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レモングラスティーの香りが好きな方におすすめの香水 — エキゾチックな爽やかさ

レモングラスティーの香りが好きな方におすすめの香水 — エキゾチックな爽やかさ

レモングラスティーをカップから持ち上げた瞬間、鼻先に立ちのぼる蒸気のフレッシュさ。シトラスの皮を絞ったようなシャープな立ち上がりと、青いハーブの茎を噛んだときの草いきれ、そして奥にしのばせた茶葉のほろ苦さ。あの一杯が持つ複雑な余韻を、香水という形に閉じ込められないだろうか――そんな問いから、本稿は始まる。日本のシーンでもアジアン料理店やリトリート系のカフェで提供される機会が増え、レモングラスティーは「香りの記憶」として身近な存在になりつつある。

レモングラスティーの香りは、単純な「シトラス」でも「ハーブ」でもない。タイ料理のトムヤムクンで出会うようなエキゾチックな高揚感と、ヨーロッパのハーバルティーが持つ静謐さが同居する、稀有なバランスの上に立っている。本稿では編集部が選んだ3本の香水を軸に、レモングラスティー的な香り体験を日常の中で再構築するヒントを探っていく。春夏のオフィスから夜のリラックスタイムまで、季節と時間に寄り添う使い分けまで踏み込み、最後にはシーン別の運用と検索のヒントもまとめる。読み終えたとき、自分の鼻が求めていた一杯の輪郭が、少しでも鮮明になっていたら嬉しい。

この記事で紹介する香水 早見表
香水名香調持続性おすすめシーン編集部評価
Jo Malone – Lime Basil & MandarinJo Malone Londonライム、マンダリンオレンジ、ベルガモット1-2時間20-50 代男女の春夏・オフィス・カジュア…★3.8
Hermès – Eau d'Orange VerteHermèsベルガモット、レモン、マンダリン1-2時間20-60 代男女の春夏・朝・カジュアル・日常★3.9
Le Labo – Thé Noir 29Le Laboフィグ(イチジク)、ベイリーフ、ベルガモット4-6時間30-50 代男女の秋冬・カジュアル・読書・…★4.1

レモングラスアコードの分解 — シトラル・ハーブ・茶葉

レモングラスの香りを構成する中心成分は「シトラル」と呼ばれるアルデヒド系の分子で、レモンの皮にも含まれる成分だ。ただし、レモン果皮に比べてシトラスの輪郭が太く、わずかに乳脂のようなクリーミーさを伴うのが特徴。香料の世界では、ベルガモットやレモンと並べたときに「東洋的」「グリーン寄り」と表現されることが多い。タイやベトナムの料理が持つあのフレッシュさは、まさにシトラル由来である。

そこに重なるのが、ハーバル要素だ。レモングラスは葉そのものに青々とした植物香を持ち、ペチグレンやプチグレンのようなビター・グリーンの香料と相性がよい。バジル、ミント、ローズマリーといったキッチンハーブとの親和性も高く、香水のミドルノートでこれらが交差すると、料理の湯気を思わせる立体的な広がりが生まれる。シトラスだけでは平板になりがちなトップノートに、奥行きと「飲める質感」を与えるのがこのハーブ層の役割だ。

そして三層目が、茶葉のニュアンス。実際の香水でレモングラスティーを再現する場合、紅茶や緑茶のアコードを下支えに据えるケースが多い。タンニンを思わせるドライウッディな質感、あるいはほのかにスモーキーな茶葉の燻し香が加わることで、シトラス×ハーブが「ハーブ水」で終わらずに「淹れたお茶」へと昇華する。ベースに微量のムスクやウッディ系を仕込むことで、肌に乗せたあとも飲み物の余韻が残るような残香設計が可能になる。

つまりレモングラスティー的な香水を選ぶ際の指針は、(1) シトラルの明るさ、(2) ハーバルな緑、(3) 茶葉や乾いた木のドライダウン、この三層が破綻なく重なっているかどうかに尽きる。市場には「シトラス系」「ハーバル系」とだけ括られる香水が無数にあるが、ここから先に挙げる3本は、それぞれ異なるアプローチでこの三層構造を体現している。

