京の多文化的なエネルギーを内包しています。ルメールのファンがTTT MSWを愛用するのは、日常のクリーンな装いの中に、一点「毒」や「遊び心」を加えたいという知的な欲求があるからです。
  • オーラリー(Auralee)との対比オーラリーが素材の極致を追求するのに対し、TTT MSWは素材の良さを生かしつつも、その上に「文化的な物語(グラフィックや刺繍)」を乗せることを重視します。オーラリーが朝の光なら、TTT MSWは夜のネオンやクラブの熱気のような印象を与えます。

6. コミュニティとコラボレーション:2026年の視点から

TTT MSWは、単に服を作るだけの組織ではありません。玉田翔太は、ファッションを通じて多様なクリエイターやコミュニティと繋がり続けています。

  • ボーダーレスな共演PUMA(プーマ)といったグローバルなスポーツブランドから、グラフィックアーティスト、ミュージシャンに至るまで、そのコラボレーションの範囲は多岐にわたります。玉田の視点は常に「自分たちが面白いと思えるかどうか」にあり、その純粋な好奇心がブランドに常に新鮮な驚きを与えています。
  • 東京ストリートの継承者2026年現在、TTT MSWは東京のストリートウェアが進むべき一つの究極のモデルとなりました。特定のトレンドに依存するのではなく、自分たちのコミュニティから生まれる感性を大切にする。この「スモール・コミュニティからの発信」こそが、情報のスピードが加速する現代において、最も強力な信頼を勝ち取っています。

7. 遺産と未来への展望:ネクスト・モダン・クラシック

TTT MSWがファッション界に遺している最大の功績は、**「ストリートウェアは、もっと優しく、もっと知的で、もっと自由であって良い」**ということを証明したことです。

  • 感情を纏う衣服玉田翔太が描くグラフィックやシルエットには、常にどこか「切なさ」や「喜び」といった人間の感情が宿っています。流行がどれほど激しく移り変わろうとも、TTT MSWが提示する「自分自身のアイデンティティを肯定する力」は、時代を超えて普遍的な価値を持ち続けるでしょう。
  • 未来のアーカイブTTT MSWの服を身に纏うことは、現代の東京の空気を纏うことです。数年、数十年経ったとき、クローゼットにあるTTT MSWのニットは、かつて私たちが過ごした眩しい日々の記憶を呼び覚ます「アーカイブ」となっているはずです。

流行が去り、喧騒が静まった後も、あの鮮やかな花の刺繍と、自由なシルエットは、私たちの生活の中で輝き続けるでしょう。それは、玉田翔太が作ったのが単なる服ではなく、私たちが今の時代を生きるための「新しい勇気」そのものだったからです。

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