設計思想 — ヴィンテージ布のリサイクルで米国の手仕事を更新する10年
Bodeは、2016年にEmily Adams Bode Aujla(1989年米国ジョージア州アトランタ生まれ)が米国ニューヨークで立ち上げたハウスです。米国の手仕事の伝統(キルト、布のリサイクル、農家の作業着、19世紀から20世紀前半の家庭の手芸)を現代の紳士服に翻訳する世界観で知られる、米国の現代を代表する若手の独立系ハウスの一つとなりました。
ハウスを象徴するのは、米国の手仕事の伝統への深い愛着と、ヴィンテージ布のリサイクルを基軸とする制作の手法です。Emilyは若いころから米国の蚤の市と地方の古道具店を訪ね、19世紀から20世紀前半の米国の家庭で作られたキルト、ハンカチ、テーブルクロス、シーツ、農家の作業着などのヴィンテージ布を直接買い付け、その布を解体して新しい紳士服に再構成する制作の手法を10年にわたって続けてきました。1着の紳士服のなかに複数の異なるヴィンテージ布の生地が組み合わされる構造で、欧米とアジアの紳士服愛好家のあいだで「米国の手仕事の伝統の現代の担い手」として強い支持を集める存在となります。
経歴の節目として、2017年2月にニューヨーク・ファッションウィーク:メンズで初めてショーを行った女性デザイナーとなり、2019年にCFDA Emerging Designer of the Year(米国服飾デザイナー協会の新興デザイナー部門の賞)を受賞しました。続いて2021年と2022年に、CFDA Menswear Designer of the Year(米国紳士服部門の最高賞)を2年連続で受賞しています。
ハウスの経営の特徴は、徹底的な「独立」の姿勢です。欧米の主要な服飾持株会社(LVMHやKeringなど)の傘下に入らず、Emily本人とパートナーのAaron Aujlaが中心となって独立経営を続けています。Aaron Aujlaは、Benjamin Bloomsteinとともに2017年に家具・インテリアデザインスタジオGreen River Project LLCを共同設立した人物で、Bodeのニューヨーク・ロサンゼルス・パリ・東京の各店舗の空間設計を手がける独自の家族的な経営の構造で、Bodeの世界観は服飾と空間の両方で10年にわたって築き上げられてきました。
主要な意匠は、ハウスの代名詞となった「キルトのジャケット」(19世紀から20世紀前半の米国の家庭で作られたキルトを解体して仕立てたジャケット)、「パッチワークのシャツとパンツ」(複数の異なるヴィンテージ布を組み合わせた代表作)、米国の伝統的なチェーンステッチ刺繍を施したジャケットなどです。
創業から現代まで — Bodeの歩み
1989-2016 Emily Adams Bode AujlaのアトランタとParsons
Emily Adams Bode Aujlaは1989年に米国ジョージア州アトランタで生まれました。若いころから米国の手仕事の伝統に深く触れる環境で育ち、スイスでも学んだ経験を持ちます。
Emilyは米国ニューヨークのParsons School of DesignとEugene Lang College of Liberal Artsで、紳士服デザインと哲学の学士号・美術学士号を並行して取得し、2013年に卒業しました。在学中から米国の手仕事の博物館(Philadelphia Museum of Art Costume Society、American Folk Art Museumなど)で研究を続けています。哲学を並行して学んだ背景は、単なる意匠の模倣ではなく、1枚の古布が辿ってきた持ち主の暮らしや時代背景まで含めて「物語」として服に落とし込むBodeの制作姿勢に色濃く表れています。
2016 創業 — ニューヨークで自身のハウスを始める
2016年、Emily Adams Bode Aujlaはニューヨークで自身のハウスBodeを始めました。創業時の事業はニューヨークのロウアー・イースト・サイドの小さなアトリエで、Emily本人が米国の蚤の市で直接買い付けたヴィンテージ布を解体して仕立てた数着の紳士服から始める、極めて小規模な営みでした。
創業から数年で、Bodeは米国の高級服飾の販売店Bergdorf Goodman、Dover Street Market(Comme des Garçonsの販売店)、Mr. Porter(英国の紳士服の販売サイト)などでの取り扱いを広げ、2017年2月にはニューヨーク・ファッションウィーク:メンズで初めてショーを行った女性デザイナーとなり、米国の現代の若手を代表する独立系ハウスとしての地位を急速に築き始めました。男性中心だったメンズウェア専門のショー形式に女性デザイナーとして初めて立った出来事は、当時の米国服飾業界誌でも異例の出来事として取り上げられています。
2018-2020 賞レースでの評価の積み重ね
2018年、EmilyはCFDA/Vogue Fashion Fundで次点(runner-up)となりました。2019年にはCFDA Emerging Designer of the Yearを受賞し、同年のLVMH Prizeでもファイナリストに選出されています。2020年にはWoolmark Prizeのファイナリストとなり、米国紳士服部門の最高賞にもノミネートされましたが、この年の受賞には至りませんでした。
2021-2022 CFDA Menswear Designer of the Year 2年連続受賞
2021年、Emily Adams Bode AujlaはCFDA Menswear Designer of the Year(米国紳士服部門の最高賞)を受賞しました。翌2022年にも同賞を連続受賞し、2年連続でのトロフィー獲得は米国の現代の服飾業界誌で大きく取り上げられる出来事となりました。
店舗展開 — ニューヨーク・ロサンゼルス・パリ・東京
