PERFUME

Roja Parfums — Roja Dove が手掛ける英国貴族的ニッチ香水

Roja Parfums — Roja Dove が手掛ける英国貴族的ニッチ香水

Roja Parfums(ロジャ パルファム)は、London を拠点とする英国ニッチの代表格。創業者の Roja Dove は Guerlain で Senior Perfumer を務めた経歴を持ち、現在は自身の名を冠したブランドで、伝統的な香料の重ね方と現代的なラグジュアリーを両立させたフレグランスを発表し続けている。Creed や Amouage と並んで「貴族的」と評されることが多いが、Roja の場合はそこに London ならではの遊びと毒気が混ざる。価格帯はメンズ・レディースとも一本 5〜10 万円台が中心で、ニッチの中でもハイエンドに位置する一群だ。本稿では編集部が日常的に試香しているラインの中から、メンズ・レディース・オウドの主要ピースを取り上げ、誰がどんな場面で纏うと最も映えるかを書き残しておく。

Roja Dove という調香師 — Guerlain 元 Senior Perfumer

Roja Dove(ロジャ・ダヴ)は 1956 年 England 生まれ。1981 年に Guerlain へ入社し、長らく Senior Perfumer として勤務した後、2002 年に Harrods 内の「Roja Dove Haute Parfumerie」を立ち上げ、2004 年に自身の同名ブランド Roja Parfums を London で創設している。現在のブランド名表記は「Roja Parfums」だが、海外のリテーラーでは旧名の「Roja Dove」がそのまま流通名として残っていることも多く、検索時はどちらの綴りも有効だと考えてよい。

Roja の調香で特徴的なのは、現代ニッチによくある「ひとつの素材を強調する」アプローチではなく、Guerlain 時代に叩き込まれた伝統的な構造 — トップ、ハート、ベースを明確に層として組み上げる古典フランス調香 — を踏襲している点だ。サンプルを腕に乗せて 30 分・1 時間・3 時間と経過観察していくと、香りの表情がはっきり切り替わっていくのが分かる。最近のニッチでは「最初から最後までほぼ同じ香り」というものも珍しくない中で、この経時変化の作り込みは Roja の明確な個性だ。

使用される原料も Bulgaria 産ローズ、Madagascar 産イランイラン、Mysore 系統のサンダルウッド、天然の Oud といった具合に、各カテゴリで最上級グレードを揃える姿勢が明文化されている。本人がブランドの公式インタビューで「世界で最も高価な原料だけを使う」と発言したことが繰り返し引用されているが、実際の処方が公開されているわけではないので、ここは公式 PR としての言及にとどめておく。とはいえ、店頭で試香すると素材の質感は他のラグジュアリーニッチと比べても明らかに濃密で、価格に対する説明はつく。

Roja 本人は現在も London の Roja Dove Haute Parfumerie に在籍し、顧客のためのビスポーク調香(一本数百万円〜)も継続している。市販ラインはここから派生したアーカイブを軸に組まれており、つまり Roja Parfums のボトルは「ビスポークの簡易版」という見方も成立する。ニッチの中でも一段違うレイヤーに置かれている理由は、この出自にある。

最近のニッチでは「最初から最後までほぼ同じ香り」というものも珍しくない中で、この経時変化の作り込みは Roja の明確な個性だ。

ブランドの位置 — 英国貴族的ラグジュアリーニッチ

Roja Parfums がどこに位置するブランドかを掴むには、英国の他のニッチと比較するのが早い。Penhaligon’s や Floris は同じ London 拠点でも「王室御用達の老舗フレグランスハウス」の系譜で、価格帯はもう一段下、香りも比較的フォーマルで整っている。一方 Roja は、創業 20 年弱の比較的新しいブランドながら、価格と密度の両方で Creed、Amouage、Clive Christian と同じハイエンドニッチの棚に並べられることが多い。

