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Xerjoff — イタリア発、宝飾品のように仕立てる高級ニッチ香水

Xerjoff — イタリア発、宝飾品のように仕立てる高級ニッチ香水

Xerjoff (ジェルジョフ) は、2003 年にイタリア・トリノで Sergio Momo が立ち上げたニッチフレグランスメゾンです。香水瓶そのものが宝飾品のような佇まいを持ち、中身にはグラース産のローズや天然オウドが惜しみなく注がれる。”ハウス” というより “アトリエ” と呼びたくなる規模で、ボトル装飾・木箱・キャップに至るまでイタリア国内の職人と協業しています。本稿では Casamorati、Shooting Stars、Oud Stars、そして Don や Aqua Regia を擁するハイエンドラインまで、Xerjoff という宇宙を編集部の視点で読み解いていきます。

Xerjoff と Sergio Momo — 2003 創業、トリノのアトリエ

Xerjoff のスタート地点は、トリノで宝飾デザインと香りの世界を行き来していた Sergio Momo の個人的なコレクション欲でした。「自分のためにつくる究極のオウド香水」を起点に、2003 年に Oud Stars コレクションをリリース。立ち上げ当初はラグジュアリーホテルやプライベートサロン経由でしか手に入らない、ほぼ会員制に近い流通形態を採っていました。日本に正規ディストリビューターが入ったのは 2010 年代後半で、それまでは海外サロンか並行輸入が主な入手経路だったメゾンです。

創業者である Sergio Momo は、自身を「香水師」ではなく「アートディレクター」と位置づけ、調香そのものは外部のマスターパフューマーや原料サプライヤーと共同で進めるスタイルを取ります。グラース、フィレンツェ、ボンベイの香料工房と直接取引し、原料の段階から品質と濃度を握る。出来上がったエッセンスは、トリノ郊外のアトリエでハンドアセンブルされ、刻印入りのキャップが取り付けられて出荷されます。「マスプロダクションの対極にある産業デザイン」と言い切れる体制で、これが価格帯の高さの背景にもなっています。

ボトルそのものも Xerjoff の重要なシグネチャーです。Casamorati の彫りガラス、Shooting Stars の重厚な金属キャップ、Oud Stars の漆塗りを思わせる艶やかなフラッシュ。香水を語る前にまず “オブジェ” として成立しているのが特徴で、ヴァニティに置いた瞬間に部屋の空気が変わるたぐいの製品群です。トップノートのインパクトよりも、肌に乗せてから 30 分、1 時間、3 時間と表情を変えていくドライダウン設計が好まれており、ニッチ香水を一通り経験したユーザーが最終的にたどり着くメゾンの一つに数えられます。

“トップが派手でも構わないが、ラストはあくまでエレガントに” という設計思想は、後述する Casamorati のローズ系にも、Shooting Stars の南国系にも共通します。ブランドの方向性をより俯瞰したい読者は シグネチャーフレグランスの選び方ガイド も併読してください。

「自分のためにつくる究極のオウド香水」を起点に、2003 年に Oud Stars コレクションをリリース。

Casamorati コレクション — 18 世紀イタリア貴族の香り

Casamorati は、19 世紀にボローニャで活動していた実在の香水メゾン “Casa Morati 1888” にインスピレーションを得たコレクションです。Xerjoff はこの古い名を譲り受け、ヴィンテージ香水の処方を現代の原料で再構築するという、ブランドの中でも特に文学的なライン。彫刻が施されたガラスボトル、貴族のサインを模したエンブレム、深紅やゴールドの外箱。プロダクトデザインは “ロマネスクの装飾を香水瓶に落とし込んだ” 趣で、贈答需要が非常に強いシリーズでもあります。

