Porter Classic(ポータークラシック)は、鞄ブランド「PORTER」で知られる吉田カバンの創業家に生まれた吉田克幸と、その息子の吉田玲雄が2007年に立ち上げた、東京発のドメスティックブランドです。剣道着の生地や刺し子といった日本の伝統技法を掘り起こし、そこにアメリカやヨーロッパの服飾文化を重ね合わせることで、独自の「メイド・イン・ジャパン」を作り上げてきました。名前が似ているためにPORTERの一部門と誤解されることも少なくありませんが、実際には吉田克幸が株式会社吉田から独立して立ち上げた、法人としては別のブランドです。
この記事では、ポータークラシックがどのような経緯で生まれ、吉田カバンとどう違うのか、そして刺し子やスーパーナイロンといった素材開発に込められた考え方から、代表的なアイテムや古着市場での見え方までを、公式サイトや取材記事などの一次情報にもとづいて整理します。ブランド名だけを知っていても意外と経緯を知らない人が多いブランドなので、背景を押さえておくと、一着を選ぶときの見え方が変わってくるはずです。
吉田克幸・玲雄、親子でPorter Classicを立ち上げた経緯
ポータークラシックを立ち上げた吉田克幸は1947年生まれで、1935年創業の鞄メーカー吉田カバン(PORTERブランドの製造元)の創業家に生まれた人物です。吉田カバンでは長年にわたり鞄の企画を手がけ、1981年にはニューヨーク・デザイナーズ・コレクティブのメンバーに日本人として初めて選出されるなど、国際的にも評価されるクリエイティブディレクターとして知られてきました。若い頃には大学を中退してドイツへ渡り、その後ロンドンやパリでの生活も経験しており、こうした海外での見聞が、後年のブランド作りの土台になったと語られています。
ポータークラシックが生まれたきっかけは、吉田克幸が体調を崩したことでした。大きな病気を経て回復に向かうリハビリの過程で、克幸は「もう一度イチから物作りをしたい」と口にするようになったといいます。その思いを受け止め、実際にブランドという形に具現化する役割を担ったのが、息子の吉田玲雄でした。玲雄は1975年に東京・浅草で生まれ、高校卒業後にアメリカへ渡って大学で映画と写真を学び、2003年にサンフランシスコ・アート・インスティテュートの大学院を卒業しています。帰国後は写真家や作家としても活動しており、2006年に刊行した著作『ホノカアボーイ』は後に映画化されました。父のセンスや思いつきを、実際に商品として形にしていく実務的な役割を、デザイナーではなく写真家・作家というバックグラウンドを持つ玲雄が担ってきたという点は、このブランドを理解するうえで見落とせない特徴です。
こうして2007年3月6日、東京都台東区花川戸に株式会社ポータークラシックが設立されました。花川戸は吉田カバンの本社もほど近い、古くから鞄や皮革の産地として知られる土地です。2008年には東京・銀座のみゆき通りに第1号店をオープンし、その後は新宿伊勢丹メンズ館や金沢のフォーラスなど、百貨店や地方都市への出店も重ねてきました。創業から二十年近くが経った現在も、吉田克幸と吉田玲雄という親子二人三脚の体制は変わらず、克幸が生地やアイテムの発想を担い、玲雄がそれを実際のコレクションへと落とし込むという役割分担が続いていると伝えられています。近年のインタビューでは吉田克幸が会長という立場で語られている記事も見られ、ブランドの顔として第一線に立ちながらも、経営面では次の世代へと少しずつ役割を移している様子がうかがえます。
店舗展開も、創業当初の銀座みゆき通りの1店舗から着実に広がってきました。現在は銀座本店に加え、新宿伊勢丹メンズ館、丸の内の「クラシック ジェントルマン ポータークラシック」、名古屋、そして金沢と京都に構える直営店など、全国の主要都市に拠点を持つまでになっています。京都と金沢の店舗は、それぞれ「PORTER CLASSIC KYOTO」「PORTER CLASSIC KANAZAWA」として独自のウェブサイトも運営されており、単なる支店ではなく、その土地に根ざした一つの拠点として展開されている点が特徴です。三越伊勢丹オンラインストアでも取り扱いがあり、百貨店という信頼性のある販路を持ちながら、直営店ならではの世界観も大切にしているブランドだといえます。
大きな病気を経て回復に向かうリハビリの過程で、克幸は「もう一度イチから物作りをしたい」と口にするようになったといいます。
吉田カバン(PORTER)との関係と、混同されやすい理由
