DOMESTIC BRAND

nanamica(ナナミカ)— 本間永一郎が切り拓いた、アーバンアウトドアの原点

nanamica(ナナミカ)— 本間永一郎が切り拓いた、アーバンアウトドアの原点

nanamica(ナナミカ)は、本間永一郎が2003年に立ち上げた日本のファッションブランドです。アウトドアウェアが持つ機能性と、日常で着られる端正な佇まいを一着のなかで両立させる「アーバンアウトドア」という発想で知られてきました。山や海のための道具のような高い機能を備えながら、見た目はあくまで都会の日常になじむ。本格的な性能と、街に溶け込む端正さ。その両立こそが、二十年以上にわたってブランドの核であり続けています。

「nanamica とはどんなブランドか」を一言で言えば、技術と普遍性を結びつけ、街で着られるアウトドアという領域を切り拓いてきたブランドです。創業者の本間永一郎は、長くアウトドアやスポーツの業界に身を置いた人物であり、その経験から生まれた確かな機能への理解が、ブランドの土台になっています。同じ2003年には、本間がデザイナーとして関わるThe North Face Purple Labelも始動しており、この二つは深く結びついています。

本記事では、本間永一郎の歩みと創業の経緯から、ブランドの思想、デザイナー像、代表的なアイテム、日本のものづくりや技術素材との結びつきまでを順にたどります。アウトドアとファッションの境界を溶かしてきた、nanamicaという挑戦の輪郭を、その背景にある思想とともに追っていきます。

アーバンアウトドア — nanamica の設計思想

nanamica の哲学を一言で要約するなら、「アーバンアウトドア」です。登山やセーリングのための機能を持ちながら、見た目は伝統的で落ち着いており、都会の日常に自然になじむ。相反するように思えるこの二つを、一着のなかで両立させることが、ブランドの一貫した目標でした。過酷な自然のための道具と、街の暮らしのための服。その境界をなめらかに溶かすことに、nanamicaの独自性があります。

この思想を支えているのが、最新の技術素材への深い理解です。nanamicaは、防水透湿素材として知られるゴアテックスをはじめ、軽量で丈夫なペルテックスやコーデュラといった、高機能な生地を積極的に用いてきました。雨や風を防ぎ、軽く、丈夫である。本来は登山やマリンスポーツのために生まれたこれらの素材を、シャツやコートといった日常着に取り込むことで、見た目は穏やかでも実力は本物という服が生まれます。

技術素材を使うこと自体は、nanamicaだけの特徴ではありません。違いは、その使い方にあります。多くのアウトドアブランドが機能を前面に押し出し、いかにも高性能だと分かる見た目を選ぶのに対し、nanamicaは機能をあえて見えないところに隠します。一見すると普通のシャツやコートが、実は高機能素材でできている。その控えめな佇まいこそが、街で着るための条件だと考えるからです。機能を誇示するのではなく、日常に溶け込ませる。この引き算の感覚が、nanamicaを単なるアウトドアブランドと分けています。

同時にnanamicaは、過去の名品への敬意を大切にしてきました。本間永一郎とその仲間たちは、時代を超えて愛されてきたアウトドアやワークの定番に強い愛着を持ち、それらを現代の都市生活者のために更新するという姿勢を取りました。古い名作をそのまま復刻するのではなく、現代の技術と感覚で生まれ変わらせる。伝統への敬意と、現代への翻訳。その両輪が、nanamicaの服を流行に左右されないものにしています。

ブランド名の「nanamica」には、こうした思想を映す由来があります。これは「七つの海の家」を意味する言葉です。本間と仲間が海を愛し、国や言葉の違いを越えて、海でつながる世界中の人々に自分たちの服を届けたいという願いが込められています。海という、自由で境界のない広がりへの憧れが、ブランドの名前そのものに刻まれているのです。海はすべての陸地をつなぐと同時に、天候の厳しさと向き合う場でもあります。機能と自由、その両方を象徴する海を名に掲げたことは、アーバンアウトドアという思想と深く響き合っています。名前からして、nanamicaは機能と開かれた精神を一つにしようとするブランドなのです。

アウトドアウェアが持つ機能性と、日常で着られる端正な佇まいを一着のなかで両立させる「アーバンアウトドア」という発想で知られてきました。

創業から現在まで — 歩みをたどる

創業前夜 — アウトドア業界とセーリングの経験

本間永一郎は、アウトドアやスポーツの業界で長くキャリアを築いた人物です。日本の大手スポーツ用品メーカーで、一九八〇年代から二〇〇〇年代初頭にかけて、海外の機能性ウェアブランドの日本での展開を手がけてきました。とりわけ、あるノルウェー発のセーリングウェアブランドを日本に根づかせた立役者として知られています。この仕事を通じて、本間自身もセーリングに深く親しむようになりました。

