Auralee(オーラリー)── 素材から始まる日本の静かな革命

Auralee(オーラリー)── 素材から始まる日本の静かな革命 DOMESTIC BRAND

Auralee(オーラリー)は、デザイナー・岩井良太が2015年に設立した東京発のドメスティックブランドです。華美な装飾を排し、素材そのものの質感と色彩で語りかけるスタイルは、日本国内のみならず欧米の感度の高いバイヤーや編集者からも高い評価を受けています。尾州・遠州・備後といった日本各地の繊維産地と緊密に連携し、原料の調達段階からテキスタイルを開発する姿勢は、「素材から始まるデザイン」という思想の体現です。本記事では、そのブランドの軌跡・哲学・製作プロセス・市場での立ち位置を多角的に掘り下げます。

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Auraleeとは?── ブランドの軌跡

岩井良太は文化服装学院を卒業後、複数のブランドでの経験を経て、2015年春夏コレクションをもってAuraleeをスタートさせました。ブランド名は「光の輪(Aura)」と「リー(lee)」を組み合わせた造語で、静かに、しかし確かに放たれる光のイメージが込められています。

設立当初から東京コレクションのスケジュール外で独自の発表形式を選び、プレス主導のスペクタクルよりも「服との静かな対話」を優先してきました。2016〜2017年ごろには伊勢丹新宿店やビームスなど国内有力セレクトショップへの卸が本格化し、ブランド認知度が急上昇します。2019年には東京・南青山に旗艦店をオープン。内装はテキスタイルの質感を最大限に伝えるミニマルな空間設計で、服そのものが主役となる場を作り上げました。

海外展開においても早い段階からParis Trade Show(Who’s Next)やTRANOI等への参加を経て、フランス・イギリス・アメリカ・韓国のセレクトショップへの展開を果たしています。2020年代に入ると、Dover Street Market(DSM)のロンドン・パリ・東京・ニューヨーク各店での取り扱いが始まり、グローバルなファッション消費者の視野にも確実に入り込みました。

岩井は「シーズンのトレンドに反応するのではなく、自分が本当に着たいと思える服を作ること」を一貫した指針として掲げており、コレクションごとに大きくシルエットを変えることなく、素材のアップデートと微細なディテールの更新によって進化を続けています。

シグネチャー素材とテイスト── スーパーソフトウールが語るもの

Auraleeを語るうえで外せないのが、スーパーソフトウール(Super Soft Wool)と呼ばれる独自開発のテキスタイルです。通常のウール素材よりも繊維径を細く設定し、さらに特殊な加工を施すことで羽毛のような軽さと滑らかな肌触りを実現しています。素肌に直接着用できるほどのソフトネスが特徴で、インナーとしてもアウターとしても機能する汎用性の高さが愛用者を増やしています。

カシミアとのブレンド素材も定番ラインのひとつです。モンゴル産の高品質カシミア原毛を日本の紡績技術と組み合わせることで、一般的なカシミア製品にありがちな「毛羽立ち」や「型崩れ」を最小限に抑えながら、軽量感と保温性を両立させています。価格帯は決して低くはありませんが、「長く着られる服に投資する」という現代の消費価値観とも合致しています。

色彩においては、彩度を意図的に低く設定したパレットが特徴的です。ベージュ・ストーン・オフホワイト・ダスティローズ・スモークグリーン・チャコールといった、名前すら詩的な色調が並びます。単色でも豊かに見える素材の表情があるからこそ、柄や配色に頼らずとも成立するコレクションが組み上げられます。

シルエットは総じてリラックスしたオーバーサイズでありながら、着用したときの重心や落ち感が綿密に計算されており、「着崩れる」のではなく「きちんと漂う」感覚があります。このバランス感覚がAuraleeのデザインの核心であり、シーズンを超えて愛用される理由でもあります。

デザイン哲学に込められた日本的な感性

岩井良太のデザインには、日本の伝統美学に通ずる「引き算の論理」が貫かれています。余計なものを足すのではなく、必要なものだけを残すことで生まれる静謐さ──これは茶の湯や侘び寂びの精神と同じ方向性を持ちます。ロゴの露出は最小限に抑えられ、ラベルすら素材と同様の上質な布地で仕立てられています。

「服は人の動きや生活に寄り添うべき存在である」という姿勢も、日本的な職人観と重なります。機能が形を決め、形が素材を選ぶ。このプロセスの自然な流れの中でデザインが生まれるため、Auraleeの服には「デザインされた感」が希薄で、むしろ「元からそこにあったような必然性」が宿っています。

また、コレクションには毎シーズン、特定のアーティストや映像作家とのコラボレーションによるビジュアルが用意されます。服を「商品」としてではなく「文化的な表現」として提示する姿勢は、日本の工芸品が作り手の精神を宿すのと同様の誠実さを感じさせます。こうした文脈の積み重ねが、Auraleeを単なる「いい服ブランド」を超えた存在として位置づけています。

