DOMESTIC BRAND

シュタイン(stein/ssstein)— 浅川喜一朗が「無から有へ」描く、ミニマルとモードのはざま

ニュートラルなベージュのコートをまとったメンズ(stein/sssteinのミニマルでモードな世界観イメージ)

シュタイン(stein/ssstein)は、デザイナーの浅川喜一朗が2016年に始めた日本のメンズブランドです。たった3型のパンツからスタートしたこのブランドは、わずか数年で東京を代表するモードブランドの一つへと成長しました。きれいなシルエットと、引き算で磨かれたミニマルな佇まい。それでいて、どこか緊張感のある現代的な空気をまとっています。この記事では、浅川喜一朗の歩みとブランドの思想、代表的なアイテム、そして中古で手に入れるときの選び方まで、順を追って解説します。

浅川喜一朗という人

シュタインを語るうえで欠かせないのが、デザイナーである浅川喜一朗の存在です。浅川は1986年に山梨県で生まれました。ファッションの専門教育を受けてキャリアを始めたというよりも、現場で服と向き合いながら自分の感覚を育ててきた人物です。

ブランドを立ち上げる前、浅川は原宿のセレクトショップで経験を積みました。店頭で多くの服に触れ、国内外のさまざまなブランドを見つめるなかで、自分が本当に着たい服、まだ世の中にない服のかたちを少しずつ見つけていきます。既製のものを並べて売る立場から、自らつくる立場へ。その移り変わりのなかで、シュタインの原型は静かに育まれていきました。

2016年4月、浅川は東京・渋谷区神宮前にセレクトショップ「carol」を開きます。そして同じ年に、自身のブランドであるシュタインを始動させました。最初に世に問うたのは、たった3型のパンツでした。多くのブランドが華やかなコレクション全体で勝負を仕掛けるなか、浅川はあえて少ない型に絞り、その一本一本に自分の考えるシルエットと素材の答えを込めたのです。

この「まず少なく、深く」という姿勢は、その後のシュタインの方向性を決定づけました。流行のアイテムをひと通りそろえて見栄えのするコレクションをつくるのではなく、自分が本当に必要だと思う服を、納得のいくかたちになるまで突き詰める。セレクトショップで数えきれないほどの服を見てきた浅川だからこそ、世の中にすでにある服をもう一度つくる必要はないと考えていたのでしょう。その結果として生まれた3型のパンツは、シンプルでありながら他のどのブランドとも違う輪郭を持っていました。

2016年4月、浅川は東京・渋谷区神宮前にセレクトショップ「carol」を開きます。

「無から有へ」というブランドの思想

シュタインのコンセプトとして掲げられているのが、「Stillness and motion , minimal and maximal , mode and tradition.」という言葉です。日本語にすると、静と動、ミニマルとマキシマル、モードと伝統。相反するふたつのあいだに横たわる、その「はざま」の部分を表現するというのが、浅川の一貫した姿勢です。

「無から有へ。そのはざまの部分を表現する」。この言葉が、シュタインのものづくりをよく表しています。シンプルに見える一着のなかに、実は緻密な計算が隠れています。装飾を削ぎ落としたミニマルな見た目でありながら、立体的なパターンや独特のシルエットによって、着たときに思いがけない存在感が立ち上がる。静かなのにどこか動きを感じさせる。そうした矛盾を一着のなかに同居させることに、浅川はこだわり続けています。

このブランドが多くの人を惹きつける理由のひとつが、その「ちょうどよさ」にあります。奇抜すぎて手が出ないわけでもなく、かといって完全に無個性なわけでもありません。きれいめにも、少しモードにも振れる絶妙な立ち位置。日常に着られるリアルさと、ファッションとしての見ごたえ。そのふたつのはざまを、シュタインは見事に押さえています。

「ミニマル」と聞くと、ただ装飾を省いただけの素っ気ない服を思い浮かべる人もいるかもしれません。しかしシュタインのミニマルは、それとは少し違います。表面的にはシンプルに見えても、その下には複雑なパターンや、見えない場所への工夫が幾重にも積み重なっています。たとえば一枚のシャツでも、肩の落ち方や袖の付け方、襟の角度といった細部が緻密に設計され、着たときに初めてその違いが立ち上がってきます。静かな見た目のなかに、つくり手の濃密な思考が詰まっている。これがシュタインのミニマリズムの正体です。

「モードと伝統」というコンセプトの後半も、シュタインを理解するうえで欠かせません。浅川のつくる服は、コートやスラックスといった昔から続く定番の型を下敷きにしています。その伝統的なかたちを土台にしながら、シルエットや素材の選び方によって、現代のモードとして成立させる。まったく新しい奇抜なものを発明するのではなく、すでにある服の文脈を踏まえたうえで、そこに今の時代の感覚を注ぎ込む。その手つきの確かさが、シュタインに普遍的な強さを与えています。

