一枚のラグは、床の印象を変えるだけでなく、部屋の空気そのものをやわらげてくれます。手織りの絨毯には、織り手の暮らしや産地の風土が糸に込められ、同じ柄は二つとない一点ものの魅力があります。東京には、ペルシャ絨毯やトルコのキリム、遊牧民のギャッベ、モロッコのラグ、そして日本製の緞通まで、店主が産地を巡って選び抜いた専門店が点在しています。一枚を選ぶ時間は、遠い土地の暮らしや物語に触れる、旅のようなひとときになります。
この記事では、東京でラグや絨毯を専門に扱う店を、編集部が公式や権威ある情報をもとに確認したうえで七軒紹介します。大型の総合家具店ではなく、店主の目利きや産地との関係で知られる独立系・個人経営の専門店を中心に選びました。ペルシャ絨毯の専門店から、遊牧民のラグ、トルコキリム、日本の緞通まで、産地も種類も異なる店を横断します。あわせて、素材や産地ごとの選び方、手入れの基本も整理しました。在庫が別保管の店や予約が必要な店もあるので、お目当てがある場合は事前に各店の公式や電話で確かめてから出かけると確実です。
ラグ・絨毯を専門店で選ぶ楽しみ
ラグは量販店でも手に入りますが、専門店で選ぶ価値は、一枚ごとの個性と、店主の知識にあります。手織りの絨毯は、産地や部族によって文様や色使いが異なり、織り手の手仕事の跡がそのまま表情になります。専門店では、その一枚がどこで、どんな背景で織られたのかを聞きながら選べるのが、量販店にはない体験です。多くの店が実際に自宅で敷き比べる貸し出しや、クリーニングにも対応しています。
手織りの絨毯は、丁寧に使えば何十年も、世代を超えて受け継げる耐久性を持ちます。ウールやシルクといった天然素材は、使い込むほどに艶が増し、味わいが深まります。産地を旅して直接買い付ける店主が多く、中間業者を通さないぶん、確かな品を納得の背景とともに選べるのも独立系ならではです。心惹かれた一枚は同じものに再会できないので、出会いを大切にするのが絨毯選びの醍醐味です。床に敷くだけでなく、壁に掛けて一枚の絵画のように楽しむ人も少なくありません。
手織りの絨毯には、織り手の暮らしや産地の風土が糸に込められ、同じ柄は二つとない一点ものの魅力があります。
ペルシャ絨毯の専門店
絨毯といえば、まず思い浮かぶのがペルシャ絨毯です。イランの各産地で織られる手織りの絨毯は、緻密な文様と発色の美しさで世界的に知られます。東京には、イラン出身のオーナーや、現地を旅する店主が営む専門店があり、産地や織りの違いを聞きながら一枚を選べます。まずはペルシャに強い二軒からです。
タギーペルシア絨毯
タギーペルシア絨毯は、二子玉川の駅からすぐの場所にあるペルシャ絨毯の専門店です。一九八九年の創業以来、オーナーがイランの現地で直接買い付けを続け、常時五千枚を超える在庫を誇ります。手織りのペルシャ絨毯を中心に、アンティークやオールド、ギャッベ、キリムまで、シルクやウールの一枚が幅広く揃います。
圧倒的な在庫量の中から、予算や部屋に合わせて相談できるのが、一族で営む個人経営の強みです。自宅で敷き比べる貸し出しや、クリーニングも常設しており、購入後も長く付き合えます。営業は月曜から土曜が十時半から二十時、日曜が十二時からで、年中無休です。ペルシャ絨毯を数多くの中からじっくり選びたい人にふさわしい一軒です。
ペルシャンファルシー
ペルシャンファルシーは、自由が丘の駅近くにあるペルシャ絨毯の専門店です。テヘランのバザール出身の代表が、一九九六年に事業を始め、二〇〇〇年に自由が丘へ店を構えました。クムやイスファハン、タブリーズ、カシャーン、ケルマン、ナインといった産地を明示して扱い、産地ごとの織りや文様の違いを学びながら選べます。
ペルシャ百パーセントの手織りを軸に、ギャッベやキリム、アンティークまで幅広く揃います。イランの商人ならではの目利きと、産地への深い知識が信頼を集めてきました。配達で店主が不在の場合もあるため、来店前に電話で確かめておくと確実です。営業は月曜から土曜が十時半から十九時半、日曜が十二時からで、年末年始のみ休みます。産地の背景まで理解して一枚を選びたい人に向く一軒です。
