Commission(コミッション)は、2018年にニューヨークで創業されたブランドです。旧版の記事には、創業者が2020年に「CFDA/Vogueファッションファンド」のファイナリストに選ばれ、2021年11月に同賞を受賞し賞金40万米ドルを獲得したという記述がありましたが、LVMHプライズの公式サイトを確認したところ、Commissionが選出されたのはLVMHプライズの2020年セミファイナリストであり、CFDA/Vogueファッションファンドの受賞という事実は確認できませんでした。旧版にあった受賞スピーチの引用も、複数の英語圏メディアを確認するかぎり出典が見当たらず、本稿では採用していません。また、旧版が挙げていた着用者(Lucy Liu、Awkwafina、Sandra Oh、Olivia Munn)についても裏付けとなる報道は見当たらず、代わりにKim Kardashian、Rosalía、Charles Melton等が着用したと海外メディアで報じられている点を確認できました。中古相場についても、旧版にあった円単位の具体的な価格帯は出典が確認できなかったため、本稿では採用していません。本稿ではこうした点を一次情報で確認し直しながら、Commissionの歩みと現在地をお伝えします。
創業者3人と創業経緯
Commissionは2018年9月、ニューヨークでディラン・カオ(Dylan Cao)、ジン・ケイ(Jin Kay)、フイ・ルオン(Huy Luong)の3人によって立ち上げられました。カオとルオンはベトナム出身、ケイは韓国出身で、いずれもパーソンズ・スクール・オブ・デザインの卒業生です。複数の海外メディアが伝えるところによれば、3人はニューヨークのチャイナタウンで開かれたある友人の誕生日パーティーで出会い、そこから連夜のように食事をともにしながら、ブランドの構想を練っていったといいます。最初のコレクションは2019年春夏シーズンとして発表されました。
創業前の経歴についても、複数の媒体で個別の記述が確認できます。ディラン・カオはニューヨークのデニムブランドR13でアクセサリーのデザインを手がけたのち、Commissionの立ち上げにあわせて退職しました。現在も人事や社内の調整といった経営面を担っていると報じられています。ジン・ケイは、ネパール出身デザイナーPrabal Gurungのもとでシニアデザイナーとして経験を積んだ人物です。フイ・ルオンはグラフィックデザインを専門とし、創業初期のルックブック撮影も自ら手がけたと伝えられています。ベトナムのホーチミン市で育ったルオンの経歴も含め、3人それぞれが異なる強みを持ち寄って創業した体制だったことがうかがえます。
ブランド名「Commission」は、英語で「依頼する」「委託する」を意味する語です。3人が創業前に他社の仕事を請け負う立場で経験を積んできたことへの、いくばくかの自嘲を込めた命名だと海外メディアは紹介しています。他者からの依頼をこなす立場から、自分たち自身の物語を語る立場への転換を、ブランド名そのものに込めたという解釈です。旧版の記事にあった「母親たちへの依頼」という語源説明は、この命名の経緯とはやや異なる説明であり、本稿では海外メディアの取材にもとづく上記の説明を採用しています。
なお、近年(2024年前後)の海外メディアの報道では、Commissionをディラン・カオとジン・ケイの2人体制として紹介する記事が目立つようになっています。2024年公開のHighsnobietyやOffice Magazineの記事は、いずれも「2人のデザイナー」という枠組みでCommissionを取り上げており、創業当初の3人体制からの変化をうかがわせます。ただし、フイ・ルオンの離脱そのものを明確に発表した公式情報は見当たらず、経歴データベース等でも本人の現在の役職を裏付ける記述は確認できませんでした。断定は避け、近年の報道の傾向として記録しておきます。
創業の動機について、カオとケイは英語圏のインタビューで「米国のファッション業界には東アジアの表現が単純に手薄だという事実があり、自分たちのデザインの技術でその空白を埋めたいという気持ちを抑えられなかった」と語っています。ステレオタイプに寄らないアジア系の物語を、ファッションという実際に身につける形で提示したいという動機が、Commissionという名前の裏側にある問題意識だといえます。3人はいずれもパーソンズ在学中から、東アジアという出自を作品づくりの弱みではなく強みとして扱う姿勢を共有していたと、複数の媒体が振り返っています。
