上野と御徒町のあいだに広がるアメヤ横丁は、古着を目的に東京を歩く人にとって、一度は通っておきたい区間です。JR上野駅から御徒町駅までの高架沿い、距離にしておよそ500メートルの範囲に店が密集しており、電車で移動しないまま一直線に歩き切れます。古着屋めぐりでは駅から駅への移動時間が意外と体力を削りますが、アメ横に関してはその負担がほとんどかかりません。半日あれば主要な店を一巡でき、気になった店へ戻って見直す余裕まで残ります。はじめて東京で古着を探す人にも、短い滞在時間で密度を稼ぎたい人にも向いた地形だといえます。
アメヤ横丁は、戦後の闇市を起源とする商店街として知られています。当時は米軍の放出品を扱う店が集まり、衣類や日用品が並ぶ場所として人の流れを集めました。名前の由来については、アメリカ由来の品物が多かったことから「アメリカ横丁」と呼ばれたという説と、飴を商う店が並んでいたことから「飴屋横丁」と呼ばれたという説の両方が語られており、どちらか一方に定まっているわけではありません。現在の店構えを眺めても、食品や雑貨、時計や貴金属といった商いが古着屋と隣り合っており、単一の業種で塗りつぶされていない雑多さがそのまま残っています。古着だけを目当てに歩いても、途中で全く別の商売の呼び込みが耳に入る、という環境です。
古着の街としてのアメ横の性格は、扱われるジャンルの並び方にあらわれます。軍から実際に放出された実物のミリタリーアイテム、年代を追って値付けされるヴィンテージデニム、そしてヨーロッパから買い付けられた古着が、同じ徒歩圏のなかに同居しています。ミリタリーならミリタリー、デニムならデニムと専門が分かれて立地している街は多いのですが、性格の違う三つの系統がひとつの通り沿いで完結する場所は、東京でもそう多くありません。戦後の放出品から始まった歴史の延長線上に、後から加わった買い付けの流れが重なった結果だと考えると、この混ざり方にも理由が見えてきます。
この記事では、アメ横とその周辺で古着を扱う5軒を、GUZ FASHION編集部が公開情報をもとに整理してまとめました。営業時間や定休日は変更されることがあり、とくに高架下の小規模な店では告知が店頭やSNSのみというケースもあります。掲載している内容は執筆時点で確認できた情報にもとづくものですので、遠方から向かう場合は、各店の公式サイトやSNSで最新の状況を確かめてから出かけてください。
アメ横の古着店
根津商店 — 1970年代アメリカ古着とデッドストックを軸にした店
東京都台東区上野6-4-12に店を構える根津商店は、1970年代のアメリカ古着を軸に据えた品揃えで知られています。デッドストックを中心に集めている点が特徴で、Levi’sやDickiesといった定番のデニムのほか、ベルボトム、レザーベスト、ムートンなどが並びます。年代の幅を広く取って数を揃えるのではなく、時代の輪郭がはっきりした一群にしぼり込んでいく組み立て方だと受け取れます。もともとは昭和レトロ雑貨を扱うところから出発し、そこから古着へと品揃えを移してきた経緯がある店で、年代ものの空気をまとめて扱ってきた蓄積が、現在の選び方にもつながっているように見えます。デッドストック中心という性格上、同じものが継続して置かれているとは限らず、そのときの入荷内容に出会いが左右される買い方になります。デニムの年代や個体差を突き詰めて見たい人であれば、アメ横を歩く前後で東京のヴィンテージデニム専門店もあわせて見ておくと、値付けの感覚を掴みやすくなります。営業時間はアメ横商店街の公式掲載で「お昼頃から17:00まで」とされており、展示会の都合で早仕舞いや休みが入ることもあると記載されています。定休日は月曜で、祝日にあたる場合は営業し、翌火曜が休みになります。閉店時刻が比較的早いうえに幅のある案内ですので、訪問前に公式サイトでその日の営業状況を確認しておくと安心です。なお、商店街公式に掲載されている電話番号はダミー値のため、電話での問い合わせ先は非公開として扱われています。
MAGAZINES 上野広小路店 — 約2万3千着を抱える大箱の古着店