ポータークラシックという名前を初めて聞いた人の多くが戸惑うのが、鞄ブランドのPORTERとの関係です。PORTERは1935年創業の吉田カバンが手がける鞄ブランドで、1962年から続く老舗として広く知られています。一方のポータークラシックは、吉田カバンの創業家に生まれた吉田克幸が、2007年に新たに立ち上げた法人です。同じ創業家の血筋から生まれたブランドではあるものの、吉田カバンの一事業部やラインナップの一つではなく、経営体としては独立した会社という点が、まず押さえておきたい違いです。
両者の商品構成にも明確な違いがあります。PORTERはリュックサックからボストンバッグ、財布や名刺入れといった鞄・革小物を中心に展開するブランドです。これに対してポータークラシックは、鞄だけでなくジャケットやシャツ、パンツといった衣類も手がけている点が大きな特徴で、ワークウェアやミリタリーの要素を取り入れたテイストの服作りを軸にしています。鞄専業のPORTERに対し、衣類も含めた総合的なライフスタイルブランドとして育ってきたのがポータークラシックだと捉えると、両者の違いが整理しやすくなります。
紛らわしい名前を持ちながらも、両ブランドが掲げる姿勢には共通するところもあります。吉田カバンが長年培ってきた日本製へのこだわりや、素材と縫製への手間を惜しまない姿勢を、ポータークラシックも受け継いでおり、「メイド・イン・ジャパン」を軸に「世界基準のスタンダード」を掲げるというコンセプトは、同じ創業家から生まれたブランドとしての連続性を感じさせます。名前や成り立ちを混同しないよう気をつけつつも、根底にある美意識のつながりを知っておくと、両ブランドをより深く楽しめるはずです。
「メイド・イン・ジャパン」の思想と、刺し子・スーパーナイロンのものづくり
ポータークラシックのものづくりを語るうえで欠かせないのが、日本各地に残る伝統技法の掘り起こしです。代表格が「PC SASHIKO」と呼ばれる独自の刺し子生地で、山形県の庄内刺し子や青森県南部の菱刺し、青森県津軽のこぎん刺しといった技法を研究し、専用の機械で再現できるよう5年をかけて開発されました。通常の刺し子よりも軽い着心地と滑らかな肌ざわりを両立させているのが特徴で、この生地を使ったトートバッグやコート、パンツなど幅広いアイテムが展開されています。手仕事の技法を工業的に再現するという、一見相反するテーマに正面から取り組んできたところに、このブランドらしい執念が表れています。Porter Classicの刺し子アイテムを楽天で探す
もう一つの柱が「SUPER NYLON(スーパーナイロン)」という独自素材です。本来は染色が難しいとされるナイロン生地に製品染めを施し、経年変化でデニムのように色落ちしていく風合いを持たせることに成功した、ポータークラシックオリジナルの生地とされています。コートやデイパック、ウエストバッグなど複数のアイテム展開があり、使い込むほどに色味や表情が変化していく点が、革製品にも似た愛着を生む理由になっています。ナイロンという工業的な素材に、経年変化という手仕事的な価値観を持ち込んだところに、吉田克幸らしい発想の転換が見て取れます。
これらの素材開発に共通しているのは、日本各地の伝統技法や職人の手仕事に敬意を払いながらも、それをそのまま模倣するのではなく、現代の生活に合う形へと作り替えるという姿勢です。剣道着やかすり、道着といった実用着の文化を掘り起こし、アメリカやヨーロッパのワークウェアが持つ骨太な佇まいと組み合わせることで、どこの国のものとも言い切れない独自のスタンダードを作り上げてきました。素材やものづくりの背景を知ってから服を選ぶと、単なるデザインの好みだけでは見えてこない、ブランドの奥行きに気づきやすくなるはずです。
職人との対話から生まれる、ものづくりの現場感
ポータークラシックのものづくりを語るうえで欠かせないもう一つの側面が、職人との関係の作り方です。新宿伊勢丹メンズ館では、レザーアイテムを集めた催事が定期的に開催されており、単に商品を並べるだけでなく、素材や技術を手がける職人との対話を発信するコンテンツも合わせて展開されてきました。刺し子の再現に5年という時間をかけたエピソードからも分かるとおり、このブランドは新作を素早く回転させることよりも、一つの技法や素材にじっくり向き合う時間そのものを大切にしていると考えられます。
剣道着や刺し子といった日本の伝統技法は、そのままでは現代の洋服として着づらいものも少なくありません。ポータークラシックは、それらを工業的に再現できる形へと落とし込みながらも、素材が本来持っていた手仕事の温度感を失わないよう調整を重ねてきました。工程を効率化するだけの量産とは異なり、職人の技術に敬意を払いながら、着る人の生活に馴染む形へと橋渡しをする役割を担っているところに、吉田克幸が繰り返し語ってきた「次の世代、そして孫の代まで愛される物作り」という理念が表れています。
読書に見る、吉田克幸の時代を越えるものづくりへの姿勢