遊牧民とトライバルのラグ
緻密なペルシャ絨毯とは対照的に、遊牧民が自らの暮らしのために織ったギャッベやトライバルラグ、北アフリカのモロッコラグには、素朴で大らかな魅力があります。規則にとらわれない文様や、あたたかな色合いは、暮らしに寄り添う一枚として人気です。産地や部族の個性を楽しめる三軒を紹介します。
Layout 中目黒
Layout は、中目黒の目黒川沿いにあるラグの専門店です。「ラグから暮らしをデザインする」を掲げ、バイヤーがイランを旅して選び抜いたヴィンテージラグやトライバルラグ、ギャッベ、ペルシャを扱います。遊牧民が織った一枚の背景にある物語ごと語ってくれる、目利きのセレクトが持ち味です。
毎週日曜の夜にはインスタライブで一枚ずつ解説するなど、ラグの魅力を丁寧に伝える発信でも知られます。同じ産地でも織り手や年代でまったく表情が変わることを、実物を前に教えてくれるので、はじめてラグを買う人の学びの場にもなります。都内は青葉台の一店に、沖縄の二店を加えた小規模な展開で、量販チェーンとは一線を画します。営業は十一時から十九時で、水曜が休みです。物語のあるラグを、暮らしの視点で選びたい人にふさわしい一軒です。中目黒の街歩きとあわせて訪ねられます。
inie japan
inie japan は、麻布十番にあるラグの専門店です。二〇一七年に設立され、モロッコのベニワレンをはじめ、トライバルラグやギャッベ、キリムまで、北アフリカから遊牧民系のラグに軸足を置いています。ペルシャ絨毯を主力にする店が多いなかで、モロッコやトライバルを都心で見られる貴重な存在です。
ふかふかとした風合いのベニワレンや、部族ごとに異なる文様のトライバルラグは、現代のインテリアにもなじみやすく、一枚で空間の主役になります。白やグレーを基調にしたモロッコラグは、木の家具や観葉植物とも相性がよく、北欧風の部屋にも自然に溶け込みます。都心の麻布十番という立地で、暮らしに個性を加える一枚を探せます。営業時間や定休日は公式に明記がないため、訪問前に電話で確かめてから出かけてください。モロッコや遊牧民のラグに惹かれる人に向く一軒です。
cotowa
cotowa は、練馬の大泉学園にある、一軒家を使ったラグの専門店です。二〇二二年の開業以来、普通の住まいのような空間に、ギャッベやトライバル、キリム、ペルシャ更紗を並べ、実際の暮らしに敷いたときのイメージを確かめられます。雑貨以外は一点もので、店主の個人的なセレクトが貫かれています。
ショールームのような無機質な空間ではなく、生活の場そのもので見られるため、自宅に迎えたときの雰囲気がつかみやすいのが魅力です。イラン製を中心に、大らかな色と文様の一枚が揃います。営業は十一時から十八時で、月曜と金曜が休み、日曜は予約客のみの対応です。駐車場もあるので、車での来店にも向きます。暮らしの中でのラグの見え方を大切にしたい人にふさわしい一軒です。
キリムと日本の緞通
床に敷くだけでなく、壁掛けやクッションにも使われるトルコのキリム、そして海外の絨毯とは別の系譜を持つ日本製の緞通も、東京で出会えます。平織りのキリムの軽やかさと、国産緞通の端正な手仕事は、どちらも独自の魅力を放ちます。異なる二つの伝統を扱う二軒です。
青山キリムハウス
青山キリムハウスは、渋谷にあるトルコキリムを中心とした専門店です。二〇〇三年の開業以来、トルコの平織りのキリムを軸に、ペルシャやモロッコのラグ、クッションカバーまで扱っています。店内でトルコ茶やコーヒーを供する、バザールのようなもてなしの接客が、この店ならではの体験です。
自社のクリーニング工房を併設し、購入後の手入れまで任せられる点も心強いところです。キリムは軽く扱いやすく、壁に掛けたりソファに掛けたりと、床以外の使い方も楽しめます。営業は十一時から二十時で、年中無休ですが、住所の表記に情報源で違いがあるため、来店前に電話で確かめておくと確実です。トルコキリムの世界に触れたい人に向く一軒です。
