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パステルカラーコーデ — 淡色の階調で組む春夏スタイル

パステルカラーは、春が近づくと毎年のように店頭やSNSを賑わせる定番の色彩群でありながら、いざ自分のワードローブに取り入れようとすると意外に難しい。彩度を抑えた淡い色は、合わせ方ひとつで甘くも幼くもなり、逆に上品で都会的にも転ぶ。本稿では、パステルという色彩群そのものの輪郭から、主要な4色の性格、配色の理論、季節ごとの応用、そして陥りやすい3つの罠までを通しで整理する。淡色をただ「春っぽいから」で着るのではなく、自分の骨格や肌のトーンに馴染ませて選び取るための手がかりとして読んでもらえれば、ワードローブにパステルを定着させる作業はずいぶん楽になるはずだ。

パステルカラーという色彩群の輪郭

パステルカラーとは、白を多く含み彩度を下げた淡い色の総称だ。語源はチョークの一種であるパステル画材に由来し、19世紀の絵画やロココ期の装飾、戦後アメリカの50年代キッチン雑貨など、時代ごとに繰り返し再評価されてきた歴史を持つ。ファッションの文脈で「パステル」と呼ぶ場合、明度が高く(おおむねL値80以上)、彩度は中〜低(S値30〜50程度)の領域に収まる色相を指すことが多い。原色のような主張はないが、無彩色のグレーやベージュとは違い、確かな色味の体温を保っているのが特徴である。

2010年代後半、いわゆる「Millennial Pink(ミレニアル・ピンク)」が世界的に流行したことは記憶に新しい。Pantoneが2016年に「Rose Quartz」を発表し、Glossierなどのコスメブランドがピンクを基調としたパッケージを展開したことで、それまで「女性的すぎる」と敬遠されがちだったピンクが、ジェンダーレスで都会的な記号として再定義された。Z世代以降は、このミレニアル・ピンクをさらに脱色したような「コーラル」「ピーチ」、あるいはY2Kリバイバルの流れで彩度を上げ直した「ホットピンク」へと、パステルの解釈そのものが拡張している。

一方、ヨーロッパのモード文化では、Miu MiuやJacquemusが2020年代前半にパステルを基調としたコレクションを展開し、Acne Studiosが彩度を抑えた「くすみパステル」を提示するなど、色のニュアンスを微細に切り分ける流れが続いてきた。日本国内でも、無印良品のリネンシャツやUNIQLO Uのカーディガンなど、量販ラインにまでパステルが定着している。つまりパステルは、もはや特定の世代やシーズンに紐づく流行色ではなく、ワードローブの基層に組み込まれる「淡色カテゴリー」として扱うべき段階に入っている。色彩設計そのものの考え方を踏まえると、パステルは「明度の階調を上に振った同一色相群」として捉えるのが整理しやすい。

2010年代後半、いわゆる「Millennial Pink(ミレニアル・ピンク)」が世界的に流行したことは記憶に新しい。

主要なパステルカラー — ピンク・ライラック・ミント・ブルー

パステルと一口に言っても、色相環の位置によって表情は大きく異なる。実際に着る際に意識しておきたい主要4色を順に見ていく。

パステルピンクは、赤に白を多く加えた色で、ベビーピンク、シェルピンク、パウダーピンク、コーラルピンクなど呼称が多い。肌に近いトーンのため、トップスやニットに使うと顔色を柔らかく見せる効果がある一方、全身に乗せると「甘さ」が過剰になりやすい。カーディガンや薄手のニットなど、面積を中程度に抑えたアイテムが扱いやすい。

ライラック(藤色・ラベンダー)は、青みを含んだ淡い紫で、パステル群の中ではやや知的で大人びた印象を持つ。ピンクほどの「可愛さ」を伴わず、ブルーほど涼しげでもない中間領域の色で、近年Pantoneも複数回カラー・オブ・ザ・イヤーの周辺色として取り上げてきた経緯がある。スカートやワンピースで取り入れると、ピンクのワントーンよりも一段大人びた春の装いになる。