もう一点だけ補足しておきたい。レモングラスの香りは肌の上で「変化が速い」素材だ。シトラルは揮発しやすく、ハーバルな緑も比較的早く飛んでいくため、ドライダウンの設計がしっかりしていない香水だと、トップの華やかさと裏腹に1時間後にはほぼ消えてしまう。逆に、ベースに紅茶や乾いた木、わずかなムスクが仕込まれている処方は、シトラスが飛んだあとも「淹れたお茶の余韻」のような気配を肌に残してくれる。テスター段階では必ずトップ直後だけでなく、30分後、2時間後の表情まで見る癖をつけたい。

シトラスだけでは平板になりがちなトップノートに、奥行きと「飲める質感」を与えるのがこのハーブ層の役割だ。

Jo Malone London / Lime Basil & Mandarin

レモングラスティー的なアプローチの入門として、まず外せないのがJo Malone Londonの代表作「Lime Basil & Mandarin」。直訳すれば「ライム・バジル・マンダリン」だが、その三角形こそがレモングラスティーの構造に驚くほど近い。ライムが担うシャープなシトラル、バジルが担う青いハーブ、マンダリンが担う柔らかな甘み。茶葉そのものは前面に出ないものの、ドライダウンのウッディさが「淹れたて」のクリアさを保ち続ける。

このフレグランスの面白さは、シトラスがオーデコロン的に飛ばずに、バジルのグリーンと組み合うことで「料理の香り」一歩手前で踏みとどまる点にある。レモングラスのスパイシーさをバジルが代行している、と読み解くと腑に落ちる。フレッシュなのに食欲が刺激される感覚は、まさにアジアのハーブ料理を思わせるし、レモングラスティーをガラスポットで淹れるときの蒸気にも近い。

春から初夏の朝、白いシャツに袖を通したあとに首筋へ一吹き。あるいはリネンのワンピースに袖の内側へ忍ばせる。出社後30分から1時間ほど経ったあたりで香りはバジル中心の落ち着いた緑に変わり、肌のぬくもりと混ざってほんのりウッディな余韻に着地する。香水としての扱いやすさと、レモングラスティー的な複雑さの両立。ここから入る人が一番多いのも頷ける。

もう一つ覚えておきたいのが、Jo Malone Londonの「コロン同士を重ねるレイヤリング」という発想だ。Lime Basil & Mandarin単体でも完成度は高いが、たとえば茶葉のニュアンスを足したいときには紅茶系のコロンを薄く重ねる、甘さを足したいときにはマンダリン由来のコロンを重ねる、といった調整がブランド側からも推奨されている。レモングラスティー寄りに寄せたい人は、ティー系のコロンを手首に薄く敷いてから、Lime Basil & Mandarinを首筋に乗せる順序を試してみてほしい。1本で完結させない自由度の高さも、この香りが長く愛される理由のひとつだ。

ライム・マンダリン・ベルガモットの濃密なシトラス開幕から、バジル・タイム・ライラック・アイリスのアロマティックで青臭い心、ベチバーとパチョリのソフトな余韻へ。1999 年発表の Jo Malone を代表するシトラスアロマティック、シェフのハーブガーデンの朝のような爽やかな香り立ち。男女問わず春夏のオフィス、カジュアル、清涼感を求める日常に。

発売
1999 年
調香師
Jo Malone
トップノート
ライム、マンダリンオレンジ、ベルガモット
ミドルノート
バジル、タイム、ライラック、アイリス
ラストノート
ベチバー、パチョリ
香りの強度
オーデコロン
持続性
1-2時間
おすすめシーン
20-50 代男女の春夏・オフィス・カジュアル・日常
GUZ編集部レビュー3.8 / 5

ライムとマンダリンのみずみずしいシトラスに、バジルやタイムのアロマティックな青さが重なる構成は、ハーブガーデンのような爽やかさを描き、性別や年代を問わず纏いやすい一本です。オーデコロン特有の軽い賦香率のため持続時間は短めで、こまめな付け直しが前提になります。

Hermès / Eau d’Orange Verte

もう一段ハーバル寄り、より「茎の青さ」を求めるなら、Hermèsの「Eau d’Orange Verte(オー ドランジュ ヴェルト)」が候補に挙がる。1979年に登場したエルメス初のオーデコロンで、いまでは「シトラスハーバル」というジャンルそのものを象徴する一本になっている。オレンジ、ミント、ブラックカラント、パチョリ。シンプルな処方ながら、レモングラスティーが持つ「葉と皮が同時に煮出された」感覚を見事に翻訳している。

