東京でZINE・リトルプレスを探すなら
ZINEやリトルプレスは、大手出版社を通さずに作り手自身が発行する小冊子や同人誌の総称です。発行部数が少なく、書店に並ぶ期間も短いことが多いため、専門的に扱う店を知っているかどうかで出会える一冊の幅が大きく変わります。東京には、個人店ならではの目利きでZINEを選ぶ書店が点在しており、同じ「ZINE専門店」でも店によって取り扱うジャンルや雰囲気は大きく異なります。マンガ雑誌のアンテナショップから発展した老舗もあれば、アートブックに強い書店、出品を選別せずに並べることを方針とするショップ、カフェの2階にひっそりと構えるスポットまで、その形はさまざまです。
ここでは、実際に長く営業を続けている独立系の書店・スポットを、エリアごとの特色とあわせて紹介します。ZINEは発行部数が極めて少ないという性質上、営業日時が不定期な店も少なくありません。訪問前には公式サイトやSNSで最新情報を確認しておくと、空振りを防げて安心です。
東京には、個人店ならではの目利きでZINEを選ぶ書店が点在しており、同じ「ZINE専門店」でも店によって取り扱うジャンルや雰囲気は大きく異なります。
中野・神宮前・都立大学 — ZINE専門店の老舗と代表格
まずは、長年にわたって多くのファンに支持されてきた代表的な店から見ていきましょう。中野・神宮前・都立大学は、いずれも都心からアクセスしやすいエリアでありながら、それぞれ全く異なる客層と雰囲気を持つ書店が根付いています。サブカルチャーの聖地として知られる中野、感度の高いクリエイターが集まる神宮前、住宅街の中に静かに佇む都立大学と、エリアごとの空気の違いも合わせて楽しんでみてください。
タコシェ(中野ブロードウェイ)
タコシェは、マンガ雑誌『ガロ』のアンテナショップとして始まった歴史を持ち、中野ブロードウェイの3階で長く営業を続けてきた老舗です。自主制作の本やZINE、一般の流通ルートには乗らない書籍を中心に、インディーズ系のCDや映像、雑貨まで幅広く扱っています。他の書店ではまず出会えないような個人制作物が数多く並んでおり、棚を端から端まで見て回るだけでも新しい発見があります。取り扱うジャンルはマンガ・イラスト系から実験的な文芸、写真、音楽関連まで幅広く、一つのジャンルに絞らず雑多な熱量が同居しているのがこの店ならではの魅力です。中野ブロードウェイ自体がサブカルチャーの聖地として知られる場所であり、フィギュアや古着、レコードを扱う他の店を回るついでに立ち寄れる立地の良さも見逃せません。サブカルチャーやアングラなカルチャーに関心がある人はもちろん、既存の流通に乗らない表現そのものに興味がある人にとっても、一度は訪れておきたいスポットです。
ユトレヒト(神宮前)
ユトレヒトは、クリエイターの自主出版本やZINEの品揃えに定評のある書店で、国内外の作り手とのネットワークを活かした選書が特徴です。神宮前の落ち着いた立地にありながら、アートブックからデザイン、写真集まで幅広いジャンルのZINEが並び、既存の商業出版とは違う視点で作られた本に出会えます。棚づくりそのものが編集的で、店を訪れるたびに新しい発見があるのも魅力です。表参道・原宿という華やかなエリアにありながら、店内は落ち着いた雰囲気で、じっくりと本を選べる空気が保たれています。国内外のアートブックフェアにも縁の深い書店で、海外の作り手による作品を探している人にも向いています。写真集やデザイン書に強い書店を探している人にとっても、外せない選択肢の一つと言えるでしょう。
MOUNT ZINE(都立大学)
