| 香水名 | 香調 | 持続性 | おすすめシーン | 編集部評価 |
|---|---|---|---|---|
| Lattafa – Ajwaa Eau de ParfumLattafa | デーツ、エレミ、レモン | しっかり続く | 秋冬・デイリー・ユニセックス | ★3.8 |
| Lattafa – Mashrabya Eau de ParfumLattafa | アップルシーシャアコード、ピンクペッパー | しっかり続く | 秋冬・夜・ユニセックス | ★4.2 |
| Armaf – Odyssey Black Forest Eau de ParfumArmaf | キャラメル、チェリー、シナモン | しっかり続く | 秋冬・夜・ユニセックス | ★4.4 |
| Swiss Arabian – Shaghaf Vanilla Toffee Eau de ParfumSwiss Arabian | トフィー、コーヒー | しっかり続く | 秋冬・夜・ユニセックス | ★4.0 |
| Nishane – A Date With Oud Extrait de ParfumNishane | デーツ、グレープフルーツ、ブラックペッパー | 非常に長い | 秋冬・夜・ユニセックス | ★4.6 |
デーツ(ナツメヤシ)という香りの正体 — 中東の食卓から立ち上る、天然の甘さ
デーツとは、ヤシ科の常緑高木ナツメヤシの果実のことです。中東や北アフリカでは古くから栽培され、天然の甘味料として食され続けてきました。日本の「なつめ(棗)」とは植物としてまったく別種ですが、名前の響きが近いためしばしば混同されます。乾燥させたデーツは干し柿やプルーンに似た、ねっとりと濃密な甘さを持ち、キャラメルやトフィーを思わせる香ばしさも併せ持っています。イスラム文化圏では断食月の終わりに最初に口にする食べ物としても知られ、単なる甘味以上の意味を持つ果実です。
香水の世界でこのデーツが主役級のノートとして扱われるようになったのは、比較的近年の動きです。従来のグルマン系香水はバニラやキャラメル、チョコレートといった王道の甘さが中心でしたが、2025年から2026年にかけて、中東発のニッチ・マスブランドを中心に、デーツを軸にしたより複雑な甘さの表現が増えています。シナモンやナツメグといったスパイス、オウドやタバコといった重厚なウッド、あるいはグレープフルーツやブラックペッパーのような辛口の対比役と組み合わせることで、単純に甘いだけでは終わらない奥行きが生まれます。国内の香水メディアではまだ「デーツ」を単独のテーマとして扱った特集がほとんど見当たらず、はちみつやキャラメルに比べると認知度はこれからという段階にあります。だからこそ、香りの選択肢を広げたい人にとっては新鮮な入り口になる香りだといえます。
デーツと近い甘さを持つ香料としては、はちみつやキャラメル、プルーンが挙げられます。ただしデーツにはこれらにはない独特のこっくりとした粘度と、干し柿にも似た繊維質を思わせる質感があり、調香の世界では単純な砂糖の甘さとは別枠で扱われることが多いようです。中東のブランドがこのノートを積極的に採用する背景には、ラマダン明けの食卓に欠かせないデーツという食文化的な結びつきに加え、近年のグルマン系香水全体が「ただ甘いだけ」から「甘さの中に複雑な陰影がある」方向へと進化してきた流れがあると考えられます。日本国内ではデーツはむしろ健康食品としての認知が先行しており、香水のノートとしての知名度はこれからという段階です。だからこそ、既存のはちみつ系・キャラメル系の特集とは違う切り口で香りを探している人にとって、見落とされがちな選択肢になり得ます。
日本の「なつめ(棗)」とは植物としてまったく別種ですが、名前の響きが近いためしばしば混同されます。
デーツの香りを選ぶときの3つの視点
デーツ系の香水は、組み合わされるノートによって印象が大きく変わります。ひとつ目の視点は「軽さと重さ」です。シトラスやスパイスと合わせたタイプは日常使いしやすく、オウドやタバコと合わせたタイプは夜のシーンや季節の変わり目に向いています。ふたつ目は「甘さの方向性」で、チョコレートやキャラメルに寄せた菓子的な甘さもあれば、ミルクやカルダモンで角を取った優しい甘さもあります。みっつ目は「使うシーン」です。中東発のブランドは香りの持続力が強めに設計されていることが多く、オフィスなど人との距離が近い場面では少量を意識すると失敗が少なくなります。以下では、この3つの視点を踏まえながら、香調の異なる5本を紹介します。いずれもデーツが公式のノートピラミッドに明記されている一本を選んでおり、名前だけの便乗ではない香りです。