3型のパンツから始まった成長

2016年に3型のパンツでスタートしたシュタインは、翌2017年には本格的なコレクションの展開を始めます。トップス、アウター、そしてシューズや小物へとアイテムの幅を広げながら、ブランドとしての世界観を少しずつ厚みのあるものにしていきました。

シュタインの名前を一気に押し上げたのが、ワイドシルエットのパンツでした。深く取られた股上、ゆったりとしたシルエット、それでいてだらしなく見えない美しいドレープ。この一本に憧れてシュタインを知ったという人は少なくありません。きれいに落ちるシルエットは、上半身をコンパクトにまとめるだけで全身のバランスが決まる、という着こなしのしやすさにもつながっています。

そして2023年には、東京コレクションでランウェイショーのデビューを果たしました。セレクトショップの一角から始まったブランドが、東京を代表するファッションの舞台に立つ。これはシュタインにとって、そして応援してきたファンにとっても、大きな節目となりました。少ない型から丁寧に積み上げてきたものづくりが、確かな評価へと結実した瞬間です。

素材とパターンへのこだわり

シュタインの服を実際に手に取ると、まず生地の質の高さに気づきます。シーズンによって選ばれる素材はさまざまですが、ウールやカシミヤといった上質な天然素材を用いたアウターは、このブランドの真価がよく表れる部分です。カシミヤとラムウールを組み合わせた生地は、見た目の上品さだけでなく、軽さと暖かさ、そして体に沿う柔らかなドレープを生み出します。

素材と同じくらい、いや、それ以上に重要なのがパターン、つまり型紙の設計です。シュタインのシルエットの美しさは、生地の良さだけで成り立っているわけではありません。どこで身体から布を離し、どこで沿わせるか。立体的に裁断された一枚一枚のパーツが組み合わさることで、平面の布が着る人の動きに合わせて美しく動く立体へと変わります。ハンガーに掛かった状態と、実際に袖を通した状態とで印象が大きく変わるのも、このパターンへのこだわりゆえです。

派手なロゴや装飾に頼らないぶん、シュタインの服はこうした目に見えにくい部分にこそ価値が宿ります。ぱっと見ただけでは伝わりにくいかもしれませんが、一度袖を通せば、その違いははっきりと感じ取れます。この「着てわかる良さ」が、シュタインを長く愛用するファンを生み出してきた理由のひとつだといえるでしょう。

東京のモードシーンのなかのシュタイン

シュタインが登場した2010年代後半は、東京から新しい感覚を持ったブランドが次々と生まれた時期でもありました。きれいなシルエットと上質な素材で、日常に着られるモードを提案する。そうした流れのなかで、シュタインは確かな存在感を放ちました。セレクトショップの店主でもある浅川は、つくり手であると同時に、服を売る現場とお客さんの反応をよく知る立場でもあります。その両方の視点を持っていることが、シュタインの服に独特のリアリティを与えています。

ファッションが好きな人ほど唸らせる凝ったつくりでありながら、専門的な知識がなくても素直に「かっこいい」と思える分かりやすさ。この二面性が、シュタインを幅広い層に支持されるブランドへと押し上げました。古着やセレクトショップを通じてその名前を知り、ファンになっていった人も数多くいます。少ない型から丁寧に始め、評価を積み重ねてきた歩みそのものが、シュタインというブランドの信頼を築き上げました。

2024年、steinからsssteinへ

シュタインを追いかけるうえで知っておきたいのが、ブランド名の表記の変更です。2024年の秋冬シーズンより、ブランドロゴが「stein」から「ssstein」へと改められました。読み方は変わらず「シュタイン」のままですが、アルファベットのつづりが変わっています。

中古市場では、この改名前と改名後のアイテムが混在しています。タグやロゴの表記が「stein」となっているものは2024年より前のシーズン、「ssstein」となっているものはそれ以降、というのが大まかな見分け方の目安です。古着として探すときには、この表記の違いを頭に入れておくと、おおよその年代を推し量る手がかりになります。どちらの表記であっても、ブランドとしての連続性は保たれていますので、安心して選んでください。

代表的なアイテム

シュタインの魅力を最もよく伝えるのが、シルエットの美しいパンツです。ワイドにとられた一本は、ただ太いだけではありません。穿いたときに膝から裾にかけてきれいに落ちるよう、生地の重さやパターンが緻密に設計されています。シュタインを初めて試すなら、まずこのパンツから入る人が多いのも納得です。

