東急東横線・学芸大学駅は、都立大学や祐天寺と並ぶ「隠れ家的な個人店が集まる街」として知名度を上げてきたエリアです。学芸大学というと古着屋やセレクトショップのイメージが先行しがちですが、実際に駅の東側、鷹番の路地裏まで足を延ばすと、ベトナムやタイ、韓国といったアジア各国の雑貨を扱う店や、店主が独自の審美眼で集めた古道具、北欧の家具を専門に扱う店までが点在していて、雑貨好きにとっての奥行きは想像以上です。
学芸大学という地名は、1964年に小金井市へ移転した東京学芸大学の旧キャンパスがこの地にあったことに由来しています。移転後も駅名だけが地域の呼称として定着し、大学そのものは今はもう存在しないというねじれが、この街の独特な空気感の一部になっています。教育機関が去った跡地に住宅街が広がり、そこへ個人商店が少しずつ根を張っていったという成り立ちを踏まえると、大手チェーンよりも個人店が育ちやすい土壌ができた経緯にも納得がいきます。
学芸大学は駅前の商店街こそコンパクトですが、住宅街としての歴史が長い分、古くからこの地に根を張ってきた個人商店と、近年になって新しく開業した店が同じ通りに混在しているのが特徴です。特に東口側の鷹番エリアは、区画整理を経ずに古い建物が残ってきた土地柄もあり、大手チェーンが出店しにくい代わりに、店主一人ひとりの個性が色濃く出た店が育ちやすい土壌になってきました。雑貨や古道具を巡るという行為自体が、この街の成り立ちと地続きになっているといえます。
本稿では、駅から徒歩数分の鷹番エリアに集まるアジア・韓国系の雑貨店2店と、少し足を延ばした中央町・目黒本町エリアの古道具・北欧家具の専門店2店、さらに薬屋という業態でありながら輸入雑貨も扱う異色の一軒を加えた計5店を、編集部が個別に裏取りしたうえで紹介します。チェーン展開の雑貨店ではなく、店主個人の目利きが棚に表れている独立系の店を中心に選びました。学芸大学というひとつの街の中に、アジアの熱量と北欧の静けさ、そして古道具の時間の重みが同居している様子を感じ取っていただければと思います。
鷹番 — アジアと韓国の一点物が集まる路地裏
学芸大学駅の東口を出てすぐの鷹番エリアは、飲食店や個人経営の店が密集する、路地の入り組んだ一角です。表通りから一本入ると、開業したばかりの新しい店と、何十年も同じ場所で営業を続けてきた店が隣り合わせになっていて、歩くたびに発見があります。アジアン雑貨やエスニック雑貨を探すなら、まずこの鷹番の路地から回るのが効率的です。飲食店の看板の合間に紛れるように扉を構える店も多く、地図を頼りに歩いていても見落としやすいので、少しゆっくりめのペースで通りを見渡しながら進むのがおすすめです。
Bababa – 333
Bababaは、2018年から鷹番でベトナム雑貨カフェとして営業してきた「333」が、2026年5月にアジア各国の雑貨やローカルブランドを扱うコンセプトストアへと生まれ変わった店です。ベトナム、タイ、台湾、中国といった産地の食器や、現地の作家によるアクセサリー、ジュエリーが並び、あわせてオリジナルブランド「Bababa」のラグやスカーフ、Tシャツも展開しています。アジアの雑多な熱量をそのまま切り取ったような棚づくりが特徴で、ひとつの国に絞らず複数の産地を横断して集めているからこそ生まれる混在感が魅力です。前身のカフェ時代から数えると鷹番での営業歴は8年近くに及び、地域に根を張った上でのリニューアルという点も安心材料といえます。とはいえ現在の物販店としての営業はまだ日が浅く、扱うアイテムの入れ替わりも早いと見られます。定期的に足を運んで、そのときどきの棚の変化を楽しむのに向いた店です。学芸大学駅から徒歩2〜3分というアクセスの良さも、気軽に立ち寄れる理由のひとつになっています。
韓国インテリア インヤンレスト