デーツの香りの香水おすすめ5選
Lattafa – Ajwaa Eau de Parfum — 柑橘とデーツの軽やかな対比
柑橘の爽やかさとリコリスの甘苦さが重なり、デーツ特有の粘度のある甘さを軽やかに感じさせる構成です。香りの持続時間はこの系統の中では控えめな部類のため、こまめな付け直しを前提に選ぶとよいでしょう。
2023年に登場したLattafaのAjwaaは、トップノートにデーツ、エレミ、レモン、ベルガモットを配し、ミドルにリコリスとミルラ、ラストにベンゾインとインセンスを重ねた構成です。デーツ系の中では比較的軽やかな部類に入り、レモンとベルガモットの爽やかさがデーツの粘度のある甘さを程よく引き締めています。リコリスの独特な甘苦さが加わることで、単純な柑橘系にも単純な甘い系にも寄り切らない、中東ブランドらしい複雑な余韻が生まれます。初めてデーツ系の香水を試す人にとって、入り口として扱いやすい一本です。
Lattafa – Mashrabya Eau de Parfum — タバコとオウドスモークが纏う大人の甘さ
タバコとオウドスモークの燻したような質感が、デーツの甘さに大人びた陰影を添えています。香りの主張がかなり強いため、人との距離が近い場面では少量にとどめる工夫が必要です。
2024年発表のMashrabyaは、アップルシーシャを思わせるアコードとピンクペッパーのトップから、タバコ、シナモン、デーツのミドルへと移り、ラストはウードスモーク、キャラメル、バニラ、パチョリで締めくくられます。中東の水タバコ文化を思わせる名前が示す通り、煙たさと甘さが同居した独特の世界観を持つ一本です。デーツの甘さはタバコの苦味とウードスモークの燻したような質感によって大人びた陰影を帯び、寒い季節の夜に向く重心の低い構成に仕上がっています。香りの主張が強いため、使う量は控えめが適しています。
Armaf – Odyssey Black Forest Eau de Parfum — チェリーとデーツが描くケーキのような一本
キャラメルとチェリーの華やかな立ち上がりから、ハニーとナツメグを伴う温かい甘さへ移り変わる構成の完成度が高い一本です。甘さの密度がかなり高いため、気温の高い時期は香りがこもりやすい点に注意したいところです。
2025年に発表されたOdyssey Black Forestは、名前の通りブラックフォレストケーキ(ドイツの黒い森のチェリーケーキ)から着想を得た一本です。トップはキャラメル、チェリー、シナモン、ラクトン、白い花で華やかに始まり、ミドルでデーツ、ナツメグ、ハニーが厚みを加え、ラストはトンカビーン、バニラ、プラリネ、ムスク、ウッディノートで着地します。チェリーの印象は開いてから比較的早く後退し、そのあとにデーツとハニーの温かい甘さが主役として残るため、チェリー単体の香りというよりは、焼き菓子全体のような複合的な甘さを楽しむ設計です。甘さの密度が高いぶん、涼しい季節との相性が良い一本です。
Swiss Arabian – Shaghaf Vanilla Toffee Eau de Parfum — ミルクとデーツが溶け合うクリーミーな甘さ
ミルクとカルダモンの組み合わせで、デーツの甘さの角が丸くなり、優しい表情に仕上がっています。食後のデザートを思わせる濃厚さがあるぶん、好みがはっきり分かれやすい香りでもあります。
Shaghafシリーズの中でも2024年に加わったVanilla Toffeeは、トフィーとコーヒーのトップから、バニラ、ウォルナッツ、デーツ、ミルク、カルダモンのミドルへと展開し、ブラウンシュガー、マダガスカルバニラ、ウッディノート、トンカビーン、バニラキャビア、ベンゾイン、ムスクのラストで仕上がります。デーツの甘さがミルクとカルダモンによって角の取れた優しい表情になっているのが特徴で、他の4本と比べても最もデザート的な甘さの一本です。食後のスイーツを思わせる濃厚さがあるぶん、好みがはっきり分かれる香りでもあるため、店頭でのテスターやサンプルでの確認をおすすめします。
Nishane – A Date With Oud Extrait de Parfum — ニッチブランドが仕上げた辛口のデーツ
グレープフルーツとブラックペッパーの辛口な立ち上がりが、デーツの甘さと緊張感のある対比を作るニッチらしい設計です。取り扱い店舗が限られるため、購入前に販売経路を確認しておくと安心です。