アウター類も、このブランドの実力がよく表れる部分です。カシミヤとラムウールを組み合わせた上質な素材のコートや、バルカラーコート、ダブルブレストのコートなど、定番のかたちを現代的なシルエットで仕立て直した一着がそろっています。クラシックな型でありながら、肩の落とし方や着丈のバランスに今の空気が宿っているのが、シュタインらしいところです。レザーのカーコートのように、素材感で見せる重厚な一着も手がけています。

デニムウェアも見逃せません。きれいめに寄せたシュタインの世界観のなかで、デニムは適度な抜け感とリアルさを添えてくれる存在です。シャツやカットソーといったトップスも、一見シンプルながら、襟元の処理や身幅のバランスに独自の工夫が効いています。どのアイテムにも、派手な装飾ではなく形と素材そのもので語ろうとする姿勢が貫かれているのが、シュタインらしさです。

シュタインが似合う人、向く着こなし

シュタインは、きれいめなスタイルを基調にしながら、少しだけモードな空気を足したい人によく似合います。一着で完結する強い個性を持ちながら、その個性が決して押しつけがましくないため、手持ちの服とも合わせやすいのが特徴です。

たとえば、シュタインのワイドパンツに、無地のニットやシャツを合わせるだけで、全体がぐっと洗練されて見えます。上半身をすっきりとまとめ、下半身にボリュームを持たせるバランスは、体型を選ばず多くの人に取り入れやすい着こなしです。色数を抑え、黒やグレー、ベージュといった落ち着いたトーンでまとめると、シュタインの持つ静かな緊張感がより引き立ちます。

逆に、たくさんの色や柄を盛り込んだにぎやかなスタイルよりも、引き算で見せるミニマルなコーディネートのほうが、このブランドの良さは際立ちます。一着の存在感を信じて、まわりをそぎ落とす。そうした着こなしを楽しめる人にこそ、シュタインはふさわしいブランドだといえます。

季節に応じた一枚の選び方も覚えておくと役立ちます。春や秋なら、軽く羽織れるシャツやブルゾン、あるいは薄手のコートが活躍します。シュタインのアウターは、肩のラインや着丈のバランスが計算されているため、Tシャツ一枚の上にさらりと羽織るだけで様になります。冬には、カシミヤやラムウールを使った厚手のコートが頼りになります。上質な素材の暖かさと、すっきりとしたシルエットを両立できるのは、定番の型を現代的に仕立て直すシュタインならではの強みです。

足元との合わせ方も、シュタインの印象を大きく左右します。ワイドなパンツには、ボリュームのあるレザーシューズやブーツを合わせると、全体のバランスが取りやすくなります。逆に、軽さを出したいときはきれいめのスニーカーを選ぶと、抜け感のある今っぽい着こなしに仕上がります。シュタインはシルエットそのものが主役になる服なので、足元はあえて主張を抑え、全体の調和を意識すると失敗が少なくなります。

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中古でシュタインを選ぶときのポイント

シュタインは中古市場でも人気が高く、新品では完売してしまった型や、過去のシーズンの一着を探す楽しみがあります。古着として手に入れるときには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。

まず確認したいのが、先ほど触れたタグの表記です。「stein」なのか「ssstein」なのかで、おおよその年代がわかります。自分が探しているシーズンや、好みのシルエットがどの時期のものかをあらかじめ調べておくと、選びやすくなります。シーズンによってパンツの太さや着丈の設定が少しずつ異なるため、同じ「ワイドパンツ」でも印象が変わることがあるからです。

次に大切なのが、シルエットの状態です。シュタインの魅力は、計算されたきれいなドレープにあります。中古の場合、保管状態や着用の頻度によって、本来のシルエットが崩れていることもあります。可能であれば実物を確認し、生地のハリやアウトラインがしっかり保たれているかを見てください。特にウールやカシミヤを使ったアウターは、毛玉や型崩れが出やすいので、肩や袖まわりを丁寧にチェックすると安心です。

サイズ選びも重要です。シュタインはもともとゆとりのあるシルエットで設計されているため、いつもの感覚でサイズを選ぶと、想像以上に大きく感じることがあります。肩幅や身幅、股上などの実寸を確認し、自分の体に合うバランスを見極めましょう。大きめに着るのが前提のデザインも多いため、好みの抜け感に合わせて選ぶのがおすすめです。

もうひとつ、中古ならではの利点に触れておきます。シュタインのような上質な天然素材を使った服は、適切に手入れをすれば長く着られるように仕立てられています。そのため、状態の良い中古品であれば、新品に近い価値を、より手の届きやすい価格で楽しめる場合があります。とくに過去のシーズンにしか存在しなかった型や色は、新品では二度と手に入らないこともあります。気に入った一着に出会えたなら、それは一点ものとの巡り合わせだと考えてよいでしょう。