機能性ウェアを扱う現場での経験は、本間に二つのものを与えました。一つは、過酷な環境に耐える技術素材や設計への、専門家としての確かな理解です。もう一つは、海という自由な世界への愛着です。この二つが、後のnanamicaの土台になります。共同で創業に加わった仲間もまた、有名なスポーツウェアブランドで成功を収めた作り手でした。機能を知り尽くした者どうしが、既存のメンズウェアに足りないものを補おうとして、nanamicaは生まれます。

二人が感じていたのは、当時のメンズウェアの市場に空いていた隙間でした。本格的な機能を持つアウトドアウェアは、街で着るにはあまりに山仕様で、デザインも限られていました。一方、街着として洗練された服は、雨や風に対して無力です。日常の暮らしのなかで、本当に使える機能と、毎日着たくなる端正さ。その両方を満たす服が、当時はほとんど存在しませんでした。長年業界の内側を見てきた二人だからこそ、この空白に気づき、それを埋めようと動けたのです。専門知識と問題意識が重なったところに、nanamicaの出発点がありました。足りないものを嘆くのではなく、自らの手で作るという姿勢が、ブランドの始まりにありました。

創業期(2003年)— nanamica の始動とアーバンアウトドア

二〇〇三年、本間永一郎は仲間とともにnanamicaを立ち上げました。掲げたのは、リラックスした伝統的な見た目を保ちながら、技術的な高機能を備えた服という、当時としては新しい方向性でした。アウトドアウェアは機能的だが街では浮いてしまう。きれいな服は街になじむが機能は乏しい。その間に空いていた領域を、nanamicaは「アーバンアウトドア」という言葉とともに切り拓いていきます。

同じ二〇〇三年には、本間がデザイナーとして関わるThe North Face Purple Labelも始動しました。これは、有名なアウトドアブランドを、より都会的で日常的な感覚で再解釈した日本発のラインで、日本と韓国を中心に展開されてきました。nanamicaとThe North Face Purple Labelという二つの取り組みが同時に始まったことは、本間が追い求めてきたアーバンアウトドアという思想の、二つの表れだったと言えます。

The North Face Purple Labelは、世界的に知られたアウトドアブランドの名を冠しながら、その性格を大きく組み替えた点で画期的でした。本格的な登山のための派手なギアではなく、街で日常的に着られる落ち着いたウェアへと再解釈し、紫のラベルでそれを示す。日本と韓国に限って展開するという独自の戦略も、ブランドの希少性と物語性を高めました。本間が二つのブランドを並行して育てたことで、アーバンアウトドアという考え方は、より広い層へと届いていったのです。両者は競合するのではなく、互いに補い合う関係にありました。

支持の拡大から現在へ

nanamicaは、その後も一貫した姿勢を保ちながら、国内外で支持を広げてきました。機能と普遍性を両立させるという、派手さよりも実質を重んじる方向性は、本当に良い服を求める層に深く響きます。流行のアイテムで一気に注目を集めるのではなく、毎日着られる質の高い服を作り続けることで、ブランドへの信頼を着実に積み上げてきました。

現在では、nanamicaは現代の日本のファッションを代表するブランドの一つとして、国内外の目の肥えた層から確かな評価を得ています。アウトドアの機能を日常着に取り込むという発想は、いまや世界中のブランドが追随する大きな潮流になりました。その流れの先駆けの一つとして道を切り拓いた点に、nanamicaの歴史的な意義があります。

デザイナー — 本間永一郎という存在

本間永一郎(創業者)

本間永一郎のものづくりを特徴づけるのは、機能への専門家としての深い理解と、それを日常着へ翻訳する確かな視点です。長年アウトドアやスポーツの業界で技術素材や機能性ウェアに向き合ってきた経験が、彼のデザインの土台になっています。だからnanamicaの服は、見た目だけアウトドア風の服とは根本的に異なります。素材の選び方や設計の一つ一つに、機能を知り尽くした者ならではの裏づけがあるのです。

本間のもう一つの特徴は、伝統と革新を対立させない姿勢です。過去の名品が持っていた普遍的な美しさを尊重しながら、最新の技術でそれを現代に生まれ変わらせる。懐古にも、奇抜さにも傾かず、その中間に立ち続けるバランス感覚が、彼の仕事を支えています。海への愛着から生まれたブランド名が示すように、自由で開かれた精神と、専門家としての厳密さが同居しているところに、本間というデザイナーの魅力があります。インタビューでも、機能や素材について具体的に語る一方、流行やトレンドについては多くを語りません。あくまで服そのものの実質に重きを置くその姿勢が、ブランドの誠実な性格を形づくっています。

