クローブは、料理ではチャイやマサラの土台になり、香水では温かいスパイスの代表格として語られる素材です。鼻の奥にすっと差し込んでくる丁子(ちょうじ)特有のピリッとした刺激と、その後ろに残るほのかな甘い樹脂感。この二層構造が、夜のレザーやオリエンタル、グルマンといった重めの系統に独特の体温を与えてくれます。
クローブを軸にした香りは、フローラルやシトラスのような明るく開くタイプとは違って、肌の上でじっくり熟成していきます。最初は乾いたスパイスの刺激、中盤でアンバーやバニラに溶け、ラストにかすかな煙と樹脂が残ります。このカーブを追いかけられるのが、クローブ系の醍醐味です。
本記事では、クローブがノートに明記された8本を、手に取りやすいものから濃密なものへ順に並べて紹介します。ノートの構成と持続の目安、似合うシーンを一本ずつ整理したうえで、クローブと書かれていない香水にスパイスを感じる理由や、濃度による立ち方の違いにも触れていきます。
| 香水名 | 香調 | 持続性 | おすすめシーン | 編集部評価 |
|---|---|---|---|---|
| Maison Margiela – Replica By the FireplaceMaison Margiela | ピンクペッパー、オレンジフラワーペタル、クローブオイル | 2-4時間 | 20-50 代男女の秋冬・夜・自宅・落ち着い… | ★3.7 |
| Jo Malone – Velvet Rose & OudJo Malone London | クローブ | 1-2時間 | 30-50 代男女の秋冬・夜のディナー・フォ… | — |
| Aesop – Marrakech IntenseAesop | カルダモン、クローブ、ベルガモット | 4-6時間 | 30-50 代男女の秋冬・夜のディナー・カジ… | — |
| Frederic Malle – Geranium Pour MonsieurFrederic Malle | ジオラニウム、ペッパーミント、アニス | 4-6時間 | 30-50 代男性のフォーマル・春夏・知的な… | — |
| Serge Lutens – A la NuitSerge Lutens | グリーンシュート、クローブ | 4-6時間 | 30-50 代女性のフォーマル・夜のディナー… | — |
| Frederic Malle – Portrait of a LadyFrederic Malle | ローズ、クローブ、ラズベリー | 4-6時間 | 30-50 代女性のフォーマル・冬のディナー… | ★3.8 |
| Chanel – Coco NoirChanel | グレープフルーツ、ベルガモット、オレンジ | 4-6時間 | 30-50 代女性の夜のディナー・パーティ・… | ★4.0 |
| Yves Saint Laurent – OpiumYves Saint Laurent | マンダリン、コリアンダー、プラム | 6-8時間 | 40 代以上女性のフォーマル・冬の夜・特別… | — |
クローブ系香水はどう選べばいいのか?
