代々木上原駅は小田急線と東京メトロ千代田線が乗り入れる駅で、新宿や表参道からごく短い乗車時間で着きます。この駅から東へ向かうと小田急線の代々木八幡駅があり、その先に富ヶ谷の交差点と代々木公園が広がります。駅の周辺には小さな飲食店やベーカリーが並び、一本入ると低層の住宅が続くという街並みで、渋谷や原宿のように大きな商業ビルが連なる区域とは成り立ちが違います。古着店もその住宅街の一階部分や地下に、看板を大きく出さない形で点在しています。
行政区分でいえば渋谷区の富ヶ谷、西原、元代々木町、上原といった町名にあたる範囲で、この四つの町は互いに隣り合っています。代々木上原駅を起点にすると西原と上原は徒歩数分、富ヶ谷と元代々木町も歩いて移動できる距離に収まります。つまり一日で複数の店をめぐる前提が成り立つエリアで、電車での移動を挟まずに回れる点が、買い物の計画を立てるうえでの前提条件になります。それぞれの店が小規模で在庫の総量が限られるぶん、複数店を続けて見ることが実質的な選択肢の広さにつながります。
この一帯に個人経営の古着店が増えた経緯として、しばしば挙げられるのが渋谷の宮益坂で三十年以上営業した「OKIDOKI」が2016年に富ヶ谷へ移転した出来事です。渋谷の中心部から少し離れた住宅街へ、長く続いた店が拠点を移したことが、同じように独立して店を構えようとする人たちにとってひとつの前例になったという見方があります。実際にこの数年で、横浜から移ってきた店や、ニューヨークの店の国内一号店、大阪の老舗の東京店といった形での出店が続いています。
もうひとつの特徴は、ヨーロッパで買い付けた在庫を扱う店の比率が高いことです。アメリカ古着を主軸にする店ももちろんありますが、イギリスやフランスを中心に仕入れた品を並べる店が近接して存在するため、アメリカ古着中心の街とは棚の風景が変わります。大型チェーンの古着店はほとんど入っておらず、店ごとに買い付け担当者の判断がそのまま在庫に出るという構図です。以下では、編集部が公開情報をもとに整理した七つの店を、扱う品の性格とあわせてまとめます。
代々木上原・富ヶ谷の古着店
Mr.Clean — 明るい照明でコンディションを確かめられるアメリカ古着
富ヶ谷一丁目、代々木公園にほど近い場所にあるアメリカ古着の店です。バイヤーの栗原道彦氏が2018年に横浜で最初の実店舗を開き、2020年にこの富ヶ谷へ移転しました。扱う範囲はミリタリーやデニムから、90年代から2000年代にかけてのレギュラー古着まで幅があり、年代の古さだけを基準にしない構成になっています。店づくりの面で複数の媒体が触れているのが照明の考え方で、店内を白色灯で明るく保ち、生地の色味や傷みの度合いを客が自分の目で確認できる状態にしている点です。古着は同じ品番でも一着ごとに状態が違いますから、暗い照明のもとでは見落とす小さな穴や色抜けが、明るい光の下では判断材料として拾えます。これは在庫の性格というより買い物のしやすさに直結する部分で、初めて古着を買う人にとっても検討しやすい環境といえます。営業時間は公式Instagramの記載では12時から19時、定休日なしとなっていますが、媒体によっては12時から20時で月曜定休と書かれているものもあります。表記が一致していないため、訪問前に公式Instagramの最新の投稿で確かめておくと確実です。
SNAK — 気軽さを店名に込めたアメリカンヴィンテージ
上原三丁目にある店で、スナック菓子のように気軽に手に取ってほしいという思いから名前が付けられました。その名の通り、構成は二層になっています。ひとつは1960年代から90年代にかけてのアメリカンヴィンテージで、もうひとつは買いやすい価格帯のレギュラー古着です。ヴィンテージだけで棚を埋めるのではなく、日常的に着られる価格の品を同じ空間に並べることで、はじめて古着を買う人と年代物を探しに来た人の両方が入れる間口になっています。衣類のほかにオールドティファニーなどのアクセサリーも扱っており、服とあわせて小物まで見られる点も特徴です。内装は天井と壁がグリーン一色で塗られ、ハンドペイントが施されています。古着店の内装は白い壁か無機質な什器で構成されることが多いなかで、色の付いた空間に服が並ぶと、掛かっている一着の色の出方も変わって見えます。営業時間は公式Instagramの記載で平日が14時から21時、土日祝が13時から20時です。平日の夜まで開いている点は、仕事帰りに寄る前提で考えるときに効いてきます。
OKIDOKI — 宮益坂から富ヶ谷へ移った老舗
