DOMESTIC BRAND

and wander(アンドワンダー)— イッセイ ミヤケ出身の二人が拓いた、歩くためのアウトドア

and wander(アンドワンダー)— イッセイ ミヤケ出身の二人が拓いた、歩くためのアウトドア

and wander(アンドワンダー)は、池内啓太郎と森美穂子が2011年に立ち上げた日本のアウトドアブランドです。二人はともにイッセイ ミヤケで服づくりを学んだデザイナーであり、その経験から生まれた造形への確かな感覚と、アウトドアウェアに求められる機能性を、一着のなかで結びつけてきました。山のための本格的な機能をしっかりと備えながら、街でも気持ちよく着られる。その両立を、ファッションの視点から見事に実現してきた点に、ブランドの大きな独自性があります。

「and wander とはどんなブランドか」を一言で言えば、高い頂を目指す厳しい登山のためではなく、気ままに自然を歩くための、デザインされたアウトドアウェアです。ブランド名にある「wander」は、あてもなく歩き回るという意味の言葉です。頂上を目指して苦しむのではなく、自然のなかをのんびりと歩く。その肩の力の抜けた楽しみ方を提案するという思想が、ブランドの名前にそのまま素直に込められています。

本記事では、池内啓太郎と森美穂子の歩みと創業の経緯から、ブランドの思想、デザイナー像、代表的なアイテム、日本のものづくりや技術素材との結びつきまでを順にたどります。アウトドアとファッションのあいだに新しい道を拓いた、and wander という挑戦の輪郭を、その背景にある考え方とともに追っていきます。

気ままに歩くための服 — and wander の設計思想

and wander の哲学を一言で要約するなら、気軽に自然を楽しむためのアウトドアウェアです。アウトドアウェアというと、高い山に挑む本格的な登山のための、いかにも厳ついギアを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかしand wander が見つめているのは、もっと日常に近い自然との関わりです。週末に近くの山を歩いたり、キャンプを楽しんだり、あるいは街なかを軽やかに移動したり。そうした気ままな時間に寄り添う服を、二人は作ろうとしました。

この思想を支えているのが、二人がイッセイ ミヤケで培った造形の感覚です。アウトドアブランドの多くが、機能を最優先して見た目が後回しになりがちなのに対し、and wander は色や形、素材の組み合わせにファッションとしての美しさを求めます。鮮やかな配色や、計算されたシルエット、遊び心のあるディテール。機能的でありながら、着ていて気分が上がる。その両立こそが、ファッション出身の二人にしか作れなかったアウトドアウェアの姿でした。

もちろん、見た目だけが先行しているわけではありません。and wander は、防水透湿素材や軽量で丈夫な生地など、本格的な機能素材を惜しみなく用いてきました。雨や風から身を守り、汗を逃がし、軽くて動きやすい。実際に山やキャンプで使える確かな性能があるからこそ、街で着てもただのファッションに終わらない奥行きが生まれます。機能とデザイン、そのどちらも妥協しないという姿勢が、ブランドの服を本物にしています。

このバランス感覚は、いまでこそ多くのブランドが追いかけるものになりましたが、and wander が登場した二〇一〇年代初頭にはまだ新鮮なものでした。アウトドアとファッションは別の世界だという常識が残るなかで、二人はその境界を軽やかに越えてみせました。気軽に、楽しく、自然のなかへ。そんな新しいアウトドアの楽しみ方を、服を通じて提案したことが、and wander の出発点にありました。

気軽なアウトドアという思想は、ただ機能を緩めるという意味ではありません。むしろ、本格的なギアが持つ性能を保ちながら、それを誰もが手に取りやすい親しみやすさへと翻訳することを意味します。山に本気で登る人にも応えられる確かな機能を備えつつ、自然に親しみたいだけの人にも気負わせない。その間口の広さこそが、and wander が多くの人に受け入れられた理由でした。専門的になりすぎず、かといって機能を犠牲にもしない。この絶妙な中間の立ち位置を、二人は意識的に選び取っていました。

色使いも、and wander を語るうえで欠かせない要素です。山や森の自然を背景に映える鮮やかな配色や、夜間の安全のための反射材を、機能のためだけでなくデザインの一部として積極的に取り入れます。アウトドアの厳しい環境で必要とされる要素を、隠すのではなく、むしろ魅力として前面に出す。機能から生まれた必然を、美しさへと転じるこの発想が、and wander の服を一目でそれと分かる個性的なものにしています。