編集部の印象としては、Roja は「貴族的」と「享楽的」が同居しているのが面白い。Diaghilev のように 1920 年代パリの社交界を喚起する古典的な香りもあれば、Risque や Danger のように、名前のとおりわずかに毒のあるセクシーさを前面に出した処方もある。Creed が「王室・軍人系の品格」、Amouage が「中東のエピック」だとすれば、Roja は「夜の London を歩く貴族」という比喩がしっくりくる。

展開はオードパルファム(EDP)、パルファム、エクストレ ド パルファム(Extrait de Parfum)の三段階で、香りの濃度と価格に応じて選べる構成。コレクションは大きく分けて、定番のシグネチャーライン、Aoud(オウド)コレクション、Haute Luxe と呼ばれる最上位ライン、そしてニュートラル(ユニセックス)寄りの Elysium / Enigma / Elixir 系がある。日本国内では 伊勢丹 新宿本店の サロン ド パルファン や一部のオンラインリテーラーで取り扱いがあり、並行輸入を含めればさらに選択肢は広がる。

Roja を初めて試す人に対して編集部が伝えているのは、「ラインの中で香調の幅が極端に広いので、ブランドイメージだけで一本目を決めない方がよい」ということだ。Elysium の透明感と Diaghilev の重厚感は、同じブランドとは思えないほど違う。試香を取り寄せられる環境なら、まずは 2〜3 種をパラレルに試して、自分の生活シーンに合う密度を探るのが現実的だ。世代別のシグネチャー選びの観点は別記事の シグネチャーセント・ガイド でも整理している。

代表メンズ — Elysium / Vetiver / Risque

Roja のメンズで最初に名前が挙がるのは Elysium、Vetiver、Risque の三本だ。性格はそれぞれ全く違うので、ここで対比的にまとめておく。

Elysium Pour Homme(Parfum / Cologne)は 2017 年の発売以降、Roja のメンズで最も人気のあるアイテムのひとつ。グレープフルーツとブラックカラントの瑞々しいトップから、ジャスミン・シダーの中間、ベースにアンバーグリスとムスクが敷かれた構造で、いわゆる「シトラス × ウッディ × ムスク」の現代的な王道形を、Roja の素材で組み直した一本という印象だ。ニッチにありがちな尖り方をしておらず、ビジネス・カジュアル双方で着回せる懐の広さがある。Elysium 単体の細かいレビューは Roja Parfums Elysium レビュー にまとめているので、購入候補に入れている人はそちらも参照してほしい。

Vetiver(Vetiver Pour Homme)は、Roja の中でも特にクラシックな男性像を狙った処方。トップにベルガモットとレモン、ハートにラベンダー・ローズ、ベースに Haiti 産ベチバーと Mysore 系サンダルウッド、そしてレザーがしっかり敷かれており、Guerlain Vetiver や Creed Original Vetiver と同じ系譜にありながら、ベース帯のレザー感とサンダルウッドの厚みで Roja らしい高級感を演出している。年齢層としては 40 代以降のスーツに合う密度で、20 代が日中に振ると重く出る可能性がある。

Risque Pour Hommeは、その名のとおり「リスキー」な方向性を狙ったメンズ。ラベンダーとカルダモンのトップから、シプレ調のオークモス・パチョリを軸に、ベースでアニマリックなノートが立ち上がる構造で、フォーマルというよりは夜のレストランやバー、特に女性同伴の場面で映える香り。第一印象寄りのフレグランス選びの方法論は 30 代メンズの第一印象を底上げするフレグランス論 でも触れているが、Risque はその文脈の上限近くに位置する。

三本を並べると、Elysium が「日常着回し」、Vetiver が「フォーマル・年齢を上に見せる」、Risque が「夜・色香」と棲み分けがはっきりする。Roja でメンズ一本目を選ぶなら Elysium、二本目に Vetiver、三本目に Risque、という順番が編集部の定番アドバイスだ。