吉田克幸は、自身の創作のヒントとして読書を挙げることが多い人物としても知られています。あるインタビュー企画で選んだ本の中には、キューバの闇社会を描いたノンフィクションや、パリを愛した日本人新聞記者の評伝、そして北斎の作品が19世紀ヨーロッパのジャポニズムに与えた影響を扱った一冊などが並んでいました。1850年頃から100年ほどの時代を調べることを長年のライフワークにしていると語っており、書斎で当時の空気に触れながら「この時代に旅をする人がいたら、どんな道のりをたどっただろうか」と想像を巡らせることが、発想の源になっているといいます。
こうした読書の姿勢は、剣道着や刺し子といった日本の伝統技法を掘り起こす仕事の進め方とも重なります。異なる時代や異なる文化を調べ、そこにある物の見方を今の生活に置き換えて考えるという手順は、歴史の本を読むときも、素材開発に取り組むときも変わりません。吉田克幸自身が語る「流行ではなく、人から人へ受け継がれていくようなものを作りたい」という言葉は、ポータークラシックが刺し子やスーパーナイロンといった素材にじっくりと時間をかけてきた理由を、そのまま言い表していると言えるでしょう。
代表的なアイテム — PC KENDO、デニムジャケット、ニュートンバッグ
ポータークラシックを象徴するアイテムの一つが「PC KENDO」シリーズです。剣道着に使われる生地からヒントを得たシリーズで、カリブ海や西インド諸島など限られた産地でしか採れない希少なシーアイランドコットンの糸を用いて織り上げられています。フレンチジャケットタイプはコットン100パーセントで軽やかな着心地に仕上げられている一方、テーラードジャケットのモデルにはインドのスジャータ綿と西インド諸島セントビンセント島の海島綿を交配したスビンゴールド綿が使われるなど、仕立てによって素材が使い分けられているのも特徴です。伊勢丹新宿店メンズ館の限定企画では、インディゴ染めを施したPC KENDO素材のジャケットが登場するなど、百貨店との協業でも度々取り上げられてきました。
デニムジャケットも、ポータークラシックのワードローブの定番として支持されてきたアイテムです。オールシーズン使えるシーズンレスなデザインで、流行に左右されにくいシルエットに仕立てられており、素材開発への強いこだわりを持つブランドらしく、インディゴの色合いや生地の風合いにも独自の表情が宿っています。剣道着由来の生地やスーパーナイロンといった実験的な素材開発とは対照的に、こちらは王道のワークウェアの語彙に忠実な一着で、初めてポータークラシックに触れる人にも取り入れやすいアイテムだといえます。Porter Classicのデニムジャケットを楽天で探す
バッグ類では「NEWTONBAG(ニュートンバッグ)」が代表的な存在です。2018年に発表されたシリーズで、体感重量を抑えるムアツ素材のストラップを採用するなど、鞄作りを出自に持つブランドらしい機能面での工夫が凝らされています。前述のスーパーナイロンを使ったデイパックやウエストバッグと並んで、ポータークラシックが持つ「衣類も鞄も同じものづくりの哲学で作る」という姿勢を体現するアイテム群です。似たように日本の伝統素材や職人技を軸にしたブランドとしては、藍染めやボロ、刺し子といった日本の古い布文化を現代の服作りに取り込んでいるKUON(クオン)も参考になり、刺し子や藍染めといったテーマへの向き合い方を比べてみると、それぞれのブランドが大切にしている価値観の違いが見えてきます。Porter Classicのバッグを楽天で探す
スタイリングと相性の良い着こなし
ポータークラシックの服は、ミリタリーやワークウェアの骨格を持ちながらも、素材そのものに独自の作り込みがあるため、シンプルなアイテムと組み合わせるだけで、程よく力の抜けた大人のスタイルにまとまりやすい傾向があります。PC KENDOのジャケットのように生地の表情が主役になるアイテムは、無地のパンツやシャツと合わせることで、素材の質感を最大限に引き立てられます。色数を抑えたコーディネートのほうが、剣道着由来の生地やインディゴ染めの色味が際立ち、ポータークラシックらしい佇まいが伝わりやすくなるでしょう。
デニムジャケットのような定番アイテムは、季節を問わず一枚投入するだけで着回しの幅が広がる汎用性の高さが魅力です。ワークシャツやニットの上に羽織るだけでも様になり、他のブランドの個性的なアイテムを引き立てる土台としても使いやすい形をしています。ワークウェアやミリタリー、日本の職人技を軸に据えたブランドという共通点で見ると、無骨な素材感と日本の伝統技法を組み合わせるvisvim(ヴィズヴィム)との組み合わせも相性が良く、異なるブランドを重ねながら、同じ方向性の世界観を作っていくという楽しみ方もできます。
