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大阪・中崎町の古着屋 — 長屋の路地を巡る6店

大阪の梅田から歩いて10分ほど、高層ビルの群れが途切れた先に、戦災を免れた長屋と路地がそのまま残っている一帯があります。中崎町です。木造の平屋を改装したカフェや雑貨店が並ぶこの街は、いつのころからか古着の街としても知られるようになり、いまでは路地を一本入るごとに小さな古着店が現れる密度になりました。隣の天満まで足を伸ばせば、商店街の上階にも店が点在しています。梅田の商業施設の巨大さと、中崎町の生活のスケールが数分で切り替わる落差そのものが、この街の古着屋巡りの面白さになっています。

中崎町に店が集まった背景には、建物の性質があります。長屋や古い雑居ビルは、間仕切りが細かく一区画が狭いぶん家賃が抑えられ、内装に手を入れる自由度も高いという条件がそろっています。開業資金の限られた若い店主が、自分の目で買い付けたものだけを並べる小さな店を始めるのに、これほど都合のよい物件はそう多くありません。実際にこの街には、大学生のうちに開業した店や、一人で買い付けから接客までを担う店が珍しくありません。街区のなかでも「サクラビル」と呼ばれる雑居ビルには複数の古着店が入居しており、階段を上がるだけで数軒を見比べられる集合体になっています。

この記事では、中崎町を中心に、実際に営業を確認できた独立系の古着店を6軒選びました。全国展開のチェーン店は外し、店主自身が買い付けと接客を担う店を軸にしています。中崎町の店は営業時間が平日と休日で異なることが多く、一人営業の店では臨時休業も起こります。訪問前に各店のInstagramなどで当日の営業を確かめてから向かうのが確実です。

中崎町の中心部にある古着店

古着屋olfe. — 大人ストリートを掲げる若い店

中崎の路面にあるolfe.は、2020年の暮れに当時大学生だった数名が立ち上げた店です。掲げているテーマは大人ストリートで、若い世代が着るストリートの文脈を軸に、アメリカとヨーロッパの両方から古着を買い付けています。Instagramでの入荷ライブなど、SNSを使った発信に力を入れているのも特徴で、店に着く前から棚の中身をある程度つかんでおけます。平日は午後1時、休日は正午から開き、いずれも夜8時までなので、梅田で用事を済ませたあとに立ち寄る動線にも合います。値付けは学生でも手が届く帯を意識した構成で、古着に触れはじめた人が最初の数枚を選ぶのに向いています。スタッフが服の背景や年代の見方を惜しまず教えてくれるため、買い物というより短い講座を受けるような時間になることもあります。開業から数年という若い店ではありますが、そのぶん棚の更新が早く、訪れるたびに違う顔を見せるという意味では通う価値が高い店でもあります。

BOW & ARROW — 1997年から続く西海岸買い付けの老舗

鶴野町にあるBOW & ARROWは1997年の開店で、中崎町一帯でも古い部類に入る店です。買い付けの主軸はアメリカ西海岸で、そこで集めたヴィンテージを核にしながら、ヴィンテージ生地を使った自社のオリジナルや国内ブランドも並べています。古着を仕入れて売るだけでなく、生地そのものを素材として捉えて服に作り直すという発想が同じ店内に共存しているため、棚を見ていると古着の見方が一段更新される感覚があります。金曜と土曜は夜9時まで営業時間が延びるので、週末の夕方から動く人には使いやすい店です。25年を超えて続いてきた店の棚には、流行の周期を何度も見てきた蓄積があり、いま何が値上がりしているかという話とは別の基準で選ばれたものが並んでいます。ヴィンテージの生地がどう作り直せるかという視点を持っている店なので、古着を素材として見る発想に触れたい人には特に刺さる一軒です。

clarisse — フランスとイギリスで集めた80年代から90年代

中崎西のclarisseは、フランスとイギリスで買い付けた1980年代から1990年代のブランドものを中心に据えた店です。2016年に独立して構えた店で、セレクトの傾向はマニッシュ、つまり男性的な仕立てを女性が着るという方向性がはっきりしています。肩の直線的なジャケットや、装飾を削いだシャツ、落ち感のあるスラックスといったアイテムが、色数を抑えた棚に並びます。午後2時から夜8時までという営業なので、昼過ぎからの巡回に組み込むとちょうどよく収まります。ヨーロッパの古着は同じ年代でも国によって生地の目付や縫製の癖が違うため、フランスものとイギリスものを同じ棚で比べられるこの店は、産地の違いを体で覚えるのにも向いています。店主が一人で買い付けと接客を担う規模なので、気になった一枚の背景を尋ねれば、どの街のどんな店から出てきたものかまで話が聞けることもあります。