MOUNT ZINEは、都立大学駅からほど近い場所にあるZINE専門のショップです。毎年春と秋にZINEの出品を受け付け、有名無名を問わず150タイトル以上を選別せずに販売するという、他にはない運営方針を掲げています。誰でも自分の作品を発表できる場をつくるという発想から生まれた店で、ZINE制作を教えるスクールも開催されています。「セレクトしない」という姿勢は一見シンプルですが、プロの作家による完成度の高い作品から、初めて手作りしたであろう素朴な一冊まで、玉石混交の面白さをそのまま楽しめるという意味で他の店にはない体験を提供しています。プロの作家だけでなく、初めてZINEを作った人の作品にも出会えるため、これからZINEを作ってみたいと考えている人にとっても刺激の多い場所です。閑静な住宅街の中にあるため、都立大学駅周辺を散策するついでに立ち寄るのもおすすめです。
向島・吉祥寺 — カフェや古本屋に併設されたZINEスポット
続いて紹介するのは、カフェや古書店の中に併設される形でZINEを扱う、より生活に近いスポットです。都心の喧騒から少し離れた向島や吉祥寺には、地域に根ざした本屋文化が今も残っており、観光地としてだけでなく暮らしの延長として本と向き合える場所が点在しています。専門店然とした雰囲気が少し苦手という人にも、こうした店は気軽に立ち寄りやすいはずです。
甘夏書店(向島)
甘夏書店は、東京スカイツリーにほど近い一軒家カフェ「ikkA」の2階にある古本・ZINEスポットです。カフェの一部屋に古本やリトルプレス、ZINE、手ぬぐいなどの手仕事の雑貨がぎゅっと詰め込まれており、隠れ家のような雰囲気の中で本を選べます。1階のカフェで一息ついてから2階へ上がるという流れも含めて、向島らしいのんびりとした時間を楽しめるスポットです。観光地としてのスカイツリー周辺とは違う、下町の生活が息づくエリアにあるため、少し足を延ばして訪れる価値のある穴場と言えるでしょう。棚に並ぶ本のセレクトからも、店主の個人的な視点や愛着が感じられ、量販店にはない一冊との出会いが期待できます。営業日時は状況により変わることがあるため、訪問前にSNSで最新情報を確認しておくとよいでしょう。
百年(吉祥寺)
百年は、吉祥寺で長く営業を続ける古書店で、古本を中心にアートブックやデザイン書、絵本、思想書、国内外の文学まで幅広いジャンルを扱っています。新刊のZINEやリトルプレスも並んでおり、ジャンルを横断した選書のバランスのよさが魅力です。古本屋というと専門ジャンルに特化した店も多い中、百年は硬軟織り交ぜた品揃えで、思想書を探しに来た人が隣の棚でリトルプレスに出会うといった、寄り道の楽しさがある書店です。徒歩1分ほどの場所には姉妹店「一日」もあり、あわせて訪れることで吉祥寺の古書文化をより深く味わえます。吉祥寺は古本屋が多いエリアとしても知られており、百年を起点に周辺の店を巡る古本屋巡りのコースを組むのもおすすめです。トークイベントや作品展示が開催されることもあるため、公式サイトやSNSで最新情報をチェックしておくとよいでしょう。
ZINEという文化について
ZINEという言葉は「マガジン(magazine)」を短くした呼び方が由来とされ、もともとは自主制作の同人誌やファンジンを指す言葉として広まりました。日本でも写真、イラスト、エッセイ、詩、デザインなど、あらゆるジャンルの作り手が自身の表現をZINEという形で発表しており、コミックマーケットのような大規模イベントから、個人が数十部だけ刷るような小規模な発行まで、その規模はさまざまです。商業出版のように売上や読者層を強く意識する必要がない分、作り手の個性がそのまま形になりやすいのがZINEの面白さと言えるでしょう。
近年は、ZINEを専門に扱うイベントやアートブックフェアも各地で開催されるようになり、ここで紹介したような実店舗と合わせて、ZINEを探す選択肢はますます広がり続けています。とはいえ、実際に手に取って紙質や印刷、製本の仕方まで確かめられる実店舗ならではの体験は、オンラインでの購入では味わえない魅力です。気になる作家やジャンルが見つかったら、店主に話を聞いてみるのもおすすめです。個人店ならではの距離の近さで、作品の背景にあるエピソードを教えてもらえることも少なくありません。同じZINEでも、作り手の顔や制作の経緯を知ってから読むのとそうでないのとでは、一冊に対する受け取り方が大きく変わってくることもあるものです。