クローブらしさを香水で組み立てるときに鍵になるのは、まずオイゲノールとβ-カリオフィレンという二つの成分です。オイゲノールはクローブ精油の主成分で、スパイシーでありながら薬品を思わせる独特の感覚をつくります。一方のβ-カリオフィレンは黒胡椒やローズマリーにも含まれる成分で、乾いた木のような厚みを足してくれます。調香師はこの二つを単純に並べるのではなく、どちらかが突出しないよう配分を探りながら組み立てていきます。
次に見ておきたいのがサフランです。一見クローブとは無関係に思えますが、近年のオリエンタル系フレグランスではセットで使われる頻度が高い素材です。サフランは革のような乾いた印象とほのかな苦みを持ち、クローブの甘辛さに奥行きを与えてくれます。実際にスパイス系を嗅ぎ慣れてくると、クローブとサフランのあいだに独特の赤い時間帯のようなフェーズがあることに気づくはずです。
三つ目はアンバーです。ここで言うアンバーは琥珀そのものというより、ベンゾインやラブダナム、バニリンといった樹脂と甘味の素材を組み合わせたアコードを指します。クローブのピリッとした刺激は時間とともに揮発してしまうため、その余韻をアンバーが受け止めることで、肌に長く居続ける輪郭ができあがります。クローブ単体なら一時間ほどで消えてしまうところが、アンバーの土台に乗ることで夜の終わりまで残る香りに変わるわけです。
そのため、選ぶときはノートにクローブと書かれているかどうかだけでは足りません。サフラン、アンバー、レザー、タバコ、ローズのどれと組まれているかを確認すると、瓶を開ける前に香りのイメージが立ちます。加えて、クローブがトップにあるのか、ミドルやラストに置かれているのかでも印象が変わります。トップにあれば最初の一吹きからスパイスが立ち、ラストにあれば数時間後の余韻に温度が宿ります。以下の8本は、この観点で軽いものから重いものへ順に並べています。
そのため、選ぶときはノートにクローブと書かれているかどうかだけでは足りません。
Maison Margiela Replica By the Fireplace — 暖炉の煙に溶けるクローブオイル
クローブ系の入り口として最も手に取りやすいのが、Maison Margiela のレプリカ ライン から2015年に登場したバイ ザ ファイヤープレイスです。調香を手がけたのは Marie Salamagne で、オードトワレとしては珍しく、暖炉の前で過ごす時間という具体的な記憶をそのまま香りに落とし込んでいます。
トップはピンクペッパー、オレンジフラワーペタル、クローブオイルです。クローブがオイルとして名指しされている点が特徴で、最初の一吹きから乾いたスパイスの粒立ちがはっきり感じられます。ミドルはチェスナットアコード、グアイアックウッドオイル、ケードオイルで、栗の甘みと燻した木の匂いが重なります。ラストはバニラアコード、ペルーバルサム、カシュメランで、煙の奥にやわらかい甘さが残ります。
持続は2時間から4時間ほどで、8本のなかでは最も短めです。これは初めてクローブ系を試す方にとっては利点で、合わなかったときに引きずらず、気に入ったときは重ねづけで調整できます。似合う場面は秋冬の夜、自宅や落ち着いた店で過ごす時間で、20代から50代まで性別を問わず使えます。付けてから10分ほど置き、煙が落ち着いてから出かけると輪郭がきれいに見えます。
チェスナットとバニラ、グアイアックウッドが織りなす暖炉のような温もりは、秋冬の自宅時間に馴染む完成度の高さがあります。甘さとスモーキーさのバランスは好みが分かれ、暖かい季節には重く感じられることがあります。
Jo Malone London Velvet Rose & Oud — クローブから始まる濃密なローズ
Jo Malone London が2012年に発表したベルベット ローズ アンド ウードは、トップノートがクローブ一種のみという潔い構成を採っています。調香は Fabrice Pellegrin で、同社のなかでも香料濃度を上げたコロン インテンスのラインに属します。
ミドルはダマスクローズ、ラストはアガーウッド(ウード)とプラリネという三段構えで、素材数を絞ったぶん輪郭がはっきり出ます。クローブが最初に鼻を刺し、そこへダマスクローズの濃い花が覆いかぶさり、最後にウードの樹脂とプラリネの焦がした甘さが残ります。黒いローズが煙に巻かれているような香り立ちです。