共同創業者と二つのブランド

nanamicaは、本間永一郎と、有名なスポーツウェアブランドで実績を積んだ仲間との共同で立ち上げられました。機能を知り尽くした作り手どうしが力を合わせたことが、ブランドの確かな土台になっています。また本間は、nanamicaと同時期に始動したThe North Face Purple Labelのデザインにも関わってきました。一方は自身のブランド、もう一方は有名アウトドアブランドの日本発ライン。この二つを並行して手がけることで、本間はアーバンアウトドアという思想を、異なる二つのかたちで世に問うてきました。

代表的なアイテム

nanamica のアイテムは、アーバンアウトドアという思想がそのまま形になったものばかりです。ここでは、ブランドを象徴する代表的なものを順に見ていきます。

ゴアテックスのシェルジャケット

nanamicaを象徴するのが、防水透湿素材ゴアテックスを用いたシェルジャケットです。雨や風をしっかりと防ぎながら、内側の蒸れは外へ逃がすという高い機能を備えつつ、見た目はあくまで端正で街になじみます。アウトドアの本格的な性能を持ちながら、ビジネスや日常の装いにも合わせられるその一着は、アーバンアウトドアという思想をもっとも分かりやすく体現しています。古着や中古で探す場合も、素材の質感と端正なシルエットが、nanamicaらしさを見分ける手がかりになります。

このシェルジャケットの真価は、悪天候の日にこそ分かります。突然の雨でも慌てずに済み、それでいて見た目はビジネスの場でも浮かない。アウトドアウェア特有の派手な配色やロゴを避け、落ち着いた色とシルエットでまとめているため、スーツの上から羽織っても違和感がありません。機能性ジャケットは街では着づらいという常識を、nanamicaはこの一着で静かに覆してきました。一着持っておくと、天候や場面を問わず長く頼れる相棒になります。

コートとアウター

コートやアウターも、nanamicaの技術と普遍性の両立がよく表れる領域です。伝統的なコートの形を下敷きにしながら、技術素材を用いることで、軽さや防水性といった現代的な機能を備えています。見た目はクラシックでありながら、着てみると驚くほど機能的。その意外性が、nanamicaのアウターの魅力です。一着で装い全体を引き締めつつ、悪天候にも対応できる頼もしさを持っています。ステンカラーコートやフードの付いたアウターなど、定番の形を技術素材で仕立て直したアイテムは、通勤からちょっとした旅行まで幅広く活躍します。クラシックな見た目ゆえに流行に左右されず、長く着られる点も支持を集める理由です。雨の日に頼れて、晴れの日にも気負わず羽織れる。そんな日常の頼もしい一着として、長く愛用されてきました。

パンツ

パンツもまた、nanamicaの設計思想がよく表れるアイテムです。速乾性や撥水性、ストレッチ性といった機能を持つ生地を用いながら、シルエットは普遍的で合わせやすいかたちに整えられています。アウトドアの動きやすさと、街で穿ける端正さを両立させたパンツは、日常の幅広い場面で活躍してくれます。シャツやジャケットと組み合わせて、機能的でありながら品のある装いを作るのが、ブランドの定番のスタイルです。旅行や出張のように動きの多い場面でも、しわになりにくく快適に過ごせるため、一本持っておくと重宝します。見た目はあくまで普通のスラックスやイージーパンツでありながら、穿いてみて初めてその快適さに気づく。そんな控えめな機能性が、nanamicaのパンツの持ち味です。

シャツとカットソー

シャツやカットソーは、nanamicaの「見た目は穏やか、実力は本物」という姿勢がよく表れるアイテムです。一見すると普通のシャツでありながら、速乾性や防シワ性といった機能を備えた生地が使われていることが少なくありません。日常で気持ちよく着られる快適さと、端正な見た目を両立させたこれらのアイテムは、ブランドの入口としても手に取りやすい存在です。出張や旅行に持っていっても型崩れしにくく、洗ってすぐ乾くといった実用性は、一度体験すると手放せなくなります。ボタンダウンシャツのような定番の形を、機能素材で静かに進化させているところに、nanamicaらしさがよく表れています。普段使いの一枚にこそ、ブランドの思想が宿っているのです。

技術素材と日本のものづくり

nanamica を論じるうえで欠かせないのが、技術素材と日本のものづくりへの向き合い方です。ブランドは、ゴアテックスやペルテックス、コーデュラといった世界水準の機能素材を用いながら、それを日本の確かな縫製技術で仕立ててきました。高機能な素材は、扱いが難しく、縫製にも高度な技術を要します。それを美しく端正な服に仕上げられるのは、日本のものづくりの厚みがあってこそです。