ブランド名「Commission」は、英語で「依頼する」「委託する」を意味する語です。
母世代のアジア系ワードローブという美学
Commissionのコレクションを理解するうえで欠かせないのが、3人がそれぞれ育った家庭で、母親たちが1980年代から1990年代に身につけていた仕事着への記憶です。海外メディアの取材によれば、ディラン・カオの母親は花柄のシルクブラウスを愛用し、ベトナムの石油会社に勤めていた頃、2、3週おきに社員旅行としてホーチミン市から2時間ほど離れたビーチへ出かけていたといいます。子どもたちが海で遊ぶ間も、母親たちはスカートとブレザーを着たまま、靴を手に持って波打ち際に足を浸していたという情景が、カオ自身の言葉で紹介されています。
ジン・ケイの母親は、韓国の軍病院で働きながら、シルクブラウスとペンシルスカート、その上に白衣を重ねるという服装を日々していたと伝えられています。フイ・ルオンの母親については、ベトナムでの社員旅行の場で、水着の上にボクシーなジャケットを羽織るという、実用と体面を両立させた着こなしが語られています。3人がそれぞれ思い出す母親たちの姿は、国も職種も異なりながら、いずれも「働く女性としての現実」と「装いへの意識」を同時に抱えていた点で共通しています。Commissionという名前が「他者からの依頼」を意味することを踏まえると、このブランドは3人の母親たちがかつて背負っていた役割そのものへの、遅れてきた敬意の表明だとも読めます。
デザインへの翻訳としては、1980年代の「パワーショルダー」を強調した花柄ブラウスを、背面にゴム仕様を加えて現代的なフィット感に調整する手法や、中国の飴「大白兎(White Rabbit)」の包装紙を思わせる半透明素材のオーバーレイ、ペンシルスカートや膝丈コートに施されたユーティリタリーなディテールなどが、デビューコレクションから一貫して見られる意匠です。アジア各地の飴や贈答品の包装紙からインスピレーションを得たオリジナルプリントも、Commissionらしい要素のひとつとして海外メディアで繰り返し紹介されています。ブランドを立ち上げた動機について、創業者たちは「米国のファッション業界には東アジアの表現が単純に手薄だった」という率直な問題意識を語っており、ステレオタイプに寄らない形でアジア系の物語を伝えたいという姿勢が、母親世代のワードローブという具体的な起点と結びついています。
この母親世代への着目は、単に懐かしいモチーフを引用するだけの企画ではありません。海外メディアの取材からうかがえるのは、当時のアジア各都市で働く女性たちが、家庭内での役割と社会的なキャリアの両方を同時に背負っていたという生活実感そのものを、テーラリングという手段で翻訳しようとする姿勢です。オーバーサイズのブレザーやプリーツの入ったトラウザーは、単なる80年代リバイバルではなく、当時の母親たちが直面していた現実を、次の世代の視点で再解釈したものだと位置づけられます。旧版の記事にあった「Saigonの銀行員、ソウルの教師、シンガポールの会社員、バンコクの小売店店長」という職業の列記については、裏付けとなる一次情報が見当たらなかったため、本稿ではディラン・カオ、ジン・ケイ、フイ・ルオンそれぞれの母親についての具体的な逸話に置き換えています。
代表アイテムと意匠
Commissionを象徴するアイテムとしては、フィテッドなペンシルスカート、テーパードの効いたテーラードトラウザー、ボリュームのあるオーバーサイズブレザー、そしてフルイドな素材感のスリップドレスが挙げられます。シルクブラウスに1980年代風のパワーショルダーを効かせたトップスも、コレクションを通じて繰り返し登場する定番です。全体として、オフィスウェアの語彙をベースに、シャープなテーラリングと女性らしいドレープを組み合わせる方向性を、創業から一貫して保ち続けてきました。
近年でもっとも注目度の高い動きが、2023年11月に発表されたPaul Smithとのコラボレーション「&PaulSmith」の第2弾です。この企画はCFDA(Council of Fashion Designers of America、米国のファッションデザイナーによる業界団体)とPaul Smithが共同で選ぶ新進デザイナーとのシリーズで、2022年のAhluwalia &PaulSmithに続く第2回として、CommissionがPaul Smithからのメンターシップとともに選出されました。コレクションは、Paul Smithと父Haroldの写真をまとめた作品集「Father & Son」を出発点としており、ウール・カシミア混のロングコート、ダブルブレストの茶系ウールスーツ、イエローのレザーフィールドジャケットなど、全22アイテムの限定カプセルとして展開されました。