FASHION

00年代ファッションリバイバル — Y2Kとアクセサリーの再ブーム

ローライズデニムや厚底ブーツ、カラフルなロゴなどY2Kスタイルとヴィンテージ古着のイメージ

ファッションは、20年から30年の周期で過去が甦ると言われます。70年代のフレアパンツが90年代後半に復活し、Y2Kと呼ばれる2000年代初頭のスタイルが2020年代に再評価される。この周期性を生むのは、消費者の世代交代と、当時を知らない若者にとっての新鮮さです。本記事では、ファッションリバイバルの仕組みを歴史的に整理しながら、ヒップホップの流れやY2K、グランジ、80年代の装い、そして地域ごとの文化との関わりまで、「歴史を踏まえて今日何を選ぶか」という視点で読み解いていきます。

リバイバルが20〜30年周期で起きる理由

ファッションのリバイバルが20年から30年の周期で起こるのには、はっきりとした理由があります。親世代が着ていた服は、思春期の子どもにとっては野暮ったく映ります。ところが、親世代が手放した服は、さらに下の世代にとってはまったく新鮮なものに見えます。この心理的な距離感が、リバイバルの引き金になります。70年代のフレアジーンズが90年代終盤にブリトニー・スピアーズらによって甦り、90年代のグランジやY2Kが2010年代後半から2020年代にかけてZ世代に再発掘され、80年代のパワースーツやショルダーパッドが2020年代のモードに戻ってきたのも、この周期で説明できます。

リバイバルで重要なのは、当時をそのまま完全にコピーするのではなく、現代の素材やシルエットで再解釈される点です。たとえば90年代のカルバン・クラインが体現したミニマリズムは、現代ではザ・ロウやケイトといったブランドによって再解釈されています。同じローライズデニムでも、当時よりも生地や縫製が洗練され、今の体型や着こなしに馴染むかたちへと更新されていく。過去をなぞるのではなく、過去を素材にして新しいものを生み出す。古典と現代を掛け合わせるこの感覚こそ、ファッションを進化させ続けるエンジンでした。

リバイバルで重要なのは、当時をそのまま完全にコピーするのではなく、現代の素材やシルエットで再解釈される点です。

ストリートとヒップホップという源流

現代のモードを語るうえで欠かせない源流のひとつが、ヒップホップとファッションの結びつきです。1980年代後半から、ストリートは独自の進化を続けてきました。1980年代にはラン・ディー・エム・シーが、アディダスのスーパースターと太い金のチェーンを合わせたスタイルを確立します。1990年代には2パックやノトーリアス・B.I.G.が、オーバーサイズのTシャツやサイドラインの入ったジャージを定着させました。

2000年代に入ると、ジェイ・Zやファレル・ウィリアムスが、NIGOの手がけるア・ベイシング・エイプをアメリカに広め、日本のストリートが世界へと羽ばたきます。カニエ・ウェストがルイ・ヴィトンのスニーカーを履き、ハイブランドとストリートを結びつけたのもこの時期でした。そして2010年代、オフホワイトのヴァージル・アブローがルイ・ヴィトンのメンズで黒人として初のクリエイティブディレクターに就任します(2018年)。ストリート出身のデザイナーがハイブランドの中心に立つ、象徴的な瞬間でした。いまや、オーバーサイズのTシャツやワイドジーンズ、レトロなスニーカーは、ヒップホップ文化を出自としながら、すべての世代の日常着に溶け込んでいます。

復活する三つの世代 — Y2K・グランジ・パワースーツ

近年もっとも大きなリバイバルが、2000年代初頭のY2Kスタイルです。ブリトニー・スピアーズやパリス・ヒルトン、クリスティーナ・アギレラが定義した、きらびやかな装飾、腰で履くローライズデニム、厚底ブーツ、カラフルなロゴ。これらが、Z世代にとってはまったく新しいものとして再発見されています。ディーゼルやジューシークチュール、フォン・ダッチといったブランドが、再び脚光を浴びるようになりました。

90年代のグランジは、ニルヴァーナのカート・コバーンが体現した、フランネルシャツに破れたジーンズ、コンバースという装いです。もともとは音楽シーンの飾らない普段着であり、古着店で手に入るような服そのものでした。それをマーク・ジェイコブスが1992年にペリー・エリスのランウェイへ持ち込んで物議を醸し、のちに世界中でグランジがモードとして認知されます。現代でも、ニードルスやアクネ ストゥディオズが、洗練されたかたちでグランジの要素を提示し続けています。飾らないこと、古びていることを肯定するその価値観は、まさに古着の魅力と重なり合うものでした。

