設計思想 — 米国NYC Queens生まれ、「Not for you—for everyone」を掲げる21年の独立系ハウス
Telfarは、2005年にTelfar Clemens(1985年米国New York Queens生まれのリベリア系米国人デザイナー、Pace University卒業)が米国New Yorkで立ち上げたハウスです。創業から21年にわたって「Not for you—for everyone」(あなただけのものではない、みんなのもの)を中軸のスローガンに掲げる無性別・価格民主化の独立系ハウスとして、米国の現代の服飾史における独自の位置を築いてきました。
ハウスを象徴するのは、Telfar Shopping Bag(通称「Bushwick Birkin」)です。米国NYCのスーパーマーケットの紙袋の形状を、レザーで再構築した独自のショッピングバッグ型のレザーバッグで、3サイズ(Small、Medium、Large)と複数のカラー展開で、Hermèsのバーキン(フランス・パリの高級レザーバッグの代表)の精神性を「みんなのもの」として書き直すTelfar Clemensの哲学を体現する一着として2014年に発表されました。
経歴の最初の業界認知の節目は、2017年のCFDA/Vogue Fashion Fund(米国Council of Fashion Designers of AmericaとVogueが共同で主催する米国の主要な若手デザイナー支援制度)の受賞です。賞金40万ドルとともに、米国の独立系若手のなかでも独自の地位を築いていきました。
経歴のもう一つの中核となる節目は、2020年のTelfar Shopping Bagのバイラル現象です。米国Black Lives Matter(BLM、米国の人種正義をめぐる社会運動)の文脈と重なるなかで、Telfar Shopping Bagは欧米のSNSで爆発的な認知を獲得し、公式公開時に即完売、転売市場では定価を大きく上回る価格で取引される事態となりました。Telfar Clemensは同年から「Bag Security Program」(受注予約システムで一定期間内の注文を全件受注する仕組み)を導入し、価格民主化と需要急増の両立を独自の方法で模索する歩みを進めました。この年と翌2021年、CFDAアワードのAmerican Accessories Designer of the Yearも連続受賞しています。
主要な意匠は、Telfar Shopping Bag(Bushwick Birkin、ハウスの代名詞)、無性別のTシャツ・Hoodie・Tracksuit(創業から21年にわたる中軸ライン)、そしてTeam Liberia(リベリア代表選手団)の五輪公式ウェア(2020年東京大会・2024年パリ大会でTelfar Clemensがデザインを手がけた)、Telfar Television(2021年開始のライブ配信メディア)と組み合わせた独自の文化発信の仕組みなどです。
創業から現代まで — Telfarの歩み
1985-2005 米国NYC Queens生まれ、Pace Universityで学生起業
Telfar Clemensは1985年、米国New YorkのQueens(Lefrak City)で生まれました。リベリア系の両親のもとに生まれ、幼少期に一家でリベリアへ戻ったものの、1990年の第一次リベリア内戦を背景に再び米国へ移住した経緯を持ちます。地元の小学校P.S. 206で担任教師がクラス全員に描いたモノグラムのうち、Telfar少年に割り当てられた「丸の中にTとC」の意匠が、のちのブランドロゴの原型になったという逸話も知られています。
Telfarは2003年秋に米国NYCのPace University(Lubin School of Business、Manhattan拠点)へ進学しました。会計学を専攻するかたわら、午前は授業、午後は自身のコレクション制作、夜はDJという生活を重ね、服飾の専門教育を受けていない一般大学の在学生という立場からブランドを立ち上げる独自の出発点を築きました。Pace在学中の2005年、Telfarはまだ学生でありながら自身ブランドTelfarを米国NYCで正式に立ち上げ、2008年に同大学を卒業しています。
2005-2013 創業期の独立経営と無性別ラインの確立
2005年から2013年にかけて、Telfar Clemensは米国NYCで独立経営を続けながら、無性別のラインを中軸とするTelfarの世界観を独自に築き上げていきました。
創業期のTelfarの主軸は、Tシャツ・Hoodie・Tracksuitなどの基本的なストリートウェアでした。米国NYCのストリート文化の系譜を独自に書き直す手法で、米国の独立系若手のなかでも独自の方向性を打ち出していったのです。「Not for you—for everyone」のスローガンは、創業初期から一貫したTelfar Clemensの哲学として、独立経営の中軸を支える根本姿勢となりました。
2014 Telfar Shopping Bag(Bushwick Birkin)の発表