トルコ発のニッチブランドNishaneが2025年に発表したA Date With Oudは、その名の通りデーツとオウドを主題に据えた一本です。トップにデーツ、グレープフルーツ、ブラックペッパーを置き、ミドルはレザーとフランキンセンス、ラストはアガーウッド(オウド)とトンカビーンという構成で、他の4本に比べるとはっきりと辛口・ドライな方向に振られています。グレープフルーツとブラックペッパーの立ち上がりがデーツの甘さと対比を作り、単に甘いだけで終わらない緊張感のある香りに仕上がっています。ニッチブランドらしく取り扱い店舗が限られるため、購入時は正規の取り扱い経路を事前に確認しておくと安心です。
デーツ系香水のつけ方の目安
中東発のブランドは香料の濃度が高めに設計されていることが多く、いわゆるデザイナーズブランドのオードトワレと同じ感覚で吹きかけると香りが強く残りすぎることがあります。手首や首もとに1〜2プッシュから始め、周囲の反応を見ながら量を調整するのが無難です。日中のオフィスなど人との距離が近い場面では、衣類ではなく肌の内側(手首の内側など)に少量だけつけると香りの広がりが穏やかになります。逆に、Mashrabyaのようなオウド系の重ためのタイプは、気温が下がる秋冬の夜に向いており、コートの内側など温度がこもりにくい場所につけると香りの変化を長く楽しめます。デーツ特有の粘度のある甘さは体温で少しずつ立ち上がってくるため、つけてから30分ほど経ってからの印象で最終判断すると失敗が少なくなります。
購入時に気をつけたいこと
今回紹介した5本のうち、LattafaやArmaf、Swiss Arabianは中東を拠点とするブランドで、日本国内では正規代理店経由の通販モールに加え、並行輸入という形で流通していることも珍しくありません。並行輸入自体は違法なものではありませんが、製造からの流通経路が長くなるぶん、保管状態や賞味期限にあたる使用期限の管理は販売者によって差が出やすい点は知っておきたいところです。購入前には出品ページの説明とレビューを確認し、極端に相場から外れて安い出品や、ブランド名の表記が不自然な出品は避けるのが基本になります。NishaneのようなニッチブランドはSNS上で話題になる一方、取り扱う店舗の数自体が少ないため、在庫や販売時期が変動しやすい点もあわせて留意しておくとよいでしょう。
よくある質問
Q. デーツの香りは甘すぎませんか。
甘さの強さは商品によって幅があります。Ajwaaのように柑橘やリコリスで軽さを持たせたタイプもあれば、Shaghaf Vanilla Toffeeのように甘さを前面に出したタイプもあります。甘さに不安がある場合は、辛口方向のNishane A Date With Oudから試すのもひとつの方法です。
Q. 中東発のブランドは品質や正規品の見分けが難しそうです。
LattafaやArmafは近年、日本国内の正規輸入代理店や大手通販モールでの取り扱いが広がっているブランドです。購入時は出品者の実績やレビューを確認し、極端に相場から外れた価格の出品は避けるのが基本です。
Q. 男女どちらでも使えますか。
今回紹介した5本はいずれも公式にユニセックス、または男女兼用として展開されている香水です。デーツ自体に性別的な偏りのある香料ではないため、好みの甘さの方向性で選んで問題ありません。
Q. 他のグルマン系香水とどう違いますか。
グルマン系香水の系譜で紹介しているバニラやキャラメルが軸のタイプに比べると、デーツはスパイスやウッド、オウドとの組み合わせが前提になっていることが多く、単純な菓子的な甘さよりも一段複雑な陰影を持つ点が特徴です。
Q. 他の香水と重ね付け(レイヤリング)はできますか。
デーツ系はすでに香りの構成要素が多いため、無理に重ねるよりも単体で楽しむ方が輪郭を保ちやすい傾向があります。どうしても重ねたい場合は、Ajwaaのような柑橘寄りの一本にシトラス系のオーデコロンを1プッシュだけ足す程度にとどめ、香りの主役がぼやけないよう量を控えめにするのがコツです。
まとめ — 干した果実の甘さから広がる、新しい選択肢
デーツは、はちみつやキャラメルに比べるとまだ国内での知名度が高いとはいえないノートですが、中東発のブランドを中心に確実に存在感を広げています。柑橘と合わせた軽やかなAjwaa、タバコとオウドスモークで大人びたMashrabya、ケーキのような複合的な甘さのOdyssey Black Forest、ミルクとカルダモンで優しく仕上げたShaghaf Vanilla Toffee、辛口でドライなA Date With Oudと、同じデーツというノートでも表情はさまざまです。アラビアン香水のおすすめや香りの系統別ガイドも参考にしながら、自分の好みに近い一本から試してみてください。ニッチフレグランスならではの複雑な設計を求めるなら、A Date With Oudのようなブランドにも目を向ける価値があります。