渋谷の宮益坂で三十年以上営業したのち、2016年に富ヶ谷一丁目へ移転した店です。この移転がエリアの古着店の増加につながったと語られることが多く、代々木上原と富ヶ谷を古着の街として語るときの起点になっています。扱うのはアメリカ古着とヨーロッパ古着の両方で、レギュラーからヴィンテージまで幅が広く、どちらか一方の系統に寄っていません。特徴的なのは、商品タグに分かる限りの年代を記載していることです。古着の年代はタグの形状や縫製の仕様から推定するもので、判断には知識と経験が要ります。それを店の側が明示しているため、買う側は自分の目で年代を見分ける訓練をしながら答え合わせができます。2018年4月にはレディース中心の二号店「OKIDOKI YOYOGIUEHARA」を代々木上原駅の近くに出しており、二店舗をあわせて回るという見方もできます。営業時間は12時から20時で無休です。なお通販と取り置きは行っていないことを公言しているため、気になる一着があれば店頭でその場で判断する必要があります。
FRONT 11201 — ブルックリンの店の国内一号店
元代々木町にある店で、ニューヨーク・ブルックリンの「FRONT GENERAL STORE」の国内一号店として2021年6月4日にオープンしました。オーナーの西山育貴氏は、ブルックリンのフリーマーケット「Brooklyn Flea」への出店から事業を始めた経歴を持ちます。フリーマーケットという出自は在庫の幅にそのまま出ていて、アメリカとヨーロッパのヴィンテージ衣類に加え、シルバー925のメキシカンジュエリー、フレグランス、生活雑貨までが並ぶジェネラルストアの構成になっています。服だけを目的に行く店というより、身の回りのものをまとめて見る場所として成り立っている点が、このエリアの他店との違いです。ジュエリーやフレグランスが同じ空間にあると、一着の古着をどう着るかという発想が服の外側まで広がります。2024年4月13日に元代々木町21-9から現在の住所へ移転しています。営業時間は平日と土曜が13時からで、平日は19時30分まで、土曜は20時まで、日曜は12時から19時、定休日は火曜です。曜日によって開店と閉店の時刻が変わるため、訪問日の曜日をあらかじめ確認しておくと迷いません。
Color at Against — 釣りとアウトドアを軸にしたセレクト
西原三丁目、代々木上原駅から徒歩2分の場所にある2012年オープンの店です。カラアゲの通称で呼ばれることもあります。鮮やかな黄色い外壁が目印になっていて、住宅街のなかでも位置が分かりやすい建物です。セレクトの軸は釣りやアウトドアのカルチャーをファッションに落とし込むという考え方で、古着とオリジナル、新品が同じ空間に混在します。古着だけで構成された店とは前提が違い、年代物を探すというより、ひとつの価値観のもとに集められたものの中から選ぶという買い方になります。雑貨も扱っており、服以外の道具まで含めて同じ目線で編集されている点が、店の性格をよく表しています。アウトドアや釣りの機能から生まれた服は、素材やディテールに理由があるものが多く、その背景ごと理解して選びたい人には手がかりの多い棚といえます。営業時間は公式Instagramの記載で13時から18時、水曜定休です。ただし二次情報では不定休とするものもあるため、訪問前に公式Instagramで直近の営業告知を確認してから向かうことをおすすめします。
fini asagi antiques — 大阪の老舗が東京で開いた店
西原三丁目、代々木上原駅から徒歩3分の場所にある店で、大阪アメリカ村の老舗ヴィンテージショップ「ASAGI」の東京店にあたります。扱うのはフランスを中心としたヨーロッパとアメリカのアンティークとヴィンテージで、衣類のほかにデザイナーアイテムやファブリックまで範囲が及びます。アンティークという語がつくと展示に近い品ぞろえを想像しがちですが、この店の編集は一点物でありながら現代の日常着として着られるという線で引かれています。古いものをそのまま古いものとして並べるのではなく、いま着る服の一部として成立するかどうかを基準に選ばれているという意味です。ファブリックまで扱っているのは、布そのものの質や色を見て納得したい人にとっては貴重で、衣類の生地を判断する目を養う材料にもなります。営業時間は月曜から金曜が12時30分から18時30分、土日祝が13時から19時です。ラストエントリーは閉店の20分前と定められているため、閉店間際に駆け込む計画は立てず、時間に余裕を持って向かう必要があります。