そんな新しいアウトドアの楽しみ方を、服を通じて提案したことが、and wander の出発点にありました。

創業から現在まで — 歩みをたどる

創業前夜 — イッセイ ミヤケとキャンプとの出会い

池内啓太郎と森美穂子は、ともにイッセイ ミヤケで服づくりに携わったデザイナーです。池内は美術大学を卒業した後に、森はファッションの専門学校を経て、それぞれイッセイ ミヤケに加わりました。革新的な素材使いと造形で世界に知られるこのブランドで、二人は服のかたちや素材について深く学んでいきます。後のand wander に通じる、デザインへの厳しい目は、この時期に養われました。

転機になったのは、池内のキャンプとの出会いでした。イッセイ ミヤケで働いていたころ、アウトドアを好む同僚に何度も誘われるうちに、彼自身もキャンプの楽しさに夢中になっていきます。ところが、いざアウトドアの店に足を運んでも、自分が本当に着たいと思える服が見つかりませんでした。機能はあっても、デザインに惹かれない。ないのなら自分たちで作ればいい。その素朴な動機が、and wander の構想へとつながっていきます。専門家としての服づくりの技術と、一人のアウトドア愛好家としての実感。その二つが重なったところに、ブランドの種がありました。

この出発点は、and wander というブランドの性格をよく物語っています。市場調査から戦略的に生まれたブランドではなく、一人の作り手が「自分が欲しい服がない」という実感から始めたブランドだということです。だからこそ、作り手の目線と使い手の目線が最初から一致していました。山やキャンプで実際に使ってみて、不便を感じれば直す。その繰り返しのなかで、機能もデザインも磨かれていきます。机上ではなく、自然のなかでの体験に裏打ちされていること。それが、and wander の服に説得力を与えている根本の理由です。

創業期(2011年)— and wander の始動

二〇一一年、池内啓太郎と森美穂子はand wander を立ち上げました。掲げたのは、気軽に自然を楽しむための、デザインされたアウトドアウェアという方向性です。ファッションの世界で培った美意識と、自ら感じたアウトドアウェアへの不満。その両方が、ブランドの最初のコレクションに注ぎ込まれました。鮮やかな色や反射材を効かせたデザインは、当時のアウトドアウェアのなかでも際立っていました。

創業当初から、and wander は単なる機能服でも、見た目だけのファッションでもない、その中間の新しい領域を狙っていました。実際に山で使える性能を持ちながら、街でも着たくなるデザイン。この明確な立ち位置が、アウトドアにもファッションにも関心を持つ層の心を捉えていきます。流行を追うのではなく、自分たちが本当に欲しい服を作るという姿勢が、ブランドの土台として早くから定まっていました。

展開と成長(2010年代〜現在)

and wander は、その後も一貫した姿勢を保ちながら、国内外で支持を広げてきました。アウトドアの機能とファッションの感覚を両立させるという方向性は、本当に良い服を求める層に深く響きます。国内のアウトドアやファッションのシーンで存在感を高めるとともに、海外のセレクトショップでも扱われるようになり、その評価は国境を越えて広がっていきました。

二〇一九年からは、大手アパレル企業のグループに加わり、より安定した体制のもとでブランドを育てていく道を選びました。経営の基盤を整えながらも、デザインの方向性はぶれることなく、創業時から掲げてきた気軽なアウトドアという思想を守り続けています。近年では、アウトドアの機能やテイストを日常に取り込む流れが世界的な潮流になり、その先駆けの一つとして、and wander があらためて注目される場面も増えています。

大きな企業のグループに入ると、ブランドの個性が薄れてしまう例は少なくありません。しかしand wander の場合、創業者の二人がデザインの中心に立ち続けることで、その芯は保たれてきました。経営の安定は、むしろ新しい素材への挑戦や、海外への展開、多様な協業といった、ブランドの可能性を広げる方向に生かされています。規模を追って個性を失うのではなく、基盤を得て表現を深める。その堅実な歩み方が、and wander が長く支持される理由の一つになっています。アウトドアという市場が成熟していくなかでも、創業の動機にあった「自分たちが本当に着たい服」という原点は、変わらず守られています。

デザイナー — 池内啓太郎と森美穂子

イッセイ ミヤケ出身の二人

and wander を率いるのは、池内啓太郎と森美穂子という二人のデザイナーです。二人に共通するのは、イッセイ ミヤケで服づくりを学んだという経歴です。素材から服のかたちを考えるという、イッセイ ミヤケならではの発想は、and wander のものづくりにも色濃く受け継がれています。アウトドアウェアでありながら、生地や造形にファッションとしての完成度を求める姿勢は、この出自と無縁ではありません。

池内啓太郎は、アウトドアへの愛着と、それを服にしたいという情熱の中心にいる人物です。キャンプとの出会いから生まれた「欲しい服がないなら自分で作る」という動機が、ブランドの原動力になりました。一方の森美穂子は、ファッションの専門教育で培った感覚を、ブランドの造形や色使いに生かしてきました。二人の異なる強みが組み合わさることで、機能とデザインの両立という、難しいバランスが実現しています。