東京都台東区上野4-8-1のMAGAZINES 上野広小路店は、1995年にオープンした古着店です。当初は2階のみの売り場でしたが、販売が好調だったことから1階と2階の両方が古着売り場になったという経緯を持ちます。扱う点数は約2万3千着とされ、ヴィンテージから普段使いできる古着まで、価格帯と年代の幅を広く取っているのが特徴です。品揃えの中心はヨーロッパの半袖柄シャツ、ミリタリー古着、1980年代の古着、アロハシャツなどで、系統をひとつにしぼらず複数の棚を並走させる構成になっています。高額なものでは30万円のリーバイスのパンツも扱っており、日常着として選べる価格のものと、資料的な価値まで見込んだ一本が同じ店内に共存しています。この幅の広さは、目的を決めずに入っても何かしら見つかる一方で、探すものが定まっていないと時間を使い切ってしまう性格でもあります。デニムを目当てにするなら、年代やモデルの見方をあらかじめ整理してから棚に向かうほうが、価格差の理由を納得して受け止められます。営業時間は11:00から20:00までで、年中無休です。閉店が20時と遅めですので、日中にほかのエリアを回ってから立ち寄る組み立てもできます。電話番号は03-3836-9565です。なお同じブランドの店として、上野4-8-16のアミューズ上野ビル1Fに「上野中通り店」があり、こちらの電話番号は03-3831-5894となっています。広小路店で目当てが見つからなかったときに、続けて足を延ばせる距離感です。
Jalana — 世界各国からのセレクトで新品と古着が混在する店
東京都台東区上野6-10-7、アメ横プラザ72・73号に入るJalanaは、アメリカ、ヨーロッパ、日本など世界各国からセレクトした商品を扱う店です。アメ横商店街の公式サイトには、他店では買いにくい商品を揃えているという趣旨の記載があり、定番を厚く積むというよりは、仕入れ先の広さで差をつける方針が読み取れます。軸になっているのはアメリカのワークウェアやアメカジで、そこに各国からのセレクトが重なる形です。ここで押さえておきたいのは、この店が新品と古着の混在する構成だという点です。古着だけが並んでいる前提で棚を見ていくと、状態の良さや価格の理由を取り違えることがありますので、気になった一点については、古着なのか新品なのかを確認したうえで判断するほうが確実です。逆にいえば、着古された表情のものと、下ろしたてのものを同じ場で比べられるということでもあり、ワークウェアの縫製やディテールが年代によってどう変わってきたのかを目で確かめたい人には、使い勝手のよい環境になります。営業時間はアメ横商店街の公式サイト掲載で10:30から20:00までとされ、定休日は第2水曜です。朝の時間帯から開いている店ですので、アメ横めぐりの起点として組み込みやすいほうだといえます。電話番号は03-3833-5603です。また、同じくJalanaとして上野6-10-1にも店舗を構えており、プラザ内の店と近い距離で二箇所を見て回れます。
CrunK VINTAGE CAFE — カフェを併設した高架下のアメリカンヴィンテージ
東京都台東区上野6-10-7、アメ横プラザB棟82号にあるCrunK VINTAGE CAFEは、JR上野駅と御徒町駅のどちらからも徒歩5分ほどの高架下に位置します。扱いの中心はアメリカンヴィンテージで、80年代から90年代のもの、ヴィンテージTシャツ、Harley-Davidson系のアイテムが並びます。特徴的なのはカフェを併設した複合店である点で、服だけを見て出る場所というより、腰を据えて過ごせる作りになっています。事前予約によって最大2時間の貸切営業にも対応しているとされ、店の使われ方そのものに幅を持たせている店です。ヴィンテージTシャツやバンドもののように、一点ごとにプリントや生地の違いを見比べる時間が必要なジャンルとは、この滞在型の性格が噛み合います。訪問にあたって注意したいのが営業時間です。編集部が公開情報を確認したかぎりでは、「金曜から日曜の15:00から20:00まで」とする情報と、「13:00から19:00まで」とする情報があり、内容が食い違っています。一致しているのは水曜が定休日という点だけですので、営業日と開店時刻については、そのまま鵜呑みにせず店のSNSで直前に確かめてから向かってください。電話番号は公開されていないため、問い合わせもSNS経由が現実的な手段になります。開いている時間帯が限られる可能性を踏まえると、アメ横めぐりの予定を組むときは、この店を先に押さえてから、ほかの店の順番を決めるほうが無駄が出にくくなります。
中田商店 — 実物放出品と復刻が並ぶミリタリーの老舗