バッグ類は、スーパーナイロンの経年変化を楽しみながら育てていく使い方がおすすめです。最初はハリのある表情でも、使い込むうちに色味や風合いが少しずつ変化していくため、洋服よりも長いスパンで愛着が育っていくアイテムだといえます。衣類とバッグの両方をポータークラシックで揃えるのではなく、どちらか一方を軸にして、他のブランドと組み合わせながら経年変化を楽しむという選び方も、このブランドとの付き合い方として無理のないやり方です。
古着・二次流通市場でのPorter Classicの見方
ポータークラシックは、素材開発と国内生産にこだわり続けてきたブランドだけに、古着や中古市場でも根強い需要を持つブランドの一つです。特にPC KENDOやPC SASHIKOといった素材開発の色が濃いシリーズは、生産数が限られていることもあり、状態の良いものが出回ると比較的早く動く傾向があります。伊勢丹新宿店メンズ館限定や特定店舗限定といった別注アイテムも多く、こうした希少性の高いモデルは、中古市場でも人気が集中しやすい対象になっています。
買取・販売の実績を紹介するブランド古着専門店の情報を見る限り、刺し子と剣道着素材を組み合わせたダブルジャケットや、周年記念の特別モデルなど、素材開発の背景がはっきりしているアイテムほど評価が高くなりやすい傾向がうかがえます。ただし買取価格や販売価格は、状態や仕様、販売時期によって幅があるため、具体的な金額を鵜呑みにするのではなく、あくまで参考値として捉えたほうが安全です。中古で購入する際には、複数の専門店やフリマアプリの出品を見比べながら、状態や付属品の有無を確認する習慣をつけておくと安心です。
中古で選ぶ際に特に気をつけたいのが、スーパーナイロンやデニムといった経年変化を前提にした素材の状態確認です。使い込むことを前提に作られた生地なので、ある程度の色落ちや風合いの変化はブランドの持ち味とも言えますが、単なる劣化やダメージと、意図された経年変化とを見分ける目が必要になります。縫製のほつれやジップの動き、バッグであればストラップの劣化具合なども合わせて確認し、写真だけで判断せず、可能であれば実物の質感を確かめられる環境で選ぶことをおすすめします。ジップやボタンなどの金具パーツはブランドロゴが刻印されていることも多く、細部の仕上げからも真贋や製造時期の見当がつけやすくなります。
とりわけ、剣道着の生地を用いたPC KENDOシリーズは、限られた産地でしか採れないシーアイランドコットンやスビンゴールド綿を使っていることもあり、廃盤になったモデルほど探す人が増えていく傾向があります。金沢店限定や周年記念の特別モデルのように、店舗限定・数量限定で作られたバリエーションは、通常ラインよりもさらに見つけにくく、気になるモデルを見つけたら状態を確認したうえで早めに検討したほうがよい場合もあります。Porter ClassicのPC KENDOアイテムを楽天で探す
吉田カバンという鞄作りの名門から独立して生まれたポータークラシックは、衣類と鞄の両方に同じものづくりの哲学を通してきたブランドです。長く着られる、あるいは長く使われることを前提に素材が開発されているからこそ、中古で手に取ることは、単に安く手に入れるという以上に、開発に費やされた時間や手間を、次の使い手として引き継ぐことでもあります。定期的に専門店の在庫やフリマアプリの出品を確認しておくと、探していた一着や一つのバッグに出会える機会が着実に広がっていくはずです。
まとめ — 吉田親子が受け継ぐ、メイド・イン・ジャパンの流儀
Porter Classic(ポータークラシック)は、鞄ブランドPORTERで知られる吉田カバンの創業家に生まれた吉田克幸と、写真家・作家としても活動する息子の吉田玲雄が、2007年に立ち上げたブランドです。剣道着の生地から生まれたPC KENDO、5年をかけて開発された刺し子生地のPC SASHIKO、そして経年変化を楽しめるスーパーナイロンなど、日本各地の伝統技法や素材を掘り起こし、現代の生活に合う形へと作り替えてきたところに、このブランドならではの説得力があります。
名前の響きが似ているために鞄ブランドPORTERの一部門と誤解されがちですが、実際には別法人として独立し、衣類と鞄の両方を手がけてきたという成り立ちを知ると、ポータークラシックという名前の意味がより立体的に見えてきます。デニムジャケットのような定番アイテムから、PC SASHIKOやPC KENDOのような素材開発の粋を集めた一着まで、選び方の幅が広いのもこのブランドの魅力です。中古であっても、吉田親子が積み重ねてきた研究と手間を引き継ぐという視点を持って選んでみると、一着との付き合い方がより深いものになるはずです。銀座や京都、金沢の直営店を訪れる機会があれば、店頭で生地の質感を実際に確かめてみることも、このブランドをより深く理解する手がかりになるでしょう。