ファッションの視点でアウトドアを捉え直す

二人のデザインを特徴づけるのは、アウトドアウェアをファッションの視点から捉え直すという姿勢です。山の道具としての機能を満たすことは大前提としながら、そこに色や形の美しさ、着る楽しさを重ねていきます。機能を満たせばそれでよいという発想ではなく、機能の上にデザインを積み上げる。その順序が、and wander の服に独特の華やかさと知性を与えています。アウトドアの専門ブランドにも、街着のファッションブランドにもない立ち位置は、この二人だからこそ築けたものでした。

二人で一つのブランドを率いるという体制も、and wander の強みです。アウトドアへの情熱と、ファッションとしての完成度。その両方を一人で担うのは容易ではありませんが、異なる視点を持つ二人が補い合うことで、機能に偏りすぎず、デザインに走りすぎない絶妙なバランスが保たれてきました。二人の対話のなかで磨かれていく判断の積み重ねが、ブランドの一貫した方向性を支えています。創業から長い時間を経ても、二人がデザインの中心に立ち続けていることが、and wander のぶれない個性の源になっています。

代表的なアイテム

and wander のアイテムは、気軽なアウトドアという思想がそのまま形になったものばかりです。ここでは、ブランドを象徴する代表的なものを順に見ていきます。

シェルジャケットとアウター

and wander を象徴するのが、防水透湿素材などを用いたシェルジャケットです。雨や風から身を守る高い機能を備えながら、鮮やかな配色や計算されたシルエットによって、街で着ても映えるデザインに仕上げられています。山では頼れるギアとして、街ではファッションの主役として活躍する。その二面性こそ、and wander のアウターの魅力です。反射材を効かせるなど、機能から生まれたディテールをデザインの一部として見せる工夫も、随所に凝らされています。軽さや動きやすさを保ちながら、雨や風にも耐える。その信頼性があるからこそ、街着としても安心して着られます。古着や中古で探す場合も、配色と素材の質感が、and wander らしさを見分ける手がかりになります。

バックパックとバッグ

バックパックをはじめとするバッグ類も、and wander を語るうえで欠かせません。荷物を背負って歩くための機能性を追求しながら、無骨になりすぎないデザインで、登山にも日常使いにも対応します。軽さや背負い心地、収納の使いやすさといったアウトドアで磨かれた機能を、街でも持ちたくなる佇まいに落とし込んでいます。ブランドの世界観を手軽に取り入れられる入口として、人気の高いカテゴリーです。素材には軽量で丈夫な生地が選ばれ、長時間背負っても疲れにくい構造が工夫されています。山では本格的な登山ザックとして、街では通勤やデイリーユースのバッグとして、一つで二役をこなしてくれる懐の深さが、多くの人に選ばれてきた理由です。

パンツ

パンツもまた、and wander の設計思想がよく表れるアイテムです。動きやすさや速乾性、撥水性といった機能を持つ生地を用いながら、シルエットは街でも穿けるすっきりとしたかたちに整えられています。山道を歩くための機能を備えつつ、日常のコーディネートにも自然になじむ。その汎用性の高さが、幅広い場面で活躍してくれます。ジャケットやカットソーと組み合わせて、機能的でありながら洗練された装いを作るのが、ブランドの定番のスタイルです。膝の動きを妨げない立体的な裁断や、小物を収めるポケットの配置など、実際に歩いて使うことを前提にした工夫が随所に施されています。それでいて見た目はあくまですっきりとしているため、アウトドアの場面でも街なかでも違和感がありません。

Tシャツとカットソー

Tシャツやカットソーといったベーシックなアイテムにも、and wander の機能とデザインへのこだわりが息づいています。汗を素早く逃がす速乾性や、軽さ、動きやすさを備えた生地を用いながら、ブランドのロゴやグラフィックを効かせたデザインで、一枚で着ても楽しい仕上がりになっています。アウトドアの本格的なアイテムへ進む前の、ブランドへの入口としても手に取りやすい存在です。山歩きの汗ばむ場面でも快適に過ごせる機能を備えながら、普段着としても自然に着られる。その気軽さが、ブランドのファンの裾野を広げてきました。ロゴを大きく配したグラフィックものは、ブランドの世界観を手軽にまとえる一枚として人気を集めています。