2014年はTelfarの歩みのなかで最大の意匠的な節目となりました。Telfar Clemensは、Telfar Shopping Bag(後に通称「Bushwick Birkin」と呼ばれるショッピングバッグ型のレザーバッグ)を正式に発表したのです。
Telfar Shopping Bagは、米国NYCのスーパーマーケットの紙袋の形状をレザーで再構築した独自のシルエットで、3サイズと複数のカラー展開、Hermèsバーキンの精神性を「みんなのもの」として書き直すTelfar Clemensの哲学を体現する一着として、米国のストリート文化のなかで認知の輪を広げていきました。
2017 CFDA/Vogue Fashion Fund受賞
2017年はTelfar Clemensの歩みのなかで最初の業界認知の節目となりました。米国Council of Fashion Designers of AmericaとVogueが共同で主催するCFDA/Vogue Fashion Fund(米国の主要な若手デザイナー支援制度)を、Telfar Clemensが受賞したのです。
CFDA/Vogue Fashion Fundの受賞によって、Telfar Clemensは米国の独立系若手のなかでも独自の地位を不動のものにしました。米国New York Times、Vogue、Business of Fashion、英国i-D Magazineなどの主要業界誌で繰り返し取り上げられる存在となっていきます。
2020-2021 Telfar Shopping Bagのバイラルと五輪ウェア
2020年はTelfarの歩みのなかで最大の社会的な認知の節目となりました。米国Black Lives Matterの文脈と重なるなかで、Telfar Shopping Bagは欧米のSNSで爆発的な認知を獲得したのです。公式公開時に即完売する状態が続き、転売市場では高騰した価格で取引される事態となりました。Telfar Clemensは同年から「Bag Security Program」(受注予約システムで一定期間内の注文を全件受注する仕組み、転売市場の高騰を抑制する独自の対応)を導入し、価格民主化と需要急増の両立を独自の方法で模索する歩みを進めていきます。オプラ・ウィンフリーは自身の「お気に入り」企画でこのバッグを取り上げ、同年と翌2021年にはCFDAアワードのAmerican Accessories Designer of the Yearも連続受賞しました。
同じ2020年、Telfarはもう一つの節目を迎えます。東京五輪(新型コロナウイルスの影響で開催は2021年)に出場するTeam Liberia(リベリア代表選手団)の公式ウェアを、Telfar Clemensがデザインしたのです。Telfar Clemens自身のリベリア系米国人としてのアイデンティティを、選手団の公式ウェアという形で公的に体現するこの協業は、米国の主要業界誌で大きく取り上げられました。この協業は2024年のパリ五輪でも継続され、Team Liberiaの公式ウェアを再びTelfarが手がけています。
2021-2022 Beyoncé / Solange / Selena Gomez / Bella Hadidの愛用とTelfar Television
2020年代前半、Telfarは欧米の中核アーティストたちの愛用で大きな認知を積み重ねていきました。Beyoncé、Solange Knowles(Beyoncéの妹、2018年から早くもTelfarを公の場で身につけていた最初期の支持者の一人)、Selena Gomez(2019年にブロードウェイ観劇でミニサイズを着用)、Bella Hadid(2020年7月にオレンジのBushwick Birkinを街中で着用)などが、Telfar Shopping Bagを愛用する場面で欧米の業界誌とSNSで繰り返し参照される存在に育っていきました。
2021年9月のニューヨーク・ファッションウィークでは、Telfar Television(通称Telfar TVまたはTELLYVISION)がInstagramライブ配信の記者会見形式で発表されました。Apple TVやRokuなどのOTTデバイスやInstagramライブで視聴できる24時間ライブ配信の独自チャンネルで、視聴者が自身の映像を投稿できる仕組みも備え、Telfar文化の独自の発信の場として現在まで継続的に展開されています。
Telfarを作った人々
Telfar Clemens(創業者・クリエイティブディレクター、2005-現在)
1985年米国New YorkのQueensで生まれたリベリア系米国人デザイナーです。第一次リベリア内戦を背景に米国へ移住した家族のもとで育ち、Pace University在学中の2005年に自身ブランドTelfarを米国New Yorkで立ち上げました。「Not for you—for everyone」を21年にわたって継続して掲げる無性別・価格民主化の独立系ハウスの中核に位置し、2014年にTelfar Shopping Bag(通称「Bushwick Birkin」)を発表、2017年にCFDA/Vogue Fashion Fundを受賞、2020年にTelfar Shopping Bagのバイラル現象で世界的な認知を獲得すると同時にTeam Liberiaの五輪公式ウェアを手がけ、2024年のパリ五輪でも同選手団のウェアを継続して担当した、米国の現代の服飾史における独立系の中核を担うデザイナーの一人です。