コロンという名前から軽い香りを想像しがちですが、コロン インテンスは Jo Malone London のなかで香料濃度が高いラインで、標準のコロンより長く肌に残ります。秋冬の夜のディナーやフォーマルな場面、特別な日の装いに合わせると、香りだけが浮き上がらずに収まります。付ける量は一吹きから試し、立ち方を確かめてから増やしてください。
ローズを軸に選びたい方は、香調の幅から比べられるローズの香水おすすめ8選も合わせて見ると、クローブが加わることでローズがどこまで暗くなるのかが掴みやすくなります。
Aesop Marrakech Intense — スークの香辛料と革の記憶
Aesop が2014年に発表したマラケシュ インテンスは、トップにネロリ、ベルガモット、ジャスミン、ミドルにカルダモン、ローズ、パチョリ、そしてラストにサンダルウッド、クローブ、シダーを置く構成です。調香は Barnabé Fillion で、モロッコの市場を歩いたときの香辛料と革製品の入り混じった空気を、そのまま瓶に収めたような設計です。
この一本のクローブはラストに置かれています。開幕は柑橘と白い花で明るく、中盤にカルダモンとパチョリが乾いた厚みを足し、最後にサンダルウッドとシダーへ混ざったクローブが静かに残ります。派手な甘さを持たないため、香水らしい華やかさよりも身なりに馴染む匂いとして機能します。主張が穏やかなので、香水が苦手な相手と食事をする場面でも扱いやすい一本です。
持続は4時間から6時間で、日中から夜まで一度の付けで通せる長さがあります。30代から50代の男女に向き、秋冬の夜のディナーやカジュアルな外出、旅行先での一本としても使いやすい構成です。ウールやレザーの衣類と並べると、素材と香りが同じ方向を向いて溶け合う感覚が得られます。
Frederic Malle Geranium Pour Monsieur — 春夏にも置けるクローブ
クローブ系は秋冬の夜に寄りがちですが、春夏でも使える選択肢としてあげたいのが、Frederic Malle が2009年に発表したゼラニウム プア ムッシュです。調香は Dominique Ropion で、トップにミント、ゼラニウム、スターアニス、バジルを置き、清涼感から入る構成になっています。
クローブが登場するのはミドルです。クローブ、シナモン、ユーカリ、スズランという構成で、中盤に入るとスパイスの温度が一気に立ち上がります。ミントの冷たさからクローブの熱さへ切り替わる瞬間が、この香水のいちばんの見どころです。ラストはムスク、サンダルウッド、インセンス、スティラックス、ベンゾイン、アンブロキサンで、乾いた清潔さに着地します。
持続は4時間から6時間ほど。想定されている場面は30代から50代の男性のフォーマルな装いや春夏の日中で、8本のなかでは唯一、暖かい季節に無理なく置ける一本です。クローブの刺激が苦手な方でも、冷たいトップを通してなら受け入れやすいのではないかと考えています。
付けるときは肌に二吹き程度で、服には乗せないほうが切り替えの面白さが残ります。ミントが飛んだあとの中盤を味わうのが目的なので、最初の印象だけで判断しないでいただきたい一本です。
Serge Lutens A la Nuit — 三種のジャスミンに差すクローブ
Serge Lutens が2000年に発表したアラ ニュイは、トップをグリーンシュートとクローブの二種で構成し、そこからジャスミンの世界へ雪崩れ込んでいく一本です。調香は Christopher Sheldrake で、ブランドの代名詞である濃密なオリエンタルの文法を、白い花に振り切って適用しています。
ミドルはモロッコ、インディアン、エジプシャンという三つの産地のジャスミンです。同じ花を産地違いで三種重ねるという発想が、この香水の性格を決めています。ラストはホワイトハニー、ベンゾイン、ムスクで、蜜と樹脂の甘さが長く続きます。クローブはトップに置かれているため、最初の数分でスパイスの輪郭を示し、その後はジャスミンの下に沈んで全体の骨格を支える役に回ります。
持続は4時間から6時間です。30代から50代の女性のフォーマルな場面、夜のディナー、特別な日といった、香りを主役にできる状況に向いています。逆に日常の通勤や狭い室内では濃度が勝ちやすいため、場面を選んで運用したい一本です。