製作プロセスと産地── 日本の繊維産地との対話

Auraleeの最大の特徴のひとつは、テキスタイル開発を産地の職人・メーカーと二人三脚で進める体制にあります。既製の生地を選んで縫製するのではなく、原料の選定・紡糸・織り・染色・仕上げの各工程に深く関与することで、他のブランドにはない唯一無二の素材が生まれます。

尾州(愛知県一宮市周辺)は日本最大のウール産地であり、Auraleeのウール系素材の多くはこの地で生産されています。尾州の織物産業は明治期から続く歴史を持ち、高密度な織り技術と繊細な仕上げ加工において世界トップクラスの水準を誇ります。岩井は尾州のテキスタイルメーカーと密接に連携し、糸の撚り方や織り密度の調整を重ねて「スーパーソフトウール」を完成させました。

遠州(静岡県浜松市周辺)はコットン系テキスタイルの産地として知られています。Auraleeの春夏コレクションで使用されるオーガニックコットンや高密度ポプリンの一部は遠州産で、軽やかでありながら張りのある生地感が特徴です。遠州の織物は江戸時代から続く木綿文化の流れを汲み、現代のデザインブランドと組み合わせることで新しい価値を生み出しています。

備後(広島県福山市周辺)はデニム・タオル地・綿ニットなど多様な素材の産地です。Auraleeが手がけるコットンニットの一部には備後産の素材が採用されており、独特のふっくらとした編み地の質感を実現しています。備後の素材は吸水性・通気性にも優れ、日本の高温多湿な気候に適した服作りに貢献しています。

これらの産地との関係は単なる「発注先」ではなく、共同開発者としての関係です。産地の職人が持つ技術的知見とデザイナーの感性が対等に交わることで、既存の概念を超えたテキスタイルが誕生します。このアプローチは国内繊維産業の活性化にも貢献しており、持続可能なファッションのあり方を示す好例として業界内でも注目されています。

Auraleeの代表コレクションとアイテム比較

アイテムカテゴリ 代表素材 主な産地 価格帯(税込) 特徴
スーパーソフトウールニット ウール100% / ウール×カシミア 尾州(愛知) 35,000〜65,000円 素肌着用可・軽量・保温性
コットンポプリンシャツ オーガニックコットン 遠州(静岡) 28,000〜42,000円 高密度・ハリ感・透け感少
ウールテーラードコート ウール×ポリエステルブレンド 尾州(愛知) 95,000〜140,000円 落ち感・シルエット・耐久性
コットンニットプルオーバー コットン100% 備後(広島) 30,000〜48,000円 ふっくら感・通気性・オールシーズン
カシミアブレンドパンツ ウール×カシミア 尾州(愛知) 50,000〜78,000円 軽量・ドレープ・上品な光沢

他のドメスティックブランドとの立ち位置

日本のドメスティックブランド群の中でAuraleeはどのような位置を占めているのでしょうか。同時代を生きるブランドとの対比を通じて、その個性がより鮮明になります。

Graphpaper(グラフペーパー)は同じく素材重視のアプローチを持つブランドですが、よりアーキテクチャル(建築的)なシルエットと構築性を特徴とします。対してAuraleeはより有機的で「着用者の体に寄り添う」方向性が強く、同じミニマリズムでも質感の方向性が異なります。

TTT_MSW(ティーモーメントウィズ)KHOKI(コキ)はよりコンセプチュアルで実験的な姿勢が強く、アバンギャルドな文脈に寄っています。Auraleeはその点でより「日常に着用できるラグジュアリー」という現実的な着地点を持っており、ファッション初心者から上級者まで幅広い層が入りやすいブランドです。

White Mountaineering(ホワイトマウンテニアリング)はアウトドア技術とハイファッションの融合を軸とし、機能性素材への傾倒が強い点でAuraleeとは異なります。Visvim(ビズビム)は日本・アメリカ・アジアの民族的意匠を融合したアプローチで、物語性・骨董的価値観を前面に出す点でAuraleeのシンプルさとは対照的です。

Comme des Garçons(コム デ ギャルソン)Sacai(サカイ)Junya Watanabe(ジュンヤ ワタナベ)といったパリコレクションブランドと比較した場合、AuraleeはDNAとして「東京の静けさ」を纏っています。前者たちが解体・再構築・ハイブリッドという方法論をとるのに対し、Auraleeは純化・精製という逆方向の操作で服の本質に迫ります。

総じてAuraleeは、「素材という真実から出発し、装飾という嘘を引いていった先に残る純粋な服」というポジションを占めています。国内外のセレクトショップバイヤーがAuraleeを高く評価する背景には、このブレない軸への信頼があります。

