AMI Paris(アミ パリス)

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AMI Paris(アミ パリス)は、2011年にデザイナーのアレクサンドル・マテュッシ(Alexandre Mattiussi)によってパリで設立されたラグジュアリー・ライフスタイル・ブランドです。ブランド名の「AMI」は、フランス語で「友達」を意味すると同時に、デザイナー自身のイニシャル(Alexandre Mattiussi)にも由来しています。

ヘルムート・ラングやルメールが都会的な緊張感や知的な静寂を追求したのに対し、AMIが提示したのは「親しみやすさと本物のエレガンスの両立」です。ランウェイのための非現実的な服ではなく、パリの街角で友人たちとカフェを楽しむときに着たい、リアルで温かみのあるワードローブ。その独自の立ち位置は、設立からわずか数年で、現代のパリジャン・シックを象徴する存在へとブランドを押し上げました。ここでは、アレクサンドル・マテュッシが築き上げた「友情」という名のブランドの歴史と哲学を、圧倒的なボリュームで詳述します。


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1. アレクサンドル・マテュッシの軌跡:巨大メゾンから「友人」のもとへ

AMIの成功を語る上で、創業者アレクサンドルの華麗なるキャリアと、そこからの「脱却」の物語を欠かすことはできません。1980年生まれの彼は、パリのファッションスクール「デュプレ(Duperré)」で学び、卒業後は名だたるラグジュアリー・メゾンでその才能を磨きました。

  • キャリアの研鑽彼はディオール・オム(Dior Homme)でキャリアをスタートさせ、その後ジバンシィ(Givenchy)でメンズウェアのファースト・アシスタントを、さらにはマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)のメンズラインを担当するなど、ハイファッションの最前線で10年近くを過ごしました。
  • AMIの誕生:自分と友人たちのための服最高峰のクチュール技術を習得した彼が抱いたのは、「自分が本当に着たい、そして手の届く価格の、質の良い服が市場にない」という違和感でした。巨大メゾンの作る服はあまりにも高価で、日常から乖離している。彼は、自分や自分の友人たちが毎日を心地よく、かつスタイリッシュに過ごせる服を作るために、2011年に独立を決意します。この「リアルクローズへの情熱」こそが、AMIのすべての原点です。

2. デザイン哲学:フレンチ・エフォートレスの真髄

AMIのデザインを貫くのは、フランス語で「さりげない」を意味する「エフォートレス(Effortless)」という概念です。

  • 完璧なカジュアルとテーラリングの融合アレクサンドルは、ジバンシィなどで培った厳格なテーラリングの技術を、スウェットシャツやデニム、オーバーサイズのニットといったカジュアルなアイテムに落とし込みます。彼の作るコートは、美しい肩のラインを持ちながらも、どこかリラックスした空気を纏っています。この「カチッとしているのに、リラックスしている」という絶妙なバランスが、現代の都市生活者に深く刺さりました。
  • 色彩の魔術AMIのコレクションを彩るのは、パリの風景から切り取られたような美しい色彩です。クラシックなネイビーやグレー、ベージュをベースに、鮮やかな赤、爽やかなスカイブルー、そして柔らかなパステルカラーを差し色として加えます。これらの色は、着る人の表情を明るくし、ポジティブなエネルギーを与えてくれます。
  • 時代を問わないシルエットトレンドを追いかけるのではなく、5年後も10年後も愛用できるシルエットを追求しています。少しゆったりとしたパンツ、ボリュームのあるニット、身体を包み込むロングコート。それらはすべて、快適さと審美性を高度な次元で両立させています。

3. アミ・ド・クール(Ami de Cœur):愛と友情のシンボル

AMIの名前を一躍世界中に広めたのが、2017年に発表された「Ami de Cœur(アミ・ド・クール)」ロゴです。

  • ロゴに込められた意味アルファベットの「A」の上にハートマークを配したこのロゴは、アレクサンドルが幼少期から友人たちへの手紙に添えていたサインがモチーフになっています。このロゴは、ブランドが大切にする「友情、愛、喜び、そして誠実さ」という価値観を視覚的に表現したものです。
  • 世界的なブームへスウェットシャツやカーディガンの胸元に小さく刺繍されたこのロゴは、控えめでありながらも強烈なアイデンティティを放ちました。SNS時代において、この「優しく親しみやすい」シンボルは爆発的な人気を博し、世代や性別、国籍を問わず、多くの人々に受け入れられるブランドの象徴となりました。

