KENZO は、日本人デザイナーの高田賢三がパリで立ち上げ、世界に知られるようになったブランドです。鮮やかな色づかいと、東洋と西洋の感性を自由に行き来する作風で、パリのモード界に新しい風を吹き込みました。創業者の引退や逝去を経たのち、現在は Nigo がそのデザインを受け継いでいます。ここでは高田賢三の歩みからブランドの変遷、そして古着市場での選び方までをご紹介します。
高田賢三の歩み — 姫路からパリへ
高田賢三は1939年2月27日、兵庫県姫路市で旅館を営む家に生まれました。東京の文化服装学院で服飾を学び、卒業後はしばらく日本で経験を積んだのち、1965年に船でフランスへと渡ります。当時、日本人デザイナーがパリで認められることは容易ではありませんでした。
渡仏後の数年間は下積みの時期でした。生地を買う資金も限られるなか、デパートやデザイナーのための仕事を引き受けながら、自分の表現を磨いていきました。この苦しい時期に培われた、既成概念にとらわれない色と形の感覚が、のちのブランドの個性につながりました。
鮮やかな色づかいと、東洋と西洋の感性を自由に行き来する作風で、パリのモード界に新しい風を吹き込みました。
Jungle Jap の誕生とブランドの確立
1970年4月、高田賢三はパリの Galerie Vivienne に「Jungle Jap」という名の店をオープンしました。Galerie Vivienne は19世紀に開業した歴史あるアーケードです。発表したコレクションは、花柄やボーダー、和の要素を大胆に取り入れた自由な作風で、型にはまったオートクチュールとは異なる軽やかさを持っていました。
この新鮮さはパリのモード界にすぐ受け入れられました。民族衣装の構造を応用したゆとりのある服づくりは、体を締めつける従来のシルエットへの問いかけでもありました。日本人デザイナーがパリの中心で評価された、記念碑的な登場だったと言えます。
KENZO への改名と LVMH 傘下入り
1976年、ニューヨークでのショーを機に、「Jungle Jap」という名称がアメリカ市場で差別的に受け取られかねないという指摘が強まりました。これを受けてブランド名は KENZO へと改められます。名は創業者自身の名前に由来し、以後この呼称が世界に定着しました。
1993年、KENZO は LVMH の傘下に入りました。経営基盤が安定する一方で、高田賢三は1999年に60歳でデザイナーを引退します。創業者がブランドを離れたことで、KENZO はその後、複数のデザイナーによる継承の時代へと移っていきました。
デザイナーの変遷 — Rosier から Nigo まで
高田賢三の引退後、KENZO のクリエイティブを担ったのは Gilles Rosier、続いて Antonio Marras でした。2012年には、ニューヨークの人気店 Opening Ceremony を手がけた Humberto Leon と Carol Lim が共同で就任し、ストリート感覚を取り入れた話題性のあるコレクションで注目を集めました。両者は2019年まで在任しました。
その後 Felipe Oliveira Baptista を経て、2021年に Nigo がアーティスティックディレクターに就任します。Nigo は A Bathing Ape の創業者として知られる日本人で、日本人デザイナーが再び KENZO の舵を取る象徴的な展開となりました。創業者と同じ視点を持つ後継者が、東洋と西洋の融合という原点を現代の形で描き直しています。
KENZO の象徴 — タイガーと東西の融合
2010年代の KENZO を語るうえで欠かせないのが、タイガーの刺繍をあしらったスウェットやTシャツです。Humberto Leon と Carol Lim の時代に生まれたこのアイコンは、ストリートとモードの境界をまたぐ存在として世界的に流行しました。虎の意匠は、KENZO が一貫して持つ遊び心と大胆さを端的に表しています。
とはいえ、KENZO の本質はロゴアイテムだけにあるわけではありません。花をはじめとする自然のモチーフ、明るい色彩、そして異なる文化を対等に混ぜ合わせる姿勢こそが、高田賢三から受け継がれた核です。タイガーはその一面が時代と結びついて表れたものと捉えると、ブランドの幅が見えてきます。
香水への広がり
KENZO は衣服だけでなく、香水の分野でも知られています。1988年に香水事業へ進出し、自然をモチーフにした香りでブランドの世界観を広げてきました。なかでもケシの花を象った瓶に詰められたフローラルの香りは、KENZO を代表する香水として長く親しまれています。視覚的な美しさと香りを一体で届ける姿勢は、色と形で語ってきたブランドの延長線上にあります。
香水は、衣服よりも手に取りやすい価格帯で KENZO の感性に触れられる入り口でもあります。花や植物を起点にした明るい香り立ちは、服に通じる軽やかさを持っています。ブランドを総合的に理解するうえで、香水の存在も押さえておくと解像度が上がります。
古着市場での KENZO の選び方
古着の KENZO は、時代によって価値の見え方が変わります。高田賢三が手がけた時期のヴィンテージは、自由な色柄とパリ時代の空気を今に伝える存在として、収集の対象になっています。一方、Humberto Leon と Carol Lim の時代のタイガーアイテムは、流通量が多く手に取りやすいのが特徴です。
選ぶ際は、まずどの時代のものかをタグやデザインから見極めると、相場感がつかみやすくなります。刺繍やプリントの状態、生地のへたり、縫製のほつれを確認してください。とくにタイガー刺繍は人気ゆえに模倣品も見られますので、ロゴの仕様や縫製の精度を落ち着いて確かめることをおすすめします。
KENZO についてよくある質問
KENZO はどこの国のブランドですか
KENZO は、日本人デザイナーの高田賢三がフランスのパリで立ち上げたブランドです。日本人が創業し、パリを拠点に世界へ広がったという成り立ちを持ちます。
なぜ「Jungle Jap」から KENZO に名前が変わったのですか
1976年のニューヨークでのショーを機に、「Jungle Jap」という名称がアメリカ市場で差別的に受け取られかねないとの指摘が強まったためです。これを受けて、創業者の名にちなむ KENZO へと改称されました。
現在のデザイナーは誰ですか
2021年に就任した Nigo がアーティスティックディレクターを務めています。A Bathing Ape の創業者として知られる日本人デザイナーです。
まとめ
KENZO は、高田賢三が1970年にパリで生んだブランドであり、東洋と西洋を自由に行き来する色彩感覚で世界に知られてきました。創業者の引退と逝去を経たのちも、その精神は受け継がれ、2021年からは Nigo が新たな解釈を加えています。古着で楽しむ際は、どの時代のものかを見分けることが、納得のいく一着への手がかりになります。