インヤンレストは、韓国の伝統的な家具や器を専門に扱う、地下フロアの隠れ家的な店です。李朝時代の様式を汲む木製家具や、作家による白磁の器、韓国の伝統的なパッチワーク技法「ポジャギ」を用いた布小物など、扱うジャンルは家具からテキスタイルまで幅広く広がっています。韓国の伝統工芸は、日本の民藝ともまた異なる独自の美意識を持っていて、シンプルな中に温かみのある佇まいが際立ちます。薬膳茶葉なども扱っており、インテリアだけでなく暮らし全体を韓国的な視点で見直すきっかけになる店です。古物商許可を得て営業しており、家具や器の出どころにも一定の裏付けがある点は安心材料になります。一方で、展示販売会のような形式を取ることもあるようで、常時同じ営業時間で開いているとは限らない可能性があります。訪問前には公式サイトやInstagram、電話で開催状況を確認しておくと確実です。
SMALL DRUG STORE
SMALL DRUG STOREは、その名の通り登録販売者の店主が営む薬屋でありながら、トルコのキリムラグや木製玩具、レコードといった輸入雑貨も並行して扱う、鷹番らしい懐の深い一軒です。医薬品と雑貨という一見結びつかない組み合わせですが、店主自身が旅先で見つけたものを持ち帰って棚に加えているとみられ、実用品を買いに来たはずが思いがけない一点物に出会う体験ができます。月曜は雑貨のみの販売という変則的な営業形態も含めて、効率よりも店主の日常のペースを大切にしている雰囲気が伝わってきます。アジアン雑貨やエスニック雑貨の専門店ではありませんが、鷹番エリアを歩くなら立ち寄っておきたい、番外編的な存在です。薬箱としての機能と趣味的な棚が同居している店は都内でも珍しく、生活に根差した雑貨との出会い方を教えてくれます。
東急東横線・学芸大学駅は、都立大学や祐天寺と並ぶ「隠れ家的な個人店が集まる街」として知名度を上げてきたエリアです。
中央町・目黒本町 — 古道具と北欧家具
鷹番から少し足を延ばし、中央町から目黒本町にかけてのエリアまで歩くと、雰囲気は一転して古道具や輸入家具を専門に扱う店が増えてきます。学芸大学と聞くとアパレル系のイメージが強いかもしれませんが、実はこのあたりも古くから古物商やアンティーク家具店が根を張ってきた土地で、雑貨好きの間では知る人ぞ知るエリアとして語られてきました。目黒通りのインテリアストリートほど密集してはいないものの、その分ゆったりと一軒ずつ見て回れる距離感も魅力です。
Coupe 古道具+
Coupe 古道具+は、店主が国内外の蚤の市や雑貨屋を巡って見つけてきた、一点物の古道具を扱うセレクトショップです。ヨーロッパのアンティークと日本の古い道具が同じ棚に並ぶ構成が特徴で、産地や年代を問わず「これは」と思えるものだけを集めているような潔さがあります。量産品にはない使い込まれた質感や、経年変化そのものを味わいとして楽しめるアイテムが中心で、インテリアに一点だけ個性を加えたいときに頼れる存在です。価格帯も一点ごとに幅があり、気軽に持ち帰れる小物から、部屋の主役になるような大きめの家具までを一度に見比べられるのも魅力のひとつです。営業は不定休のため、訪れる前に営業状況を確認しておくとよいでしょう。学芸大学駅からは徒歩5〜8分程度で、鷹番エリアとあわせて回りやすい距離感です。
Fusion Interiors
Fusion Interiorsは、1960年代から70年代にかけてデンマークやノルウェーで製作された北欧家具を専門に扱う個人店です。買い付けから店頭での販売まで、オーナー自らが一貫して手がけているのが特徴で、家具ひとつひとつに対する目利きの確かさが伝わってきます。デンマーク・ノルウェー製のミッドセンチュリー家具は近年人気が高まっている分、真贋や状態の見極めが難しいジャンルでもありますが、専門店として長く続いてきた実績が安心材料になります。木の質感を活かしたシンプルなデザインは、和室にも洋室にもなじみやすく、はじめて北欧家具を取り入れる人にとっても選びやすい入り口といえます。学芸大学駅からは徒歩12分ほどとやや距離がありますが、事前に連絡すれば営業時間外にも対応してもらえるとのことなので、気になる一点があれば問い合わせてみる価値があります。
学芸大学で雑貨・古道具を選ぶときの視点