代表作として真っ先に挙がるのが Bouquet IdealeMefisto、そしてシリーズ屈指のロングセラー Dama Bianca、さらに圧倒的人気を誇る Lira。Lira はキャラメル・ラベンダー・ベルガモットの三層構造で、グルマンとフローラルの境界を縫うように香り、女性人気が非常に高い一本です。Casamorati は基本的にユニセックス設計ですが、Lira と Dama Bianca はフェミニン寄り、Mefisto は爽やかなプチグレンとイチジクのリーフが効くマスキュリン寄りという棲み分けがあります。

そしてシリーズの中で抜きん出た知名度を持つのが Erba Pura。シチリアのオレンジを思わせるシトラスのジューシーさ、ムスクとアンバーの粘り、ほのかな煙草のニュアンス。地中海の太陽を一瓶に閉じ込めたような香りで、Xerjoff 初心者がブラインドで買っても外しにくい一本として定評があります。性別を問わず合わせやすく、夏のリネンシャツにもタキシードにも馴染む懐の深さが魅力です。

Casamorati の価格帯はメインラインに比べてやや手の届きやすい設定ですが、それでも 100mL で数万円。容量に対する単価ではなく “ボトルごと買う体験” として捉えるのがこのラインの正しい付き合い方だと、編集部では考えています。

Shooting Stars コレクション — Naxos と 40 Knots

Shooting Stars は、Sergio Momo が世界を旅して出会った場所・体験・記憶をテーマにした、Xerjoff の中で最もストーリーテリングが強いコレクションです。ギリシャのナクソス島、地中海の風、トロピカルなマリンノート、北アフリカのスパイスマーケット。香りそのものが旅行記として機能するように設計されており、ボトルには重厚な金属キャップとレリーフ装飾が施されています。

シリーズの顔と言える Naxos は、ギリシャのナクソス島を舞台にした蜂蜜・タバコ・ラベンダー・トンカ豆の構成。Tom Ford の Tobacco Vanille と比較されることが多い一本ですが、Naxos の方がタバコの煙感が穏やかで、蜂蜜の甘さが前面に出るぶん日本人の肌でも重くなりすぎません。秋冬のジャケットスタイルに合わせる夜の香りとして、編集部でも常備リストに入っています。

一方、ブランド屈指のフレッシュ系として位置づけられているのが 40 Knots。タイトルは航海用語で時速約 74km を意味し、潮風を切って進むヨットの甲板をイメージしたマリン・シトラスです。アンバーグリスのほのかな塩味、ベルガモットの透明感、シダーウッドの乾いた骨格。一般的な “夏のマリン系” にありがちな合成カロンの単調さがなく、ニッチ価格帯ならではの陰影があります。

Shooting Stars には他にも、ラズベリーとサフランの強烈な甘さで一世を風靡した Coro や、ロシアの白夜をテーマにした Uden、ヴァニラとパチョリの濃密な Fars など、いずれも単体で物語が完結するラインナップが並びます。Xerjoff を 2 本目以降で揃えていくユーザーは、Casamorati から入って Shooting Stars に進むパターンが多い印象です。Parfums de Marly や Roja のロイヤル路線とは異なる “旅と記憶” のベクトルを持っており、対比して語ると面白いコレクションです (関連: Parfums de Marly ガイド)。

Oud Stars コレクション — Alexandria II が示すオウドの作法

Oud Stars は、冒頭で触れた通り Xerjoff の原点とも言えるコレクションです。創業者 Sergio Momo がもともと “良質なオウドを軸にした香水を自分で作りたい” という動機からブランドを立ち上げたという経緯があり、ラインナップ全体に上質な天然オウド・サフラン・ローズが惜しみなく配されています。中東の伝統的なアター文化と、ヨーロッパのオードパルファン文化をかけ合わせたような独自のポジションを築いています。

その象徴が Alexandria II。グラース産ローズ、サフラン、ハニー、オウドが折り重なる構成で、最初の一吹きでは蜂蜜の甘さが立ち、時間が経つにつれてオウドのスモーキーさとローズのフルーティな質感が前に出てきます。中東系のオウド香水にありがちな “薬っぽさ” “ガソリン的なエッジ” は控えめで、西洋の感覚にチューニングされたオウドという表現がしっくりくる一本です。秋冬の夜、ウールのコートに乗せたときの存在感は他のメゾンでは代替が難しいレベル。