Bodeはニューヨークに2店舗、ロサンゼルスとパリにそれぞれ1店舗を構えてきました。パートナーのAaron Aujlaが共同設立したGreen River Project LLCが各店舗の空間設計を手がけ、Bodeの世界観を服飾と空間の両方で築き上げています。Green River Projectは家具や内装をアート作品のように一点ずつ手作業で仕立てるスタジオで、Bodeのニューヨークの自宅の内装も同スタジオが手がけました。そして2026年2月、東京・代々木上原にアジア初となる旗艦店をオープンしました。
2020年代の継続的な拡大と独立経営の継続
2020年代に入ると、Bodeは欧米とアジアの高級服飾の販売店での取り扱いを継続的に広げる一方、大量生産のトレンドブランドとは一線を画す独立経営の姿勢を貫き続けています。欧米の主要な服飾持株会社の傘下に入らず、Emily本人とAaron Aujlaが経営の中核を担い続ける独立系ハウスとしての立ち位置を保ち続けてきました。
ハウスは服飾の事業と並行して、家庭用品(キルトと刺繍の代表作をクッションやテーブルクロスなどのホームウェアに展開するライン)など、世界観を多角的に展開する事業の柱を2020年代を通じて広げてきました。仕入れられるヴィンテージ布という有限の素材を軸にする以上、大量生産のハウスとは根本的に異なるペースでの緩やかな成長を志向している点も、Bodeの独立経営を特徴づけています。
Bodeを作った人々
Emily Adams Bode Aujla(創業者、2016-現在)
1989年米国ジョージア州アトランタ生まれ。米国ニューヨークのParsons School of DesignとEugene Lang College of Liberal Artsで紳士服デザインと哲学を学び、2013年に卒業した後、2016年にニューヨークでBodeを立ち上げた人物です。2017年にニューヨーク・ファッションウィーク:メンズで初めてショーを行った女性デザイナーとなり、2019年にCFDA Emerging Designer of the Year、2021年と2022年にCFDA Menswear Designer of the Yearを受賞しました。
Aaron Aujla(パートナー、空間設計の中心)
Benjamin Bloomsteinとともに2017年に家具・インテリアデザインスタジオGreen River Project LLCを共同設立した人物です。Emily Adams Bode Aujlaのパートナーとして、Bodeの各旗艦店とニューヨークの自宅の空間設計を手がけ、ハウスの世界観を服飾と空間の両方で築き上げる独自の構造の中核を担っています。
主要アイテム — Bodeの語彙
キルトのジャケット
ハウスの代名詞となった代表作です。19世紀から20世紀前半の米国の家庭で作られたキルトを解体して仕立てたジャケットで、1枚のジャケットのなかに1枚のヴィンテージキルトの記憶と模様がそのまま継承される、「手仕事の伝統の継承」を体現する一着です。同じ生地は二度と手に入らないため、色柄違いのジャケットが1枚ずつ異なる物語を宿す一点物として仕立てられました。
パッチワークのシャツとパンツ
複数の異なるヴィンテージ布(ハンカチ、テーブルクロス、シーツ、農家の作業着)を組み合わせて仕立てた、ハウスのもう一つの代名詞となった作品です。1枚として同じ組み合わせが存在しない一点物の性格を持ちます。米国南部の伝統的なチェーンステッチ刺繍を施したモデルもあり、手仕事の技法を現代の紳士服の意匠として蘇らせる姿勢が随所に表れる一着です。
中古市場でのBode
Bodeの中古市場は、複数の軸で形成されています。キルトのジャケット、パッチワークのシャツとパンツ、チェーンステッチ刺繍のジャケット――これらが日本国内でも取引されています。
日本ではフリマアプリ、メルカリ、Vestiaire Collective、ZOZO USED、それから原宿・渋谷・青山の古着店での流通が中心です。2026年2月の東京旗艦店オープン以降、国内での認知はさらに広がりつつあります。一点物の性格が強いハウスゆえに、中古市場では同一デザインでも個体差が大きく、状態や柄の希少性によって相場が大きく変動します。相場は出品状況で変動するため、購入時は柄や刺繍の状態も含めて個別に最新価格を確認することをおすすめします。
まとめ — 10年の歩み、ヴィンテージ布からCFDA連続受賞と東京旗艦店まで
Bodeの歩みを10年でまとめると、次のような節目に整理できます。1989年にEmily Adams Bode Aujlaが米国ジョージア州アトランタで生まれ、ニューヨークのParsons School of Designで紳士服デザインと哲学を学び2013年に卒業しました。2016年にニューヨークで自身のハウスBodeを立ち上げ、2017年にニューヨーク・ファッションウィーク:メンズで初めてショーを行った女性デザイナーとなり、2019年のCFDA Emerging Designer of the Yearを経て、2021年と2022年にCFDA Menswear Designer of the Yearを2年連続で受賞しました。パートナーのAaron Aujlaが共同設立したGreen River Project LLCとともに店舗展開を進め、2026年2月には東京・代々木上原にアジア初の旗艦店をオープンしています。
中古市場ではキルトのジャケットとパッチワークのシャツ・パンツを軸に日本国内でも取引され、米国の手仕事の伝統を現代に継承するハウスとして支持を集めてきました。Bodeの10年に及ぶ歩みは、「アトランタ生まれのデザイナーが、ヴィンテージ布の解体と再構成という手法で米国紳士服の歴史を更新し、東京にまで店舗を広げた事例」として、今後も参照され続けるはずです。