4. ウィメンズラインの始動:ユニセックスへの拡張

当初はメンズブランドとしてスタートしたAMIですが、そのクリーンで普遍的なデザインは、すぐに女性たちの注目を集めるようになりました。

  • 女性が着るAMIの魅力多くの女性たちが、あえてメンズの最小サイズを選び、オーバーサイズのコートやシャツを纏う姿が見られるようになりました。これを受け、2019年には正式にウィメンズコレクションがスタート。マニッシュなテーラリングと、女性らしい繊細な素材使いが融合したウィメンズラインは、現代の「自立したパリジェンヌ」の新しい制服となりました。
  • ジェンダーレスなアプローチ現在、AMIの多くのアイテムはユニセックスとして提案されています。性別という境界線を取り払い、ただ「良い服」を共有する。この自由で現代的な姿勢が、AMIをより一層魅力的なブランドへと進化させています。

5. アイコニックな定番アイテム:パリジャンのワードローブ

AMIのコレクションには、シーズンを超えて愛される「名品」が数多く存在します。

カテゴリ代表的なアイテム特徴
アウターオーバーサイズコート身体を包み込む美しいボリュームと、上質なウール素材。
ニットAmi de Cœur カーディガンロゴの刺繍がアクセント。最高級のカシミアやメリノウールを使用。
シャツボタンダウンシャツ絶妙な襟の形と、洗いざらしでも様になる素材感。
ボトムスキャロットパンツ腰回りにゆとりがあり、裾に向かって細くなる現代的なシルエット。
シューズレザースニーカーシンプルで無駄のないデザイン。どんなスタイルにも馴染む。

6. ヘルムート・ラングやルメールとの対比:温かなミニマリズム

本サイトで紹介している他のブランドと比較すると、AMIの立ち位置は非常に「エモーショナル(情緒的)」です。

ヘルムート・ラングが冷徹なまでの知性を、ルメールが静謐な内省を追求しているとすれば、AMIは「人との繋がり」を追求しています。ラングの服が都市という戦場へ向かうための鎧であり、ルメールの服が詩的な背景であるなら、AMIの服は、大切な人たちとの食事や、週末の旅を楽しむための「喜びの衣装」です。

しかし、両者には共通点があります。それは「品質に対する誠実さ」です。アレクサンドル・マテュッシは、どれほどロゴが人気になっても、服自体のクオリティを下げることはありません。イタリアやポルトガルの信頼できる工場で、丁寧な工程を経て作られる服。この「誠実なもの作り」こそが、遊び心のあるロゴの裏側に隠された、ブランドの真の強みです。


7. 遺産と未来への展望:2026年の視点から

2026年現在、AMI Parisは設立15周年を目前に控え、単なる一過性のトレンドブランドではなく、現代のラグジュアリー界における「新しいスタンダード」としての地位を確立しました。

  • 独立精神と一貫性巨大な資本グループに属さず、デザイナー自身のビジョンを貫き通す独立精神は、多くの若手デザイナーの希望となっています。トレンドが変わっても、AMIが提案する「フレンドリーなエレガンス」の本質が揺らぐことはありません。
  • グローバルなコミュニティパリから始まった「友情の輪」は、今や東京、ソウル、ニューヨーク、ロンドンと世界中に広がっています。AMIの服を着ることは、そのポジティブなコミュニティの一員になることを意味します。

AMIの服を身に纏うことは、自分自身を明るく、誠実に見せることです。上質なウールのコートに包まれ、胸元のハートマークを誇らしく掲げるとき、私たちはファッションが持つ「人を幸せにする力」を再確認します。

流行が去り、どれほど時代が変わっても、アレクサンドル・マテュッシが愛した「パリの友人たち」の風景は、私たちの日常を彩り続けてくれるはずです。それは、彼が服を通じて届けたのが、単なるデザインではなく、色褪せることのない「友情」そのものだったからです。

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