本間永一郎が機能と普遍性の両立を追い求められたのも、その理想を形にできる素材メーカーや縫製の作り手が存在したからにほかなりません。最先端の技術素材を、見た目は穏やかな日常着へと落とし込む。その難しい翻訳を支えてきたのが、日本の生産現場の技術力です。アウトドアウェアの機能を街の服に取り込むという発想は、素材と縫製の両面で高い水準が揃って初めて実現します。nanamicaの歩みは、日本のものづくりが世界の技術と結びついたときに何が生まれるかを示す、一つの事例だと言えます。

高機能素材は、防水のための目止めテープの処理や、縫い目からの浸水を防ぐ工夫など、通常の生地とは異なる繊細な縫製を要します。見た目を端正に保ちながら、こうした機能のための処理を破綻なく仕上げるには、高度な技術と経験が欠かせません。日本の縫製の現場が長年培ってきた精度が、nanamicaの服の信頼性を裏側から支えています。機能を声高に語らないブランドだからこそ、その実力は仕立ての確かさとなって、着る人に静かに伝わるのです。

海外での評価

nanamica は、日本発のブランドでありながら、海外でも高い評価を獲得してきました。世界各地のセレクトショップが取り扱い、アーバンアウトドアという領域を切り拓いた先駆けの一つとして紹介されています。近年、アウトドアの機能を日常着に取り込む流れが世界的な潮流になるなかで、その源流の一つとしてnanamicaが再評価される場面も増えています。

派手な広告や話題づくりではなく、機能と普遍性を両立させた服の完成度によって評価を積み上げてきた点に、nanamicaの歩みの一貫性があります。日本の技術と感覚が生んだアーバンアウトドアという発想が、国境を越えて通用する普遍的な価値であることを、ブランドは静かに証明してきたと言えます。流行を追うのではなく、長く着られる本物の機能を提案し続けてきたことが、息の長い支持につながっています。

近年、世界の大手ブランドやラグジュアリーメゾンまでもが、アウトドアの機能やテイストを取り入れるようになりました。山の道具を街で着るという感覚は、いまや特別なものではなくなっています。しかしnanamicaは、その潮流がまだ一般的でなかった二〇〇〇年代初頭から、一貫してこの領域を耕してきました。流行が後から追いついてきたとも言える立ち位置にあり、源流の一つとしての確かさが、ブランドの評価を支えています。話題に乗るのではなく、話題が生まれる前から地道に積み上げてきたことの強さが、ここにあります。

アーカイブ市場での価値

nanamica は、古着や中古の市場でも独自の地位を持っています。流行に左右されない普遍的なデザインと、高機能な素材は、年を経ても古びにくく、中古でも価値を保ちやすいという特徴があります。とりわけ、ゴアテックスなどの技術素材を用いたアウターは、機能が長く保たれるため、中古でも実用的な一着として探される傾向があります。

中古でnanamicaを選ぶ際は、素材の状態や端正なシルエット、そして縫製の丁寧さに目を向けると、ブランドらしさを読み取りやすくなります。機能素材は使用や経年で性能が変化する場合があるため、状態を確かめることも大切です。流行に左右されない普遍的なデザインのため、数年前のアイテムでも現在の装いに自然になじみ、長く着続けられる点が、nanamicaの中古での魅力です。とりわけ、定番として継続生産されてきたアイテムは、過去のものと現行のものが大きく変わらないため、中古でも安心して選べます。普遍を志向するブランドならではの、時間に強い価値がここにあります。

まとめ — 街と自然をつなぐ、機能の美学

nanamica は、本間永一郎が2003年に仲間とともに立ち上げ、アーバンアウトドアという領域を切り拓いてきたブランドです。アウトドア業界で培った機能への専門的な理解、過去の名品への敬意、そして日本のものづくりの技術。これらが重なり合って、機能と普遍性を両立させるブランドの個性をかたちづくってきました。同時期に始動したThe North Face Purple Labelとともに、本間はアウトドアと日常の境界を溶かす挑戦を続けてきました。

ブランドを選ぶ視点で見れば、nanamica は「見た目の端正さと、本物の機能の両方を求める人」に向いた存在です。穏やかな佇まいの内側に高い実力を秘めた服は、流行が過ぎても古びず、日常のさまざまな場面で長く頼れます。機能を誇示せず、日常に静かに溶け込ませるという美学は、派手さに疲れた現代の装いにこそ似合います。古着や中古でnanamicaに出会うことは、本間永一郎が切り拓いたアーバンアウトドアの思想と、日本のものづくりの確かさに触れることでもあります。気になるアイテムがあれば、まずは下記から探してみてください。

編集方針について — この記事は GUZ FASHION 編集部のDOMESTIC BRANDカテゴリの編集方針に沿って制作されています。

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