東京都台東区上野6-4-10の中田商店は、1956年創業のミリタリーショップです。アメリカ軍やヨーロッパ各国軍の実物放出品を軸に据えており、看板といえる存在がフライトジャケットです。そのほかM-51パーカやレザージャケットも扱っており、アメ横におけるミリタリーの起点となってきた歴史をそのまま体現している店だといえます。買い物のうえで前提として知っておきたいのは、この店では実物の放出品、つまり中古のアイテムと、復刻として作られた新品が混在しているという点です。どちらが優れているという話ではなく、目的が違うものが同じ売り場に並んでいるということですので、着るために状態と価格の釣り合いを取りたいのか、年代の資料性まで含めて手に入れたいのかを自分のなかで決めてから棚に向かうと、迷いが減ります。実物と復刻では、タグの表記や縫製の仕様、素材の質感に違いが出ますので、値札だけでなくそのあたりを合わせて見ていくのが確実です。営業時間はアメ横商店街の公式サイト掲載で10:00から20:00までとされています。朝から夜まで通しで開いているため、時間の読みやすい店です。電話番号は03-3831-5154で、品揃えや取り扱いの詳細は公式サイトでも確認できます。ミリタリーを軸に東京を回るのであれば、東京のミリタリー古着店をあわせて見ておくと、店ごとの得意な年代や国の違いが整理しやすくなります。
アメ横で古着を選ぶときの実践ポイント
アメ横を歩くうえでまず意識しておきたいのが、高架下の店の作りです。間口が狭く、そのぶん奥や上へ向かって在庫を積み上げている店が多いため、通りから見える範囲だけでは品揃えの全体像が掴めません。外から覗いて判断せず、気になった系統を扱っていそうな店には入ってみる、という前提で回るほうが、結果として取りこぼしが減ります。逆にいえば一軒あたりに要する時間が長くなりますので、闇雲に全店を見ようとすると途中で集中力が切れます。
次に、店ごとの得意分野がはっきり分かれている点です。ミリタリーの実物放出品に強い店、アメリカ古着の年代ものを軸にする店、ヨーロッパからのセレクトや新品を併せ持つ店が、同じ通り沿いに混ざって並んでいます。この密度は利点でもあり、目的を決めずに歩くと情報量に押し流される原因にもなります。フライトジャケットを見たいのか、デニムの年代差を比べたいのか、柄シャツを一枚足したいのかを先に決めておき、それを扱う店から順に回るほうが、同じ時間で見られる中身が濃くなります。
そしてアメ横特有の注意点として、実物の軍放出品と復刻の新品が同じ棚に並ぶ店がある、という事情があります。見た目が似ていても、この二つは価格の根拠がまったく違います。見分けの手がかりになるのはタグと縫製で、実物であれば軍の仕様に沿った表記やサイズ記載が入り、ステッチの運び方や使われている生地にも年代なりの癖が出ます。復刻は当時の形を再現しつつ、現行の生産体制で作られているため、仕上がりの均質さがむしろ手がかりになります。判断がつかないときは、店の人に実物か復刻かを尋ねるのが早道です。
復刻をどう位置づけるかは、着るための一着を探すのか、年代そのものを手に入れたいのかで変わります。仕様の再現を突き詰めたブランドを一度知っておくと、実物を見るときの基準もはっきりしてきます。ミリタリーの復刻をどう捉えるかについては、Buzz Rickson’sの作りを踏まえておくと考えやすくなります。
まとめ
アメ横は、戦後の闇市を起源に持つという成り立ちの上に、ミリタリーの実物放出品、ヴィンテージデニム、ヨーロッパ古着という性格の違う系統が重なってきた街です。上野駅から御徒町駅までのおよそ500メートルという距離のなかで、それらをまとめて見て回れることが、ほかのエリアにはない強みになっています。今回取り上げた5軒も、アメリカ古着のデッドストックを軸にする店、点数で幅を取る店、世界各国からのセレクトを持ち込む店、カフェを併せ持つ店、そしてミリタリーの老舗と、それぞれの立ち位置が異なります。
一方で、高架下の小規模な店は営業時間の告知が一様ではなく、公開されている情報が食い違っていることもあります。遠方から向かうのであれば、公式サイトやSNSで営業日を確かめる一手間が、そのまま滞在時間の質につながります。東京のほかのエリアと比べながら回り先を決めたいときは、東京の古着屋ガイドもあわせて参考にしてみてください。