Swallow Equipments — イギリスとフランスを中心としたヨーロッパヴィンテージ
西原三丁目、代々木上原駅の北口から徒歩2分という近さにある店です。イギリスとフランスを中心に、ヨーロッパ各地で買い付けたヴィンテージを扱います。並ぶのはミリタリーやワークウェアを出自とするアイテム、レザージャケット、民族調のデザインなどで、アメリカ古着を主体とする店とは在庫の毛色がはっきり違います。同じミリタリーやワークウェアという括りでも、アメリカのものとヨーロッパのものではシルエットの考え方も生地の選び方も異なりますから、両方を見比べる機会があると自分の好みがどちら寄りなのかが分かります。代々木上原から富ヶ谷にかけてのエリアでアメリカ古着の店とこの店を同じ日にめぐれば、その比較が一日のうちに成立します。電話番号は03-6804-9148で、営業時間は13時から19時、木曜定休と公式サイトで確認できます。駅からの距離が短いので、他の店を回る前後の時間に組み込みやすい位置にあります。
オーナーの西山育貴氏は、ブルックリンのフリーマーケット「Brooklyn Flea」への出店から事業を始めた経歴を持ちます。
このエリアで古着を選ぶときの実践ポイント
まず時間の組み立てです。このエリアの店は開店が12時から14時ごろに集中し、閉店も18時から20時のあいだに分かれます。午前中に着いても開いていない店が多いため、昼過ぎから動き出して夕方までにめぐるという計画が現実的です。定休日は火曜、水曜、木曜と店ごとに分散していますから、目当ての店が複数あるなら、全店が開いている曜日を先に確定させてから日程を決めると無駄がありません。Mr.CleanとColor at Againstは媒体によって営業時間や定休日の記述が食い違っているため、この二店については公式Instagramの直近の投稿を必ず確認してください。
次に、在庫の系統を意識した回り方です。アメリカ古着を主軸にするMr.CleanやSNAKと、ヨーロッパ買い付けを軸にするSwallow Equipmentsやfini asagi antiquesでは、同じミリタリーやワークウェアでも並ぶものが変わります。両系統を扱うOKIDOKIと、衣類以外まで含むFRONT 11201を挟むと、比較の基準が一日のうちに手元にそろいます。ヨーロッパ古着の系統をもっと広く見たいという場合は、東京のヨーロピアン古着専門店もあわせて確認すると、都内での買い付け傾向の違いが見えてきます。
買う段階では、コンディションの確認を自分の目で行うことが前提になります。Mr.Cleanのように明るい照明を保っている店であれば見落としは減りますが、どの店でも脇下や襟裏、袖口といった傷みやすい箇所は手に取って確かめる価値があります。OKIDOKIのようにタグへ年代を記載している店では、その表示を手がかりにサイズ表記の年代差を意識すると失敗が減ります。年代が古いほど同じ表記でも実寸が変わるためです。あわせて、OKIDOKIは通販と取り置きを行っていないと公言していますから、迷った一着はその場で決めるという心構えで臨むほうが後悔が少なくなります。
ヨーロッパの服を続けて見ていくと、装飾よりも生地と用途で作られた一着に目が留まる瞬間があります。そうした基準がはっきりしてきたときに、比較の物差しとして知っておきたいのが英国のワックスドコットンで知られるBarbourです。もとの用途から形が決まっている服の考え方を押さえておくと、店頭で手に取った一着の作りを読み解きやすくなります。
まとめ
代々木上原から富ヶ谷、西原、元代々木町にかけての一帯は、大型チェーンの古着店がほとんど入らないまま、個人経営の小さな店が徒歩圏に積み重なってきたエリアです。渋谷の宮益坂から2016年に移ってきたOKIDOKIを起点のひとつとして、横浜から移転した店、ニューヨークの店の国内一号店、大阪の老舗の東京店が集まり、アメリカ古着とヨーロッパ古着の両方を近い距離で見比べられる状態ができあがりました。店の数が多いわけではありませんが、一軒ごとに買い付けの判断がはっきり出ているため、回る意味のある密度になっています。
営業時間や定休日は変更されることがあり、特に媒体間で記述が分かれる店については公式の発信を確認してから向かうのが確実です。住宅街のなかを歩く時間も含めて、午後から夕方までを見込んで計画を立ててください。ほかのエリアの古着店とあわせて検討したい場合は、東京の古着屋ガイドで街ごとの性格の違いを確認しておくと、次に向かう先を選びやすくなります。