代表レディース — Danger / Diaghilev

レディースで Roja を象徴するのが Danger と Diaghilev の二本。どちらも「品のある官能」を軸にしているが、表現の方向が真逆なので対比で覚えると分かりやすい。

Danger Pour Femmeは、サフラン・ピンクペッパーのトップから、ローズとジャスミンのフローラルハート、ベースにアンバーとパチョリ、ウードがほのかに敷かれた処方。名前は強そうだが、実際に肌に乗せると意外なほどエレガントで、決して攻撃的ではない。20 代後半〜40 代の、シルクやレザーを着こなす女性に合う密度感だ。サフランの効き方が秀逸で、ニッチに慣れていない人にも「これは普通のフローラルと違う」と分かる導入になる。

Diaghilev(ディアギレフ)は、Roja のラインの中でも別格に位置するクラシック香水。20 世紀初頭にパリで活躍した Ballets Russes の興行主 Sergei Diaghilev に捧げられた一本で、シプレ・フローラル・レザーの古典構造を、現代のリフォーミュレーション規制下で再現するために組まれている。価格は通常ラインの倍近く、Haute Luxe コレクションに分類される高級ピース。重厚なローズとオークモス、シビルなレザーが折り重なる香りで、年齢を選ぶし、TPO も選ぶが、夜のオペラやフォーマルディナーで真価が出る。「香水で時代を着る」という表現が似合う数少ない処方だ。

二本の使い分けとしては、Danger が「日常から夜まで広く使えるセクシーフローラル」、Diaghilev が「特別な日のための儀式的な一本」。Roja のレディースを開拓するなら Danger から入り、世界観に納得した段階で Diaghilev に進む順序が、価格的にも香り的にも無理がない。

オウドコレクション

Roja Parfums を語る上で外せないのが Aoud コレクションだ。中東のオウド(沈香)を主軸に据えたシリーズで、「Aoud」「Amber Aoud」「Musk Aoud」「Rose Aoud」など、ベース素材を変えた複数のバリエーションが揃っている。Roja の Aoud は、Amouage や Mancera のような「正面突破型のオウド」と比べると、トップとハートで一度ローズやアンバー、サンダルウッドを噛ませてからオウドのベースに着地する構造を取っており、いきなり強烈なオウド香に殴られない設計になっている。

そのため、オウド初心者でも比較的入りやすい一方で、ベースにきちんとオウドが残るので「オウドを纏っている」という満足感は十分に得られる。中東の伝統的なオウド使いをそのまま再現するというよりは、英国ニッチの感性でオウドをラグジュアリー素材として再解釈した、というのが Roja Aoud コレクションの位置付けだ。

並行輸入や代理店経由で「Roja Dove」表記の旧ボトルが市場に出回ることもあるが、中身は同一処方の場合が多い。ラインを横断して検索する場合はブランド名の両表記で当たるのが現実的だ。

編集部の見立て

Roja Parfums は、ハイエンドニッチの中でも「現代の処方技術で古典構造をやり直す」という、極めて贅沢な立ち位置にあるブランドだ。Creed や Amouage と同じ価格帯で迷っている人に対して、編集部は「香りの輪郭がくっきりしていて、何を纏っているかが分かりやすいのが Roja」と説明している。Creed が静かな品格、Amouage が物語性、Roja が構造の明快さ、というのが大まかな住み分けだ。

一本目に薦めるなら、メンズは Elysium、レディースは Danger。二本目以降は、フォーマル領域に踏み込むなら Vetiver / Diaghilev、夜の色香を狙うなら Risque、素材の濃密さを味わうなら Aoud コレクションへ、という順序で広げていけば、Roja の世界観を破綻なく取り込める。価格は決して気軽ではないが、纏った時の手応えと持続時間を考えれば、ニッチを本気で揃え始めた人にとって投資する価値のある棚だと考えている。

編集方針について — この記事は GUZ FASHION 編集部のPERFUMEカテゴリの編集方針に沿って制作されています。

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