手入れの面でも、いくつか知っておくと安心です。ウールやカシミヤのアウターは、着用後にブラッシングで表面のほこりを払い、シーズンオフには防虫対策をして保管すると、風合いを長く保てます。シルエットを命とするシュタインの服だからこそ、ハンガーの選び方ひとつでも仕上がりが変わります。肩の形に合った厚みのあるハンガーに掛けて休ませることで、本来のラインを崩さずに着続けられます。中古で手に入れた一着も、こうした日々の積み重ねで、自分だけの経年変化を育てていけます。

シュタインのアウターやデニム、その他のアイテムは、下記からも探せます。状態とサイズをよく確かめながら、長く付き合える一着を見つけてください。

価格と価値の考え方

シュタインの服は、いわゆるファストファッションと比べれば、決して安い買い物ではありません。とくにカシミヤやラムウールを使ったアウターは、まとまった金額になります。それでも多くの人が手を伸ばすのは、価格に見合うだけの価値が、確かにそこにあると感じられるからです。

その価値は、いくつもの要素から成り立っています。上質な天然素材、緻密に設計されたパターン、流行に左右されにくい普遍的なデザイン。これらが組み合わさることで、一着を長く着続けられる服になります。一度買えば何年も付き合える服は、結果として一年あたりの満足度が高くなります。安い服を何度も買い替えるよりも、気に入った一着を大切に着るほうが、心の豊かさにつながるという考え方もあるでしょう。

もちろん、いきなり高額なアウターから始める必要はありません。先ほども触れたように、まずはパンツやトップスといった比較的手の届きやすいアイテムから試し、ブランドの感覚が自分に合うと確かめてから、少しずつ広げていくのが賢い向き合い方です。中古をうまく活用すれば、その入り口はさらに広がります。自分のペースで、無理のない範囲でシュタインの世界を楽しんでください。

よくある疑問

シュタインを初めて知る人から、よく寄せられる疑問にも触れておきます。まず「stein と ssstein は別のブランドなのか」という点です。これは同じブランドで、2024年の秋冬から表記が変わっただけです。読み方はどちらも「シュタイン」で、デザイナーも変わっていません。中古で両方の表記を見かけても、戸惑う必要はありません。むしろ、つづりの違いはその一着がいつ頃つくられたものかを知る手がかりになるので、年代を推し量る目印として活用するとよいでしょう。古い表記だからといって価値が下がるわけではなく、むしろ過去のシーズンにしか存在しなかった型や色との出会いを楽しめる、中古で探すからこそ味わえる面白さもあります。

「サイズはどう選べばよいか」もよく聞かれます。シュタインはゆとりのあるシルエットが基本なので、普段着ているサイズより、ひとつ下を選んでもゆったり着られることがあります。ただしシーズンや型によって設定が異なるため、肩幅や着丈、股上といった実寸を必ず確認してください。大きく着るのが前提のデザインも多いので、どのくらいの抜け感が好みかをイメージしてから選ぶと、失敗が少なくなります。

「最初の一着には何がおすすめか」という質問も多くあります。シュタインらしさを最も手軽に味わえるのは、やはりシルエットの美しいパンツです。手持ちのトップスと合わせるだけで、いつもの着こなしが洗練されて見えます。アウターは価格帯が上がりますが、長く使えることを考えれば、ここぞという一着として狙う価値があります。まずはパンツで雰囲気をつかみ、気に入ったらアウターへ広げていく。そんな順番が、シュタインを無理なく楽しむ近道です。

まとめ

シュタイン(stein/ssstein)は、浅川喜一朗が2016年にわずか3型のパンツから始めた日本のブランドです。静と動、ミニマルとマキシマル、モードと伝統。相反するもののはざまを描くという一貫した思想のもと、きれいなシルエットと現代的な緊張感を両立させた服づくりで、東京を代表するモードブランドの一つへと成長しました。2024年には名称が「ssstein」へと改められ、新たな歩みを続けています。

派手さで勝負するのではなく、形と素材そのもので語る。そんなシュタインの服は、流行に左右されにくく、長く愛用できる懐の深さを持っています。セレクトショップの現場を知るデザイナーがつくるからこその着やすさと、ファッションとしての見ごたえ。その両方を一着のなかに収めているところに、このブランドの真価があります。きれいめのスタイルにモードな一さじを加えたい人にとって、これほど心強い相棒はそう多くありません。最初の一本のパンツから、ここぞというときのアウターまで、付き合い方は人それぞれです。気になるアイテムがあれば、まずは下記のリンクから、自分にとっての一着をじっくり探してみてください。

編集方針について — この記事は GUZ FASHION 編集部のDOMESTIC BRANDカテゴリの編集方針に沿って制作されています。

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