ミントグリーンは、黄みを抑え青みを足した淡い緑で、清涼感と中性的な印象を併せ持つ。ピンクやライラックが「フェミニン」と読まれがちなのに対し、ミントはジェンダーニュートラルに着られる数少ないパステルだ。ニットやTシャツでベースに使い、ボトムスをホワイト・ライトグレー・ベージュなどのニュートラルでまとめると、嫌味のない清潔感のあるコーデになる。

パステルブルー(ベビーブルー、パウダーブルー)は、白を多く含んだ淡い青で、デニムの色落ちに近いトーンも含めて広く解釈される。シャツやブラウスでの登場頻度が高く、ホワイトの代替として使えば、白シャツよりも柔らかく、ライトブルーシャツよりも控えめな表情を出せる。ビジネスカジュアルにも応用が利く、パステル群では珍しい汎用性の高い色だ。

この4色のいずれを基軸に据えるかで、コーデ全体の温度感が変わる。ピンク・ライラックは暖色寄り、ミント・ブルーは寒色寄りに振れることを覚えておくと、後述する配色設計が組みやすくなる。さらに、自分の肌のアンダートーン(イエローベース/ブルーベース)との相性も意識したい。一般にイエローベースの肌にはピーチ寄りのピンクやミントが、ブルーベースの肌にはライラックやパウダーブルーがなじみやすい傾向がある。ただしこれはあくまで目安で、合わせる色との関係性で見え方が変わるため、固定的な分類として捉える必要はない。

配色のセオリー — トーンonトーンとニュートラルの併用

パステルを着る際に最も外しにくいのが、トーンonトーンの配色である。同一色相の中で明度差をつけて重ねる手法で、たとえばパステルピンクのニットに、もう一段明るいパウダーピンクのスカートを合わせる。同系色でまとめるため色のケンカが起こらず、淡い色同士でも視覚的にぼやけない。Acne StudiosやJacquemusのルックブックで頻出する組み方で、初心者でも比較的失敗しにくい。

もう一つの定石が、ニュートラルカラーとの併用だ。ホワイト、オフホワイト、ライトグレー、ベージュ、エクリュといった無彩色〜淡い茶系を相方に置くことで、パステルが持つ甘さを中和する。例えばパウダーピンクのコートにエクリュのワイドパンツ、足元はホワイトスニーカー、というように、パステルを「主役」に据えてニュートラルで脇を固めると、大人の春コーデの基本形が成立する。

逆に、パステル同士を組み合わせる「マルチパステル」配色は、コーディネートの難易度が一段上がる。ピンク×ミントなどの補色寄りの組み合わせは、面積比を7:3程度に抑え、片方を小物(バッグやスカーフ)に逃がすと破綻しにくい。色相が近いピンク×ライラック、ミント×ブルーは比較的相性が良く、トーンonトーンの応用として扱える。アースカラーとの対比を意識すると、パステルの「軽さ」「透明感」がより際立ってくる。

配色を考える際の補助線として、足元と小物の色で全体を引き締める発想も覚えておきたい。トップスとボトムスをパステルでまとめても、靴・バッグ・ベルトをダークブラウンや黒で締めれば、写真映えする一方でリアルな街着としても成立する。淡色は「軽さ」が持ち味だが、軽さに振り切り過ぎると視覚的に不安定になるため、必ずどこかにアンカーを置く、というのが大原則である。

季節とパステル — 春夏が定番、秋冬の応用

パステルが最も自然に馴染むのは、やはり春から初夏にかけてだ。3〜5月の柔らかな日差し、桜・藤・新緑といった季節の色彩、リネンやコットンの軽い質感が、淡色の透明感を引き立てる。春のスタートを切る一着としては、パステルブルーのシャツやミントのカーディガンが扱いやすい。ジェンダーレスな着こなしの文脈でも、メンズ・レディース問わずパステルブルーは取り入れやすい。

夏場は、強い日差しと汗を考慮して、コットン・リネン・テンセルなど吸湿性の高い素材でパステルを選ぶと快適だ。白Tシャツの代わりにパウダーピンクのTシャツ、デニムの代わりにライラックのワイドパンツ、といったように、ベーシックの一部をパステルに置き換える発想が応用しやすい。ただし、レーヨンや薄手のサテンなど光沢の強い素材でパステルを選ぶと、安っぽく見えるリスクがあるため、素材の質感選びには注意したい。逆に、麻特有のシャリ感や、コットン100%のドライな表情は、淡色の品の良さを引き出してくれる相性の良い素材だ。

