PERFUME

Montale — パリ発・ウードに特化したパワフルニッチ香水

パリ・サントノレ通りに本店を構える Montale(モンタール) は、2000 年代以降のニッチ香水ブームの中で「ウード(沈香)の門を欧米のフレグランス愛好家へ開いた」存在として語られるブランドです。元 Creed の調香師ピエール・モンタールが、サウジアラビア王室での経験を持ち帰ってパリで立ち上げ、銀色のアルミニウムボトルと、誰が嗅いでも一発でわかる強い残香を旗印にしてきました。本稿では Montale の成り立ち、看板である Aoud コレクション、グルマン・フローラル系のヒット作、ボトル設計、そして編集部としての見立てを順に整理します。

Montale と Pierre Montale — 元 Creed 調香師がサウジ王室で得たもの

Montale を理解する出発点は、創業者ピエール・モンタール(Pierre Montale)個人のキャリアにあります。フランスのフレグランス業界で長く修練を積み、1980〜90 年代には Creed をはじめとする欧州のメゾン系ブランドで調香に関わったとされ、その後サウジアラビア王室の専属調香師として中東で 7 年ほど活動した経歴を持つ、と公式およびニッチ香水系メディアでは紹介されています(具体的な在籍年は公表が分かれるため、購入判断の際は各小売側の説明も合わせて確認することをおすすめします)。

中東での経験が決定的だったのは、「香りの素材」としてのウードを、欧州の調香言語に翻訳して持ち帰った点です。中東圏ではウード(アラビア語で “オウド”、日本の沈香に近いアガーウッドの樹脂香)は宗教儀礼や生活の所作に深く根付き、香水というよりも「焚く香り」「肌に直接たらすオイル」として扱われてきました。これを欧州式のアルコール香水のフォーマットに落とし込み、フレンチ・スタイルの構造(トップ/ミドル/ベース)と中東のリッチな樹脂感を融合させたのが、2000 年代初頭の Montale のスタートラインです。

同時期に、欧州ではニッチ香水という新しいカテゴリが立ち上がっていました。マス向けデザイナーズ香水(CK、DKNY、Dior などのライフスタイル文脈の中で流通する一般向け香水)とは別軸で、調香師個人やパリ/グラース系の独立メゾンが、原材料の濃度や個性を前面に出した小ロット香水を出していく流れです。Montale はこのうねりに、Maison Francis Kurkdjian や Le Labo、Amouage より少し早いタイミングで、「中東素材を堂々と扱うパリのニッチ」というポジションで参入しました。

もうひとつ Montale の特徴は、リリース数の多さです。一般的なデザイナーズブランドが年に数本のリリースに留めるのに対し、Montale は同じ素材(特にウード、バラ、サフラン、アンバー)を主役にしながら、配合と方向性を少しずつ変えたバリエーションを毎年のように発表してきました。これは「コレクションを巡って自分好みの 1 本を見つける」体験を意図したラインナップで、ブランドのカタログを眺めると、初心者には少し圧倒されるほどの本数が並びます。中東ニッチに踏み込みたいけれど、香水好きの語彙がまだ手元にない、という方は次の シグネチャー香水の選び方ガイド も先に読んでおくと、ブランドの分厚いカタログから自分の軸を立てやすくなります。

中東での経験が決定的だったのは、「香りの素材」としてのウードを、欧州の調香言語に翻訳して持ち帰った点です。

Aoud(ウード)コレクション — Montale を世界に知らしめた中核

Montale を初めて知る方に編集部から最初に紹介するのは、ブランドのアイデンティティそのものである Aoud コレクション です。ウードと一口に言っても、Montale は素材を「単独で焚き締めるような直球」「シトラスでフレッシュに開く現代版」「ローズと合わせた古典的なオリエンタル」「アンバーで甘く溶かしたグルマン寄り」といった具合に、複数のアプローチに分解して展開しており、コレクション全体を俯瞰すると Montale という調香言語の文法が見えてきます。