技術素材と日本のものづくり

and wander を論じるうえで欠かせないのが、技術素材と日本のものづくりへの向き合い方です。ブランドは、防水透湿素材や軽量で丈夫な生地など、世界水準の機能素材を用いながら、それを確かな縫製技術で仕立ててきました。高機能な素材は扱いが難しく、美しく仕上げるには高度な技術を要します。機能を満たしつつ、ファッションとしての完成度まで高めるには、素材と縫製の両面で高い水準が欠かせません。

池内啓太郎と森美穂子が、機能とデザインの両立という難しい目標を追えたのも、その理想を形にできる素材メーカーや縫製の作り手が国内にあったからにほかなりません。最先端の機能素材を、鮮やかな配色や計算されたシルエットの服へと落とし込む。その繊細な翻訳を支えてきたのが、日本の生産現場の技術力です。アウトドアという実用の世界と、ファッションという美の世界。その両方の要求に同時に応えるものづくりは、日本の素材と縫製の厚みがあって初めて成り立っています。and wander の歩みは、日本のものづくりが新しい発想と結びついたときに何が生まれるかを示す、一つの事例だと言えます。

防水性を保つための縫い目の処理や、軽さと丈夫さを両立させる生地の扱いなど、機能服には通常の衣服とは異なる繊細な技術が求められます。それを美しいデザインのなかに破綻なく収めるには、高度な縫製の力が欠かせません。日本にはアウトドアやスポーツのウェアを長年支えてきた生産の蓄積があり、and wander はその土壌を生かしてきました。デザインの理想と、機能の要求と、生産の現実。その三つを高い次元でまとめ上げられることが、日本発のアウトドアブランドとしてのand wander の強みになっています。

海外での評価と協業

and wander は、日本発のブランドでありながら、海外でも高い評価を獲得してきました。世界各地のセレクトショップが取り扱い、アウトドアとファッションを融合させた先駆けの一つとして紹介されています。アウトドアの機能を日常着に取り込む流れが世界的な潮流になるなかで、その源流の一つとして再評価される場面も増えています。

協業にも積極的で、アウトドアやスポーツ、ファッションの分野のさまざまなブランドとの取り組みを通じて、ブランドの語彙を広げてきました。異なる強みを持つ相手と組むことで、and wander の機能とデザインの感覚は、新しい文脈のなかで更新され続けています。派手な広告ではなく、服そのものの完成度と、こうした地道な協業の積み重ねによって、国境を越えた支持を築いてきた点に、ブランドの歩みの一貫性があります。

アーカイブ市場での価値

and wander は、古着や中古の市場でも存在感を増しつつあります。機能素材を用いたアイテムは、性能が長く保たれるため、中古でも実用的な一着として探される傾向があります。また、鮮やかな配色や特徴的なデザインのアイテムは、特定のシーズンならではの個性を持つため、それを求めて中古を探す楽しみもあります。

中古でand wander を選ぶ際は、素材の状態や配色、そして縫製の丁寧さに目を向けると、ブランドらしさを読み取りやすくなります。機能素材は使用や経年で性能が変化する場合があるため、状態を確かめることも大切です。流行に左右されにくい機能とデザインの両立というブランドの軸ゆえに、過去のアイテムでも現在の装いに自然になじみ、長く着続けられる点が、中古での魅力になっています。とりわけ、特定のシーズンならではの配色やグラフィックのアイテムは、いまでは手に入りにくい個性として中古で探される傾向があります。アウトドアウェアは丈夫に作られているため、中古でも実用に耐えるものが多く、賢く付き合えるブランドだと言えます。

まとめ — 自然へ続く道を、軽やかに歩く

and wander は、池内啓太郎と森美穂子が2011年に立ち上げ、気軽に自然を楽しむためのアウトドアウェアを作り続けてきたブランドです。イッセイ ミヤケで培った造形の感覚、本格的な機能素材への理解、そして日本のものづくりの技術。これらが重なり合って、機能とデザインを両立させるブランドの個性をかたちづくってきました。高い頂を目指す厳しさではなく、自然のなかを軽やかに歩く楽しさ。その思想が、創業以来ぶれることなく貫かれています。

ブランドを選ぶ視点で見れば、and wander は「アウトドアの機能と、街でも映えるデザインの両方を求める人」に向いた存在です。山でも街でも頼れる服は、流行が過ぎても古びにくく、さまざまな場面で長く活躍してくれます。一着で自然のなかへも、街なかへも出かけられる。その自由さは、忙しい現代の暮らしにこそ似合うものです。古着や中古でand wander に出会うことは、池内啓太郎と森美穂子が拓いた、新しいアウトドアの楽しみ方と、日本のものづくりの確かさに触れることでもあります。気になるアイテムがあれば、まずは下記から探してみてください。

編集方針について — この記事は GUZ FASHION 編集部のDOMESTIC BRANDカテゴリの編集方針に沿って制作されています。

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