秋冬にパステルを着る場合は、素材で季節感を出すのが鉄則となる。ウール・モヘア・コーデュロイ・ボア素材など、毛足のある起毛感のある生地でパステルを選ぶと、冷たい空気の中でも色が浮かない。例えばベビーブルーのモヘアジャケット、パウダーピンクのコーデュロイパンツ、ミントグリーンのウールニットなど、素材の温度感とパステルの淡さが釣り合えば、秋冬コーデにも違和感なく溶け込む。古着市場では、80〜90年代に流通したパステルのウールカーディガンや、Y2K期のパステルダウンなど、現行品にはないニュアンスを持った一着が見つかることもある。

冬場の差し色としてパステルを使う発想も有効だ。ベースをチャコールグレーやネイビーなどダークトーンでまとめ、マフラーや手袋、インナーニットにライラックやミントを1点だけ忍ばせる。全身がパステルだと季節感がずれるが、ワンポイントなら冬の重さを軽やかに崩す効果がある。アウターの下に覗くインナー、コートを脱いだ時のシャツの袖口など、視線が抜ける場所に淡色を仕込むのが上手いやり方だ。

パステルが失敗する3つの罠 — くすみ・幼さ・濁り

淡色は失敗の輪郭がはっきり出やすい。陥りがちな罠を3つ挙げておく。

第一に、「くすみ」と「パステル」の混同である。近年「くすみカラー」と呼ばれる、グレーを多く含んだ低彩度色が流行したが、これはパステルとは別物だ。くすみカラーは「グレー味の入った中明度色」で、パステルは「白を多く含んだ高明度色」。両者を混在させると、コーディネートの中で明度のジャンプが起きて、まとまりを欠く。パステルを着る日は、合わせるアイテムも明度を揃える意識を持ちたい。

第二に、「幼さ」の罠。パステルピンクのスウェット上下、ミントのフリル付きワンピースなど、シルエットや装飾までもが甘い方向に振り切ると、年齢によっては子どもっぽく見える。これを避けるには、シルエットを大人びた方向で選ぶこと。具体的には、ジャストサイズのテーラードジャケット、ストレートのワイドパンツ、シャープなVネックなど、フォーマル寄りのアイテムでパステルを取り入れると、淡色の甘さがシルエットの硬さで相殺される。

第三に、「濁り」の罠。パステル同士を雑に重ねたり、彩度の高い原色とパステルを組み合わせると、視覚的に色が濁って見える現象が起こる。これは隣接する色同士が相互に影響し合い、本来の透明感が損なわれるためだ。マルチパステルを試す場合は、必ず間にホワイトやアイボリーを挟むか、面積比を大きく偏らせるなど、色の境界を意識的に設計する必要がある。また、洗濯を重ねて色褪せたパステルを身につけると、たちまち「古びた淡色」に見えてしまうので、色味のフレッシュさを保てる管理も合わせて意識したい。

編集部の見立て

パステルは、もはや「春の流行色」ではなく、ワードローブに恒久的に組み込まれる淡色カテゴリーとして扱うのが現実的だ。ピンク・ライラック・ミント・ブルーという4つの基軸を理解し、トーンonトーンとニュートラルとの併用という2つの配色定石を押さえれば、極端な失敗はまず起こらない。重要なのは、パステルを「軽い色」「甘い色」と決めつけず、素材・シルエット・小物との組み合わせで温度感をコントロールする発想を持つことだ。古着市場でも、過去のシーズンに流通したパステルアイテムは現行品より価格がこなれている場合が多く、上質なウールやコットンのパステルを掘り当てれば、新品では出会いにくい色味のニュアンスに触れられる。淡色を恐れず、しかし安易にも流れず、自分の生活時間と肌のトーンに馴染む一着を選び取ってほしい。

編集方針について — この記事は GUZ FASHION 編集部のFASHIONカテゴリの編集方針に沿って制作されています。

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