Frederic Malle Portrait of a Lady — ローズとクローブが握手する濃密さ
Frederic Malle が2010年に発表したポートレート オブ ア レディは、トップにローズ、クローブ、ラズベリー、ブラックカラント、シナモン、レッドベリーを並べ、最初から果実とスパイスと花を同時に投げ込んでくる構成です。調香は Dominique Ropion で、現代のローズ系を語るうえで外せない一本として扱われています。
ミドルはターキッシュローズ、パチョリ、インセンス、サンダルウッド、イランイラン。ラストはインセンス、サンダルウッド、ムスク、ベンゾイン、アンバー、アンバーグリス、シダー、バニラという長い列で、樹脂と木と甘さが厚く積み上がります。クローブはトップに置かれていますが、パチョリとインセンスに引き継がれる形で、最後まで乾いた刺激の記憶が残り続けます。
持続は4時間から6時間とされていますが、残り香が衣類に長く残るタイプです。30代から50代の女性のフォーマルな場面や冬のディナー、特別な日に向き、香りで場の空気を作りたいときに力を発揮します。付ける量は控えめが正解で、複数吹きたい場合は服の内側を選ぶと濃度を抑えられます。
ターキッシュローズをパチョリとインセンスで支える重厚な調香構成は、現代のローズ系フレグランスの基準点として高く評価されています。冬の夜のフォーマルな場面でこそ真価を発揮する反面、軽やかな装いや日中の使用には強すぎる場合があります。
Chanel Coco Noir — 余韻の底に沈むクローブ
Chanel が2012年に発表したココ ヌワールは、トップにグレープフルーツ、ベルガモット、オレンジという明るい柑橘を置き、そこから徐々に暗い方向へ降りていく構成です。調香は Jacques Polge と Christopher Sheldrake で、ブランドのココ ラインを夜の方向へ再解釈した一本です。
ミドルはローズ、ゼラニウム、ジャスミン、ナルキッソス、ピーチという花と果実の層です。クローブが現れるのはラストで、パチョリ、サンダルウッド、フランキンセンス、トンカビーン、バニラ、ホワイトムスク、クローブ、ベンゾインという厚い基盤の一員として置かれています。つまりこの香水では、クローブは最初の刺激ではなく、数時間後の余韻に混ざる温度として設計されています。
この構造のおかげで、付けた瞬間はクローブ系だと気づきにくく、夜が深まるにつれてスパイスが立ち上がってきます。持続は4時間から6時間で、30代から50代の女性の夜のディナーやパーティ、冬のフォーマルな場面に向きます。トップから刺激を感じたい方には物足りないかもしれませんが、時間差で表情が変わる面白さがあります。
ローズとジャスミンの官能的な花の心を厚みのあるオリエンタルベースが支え、夜の艶を演出する存在感を放ちます。濃度が高く残香も長いため、日中の控えめな場面での着用にはあまり向きません。
Yves Saint Laurent Opium — クローブを歴史に刻んだ古典
最後にあげるのは、Yves Saint Laurent が1977年に発表したオピウムです。調香は Jean Amic と Jean-Louis Sieuzac で、トップにマンダリン、コリアンダー、プラム、ベイ、ペッパー、クローブを並べ、開幕から濃密なスパイスで押してきます。オリエンタル系というジャンルを世に広く知らせた一本として、いまも参照され続けています。
ミドルはジャスミン、カーネーション、ローズ、リリーオブザバレー、シナモンで、豪奢な花の層が中盤を支えます。ラストはミルラ、オポポナックス、カストリウム、ヴァニラ、サンダルウッド、シダー、パチョリ、アンバー、ベンゾインの九種類で、樹脂と動物的な素材が幾重にも重なります。持続は6時間から8時間と、8本で最も長く残ります。
想定される場面は40代以上の女性のフォーマルな装いや冬の夜、特別な日です。現代の軽い香水に慣れた鼻には相当に重く感じられるため、日常使いではなく、装いを決めた日のための一本として扱うのが現実的です。
ここまでの7本を嗅いだあとにオピウムへ戻ると、それぞれがどこを引き継ぎ、どこを削ったのかが鼻で理解できるようになります。
クローブと書かれていない香水にスパイスを感じるのはなぜか?