学芸大学エリアで雑貨や古道具を選ぶときに意識しておきたいのは、産地や年代の異なるものを無理に統一しようとしないことです。ベトナムの食器と北欧の家具は、一見すると系統がまったく違うように思えますが、どちらも作り手の手の跡が残っているという共通点を持っています。素材の質感や色合いに一定のトーンを揃えておけば、産地の異なるものを組み合わせても不思議と破綻しません。ベースになる色を落ち着いたトーンで揃え、アクセントになる一点だけ強い個性を持たせるという考え方は、鷹番でも中央町でも通用します。
もうひとつ大切なのは、一点物を扱う店ほど「今日ここにあるもの」が明日には無くなっている可能性がある、という前提を持って回ることです。特にBababaのような開業間もない店や、Coupe 古道具+のような蚤の市仕入れの店では、棚の入れ替わりが早い傾向にあります。気になるものがあれば、その場で判断する姿勢も必要になってきます。逆に、インヤンレストのように展示販売会形式を取る店では、開催のタイミングを見計らって訪れる計画性も求められるでしょう。効率よく回ろうとするより、その日その場で出会えたものを楽しむくらいの余白を持って歩くのが、このエリアには合っているように思います。
回る順番についても、地理的な効率を考えると鷹番の3店から先に見て、そのあとで中央町・目黒本町の2店へ向かうルートが歩きやすいでしょう。鷹番は路地が入り組んでいる分、時間に余裕を持って回りたいエリアです。一方、後半のエリア側は比較的通りが広く、家具のような大きな買い物をする場合も持ち帰りの導線を考えやすいという利点があります。半日程度あれば5店すべてを無理なく巡ることができます。
扱っているものが古道具やヴィンテージ家具である以上、購入後の手入れも視野に入れておきたいところです。木製家具であれば、直射日光や乾燥した暖房の風を避けて置くだけでも反りや割れのリスクを抑えられますし、東南アジアや韓国由来の織物・パッチワークは洗濯表示が明記されていない場合も多いため、まずは陰干しなど負荷の少ない手入れから試すのが無難です。長く使うことを前提にした買い物だからこそ、購入時に店主へ素材や手入れ方法を直接尋ねておくと、後々の安心につながります。
価格帯にも触れておきます。SMALL DRUG STOREの輸入雑貨やBababaの小物類は数百円から数千円程度で手に取りやすい一方、インヤンレストの家具やFusion Interiorsの北欧家具は数万円から十数万円台になることも珍しくありません。Coupe 古道具+は一点ごとの価格差が大きく、小ぶりな古道具であれば手頃な予算でも十分に持ち帰れます。あらかじめ大まかな予算感を決めておくと、当日どの店に時間をかけるかの判断がしやすくなります。家具のようにかさばるものを購入した場合は、配送に対応してもらえるかどうかも事前に確認しておくと、当日の持ち帰りで慌てずに済みます。個人経営の小規模な店では決済方法が店舗ごとに異なることもあるため、訪問前に公式サイトやSNSで確認しておくと、当日のやり取りがよりスムーズになるでしょう。
まとめ — 学芸大学で見つける、暮らしに置きたい一点物
学芸大学は、古着やセレクトショップの街という印象の裏側に、アジアの雑貨、韓国の伝統工芸、北欧の家具、そして正体不明の掘り出し物まで、実に幅の広い雑貨文化を抱えているエリアです。鷹番の路地裏から中央町・目黒本町まで、徒歩圏内でこれだけ異なる系統の店を回れる街はそう多くありません。ひとつの産地やスタイルに絞り込まず、複数の店を横断して歩くことで見えてくる、この街ならではの雑貨の楽しみ方をぜひ体感してみてください。一度で全店を回りきれなくても、季節や気分に合わせて何度か通ってみることで、そのつど違う一点物との出会いが待っているはずです。
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祐天寺の古着屋やデザイナーが愛する東京のヴィンテージ家具屋、目黒通りの家具・インテリア店では、学芸大学エリアと地続きの雑貨・古道具文化を別の角度から紹介しています。