最も象徴的なのは Black Aoud。ローズとウードを軸にサフラン、パチョリ、サンダルウッドが重なり、立ち上がりから濃いインクのような暗いローズが香り、時間の経過とともに乾いた木の燻りが残ります。Fragrantica などの口コミでも、ウード系オリエンタルの代表格として頻繁に名前が挙がる 1 本で、Montale を語るうえで外せません。香りの強さも明確で、1 プッシュで部屋の空気を塗り替えるタイプ。日中のオフィスより、夜の外出や寒い季節の重ね着シーンに向いています。

反対側に位置するのが Aoud Lime。ウードに鋭いライムと若干のスパイスを合わせ、トップは思い切り爽やかに、ミドル以降で土っぽい樹脂感が顔を出します。「ウードは重そう」「中東素材は夏に向かない」というイメージを覆す構造で、暑い時期や昼間に Montale を試したい方の入り口としても扱いやすい設計です。シトラスとウードの落差を楽しむ作りなので、肌に乗せてから 30 分後、1 時間後と段階的に確認してみてください。

Aoud Rose Petals は、ウード × ローズという中東ニッチでは王道の組み合わせを、より花弁の質感寄りにチューニングした一本です。Black Aoud がローズを濃いインクのように使うのに対し、Rose Petals は摘みたてのバラの花びらをそのまま重ねたような瑞々しさが特徴で、ウードはあくまで背景として落ち着きを与える役。男女問わず使いやすく、Montale のローズ系を一通り試したい方のレファレンスにもなります。

そして Aoud Ambre。ウードをアンバーとバニラ、レジン系の素材で包み込み、輪郭をやや甘く・暖かく仕上げたシリーズの中でもグルマン寄りに振った 1 本です。後述する Chocolate Greedy や Intense Cafe の世界観と、ピュアな Black Aoud の中間に位置すると考えると、コレクション内の地図が描きやすくなります。寒い時期の重ね着の上から香らせると、襟元から自分にも温度が返ってくるタイプの残り方をします。寒い季節の香り選びについては 冬の香水・服装ガイド もあわせてどうぞ。

ウード系の比較対象として、別ブランドですが Initio Oud for Greatness のレビュー記事 も読んでおくと、現代ニッチにおけるウードの扱われ方の幅が見えてきます。Initio がサフラン×ウードを都会的に磨き上げた方向だとすれば、Montale はもう少し中東の生活文化の手触りを残した直球路線、というのが編集部の印象です。

グルマン・甘い系 — Chocolate Greedy と Intense Cafe

Montale の認知をウード以外の領域に広げた立役者が、グルマン系の代表作 Chocolate GreedyIntense Cafe です。グルマンとは、フランス語で「食いしん坊」を意味する形容に由来し、香水のジャンルとしてはチョコレート・キャラメル・コーヒー・バニラといった甘い食べ物のニュアンスを纏うスタイルを指します。Thierry Mugler Angel が 1990 年代にこのカテゴリの扉を開け、2000 年代以降に各ニッチが独自解釈で参入していきました。

Chocolate Greedy はその名の通り、立ち上がりから濃いカカオの香りが広がり、バニラ、トンカ豆、ヘーゼルナッツの組み合わせでデザートのような甘さを描きます。シーンとしては寒い時期の夜、薄暗い照明のレストランやバー、もしくは室内のリラックス時間が想像しやすい設計です。残香は強めなので、職場のように同じ空間に長時間いる場面では、肌に薄く 1 プッシュ程度から試すのが扱いやすいでしょう。

Intense Cafe は、エスプレッソとローズを大胆に合わせた一本。コーヒーの苦みと焙煎の香ばしさに、ローズの艶やかさとバニラの甘さが乗り、ユニセックスで楽しめる骨格を持ちます。Chocolate Greedy がデザート、Intense Cafe がカフェ、というように、ふたつ並べると同じグルマンでも狙っている食卓のシーンが違うことが分かります。どちらか一方しか試せない場合、ローズが好きであれば Intense Cafe から、シンプルに甘さを楽しみたいなら Chocolate Greedy から、という選び方が編集部の目安です。