スパイス系を探していると、ノートにクローブと書かれていないのにクローブのような刺激を感じる一本に出会うことがあります。これは思い込みではなく、サフランやナツメグ、カルダモン、タバコリーフといった隣接する素材が、同じ方向の印象をつくるために起こる現象です。
たとえば Tom Ford のノワール エクストレームは、2015年に登場した一本で、トップがカルダモン、ナツメグ、サフラン、マンダリンオレンジ、ネロリという構成です。ノートにクローブの記載はありませんが、ナツメグとサフランが同時に立つことで、クローブに近い甘辛い刺激として受け取られます。ミドルにはクルフィと呼ばれるインド菓子のアコードが置かれ、ラストはバニラ、アンバー、ウッディノート、サンダルウッドで、甘さとスパイスの境界を狙った処方です。調香は Sonia Constant で、持続は4時間から6時間とされています。ブランドの成り立ちや世界観についてはTom Fordのブランド解説で詳しく扱っています。
同じく Serge Lutens のシェルギは、2001年発表で、トップがタバコリーフ、ハニー、ヘイ(乾草)、ラストがアンバー、サンダルウッド、ムスクという構成です。こちらもクローブの記載はありませんが、タバコリーフの乾いた渋さと蜂蜜の甘さが同時に存在する状態が、クローブの二層構造とよく似た印象を生みます。調香はアラ ニュイと同じ Christopher Sheldrake です。
もう一例が Guerlain のシャリマーです。1925年に Jacques Guerlain が手がけたパルファムで、トップはベルガモットとフローラルノート、ラストはバニラ、トンカビーン、エチルバニリンという構成です。ここにもクローブはありませんが、バニラ系の甘さに古典的なフローラルが絡むことで、スパイスに似た陰影が生まれます。
この三本はクローブ系として選ぶ対象ではありませんが、クローブが香水のなかで何をしているのかを理解する助けになります。逆に言えば、ノート表記だけを信じて探すと、自分が本当に好きな刺激の正体を見誤ることがあります。気に入った香りが出てきたら、クローブと書かれているかではなく、どの素材が同時に立っているかを覚えておくほうが、次の一本を選ぶときに役立ちます。
EDT・EDP・パルファムでクローブの立ち方はどう変わるのか?
同じクローブを使っていても、賦香率によって立ち方が変わります。今回の8本では、オードトワレのバイ ザ ファイヤープレイスが2時間から4時間、オードパルファムの5本が4時間から6時間、そしてオピウムが6時間から8時間という並びです。ベルベット ローズ アンド ウードは表記こそコロンですが、高濃度のコロン インテンスにあたるため、名称から受ける印象より長く残ります。
賦香率が低いものはクローブの刺激が短時間で抜けるぶん、最初の数分の粒立ちがはっきり感じられます。高いものは揮発がゆるやかになるため、刺激が土台の樹脂や甘味と混ざった状態で長く続きます。前者はスパイスそのものを味わいたいとき、後者は香り全体の温度として使いたいときに向きます。
シーン別ではどう使い分けるのか?
平日の夜や仕事帰りには、バイ ザ ファイヤープレイスやマラケシュ インテンスのように主張が穏やかなタイプが扱いやすいです。レストランやバーで隣の席に座る人にも負担になりにくく、香りが場の邪魔をしません。とくにバイ ザ ファイヤープレイスは持続が短めなので、帰宅後に切り替えたいときにも都合がよいです。
週末の夜やレザージャケットを着る日には、アラ ニュイやポートレート オブ ア レディのように濃度のある一本が映えます。低温下では揮発がゆるやかになり、スパイスとアンバーの混ざり方が肌の上で立体的に感じられます。クローブ系が秋冬に寄って語られるのは、この揮発速度の差によるものです。
フォーマルな場面や古典を楽しみたい日には、オピウムやココ ヌワールが頼りになります。香水の歴史ごと着られる感覚は、新しい処方では簡単に出せないものです。ただし濃度が高いので、狭い室内や近距離での会話が続く場面では量を絞ってください。
春夏の日中に使いたいのであれば、選択肢はゼラニウム プア ムッシュにほぼ絞られます。ミントとグレープフルーツから入る構成なので、暖かい時期でも重さが出にくく、クローブが立つ中盤まで気温に邪魔されずに進みます。
逆に、高温多湿の環境やジムのあと、スポーツ直後などにはクローブ系は向きません。スパイスの刺激が汗の匂いと干渉して重く感じられるため、季節と場面を外すと香りが強すぎる印象につながりやすい点は覚えておいてください。ジンジャーのような別のスパイスから入り直したい方には、ジンジャーティーの香りの香水のほうが軽やかに収まります。
クローブ系香水を上手に纏う付け方は?