McCANDRESS — サクラビルの画廊のようなユーロ古着

中崎町のランドマーク的な雑居ビル、サクラビルに入るMcCANDRESSは、イギリスを中心としたヨーロッパのヴィンテージを扱う店です。海外の蚤の市で仕入れたアイテムも並び、服だけでなく古い雑貨が同じ空間に置かれているため、店内は小さな画廊のような静けさがあります。毎日午後2時から夜8時まで開いており定休日を設けていないので、予定に組み込みやすい一軒です。ヨーロッパのヴィンテージは色味が渋く、日本の街並みに馴染みやすいものが多い一方で、サイズ感が独特なので実際に袖を通して確かめる価値があります。同じビルに他の古着店が複数入っているため、ここを基点にビル内を回るだけでも十分な収穫があります。古い雑貨と服が同じ視界に入る構成なので、服単体ではなく暮らしの中の一部として選びたい人には特に馴染みます。

街区のなかでも「サクラビル」と呼ばれる雑居ビルには複数の古着店が入居しており、階段を上がるだけで数軒を見比べられる集合体になっています。

サクラビルと天満まわりの古着店

古着屋RiceBowl — 所狭しと並ぶヨーロッパとアメリカ

同じサクラビル内のRiceBowlは、現地で仕入れたヨーロッパ古着とアメリカ古着が所狭しと並ぶ、掘る楽しさに振り切った店です。1980年代までの年代の古いものから、日常的に手に取りやすい価格のものまでジャンルの幅が広く、ラックの間を丁寧に見ていくほど発見があります。毎日午後1時から夜8時までの営業で定休日がないため、他店が休みの日でも当てにできます。物量のある店では、まず全体を一周して価格帯と年代の分布を頭に入れ、二周目で狙いを絞るという回り方が効きます。時間に余裕を持って入るのがこの店を楽しむ条件です。棚と棚の間隔が狭いため、リュックを背負ったままだと商品に引っかけてしまうことがあります。荷物は入口で下ろしてから見始めるほうが、集中して掘れます。

NAKAZAKI O HEIGHTS — 服と器とジュエリーを同じ棚で

中崎西のNAKAZAKI O HEIGHTSは、洋服とジュエリー、そして器を同じ空間で扱う店です。古着だけを並べる店とは組み立て方が違い、身につけるものと日々使うものを地続きに置くという考え方が棚に表れています。ユニセックスで着られる個性的なセレクトが軸なので、性別で分けられた売り場に窮屈さを感じる人には居心地のよい場所になります。火曜と水曜が定休で、正午から夜8時までの営業です。服を一枚だけ買って帰るというより、暮らしの手ざわりごと持ち帰るような買い物になりやすい店で、中崎町という街の性格をそのまま体現している一軒といえます。器やジュエリーは服より価格の刻みが細かいため、予算の残りで小物を一つ足すという選び方もできます。

中崎町で古着を選ぶときの実践ポイント

中崎町を回るときにまず押さえておきたいのは、この街の店が「小さい」ことを前提に設計されているという点です。一軒あたりの在庫は数百点規模で、同じ型が複数枚あることはまずありません。気になった一枚を保留にして次の店へ進むと、戻ったときには売れているという展開が普通に起こります。逆に言えば、その日にその店で出会ったものだけが選択肢であり、迷ったら試着して判断を確定させるほうが後悔が少なくなります。

路地の構造も知っておくと動きが変わります。中崎町の路地は車が入れない幅のものが多く、地図アプリの徒歩ルートでも実際の入り口が分かりにくい場所があります。目印になるのは、長屋を改装した店の軒先に出ている小さな立て看板です。ビル型の店は入り口が階段だけということもあるので、住所の階数表示まで確認してから向かうと迷いません。