注目したいのは、ミントとブラックカラントの組み合わせだ。ミントが冷涼な蒸気を、ブラックカラントが青臭い果実感を出すことで、レモングラスの茎をすりつぶしたときに立ちのぼる独特の「青と苦み」のレイヤーが再現される。香りが落ち着いていくにつれ、パチョリの土っぽい甘さがほのかに顔を出し、これが茶葉のタンニン的な役割を果たしてくれる。アジアの茶葉とは違うアプローチながら、結果として「淹れたお茶のあとに残るカップの匂い」を彷彿とさせる仕上がりだ。

使うシーンとしては、湿度の高い梅雨どきから真夏の昼下がりが似合う。汗ばむ肌の上で香りが鈍る前に、首筋・耳の後ろ・手首の内側にしっかり乗せておく。オフィスのエアコンで体温が落ちたタイミングで、ふっとミント&パチョリのレイヤーが浮かび上がり、レモングラスティーをアイスで飲んでいるような清涼感が広がる。Jo Maloneより乾いた印象なので、シャツやセットアップとの相性も良好だ。

Eau d’Orange Verteには、ヘアミストやボディローションのライン展開もある。香水単体だとシトラスの揮発が早すぎると感じる人は、ボディローションで土台を作ってから香水を乗せると、肌の水分が揮発カーブを緩やかにしてくれて午後遅くまで余韻が残りやすい。エルメスの定番として価格帯も入手しやすく、初心者から長年のファンまで層を選ばない懐の深さがある。

ベルガモット・レモン・マンダリン・ミント・ブラックカラントバッドの濃密シトラスな開幕が、緑の葉と zests の苦味を伴って広がる。徐々にジャスミンとオレンジブロッサムの繊細な花の心、パチョリ・オークモス・シダーのソフトな余韻へ。45 年以上製造される伝統的シトラスコロン、男女問わず朝のシャワー後や春夏の日常に違和感なく溶け込む。

発売
1979 年
調香師
Françoise Caron
トップノート
ベルガモット、レモン、マンダリン、ミント、ブラックカラントバッド
ミドルノート
ジャスミン、オレンジブロッサム
ラストノート
パチョリ、オークモス、シダー
香りの強度
オーデコロン
持続性
1-2時間
おすすめシーン
20-60 代男女の春夏・朝・カジュアル・日常
GUZ編集部レビュー3.9 / 5

45年以上作り続けられる伝統的なシトラスコロンで、朝のシャワー後や日常使いに違和感なく溶け込む点が魅力です。ただし持続時間は短めで、香りを保つにはこまめな重ねづけが前提になります。

Le Labo / Thé Noir 29

三本目は趣を変えて、より「茶葉そのもの」に深く踏み込む一本。Le Laboの「Thé Noir 29(テ ノワール29)」は、その名のとおり紅茶(ブラックティー)を主軸に据えたフレグランスで、シトラスの明るさよりも、茶葉が燻されたような深い香りに浸るための香水だ。レモングラスティーが持つ二面性のうち、フレッシュな側面ではなく、ティーポットの底に残る濃い余韻のほうを引き伸ばしたい人へ。

処方の中心にはベイリーフ(月桂樹)、ベチバー、シダーがあり、これらが乾いた木とほのかにスモーキーな茶葉のニュアンスを構成する。シトラスは控えめだが、フィグやムスクの厚みのおかげで、レモングラスティーをミルクで割ったような、あるいはローストした茶葉の上に少しだけ柑橘の皮を散らしたような、複合的な甘苦さが楽しめる。夜のソファでハーブティーを淹れている時間に最も馴染む香り、と表現してもよい。

季節としては秋の入り口から冬の昼間に向くが、夏でも夜のディナーやバーシーンであれば十分機能する。残香が長く、衣類に乗ったときの定着もしっかりしているので、コットンよりウールやカシミアに乗せると本領を発揮する。1本でレモングラスティーの「フレッシュ」「ハーバル」「茶葉」のうち、茶葉を極限まで濃く描く役割を担ってもらえる。Le Laboらしい手作業ボトル文化と、店頭でラベルに名前を入れてもらえる体験性も、この香水を選ぶ楽しみの一部だ。