フローラル/フレッシュ系 — Crystal Flowers の立ち位置

Montale はウードとグルマンの印象が強いものの、フローラルやフレッシュ系のラインも厚く展開しています。代表格のひとつが Crystal Flowers で、白い花(イランイラン、ジャスミン、オレンジブロッサム系)を中心に、ウッディーノートで芯を通した構造です。Aoud コレクションのように主張を前面に出すタイプではなく、肌に近い距離でふわりと香る扱いやすさが特徴。Montale の中ではむしろデイリーユース寄りで、オフィスや公共交通機関でも周囲を気にせず使いやすい設計と言えます。

Montale の重い系を試したあとに Crystal Flowers を肌に乗せると、ブランド全体のレンジの広さがよく分かります。中東素材を旗印にしながらも、現代のシティ・ライフでも使えるバランス型までを取り揃えているわけで、「Montale = 強い」というイメージだけで判断するのはもったいない、というのが編集部の見方です。

アルミニウムボトルの設計

Montale のもうひとつのアイコンが、シリーズを通して採用されているアルミニウム製のボトルです。一般的な香水はガラス瓶が主流ですが、Montale は早い段階からアルミボトルを採用し、ブランドの視覚的アイデンティティを確立しました。色はマット仕上げ、レンジによって黒、ゴールド、シルバー、銅、各種カラーリングで展開され、ラベルもシンプルなロゴと色帯のみ。店頭に並んだときの統一感が強く、見ただけで Montale と認識できるレベルでブランド化されています。

機能面では、アルミ素材は遮光性に優れており、紫外線による香りの劣化を抑えるメリットがあるとされます。ガラス瓶のように外から残量が見えない不便さはあるものの、香水の保存条件としては理にかなった選択です。フレグランスは紫外線・高温・温度差で劣化する素材なので、ガラス瓶であっても直射日光は避け、できれば箱に戻して保管するのが基本ですが、Montale のアルミボトルはこのリスクを構造面から軽減している点でユニークです。

並行輸入や中古市場で Montale を入手する際の注意点として、外装が金属であるためボトルの個体差(凹み・色剥がれ)や、キャップの締まり具合からの揮発状態を、商品ページの写真と説明で確認することをおすすめします。中古・並行品の購入については各ショップの返品ポリシーや真贋確認の体制も合わせて確認してください(本稿は購入の最終判断を担保するものではなく、出品情報は各販売元の表示時点のものです)。

編集部の見立て — Montale をどう買い足すか

最後に、ここまでの内容をふまえた編集部の見立てを整理します。Montale は「ニッチ香水を 1 本だけ試して終わり」よりも、「2〜3 本を比較しながらブランドの世界観を掴む」やり方が向いているブランドです。理由は、ウード、ローズ、グルマン、フローラルといった軸ごとに異なる顔を持っていて、1 本だけだとレンジの一端しか見えないためです。

初めての 1 本としては、ブランドの代名詞である Black Aoud か、扱いやすさで Aoud Rose Petals が出発点に向きます。そこから「もっと爽やかに行きたい」なら Aoud Lime、「甘く包みたい」なら Aoud Ambre や Chocolate Greedy、「フローラル寄りに広げたい」なら Crystal Flowers、というふうに、自分の好みの方角に応じて 2 本目を選ぶと、Montale のカタログ全体が立体的に見えてきます。

シーンとしては、強さの段階で整理するのが分かりやすく、軽く香らせたい昼の場面は Crystal Flowers や Aoud Lime、夜・寒い時期・ドレスアップ時には Black Aoud/Aoud Ambre/Chocolate Greedy/Intense Cafe、という棲み分けが目安になります。残香は総じて強めなので、最初は 1 プッシュから、肌に乗せて数時間の変化を見届けてから使い慣らしていくと失敗が少ないはずです。最終的にどの 1 本を「自分のシグネチャー」に据えるかという話は、また別の議論として シグネチャー香水ガイド に整理していますので、Montale を試したうえで、ご自身の軸を組み立ててみてください。

編集方針について — この記事は GUZ FASHION 編集部のPERFUMEカテゴリの編集方針に沿って制作されています。

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