同シリーズには他にも、ローズとパチョリを軸にした Empire Collection の Empress や、より男性的なオウドが立ち上る Zafar などがあります。Oud Stars はオウド初心者には少し敷居が高く感じられるかもしれませんが、Alexandria II は “西洋的に整えられたオウド入門” として位置づけやすい一本です。Roja Parfums のオウド系と聞き比べると、それぞれの哲学の違いがよく分かります (関連: Roja Parfums ガイド)。

ハイエンドコレクション — Don / Mefisto / Aqua Regia

Xerjoff の中でもさらに上のグレードに位置づけられるのが、いわゆるハイエンドの単独作品群です。コレクション横断で散らばっているため一枚岩のラインではないものの、共通するのは “一本でブランドの顔になれる” 濃度と完成度。容量に対する単価が一気に跳ね上がるゾーンであり、購入には覚悟が要ります。

マスキュリン側の代表格が Don。レザー、煙草、ナツメグ、サフラン、ベチバーが層を成し、ピンストライプのスーツに溶け込むような落ち着いた色気を放ちます。”ダンディ” という言葉が陳腐に聞こえないギリギリの設計で、ビジネスシーンでも違和感が出にくい数少ないニッチ香水の一つです。

一方、Casamorati 名義ながら別格の存在感を持つのが Mefisto。プチグレン、ジャスミン、イチジクのリーフ、ラベンダーが構成する清潔感のあるアロマフゼア系で、爽やかさと色気を同居させる難題に対する Xerjoff なりの解答です。Mefisto Gentiluomo というよりオリジナル版を選ぶと、Xerjoff のフレッシュ側の到達点が体感できます。

そしてここ数年で一気に存在感を増したのが Aqua Regia。シシリアのレモン、ベルガモット、グレープフルーツのシトラスシャワーから、徐々にイチジク・ベンゾイン・アンバーへと落ち着いていく構成で、トップの華やかさが圧倒的。”夏の Xerjoff” を一本だけ選ぶならまず候補に挙がる位置づけで、近年の Xerjoff ブームを牽引した一本でもあります。

このゾーンになると、価格は 100mL で 7-10 万円台、コレクター向けの限定版では数十万円という世界です。香水というよりは時計や万年筆と同列の “嗜好品” として、何年もかけて 1 本ずつ揃えていく付き合い方が向いています。

編集部の見立て — Xerjoff をどう買うか

Xerjoff は、ニッチ香水を一通り通ってきた人がたどり着く “最後のメゾン” の一つです。価格帯はメインラインで 5-8 万円、ハイエンドで 7-10 万円超、限定版になると桁が変わる。初めての一本としては、Casamorati の Erba Pura か、Shooting Stars の Naxos / 40 Knots あたりが入りやすいと編集部では考えています。失敗しにくく、かつ Xerjoff らしい “ボトル所有の喜び” を最初から味わえるラインだからです。

2 本目以降は、季節と TPO で分けるのが現実的です。秋冬の夜には Naxos や Alexandria II、春夏の昼には Erba Pura や Aqua Regia、ジャケットを羽織るシーンには Don や Mefisto。Xerjoff は強い香りが多いので、付け方は手首ではなくシャツの内側や髪の毛、コートの裏地に 1 プッシュ程度に抑える方が周囲との関係を保ちやすいでしょう。並行輸入には偽造品も流通しているため、購入は国内正規取扱店か、ロット番号が確認できる信頼できる中古ショップを推奨します。容量で迷ったら、まずは 50mL や 30mL のサイズから入って、肌に合うことを確認してから 100mL の本格的なボトルに移行するのが安全策と言えます。

編集方針について — この記事は GUZ FASHION 編集部のPERFUMEカテゴリの編集方針に沿って制作されています。

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