ポイントカラーやローピークラペルといったディテールに、Paul Smith側の父子の記憶と、Commission側の母親世代の記憶という、双方の家族の物語が重なり合う構成になっています。販売はPaul SmithとCommissionの直販に加え、卸先はSSENSE限定という体制が取られました。CFDAが選出企画に関わったという事実そのものが、旧版の記事にあった「CFDA/Vogueファッションファンド受賞」という記述と紛れやすい部分でもあるため、両者は別の出来事だと整理しておく必要があります。
その後、2024年11月にはプレシーズン形式で2025年春夏コレクションを発表しています。テーマは「American Dream」で、アメリカという国に向けられる憧れそのものを主題としながら、ブランドがこれまで積み重ねてきたコード(定番の意匠や仕立て)を見直し、今も通用する要素を選び直す作業だったと海外メディアは紹介しています。ワンシーズンをスキップしてこの形式に移行した経緯も含め、Commissionが規模の拡大よりも、ブランドとしての一貫性を優先する姿勢がうかがえます。
販路については、SSENSEが最も存在感の大きい取扱店です。メンズラインはSSENSE側からの要望を受けて立ち上げられたと報じられており、現在も同社サイトでウィメンズ・メンズ双方の最新コレクションが取り扱われています。創業初期には、Net-a-Porterにも早い段階から取り扱われたと伝えられています。旧版の記事にあった、Dover Street MarketやBrowns、Galeries Lafayette、MATCHESFASHIONといった具体的な店舗名の一覧については、裏付けとなる一次情報が確認できず、しかもMATCHESFASHIONは2024年に事業を終了しているため、現在の取扱店として挙げるのは実情と合いません。本稿ではSSENSEとNet-a-Porterという、報道で確認できた範囲にとどめています。
どんな人に似合うブランドか
Commissionが似合うのは、1980年代から1990年代のパワードレッシングを、単なる懐古趣味ではなく現代のオフィスウェアとして着たい人です。オーバーサイズブレザーとペンシルスカート、あるいはテーパードトラウザーの組み合わせは、堅すぎず緩すぎない絶妙な塩梅を狙ったシルエットなので、いわゆるコンサバなスーツスタイルに物足りなさを感じている人には新しい選択肢になります。フルイドなスリップドレスを一枚で着るだけでなく、ブレザーの下に重ねて着崩すような着方も、このブランドらしい楽しみ方です。
アジア系米国人としてのアイデンティティや、母世代の記憶を起点にしたブランドの物語に関心がある人にとっては、単なる一着以上の意味を持つブランドだといえます。一方で、カジュアルなストリートウェアやミニマルな無地アイテムを中心に探している人には、Commissionのテーラリング主体の方向性はやや堅く映るかもしれません。その場合は、シルクブラウス1枚から取り入れて、普段のカジュアルなボトムスと合わせてみるところから試すと、ブランドとの距離感がつかみやすくなります。サイズ表記は米国式(XSからXLが中心)で展開されており、オーバーサイズブレザーは名前のとおり大きめのフィットを前提にしているため、ジャストサイズで着たい場合は表記より1段下を選ぶ人も少なくないようです。
Paul Smithとのコラボレーションで手掛けたようなメンズウェアに関心がある人にも、Commissionは選択肢のひとつになります。オーバーコートやダブルブレストスーツといったメンズアイテムは、SSENSEからの要望で立ち上がったという経緯もあり、レディースの意匠で培われたテーラリングの精度を、そのままメンズのシルエットに落とし込んだ作りが特徴です。ジェンダーを問わず、80年代から90年代のオフィスウェアに現代的な解釈を加えたいと考えている人には、レディース・メンズ双方から入り口を選べるブランドだといえます。
中古市場でのCommissionの位置づけ
Commissionは創業から7年ほどと、古着として見るとまだ歴史の浅いブランドです。日本国内の実店舗での取り扱いはほとんどなく、主な販路がSSENSEというグローバルECに集中していることもあり、国内の古着市場やフリマアプリで見かける個体数はまだ限られています。見つけたときには、まず米国式のサイズ表記を確認し、オーバーサイズ設計のブレザーであれば表記よりゆとりのあるフィットになる点を踏まえてサイズ感を判断するのがよいでしょう。