主要アイテム — Telfarの語彙
Telfar Shopping Bag(Bushwick Birkin)
ハウスの代名詞となった一着です。米国NYCのスーパーマーケットの紙袋の形状をレザーで再構築した独自のショッピングバッグ型レザーバッグで、3サイズ(Small、Medium、Large)と複数のカラー展開、Hermèsバーキンの精神性を「みんなのもの」として書き直すTelfar Clemensの哲学を体現する作品となりました。Beyoncé、Oprah、Selena Gomez、Bella Hadidなどが愛用する場面で欧米のSNSと業界誌で繰り返し参照される一着に育っています。
無性別のTシャツ・Hoodie・Tracksuit
創業から21年にわたる中軸のラインです。米国NYCのストリート文化の系譜を独自に書き直した手法で、Tシャツ・Hoodie・Tracksuitなどの基本的なストリートウェアを無性別のラインとして展開する独自の構成は、米国の独立系若手のなかで稀有な持続力を示してきました。
Team Liberia 五輪公式ウェア
2020年東京大会と2024年パリ大会で、Telfar Clemensがデザインを手がけたリベリア代表選手団の公式ウェアです。Telfar Clemens自身のリベリア系米国人としてのアイデンティティを、国の代表選手団のウェアという形で公的に体現する独自の協業で、米国の主要業界誌で取り上げられた作品です。競技用途の選手団支給品という性質上、市場に出回る数はごくわずかで、一般に流通するTelfar Shopping Bagやトップスとは性格の異なるコレクターズアイテムに位置づけられます。
中古市場でのTelfar
Telfarの中古市場は、複数の軸で形成されています。Telfar Shopping Bag(Bushwick Birkin)の3サイズと複数のカラー、無性別のTシャツ・Hoodie・Tracksuit、創業期(2005-2013)の希少な独立系作品――これらが日本国内でも取引されています。
日本ではフリマアプリ、メルカリ、Vestiaire Collective、ZOZO USED、それから原宿・渋谷・青山・代官山の古着店での流通が中心です。
Telfar Shopping Bagは正規販売時から品薄が続いてきた経緯もあり、中古市場では定価を上回る価格帯で取引されることが珍しくありません。特に希少カラーのSmallサイズは相場が上振れしやすく、欧米とアジアの愛好家のあいだで「手の届くバーキン代替」として安定した参照対象に育ってきました。無性別のTシャツ・Hoodie・Tracksuitは比較的手頃な価格帯で取引され、Telfar創業期からの一貫した世界観を体現する作品として支持を集めています。相場は出品状況で変動するため、購入時は個別に最新価格を確認することをおすすめします。
まとめ — 21年の歩み、米国NYC Queensの独立系からBushwick Birkinと五輪ウェアまで
Telfarの歩みを21年でまとめると、次のような節目に整理できます。1985年にTelfar Clemensが米国New YorkのQueensでリベリア系米国人として生まれ、2005年にPace University在学中に自身ブランドTelfarを米国New Yorkで立ち上げ、「Not for you—for everyone」を中軸のスローガンに掲げる無性別・価格民主化の独立系ハウスを21年にわたって独立経営してきました。2014年にTelfar Shopping Bag(通称「Bushwick Birkin」)を発表、2017年にCFDA/Vogue Fashion Fundを受賞、2020年にTelfar Shopping Bagのバイラル現象で世界的な認知を獲得すると同時に「Bag Security Program」を導入し、Team Liberiaの東京五輪公式ウェアも手がけました。2021年からはBeyoncé、Solange、Selena Gomez、Bella Hadidらの愛用で欧米の業界誌とSNSに繰り返し取り上げられ、同年9月にはTelfar Televisionも始動、2024年のパリ五輪でもTeam Liberiaのウェアを継続して担当しています。
中古市場ではTelfar Shopping Bag(Bushwick Birkin)と無性別のTシャツ・Hoodie・Tracksuitを軸に日本国内でも取引され、米国の現代の独立系ハウスとして支持を集めてきました。Telfarの21年に及ぶ独立経営は、米国の現代の服飾史における「米国NYC Queens生まれのリベリア系米国人デザイナーが、Pace University在学中に立ち上げた独立系ハウスを、『Not for you—for everyone』の哲学とBushwick Birkinの意匠で、独立系若手の中核に位置づけた事例」として、今後も参照され続けるはずです。