山形緞通 東京ショールーム
山形緞通は、山形県山辺町の自社工房で織られる、日本製の手織り緞通のブランドです。東神田のショールームでは、海外の絨毯とは異なる、端正で精緻な国産の手仕事に触れられます。建築家やデザイナーとのコラボレーションによるモダンな意匠も手がけ、現代の住まいに合う緞通を提案しています。
一枚ずつ手で織り上げる緞通は、耐久性と踏み心地に優れ、長く使うほどに愛着が深まります。図柄や色をあつらえられる別注に対応することもあり、住まいや好みに合わせた一枚を相談できます。海外の絨毯ばかりのなかで、国産の緞通を選べる貴重な存在です。ショールームは予約優先制で、事前にメールや電話で来店を申し込む形になります。営業は平日が十時から十七時、土曜が十時から十五時で、日曜と祝日が休みです。日本のものづくりによる緞通を求める人にふさわしい一軒です。
ラグの選び方と手入れの基本
ラグを選ぶときは、まず敷く場所の広さと用途を思い浮かべると選びやすくなります。リビングの中心に敷くのか、ソファの前や足元に敷くのかで、必要な大きさは変わります。素材も使い勝手を左右し、ウールは丈夫であたたかく、遊び毛が落ち着けば長く使えます。シルクは光沢と繊細な文様が美しく、ギャッベは厚みとふっくらした踏み心地が魅力です。産地や種類によって表情が大きく違うので、部屋の雰囲気や手持ちの家具との相性を思い描きながら選ぶと失敗が少なくなります。
手織りの絨毯は、正しく手入れをすれば長く使えます。ふだんは毛並みに沿って掃除機をかけ、時々陰干しをして湿気を防ぎます。飲み物をこぼしたときは、こすらずに叩くように水分を取り、早めに対処するのが基本です。数年に一度、専門のクリーニングに出すと、風合いを保てます。多くの専門店がクリーニングや修理に対応しているので、購入した店に相談できると安心です。値段は産地や素材、大きさ、織りの緻密さによって幅が大きいため、予算の目安は店で確かめてください。手織りの一枚は、価格以上に長く使える価値があります。
ラグ店を巡るコツ
今回紹介した店は、中目黒や二子玉川、自由が丘、渋谷、麻布十番、東神田、大泉学園と、東京の各所に点在しています。ペルシャ絨毯を見たいならタギーペルシア絨毯やペルシャンファルシー、遊牧民のラグならLayoutやinie、cotowa、キリムや国産緞通なら青山キリムハウスや山形緞通というように、産地や種類で店を絞ると効率よく回れます。在庫を別に保管する店や、予約が必要な店もあるので、事前に連絡してから訪ねると、目当ての一枚をじっくり見られます。
ラグは実際に部屋に敷いてみないと分からない要素も多いので、敷き比べの貸し出しを利用したり、部屋の寸法や写真を持参して相談したりすると、失敗が減ります。気に入った店が見つかれば、入荷のたびに新しい一枚を見に通うのも楽しみ方のひとつです。ラグはインテリアや暮らしまわりの道具とも深く関わるので、住まいづくりとあわせて考えると、部屋の完成度が高まります。あわせてご覧ください。
インテリアスタイルガイドではラグを生かす部屋づくりを、東京の食器・テーブルウェア専門店と東京の観葉植物専門店では暮らしを彩る店を紹介しています。ラグとあわせて、住まいの心地よさを高める参考にしてください。
まとめ
東京のラグ・絨毯の専門店は、ペルシャ絨毯のタギーペルシア絨毯やペルシャンファルシー、遊牧民のラグを扱うLayoutやinie、cotowa、トルコキリムの青山キリムハウス、日本製の山形緞通まで、産地も種類もさまざまです。どんな部屋にしたいか、どの産地に惹かれるかを思い描いてから訪ねれば、店ごとの個性がはっきり見えて、一枚を選ぶ時間そのものが豊かになります。在庫や営業の形態は店によって異なるので、出かける前に各店の公式情報や電話で確かめると安心です。迎えた一枚は、足元から暮らしをあたため、年月とともに味わいを深めながら、長く寄り添ってくれるはずです。