旧版の記事にあった「Oversized Blazerが3万円台から」といった円単位の具体的な価格帯は、根拠となる販売データや一次情報が確認できなかったため、本稿では採用していません。中古で探す場合の実務的な目安としては、2023年のPaul Smithとのコラボレーション以降に知名度が上がったこともあり、それ以前の初期シーズンのアイテムほど流通量が少なくなる傾向があると考えられますが、これは公開されている統計にもとづく確認ではなく、SSENSEという単一の主要販路に集中する販売構造から推測できる一般的な傾向にとどまります。購入時には、SSENSEに掲載されている過去シーズンの商品写真やブランドの公式アカウントの発表と照らし合わせて、ディテールやプリントの意匠が一致しているかを確認しておくと安心です。
もう一点、中古で選ぶ際に押さえておきたいのが、Commissionが直営店を持たず、ショールームとアトリエを兼ねたニューヨーク本社を中心に運営している小規模な体制だという点です。大量生産を前提にしたブランドではないため、シーズンごとの生産数自体が抑えられている可能性が高く、結果として同じアイテムに複数回出会える機会は多くありません。見つけたシーズンやディテールが気に入ったら、サイズ感を確認したうえで早めに判断するという古着探しの基本姿勢が、Commissionのようなインディペンデント系の米国ブランドには特に当てはまります。
CommissionはCFDA/Vogueファッションファンドを受賞したブランドですか
受賞したという事実は確認できませんでした。旧版の記事にあった「2020年ファイナリスト選出、2021年受賞・賞金40万米ドル」という記述は、LVMHプライズの公式サイトなど一次情報を確認するかぎり出典が見当たりません。確認できたのは、Commissionが2020年のLVMHプライズにおいてセミファイナリストに選出されたという事実で、これはLVMHプライズの運営元自身が公開している情報です。CFDAとの接点としては、2023年のPaul Smithとのコラボレーション「&PaulSmith」がCFDAとPaul Smithによる選出企画だったという事実があり、こちらは複数の業界メディアが報じています。
創業者は今も3人体制ですか
2018年の創業時はディラン・カオ、ジン・ケイ、フイ・ルオンの3人でした。ただし、2024年前後に公開された海外メディアの記事では、ディラン・カオとジン・ケイの2人を中心に紹介する傾向が目立っています。フイ・ルオンの離脱を明確に発表した公式情報は見当たらないため、本稿では体制の変化をうかがわせる報道の傾向として紹介するにとどめ、確定した事実としては断定していません。
中古でCommissionを選ぶときに注意すべき点はありますか
まず、サイズ表記が米国式であることと、オーバーサイズブレザーが名前のとおり大きめのフィットで作られている点を踏まえて、実寸を確認しながら選ぶことをおすすめします。日本国内での流通量自体がまだ少ないブランドなので、見つけたアイテムが気に入った場合は、SSENSEに掲載されている過去シーズンの商品写真や公式アカウントの発信と照らし合わせて、ディテールやプリントの意匠に相違がないかを確認しておくと、購入後の安心につながります。
まとめ
Commissionの歩みを一次情報で確認し直すと、2018年にディラン・カオ、ジン・ケイ、フイ・ルオンの3人がニューヨークのチャイナタウンで出会い、母親たちが1980年代から1990年代に身につけていた仕事着の記憶を出発点に、東アジアの表現が手薄だった米国ファッション業界に新しい視点を持ち込んできたブランドだということが見えてきます。旧版の記事にあったCFDA/Vogueファッションファンドの受賞歴や、受賞スピーチの引用、具体的な着用著名人の一覧、円単位の中古価格帯といった記述は、一次情報を確認するかぎり出典が見当たらなかったため、本稿ではあらためて整理しました。実際に確認できたのは、2020年のLVMHプライズ・セミファイナリスト選出と、2023年のPaul Smithとのコラボレーション「&PaulSmith」というCFDA関連の実績です。フィテッドなペンシルスカートやオーバーサイズブレザー、スリップドレスといった代表アイテムと、SSENSEを中心とした販路の実情も含めて、Commissionという若いブランドの現在地を踏まえたうえで、中古でのアイテム選びに役立ててみてください。