ZINE専門店を巡るときのポイント
ZINE専門店は、一般的な書店に比べて営業時間や定休日が不定期なことが少なくありません。店主が一人で運営していたり、イベント出展のために臨時休業することもあるため、遠方から訪れる場合は公式サイトやSNSで最新の営業状況を確認してから出かけることをおすすめします。また、ZINEは発行部数が極めて少なく、同じ作品が次に訪れたときにはもう店頭にないということも珍しくありません。気になる一冊があれば、その場で手に取っておくのが後悔しない選び方です。オンラインストアを併設している店もありますが、実店舗限定で扱う一冊も多いため、足を運んで初めて出会える作品があることも覚えておくとよいでしょう。
複数の店を回る場合は、エリアごとにまとめて巡るのが効率的です。中野・神宮前・都立大学のように山手線の内外に点在する店が多いため、一日で複数店を回るなら移動の順序を事前に決めておくとスムーズです。カフェを併設した書店であれば、休憩をはさみながらゆっくり本を選べるので、体力的な負担も少なく済みます。
予算については、ZINEは一冊数百円のものから、装丁に凝った限定版で数千円するものまで幅があります。最初から予算を決めすぎず、まずは店を訪れて実際の値段感を確かめてから、その日に持ち帰る冊数を決めるくらいの気持ちで臨むと、思いがけない一冊を逃さずに済みます。現金のみの対応をしている個人店もあるため、念のため多めに現金を持って出かけると安心です。キャッシュレス決済が使えるかどうかは、事前に公式サイトやSNSで確認しておくとスムーズに買い物ができます。
集めたZINEは、紙質が薄く傷みやすいものも多いため、直射日光を避けた場所で保管するのがおすすめです。お気に入りの一冊は本棚に立てて並べるだけでなく、時々読み返して製本や紙の質感を楽しむことで、単なるコレクションではなく、生活の一部として長く付き合っていけます。
初めて訪れるときのマナーと心構え
ZINE専門店の多くは個人店で、店主自らが接客していることがほとんどです。大型書店のような気軽さで長時間立ち読みを続けるよりも、気になる作品があれば手に取って中身を確認し、購入するかどうかを比較的テンポよく決めていくのがマナーとして自然です。写真撮影については、店によって可否が分かれるため、SNSに投稿したい場合は事前に店主へひと声かけておくとよいでしょう。作品そのものが著作物であることを踏まえ、内容を無断で転載しないよう配慮することも大切なマナーの一つです。
また、ZINEは作り手の個人的な表現であることが多く、内容も実験的だったり、テーマが尖っていたりすることが少なくありません。万人受けを狙った商業出版物とは前提が異なるものだと理解した上で手に取ると、それぞれの作品が持つ個性をより素直に楽しめるはずです。分からないことがあれば遠慮せず店主に尋ねてみると、作品の背景や作り手のエピソードを教えてもらえることもあり、それ自体がZINE専門店ならではの体験になります。小さな会話の積み重ねが、次の来店をより楽しみなものに変えてくれるはずです。
まとめ
東京のZINE専門店は、それぞれの店が独自の選書基準を持っているため、同じジャンルを扱っていても店ごとに全く違う出会いがあります。老舗として長く支持されてきた店から、出品を選別しないという独自の方針を掲げる店まで、個性の違いを楽しみながら巡ってみてください。気になる一冊に出会えたときの喜びは、量産された本を手にするのとはまた違った特別な体験になるはずです。
最初は一店舗だけでも構いません。実際に足を運んで棚を眺め、店の空気を感じてみることで、自分がどんなZINEに惹かれるのかが少しずつ見えてきます。そこから少しずつ行動範囲を広げ、自分だけのお気に入りの一軒を見つけていく過程そのものが、東京でZINEを楽しむ醍醐味と言えるでしょう。ここで紹介した店を起点に、自分だけのZINE巡りのルートを少しずつ組み立てていくのも楽しい過程です。











