Y/Project(ワイ・プロジェクト)は、2010年にフランスで設立されたファッションブランドで、独自のデザインとユーモアのあるアプローチでファッション界に新しい風を吹き込んできました。創設当初から革新的なデザインと実験的なスタイルで注目を集めており、現在ではファッション界の最前線で活躍するブランドの一つです。
Y/Projectの歴史は、ブランドの創設者と、その後のアートディレクターを務めたデザイナーたちによって形作られてきました。以下に、各年代ごとの歴史とその中で生まれたおすすめのコレクションについて紹介します。
Y/Projectの歴史
1. 創設と初期(2010年-2013年)
Y/Projectは、イェール・コーネイ(Yohan Serfaty)によって2010年に設立されました。当初はメンズウェアを中心としたコレクションを展開し、ダークで構造的なデザインが特徴でした。コーネイは、革を多用したアヴァンギャルドなスタイルで、ゴシックやインダストリアルな要素を取り入れたアイテムを発表していました。
しかし、ブランドは創設者であるコーネイの死(2013年)により方向転換を余儀なくされました。コーネイの死後、ブランドの経営は彼のビジネスパートナーに引き継がれ、新たなアートディレクターを探すことになります。
2. グレン・マーティンスによる再構築とブレイク(2013年-2017年)
2013年、グレン・マーティンス(Glenn Martens)がY/Projectのアートディレクターに就任しました。ベルギー出身のマーティンスは、アントワープ王立美術アカデミーで学び、その後ジャン=ポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)などのブランドで経験を積んでいました。
マーティンスが就任した当初、Y/Projectはまだ小さなブランドでしたが、彼の手腕によって一気にその名が広がっていきました。マーティンスは、Y/Projectのダークでシンプルなイメージを一新し、独自のスタイルとユーモアを取り入れたデザインで新たな方向性を打ち出しました。彼のデザインは、アヴァンギャルドで実験的でありながらも着やすいもので、ファッション業界に衝撃を与えました。
おすすめコレクション:2016年秋冬コレクション
このコレクションは、マーティンスがブランドを再構築した初期の成功例とされています。彼は、クラシックな服にユーモアとウィットを加え、独自のアプローチで再解釈しました。例えば、異常に長い袖や、ボタンを意図的にずらしたシャツ、非対称のコートなどが注目を集めました。また、デニムを大胆にアレンジしたアイテムも特徴的で、Y/Projectらしいデザイン美学が確立されていきました。
3. ブランドの国際的評価と拡大(2017年-2019年)
2017年から2019年にかけて、Y/Projectは世界的に評価を受け、ファッション業界で確固たる地位を築きます。マーティンスの手腕によって、Y/Projectはパリ・ファッション・ウィークでも高い評価を受け、特にデニムアイテムや独特のシルエットが注目されました。ユニークなアイテムの数々は、ストリートファッションの要素を取り入れつつも高級感のある仕上がりで、多くのファッション通から支持を集めます。
おすすめコレクション:2018年春夏コレクション
このシーズンのコレクションは、Y/Projectの象徴的なスタイルが完成したと言われています。特にデニムアイテムが話題となり、パリ・ファッション・ウィークでも大きな注目を集めました。このコレクションでは、デニムの生地を使い、ユニークなレイヤードスタイルや立体的なシルエットを生み出しており、デザインに遊び心を加えながらも洗練された仕上がりを見せました。また、解体と再構築の手法を用いて、日常的なアイテムに新たな命を吹き込んでいます。
4. コラボレーションとユニセックスへの展開(2019年-2021年)
Y/Projectはこの時期に入ると、他ブランドとのコラボレーションを積極的に展開し始めました。特に2019年のY/Project × UGGとのコラボレーションは話題となり、UGGのアイコニックなシューズをY/Project流にアレンジしたことで、インパクトのあるデザインが誕生しました。さらに、サステナビリティを重視したコレクションも発表され、環境問題にも配慮した姿勢が評価されました。
おすすめコレクション:2020年秋冬コレクション
このコレクションでは、ジェンダーレスなアイテムや多機能なデザインが特徴で、Y/Projectの進化が感じられるシーズンでした。特にレイヤリングや解体再構築のアプローチが際立ち、日常着を新しい視点で再解釈しています。ジャケットやトレンチコートの裾をアシンメトリーにするなど、独特のシルエットが特徴で、視覚的に楽しいアイテムが多く登場しました。
5. デジタル化とサステナブルへのシフト(2021年-現在)
2020年代に入り、Y/Projectも他のブランドと同様に、デジタルショーの導入や、サステナビリティに対する取り組みを積極的に進めています。特に、2021年にはアズディン・アライア(Azzedine Alaïa)のアーティスティックディレクターにグレン・マーティンスが就任したことで注目を浴びました。この役職を兼任することで、彼の独自のビジョンがさらに広がり、Y/Projectにも新たなアイディアが反映されるようになりました。
おすすめコレクション:2022年春夏コレクション
2022年の春夏コレクションは、マーティンスのデザイン美学がさらに進化したものとして評価されました。このコレクションでは、Y/Projectの特徴である大胆なシルエットと解体的なアプローチがより洗練された形で表現されています。また、アライアの影響を受けたフェミニンな要素がさりげなく取り入れられており、ジェンダーレスでありながらも上品な仕上がりとなっています。
Y/Projectの魅力と今後の展望
Y/Projectの魅力は、クラシックなアイテムを再解釈し、常にユニークで挑戦的なデザインを発信する姿勢にあります。グレン・マーティンスは、常に伝統と革新を織り交ぜたスタイルを提案しており、Y/Projectは今後もファッション業界での重要なポジションを維持し続けると考えられます。