選ぶ基準を持っておくと、街全体の見え方が整理されます。古着の生地や染めの質感を、現行のものづくりとして引き受けている国内ブランドを一つ知っておくと、棚の前での判断が早くなります。関西を拠点に、色落ちや縫いの表情そのものを設計対象にしているKAPITALのつくりを一度見ておくと、中崎町の店に並ぶ加工の効いた一枚が、偶然の経年なのか意図された表情なのかを見分ける手がかりになります。

効率よく巡るための道順と時間帯

中崎町の古着店はほとんどが正午から午後2時のあいだに開きます。午前中に着いてしまうと開いている店がほとんどないため、梅田側で時間を使ってから移動するのが現実的です。閉店は夜8時前後にそろっているので、正午過ぎから動き始めれば6軒程度は無理なく回れます。

道順としては、梅田から中崎町へ北上して鶴野町のBOW & ARROWを起点にし、中崎西のサクラビルでビル内の複数店を一度に見て、そこから中崎の路面店へ抜ける流れが効率的です。天満方面まで足を伸ばす場合は、日を分けるか、中崎町を切り上げる時間をあらかじめ決めておくほうが破綻しません。地下鉄谷町線の中崎町駅とJR大阪環状線の天満駅は徒歩でつながる距離ですが、路地を抜けながら歩くと想像より時間がかかります。

定休日は火曜と水曜に集中する傾向があるため、平日に訪れるなら週の後半のほうが空振りが少なくなります。一人営業の店では買い付け期間中の長期休業もあるので、遠方から向かう場合はInstagramの直近の投稿を確認しておくと確実です。支払いは現金のみの店も残っているため、いくらか用意しておくと安心して選べます。

価格帯とサイズの見立て方

中崎町の価格帯は店ごとの狙いがはっきり分かれています。若い客層を意識した店ではレギュラー古着が数千円台に収まり、ヨーロッパのブランドものや年代の古いヴィンテージを扱う店では一万円台から数万円という帯になります。同じヨーロッパ古着でも、蚤の市で集めた無銘の実用着とデザイナーもののジャケットでは値付けの根拠がまったく違うため、店主に「これはどのあたりのものですか」と一言尋ねるだけで、価格の意味が見えてきます。

サイズについては、アメリカ古着とヨーロッパ古着で設計思想が違うことを前提に選ぶ必要があります。アメリカの実用着は肩幅も身幅もゆとりを取った型が多く、表記より小さめを選んでちょうどよくなることがあります。対してヨーロッパの古着は着丈が短く袖が細い型が目立ち、表記通りでも腕回りが窮屈に感じることがあります。clarisseやMcCANDRESSのようにユーロを軸にする店では、必ず袖を通してから決めるのが確実です。

状態の見極めも価格と同じくらい重要です。古着は洗いと着用を重ねた分だけ生地が薄くなっており、見た目にきれいでも脇下や襟の裏が弱っていることがあります。明るい場所で生地を透かして確認し、リペアの跡があればどこを直したのかを聞いておくと、買ってから何年着られるかの見通しが立ちます。長屋を改装した店は照明が落とし気味のことも多いので、入口近くの明るい場所で見せてもらうと判断しやすくなります。

まとめ

中崎町の古着屋は、街の建物の性質と若い店主たちの選択が重なって育ってきた集積です。1997年から続く老舗と、開業から数年の店が同じ徒歩圏に並び、アメリカ西海岸のヴィンテージとヨーロッパのブランドもの、そして服と器を並べる店までが混在しています。梅田から歩ける距離にこれだけの密度があることは、大阪の古着シーンを語るうえで見過ごせない条件です。アメリカ村や堀江のように十代から二十代前半の客層で賑わうエリアとは空気が違い、静かに一枚を選びたい人に合う街だといえます。

大阪のほかのエリアと合わせて回るなら、大阪アメリカ村・堀江の古着屋ガイド大阪南船場の古着屋ガイドが近い距離感で参考になります。全国の古着エリアを俯瞰したい場合は日本全国の古着エリアガイドもあわせてご覧ください。

編集方針について — この記事は GUZ FASHION 編集部のGUIDEカテゴリの編集方針に沿って制作されています。

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