まず量です。クローブ系は一吹きでも香りが立つため、手首と首筋に各一吹きから始めてください。多く付けると甘さや樹脂が勝ちすぎて、スパイスの刺激が埋もれてしまいます。足りないと感じたら、数時間後に付け直すほうが輪郭を保てます。
次に場所です。クローブ系は肌の上で時間をかけて発展するタイプが多いので、服に直接吹くより、肌で立ち上げてから周囲に広げるほうが設計どおりの展開になります。どうしても長く残したい場合に限り、服の内側へ一吹き足すという順序にしてください。
最後に試し方です。いきなり一本買いせず、ミニサイズや量り売りで30分以上着用してから判断してください。クローブ系は中盤から後半で印象が変わる香りが多く、最初の10分で結論を出すと、本来好きだったはずの一本を手放すことになります。
クローブ系香水についてよくある質問
クローブ系は男性向けでしょうか、という質問をよく受けます。今回の8本を見ると、想定されている使用者は男性向けが1本、男女どちらでもよいものが3本、女性向けが4本という内訳です。素材そのものに性別の縛りはないので、濃度と組み合わせで選んでいただくのが現実的です。
薬品のような匂いが苦手でも大丈夫でしょうか、という声もあります。この印象はオイゲノールが単独で立ったときに出やすいものです。バイ ザ ファイヤープレイスのように煙と甘さで包まれている構成や、ゼラニウム プア ムッシュのようにミントを通してから出てくる構成であれば、薬品らしさは目立ちにくくなります。
一本目に選ぶならどれがよいでしょうか、という質問には、持続が短く引きずりにくいバイ ザ ファイヤープレイスをおすすめしています。合わなかったときの負担が小さく、気に入った場合は重ねづけで濃度を上げられるためです。そこからマラケシュ インテンス、ポートレート オブ ア レディ、オピウムの順に濃度を上げていくと、自分の許容範囲が掴めてきます。
クローブの隣にあるアンバー系にも興味が出てきた方は、アンバー系香水のおすすめ7選で樹脂と甘味の側から同じ領域を見ると、選択肢がもう一段広がります。
クローブ系香水選びのまとめ
8本を並べて感じるのは、クローブは単独で主役を張るというより、他の素材を引き立てる体温調整役だということです。バイ ザ ファイヤープレイスでは煙に芯を与え、ベルベット ローズ アンド ウードではローズを暗く沈め、ゼラニウム プア ムッシュでは冷たいトップに熱を渡し、オピウムでは古典の濃密さを支えます。役割は違いますが、どれも香りに温度を与えています。
選ぶ順序としては、まず使いたい季節と時間帯を決め、次に賦香率で持続を絞り、最後にクローブがトップかラストのどちらに置かれているかで表情を選ぶ、という三段階が分かりやすいはずです。トップにあれば一吹き目からスパイスが立ち、ラストにあれば夜が深まるにつれて温度が上がってきます。
そしてもう一点、クローブ系の香水は毎日のヘビーローテーションより、特定の夜のための一本として運用するほうが向いています。同じ重さの香りを毎日まとうと鼻が慣れて魅力が薄れますが、週に一度か二度、ここぞという場面で取り出すと、自分の気分まで切り替わります。クローゼットの一角に、秋冬の夜用の一本としてそっと置いておくのが、ちょうどよい付き合い方だと考えています。