80年代のパワースーツは、ジョルジオ・アルマーニが柔らかい肩と着心地のよさによって「ソフトパワー」として再定義したスタイルです。現代では、ザ・ロウやステラ・マッカートニーが80年代のショルダーラインを今の感覚で再解釈し、強さを表現する装いとしてビジネスシーンでも再び注目を集めています。

本物のヴィンテージという選択

リバイバルが面白いのは、そのたびに「当時の本物のヴィンテージ」と「現代の復刻品」が同居することです。原宿のベルベルジンやビームスのヴィンテージラインといった古着店では、本物の90年代カルバン・クラインのデニムが手の届く価格で見つかります。現代のブランドが復刻した同じ型を高い価格で買うよりも、本物のヴィンテージのほうがかえって安く手に入る。そんな逆転現象も決して珍しくありません。

リバイバルが起きると現代の復刻品は値上がりしがちですが、本物のヴィンテージは比較的落ち着いた価格で残っていることが少なくありません。原宿や下北沢、京都や大阪の古着店を巡り、本物を一着でも持っておくと、装いの解像度が大きく上がります。当時のタグや縫製、生地の風合いには、復刻品では再現しきれない情報が刻まれています。その細部を読み解きながら一着を選ぶ時間は、流行を消費するのとはまったく違う豊かさを持っています。復刻品の新しさではなく、本物が過ごしてきた時間そのものを身にまとう。それが、リバイバルを古着で楽しむことの醍醐味でした。

地域ごとの文化という背景

ファッション史は、地域ごとの文化と深く結びついています。パリは歴史的にオートクチュール、つまり高級な仕立て服の中心地でした。ココ・シャネル、1947年にニュールックを発表したクリスチャン・ディオール、イヴ・サンローラン、カール・ラガーフェルドといった存在が、近代モードの基盤を築きました。現代でも、エディ・スリマンやデムナ・ヴァザリアといったデザイナーがパリのモードを牽引しています。

アジアは、21世紀のファッション業界でとりわけ大きく成長した地域です。日本では1981年にパリでデビューしたコム デ ギャルソンの川久保玲と、同じく1981年にデビューしたヨウジヤマモトの山本耀司が、既成のモードへの問いかけによって世界を変えました。韓国ではアーダーエラーなどのブランドが、K-POPと連動しながら2010年代後半から急速に注目を高めています。都市ごとに異なる文化のDNAが、いまも世界のファッションに豊かな多様性をもたらしています。

歴史を踏まえて、今日の一着を選ぶ

こうした歴史を踏まえて、現代の私たちは何を選べばよいのでしょうか。ひとつの目安になるのが、長く生き残ってきた定番を軸にしながら、現代のトレンドを少しだけ取り入れるという考え方です。リーバイスの501やバーバリーのトレンチコートのように時代を越えて愛されてきた型を中心に据え、Y2Kのきらめきやグランジのフランネルといった旬の要素を二割か三割ほど混ぜる。そうすると、時代遅れにもならず、流行を追いすぎることもない、心地よいバランスが取れます。

二つめは、ヴィンテージ古着を積極的に取り入れることです。リバイバルが起きると現代の復刻品は高騰しますが、本物のヴィンテージは比較的手に入りやすい価格で残っています。古着店を巡り、本物を一、二着持っておくだけで、装いの奥行きが大きく変わります。三つめは、歴史を学ぶ時間を少しだけ持つことです。ファッションは服を眺めるだけでは深まりません。雑誌のアーカイブや展覧会、映画、文化史の本に週に一、二時間でも触れていると、自分のセンスが時代の文脈を持ちはじめます。

時代の文脈をまとうということ

ファッションは、無から流行が生まれるのではなく、いつも過去の再解釈と地域文化の融合のなかで進化してきました。歴史を知ると、いまのトレンドが何を受け継ぎ、何に反発して生まれたのかが見えてきます。すると、ただ流されるだけの消費から、背景を理解して批評的に楽しむ装いへと、服との付き合い方が変わっていきます。リバイバルの波に乗るときも、その一着がどんな時代から甦ってきたのかを思い描く。その視点を持つことが、古着とともにファッションを長く楽しむ、いちばんの近道なのかもしれません。

編集方針について — この記事は GUZ FASHION 編集部のFASHIONカテゴリの編集方針に沿って制作されています。

「FASHION」で読まれている

あなたへのおすすめ