フィグ(イチジク)・ベイリーフ・ベルガモットのフレッシュな開幕から、シダー・ベチバー・ムスクのドライウッディな心、タバコとヘイ(乾草)のスモーキーな余韻へ。蒸れた紅茶の缶を開けた時のような乾いた葉の質感と、燻されたタバコの煙が共存する大人びた香り立ち。秋冬のカジュアル、夜、落ち着いた場、自分のスタイルを語る場面に。

発売
2015 年
調香師
Frank Voelkl
トップノート
フィグ(イチジク)、ベイリーフ、ベルガモット
ミドルノート
シダー、ベチバー、ムスク
ラストノート
タバコ、ヘイ(乾草)
香りの強度
オードパルファム
持続性
4-6時間
おすすめシーン
30-50 代男女の秋冬・カジュアル・読書・落ち着いた場
GUZ編集部レビュー4.1 / 5

紅茶の茶葉そのものを正面に据えた潔い構成で、長時間身につけても飽きが来ない中庸の暖かさが魅力です。個性がはっきりしているぶん、華やかさや万人受けを重視する場面には向きにくい面があります。

シーン別の使い分け — 春夏とオフィスを軸に

3本の役割が見えてきたところで、実際の生活動線に落とし込みたい。レモングラスティー的な香水を楽しむうえで、シーンと時間帯の選び方は意外と重要だ。香りそのものが「飲み物」を連想させるため、相手の集中を妨げず、それでいて記憶に残る使い方ができる。

平日朝のオフィス出勤には、Jo Malone「Lime Basil & Mandarin」を首筋に一吹き、もう一吹きをシャツの内側に。会議室に入った瞬間に主張する香りではなく、相手が近づいたときに「あ、清潔な人だ」と思わせる距離感に収まる。週半ばで疲労が溜まる水曜日、Eau d’Orange Verteに切り替えて気分をリセットするのも良い手だ。ミントの冷感が午後の眠気を遠ざけてくれる。

週末の昼下がり、カフェで読書するような時間にはどれを選んでも合うが、Jo MaloneとHermèsはアイスティーを片手にしているような印象、Le Laboは熱いチャイを淹れているような印象、と覚えておくと使い分けが楽になる。デートやレストランの夜には、Le Labo一択。スモーキーな茶葉と肌のムスクが混じり合うドライダウンは、相手との距離が縮まったタイミングで一番色気が立つ瞬間を作ってくれる。

つける場所も印象を左右する。首筋は体温が高く立ち上がりやすい一方で揮発も早い。手首は動きに合わせて空気に乗り、相手との会話で自然に届く。胸元やシャツの内側は、自分自身が香りを楽しむためのポジション。今日は誰のために香らせたいのかという問いを持つだけで、3本の使い分けは立体的になる。

もう一歩踏み込みたい人へ、編集部が試す価値ありと考える「探し方」のキーワードを置いておく。検索リンクから市場の幅を眺めれば、自分の鼻に合う一本に出会える可能性が広がる。

編集部総評

レモングラスティーの香り、と一言でいっても、再現したい層は人それぞれだ。蒸気のシトラルを優先するならJo Malone、葉と茎の青さを優先するならHermès、淹れ終えた茶葉の余韻を優先するならLe Labo。今回の3本はそれぞれ別方向から同じ風景を描き出している、と捉えると選びやすい。

シトラス系全般の地図をもう少し広く眺めたい人は、編集部のシトラスフレグランス深掘りガイドもあわせて読むと、レモングラスから派生するベルガモット・ライム・ユズの位置関係が見えてくる。夏に特化したセレクトをチェックしたい場合は夏に映えるシトラス香水セレクトもどうぞ。

香りは飲み物と同じで、季節・気温・湿度・心拍によって表情を変える。今日のあなたに合うのが3本のうちどれなのか、テスター紙の上だけで決めず、ぜひ自分の肌で確かめてほしい。レモングラスティーの一杯がそうであるように、香水もまた、飲み干すたびに少しずつ違う顔を見せてくれる存在だ。

編集方針について — この記事は GUZ FASHION 編集部のTEAカテゴリの編集方針に沿って制作されています。

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