海外バイヤーから見たAuraleeの評価

海外での評価は、特に2018年以降に急速に高まりました。Dover Street Market各国店舗での取り扱い開始は、Auraleeがコム デ ギャルソングループの目利きによって世界に紹介されたことを意味し、ブランドの国際的な信頼性を一気に押し上げました。

欧米のバイヤーがAuraleeに惹かれる最大の理由として挙げるのは、「他のどこにも似たものがない素材感」です。日本の繊維産地による精緻な仕上がりは、イタリアのラグジュアリーとも異なる独自のクオリティを持ちます。イタリアが「官能性と力強さ」を素材に込めるとすれば、Auraleeの素材は「繊細さと静けさ」を纏っています。

韓国ではセレクトショップ「BOON THE SHOP」や「KITH KOREA」等を通じて人気が浸透し、特に20〜30代の富裕層のファッションに敏感な消費者から支持を集めています。アメリカではL.A.とニューヨークの独立系セレクトショップを中心に展開が進んでおり、「日本のクワイエットラグジュアリー」という文脈で語られることが増えました。

2020年代に入り「Quiet Luxury(クワイエット ラグジュアリー)」という概念が世界的に注目されるようになったことも、Auraleeへの追い風となりました。ロゴなし・装飾なし・素材重視という姿勢は、まさにこの潮流の先を行くものとして再評価されています。

よくある質問

Q. Auraleeはどこで購入できますか?

A. 東京・南青山の旗艦店のほか、伊勢丹新宿店、ビームス各店、ユナイテッドアローズ、TOMORROWLAND等の国内有力セレクトショップで取り扱いがあります。海外ではDover Street Market(ロンドン・パリ・東京・ニューヨーク)やLN-CC(ロンドン)などでも購入可能です。公式オンラインストアも運営されており、国内外への発送に対応しています。

Q. Auraleeの価格帯はどのくらいですか?

A. Tシャツ・カットソーなどの基本アイテムで15,000〜28,000円程度、シャツ・ニットで28,000〜65,000円、コートやジャケット類では80,000〜150,000円前後が目安です。素材開発から製品化まで国内の産地と協力して行うため、ファストファッションと比べると高価格になりますが、素材・縫製のクオリティを考慮すると適正な価格設定といえます。

Q. サイズ感はどのような傾向がありますか?

A. オーバーサイズ〜リラックスフィットが基本設計です。日本人の体型を基準にしており、1〜2サイズ小さめを選んでもゆとりのあるシルエットになることが多いです。ニット類はサイズ1(Sに相当)でも肩幅・身幅にゆとりがあり、スタイリングに幅を持たせやすい設計です。試着が難しい場合は、旗艦店や百貨店での実物確認を推奨します。

Q. Auraleeは海外でも人気がありますか?

A. はい、特に欧米・韓国での評価が高く、Dover Street Market各店を中心に展開されています。「Quiet Luxury」の文脈で語られることが多く、ロゴに頼らない素材主義のデザインがグローバルな審美眼を持つバイヤーに支持されています。海外のファッションメディア(i-D・Vogue等)でも度々取り上げられています。

Q. Auraleeの素材はどのようにケアすればよいですか?

A. ウール・カシミア素材の多くはドライクリーニング推奨ですが、一部のアイテムは中性洗剤を使用した手洗いに対応しています。各商品の洗濯表示に従うことが基本です。保管時はウールブラシでブラッシングし、圧力がかかりにくいよう折りたたんで収納するのがベストです。防虫剤はナフタレン系ではなくムシューダなどの無臭タイプを推奨します。

まとめ

Auralee(オーラリー)は、デザイナー・岩井良太が2015年に設立した東京発のドメスティックブランドです。以下にその核心をまとめます。

  • 素材から始まるデザイン哲学:尾州・遠州・備後など日本の繊維産地と原料段階から共同開発を行い、他にはない唯一無二のテキスタイルを生み出している。
  • スーパーソフトウールとカシミアブレンド:ブランドのシグネチャーである軽量・高触感の素材は、素肌着用も可能な繊細さを持ち、長年にわたって愛用者に愛される耐久性も兼ね備える。
  • 引き算の美学:装飾・ロゴ・トレンドへの追随を排し、服本来の価値である「素材・シルエット・着心地」を純化させる日本的美意識が全コレクションに一貫している。
  • 国内外の高い評価:Dover Street Market各国店舗での取り扱い、欧米・韓国セレクトショップへの展開など、「クワイエット ラグジュアリー」の文脈でグローバルに認知度を高めている。
  • 日本の繊維産業との共存共栄:産地職人との二人三脚による素材開発は、国内繊維産業の活性化にも貢献しており、持続可能なファッションのあり方を体現している。

装飾の時代が過ぎ、本質が問われる時代に、Auraleeは「素材という真実」を携えて静かに世界へと問いかけ続けています。その問いかけは、ますます多くの人々の心に届きつつあります。

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