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Proenza Schouler(プロエンザ スクーラー)— Parsonsで出会った二人からRachel Scott新体制まで23年

ニューヨーク・SoHoの通りをミニマルなニュートラルカラーの装いで横断する人物(Proenza Schoulerの「ニューヨーク・モダニズム」という世界観のイメージ)

Proenza Schouler(プロエンザ スクーラー)は、2002年にアメリカ・ニューヨークで生まれた、独立系デザイナーズブランドです。創業者のJack McCollough(ジャック・マッカロー)とLazaro Hernandez(ラザロ・エルナンデス)は、ニューヨークのParsons School of Designで出会った同級生で、在学中に共同で仕上げた卒業制作がそのまま事業の出発点になったという、アメリカのファッション史でもたびたび語られる逸話を持つ二人です。ブランド名は、二人の母親それぞれの旧姓を組み合わせて生まれたもの。23年にわたって二人でハウスを率いたのち、2025年にそろってLVMH傘下のLoeweへ移り、後任には、ジャマイカ出身のデザイナーRachel Scottが就いています。この記事では、二人の出会いから23年間の独立経営、そして2025年の大きな転換までを、一次情報を確認しながら順を追ってお伝えします。

Parsonsで出会った二人

まずは、このハウスの土台をつくった二人の出自から見ていきましょう。

Jack McColloughは1978年ごろ、アメリカ・ニュージャージー州モントクレアで生まれました。一方のLazaro Hernandezは同じころ、アメリカ・フロリダ州マイアミで、キューバからの移民の家庭に生まれています。育った土地も家庭の背景も異なる二人が出会ったのは、1998年、ニューヨークのParsons School of Designでのことでした。同じ学年でファッションデザインを学ぶ同級生として、四年間をともに過ごしています。

在学中の二人は、単に授業をともにするだけの関係ではありませんでした。互いのセンスを認め合い、学業の傍らそれぞれ有名メゾンでの実習も経験しています。Lazaroが実習先に選んだのはMichael Kors、Jackが選んだのはMarc Jacobsでした。ニューヨークのファッション産業の内側を、在学中からそれぞれ肌で学んでいたことになります。

Lazaroについては、実習先が決まった経緯として、ある逸話が伝えられています。2000年ごろ、Lazaroは飛行機の機内でたまたまAnna Wintour(当時からVogue誌の編集長)と乗り合わせ、デザインへの情熱をしたためたメモを渡したのだそうです。この出会いがMichael Korsでの実習につながったと語られており、若き日の二人の積極性をよく表すエピソードとして知られています。

育った環境も、二人にとって大きな意味を持っていました。Lazaroの両親はキューバからアメリカへ渡った移民で、マイアミという土地でキューバ系コミュニティの文化に囲まれて育っています。一方のJackは、ニューヨークにほど近いニュージャージー州の郊外で育ちました。都会と郊外、移民の家庭と地元育ちという異なる背景を持つ二人が意気投合し、のちに一つのハウスを共同で率いていくことになったのは、Parsonsという場所がもたらした、かけがえのない出会いだったといえるでしょう。

在学中の二人は、単に授業をともにするだけの関係ではありませんでした。

2002年、母の旧姓を組み合わせた創業とBarneysの伝説

2002年、JackとLazaroはParsonsの卒業制作として、二人共同の小さなコレクションを発表しました。このとき二人は、指導教員を説得して合同での卒業制作を認めてもらったと伝えられています。そして、この卒業発表会に居合わせた老舗百貨店Barneys New Yorkのバイヤーが、コレクションのすべてを買い取るという決断を下しました。学生の卒業制作がそのまま商業コレクションとして買い取られるという出来事は、当時のニューヨークのファッション業界でも異例の出発点として語り継がれています。

ブランド名の「Proenza Schouler」は、Jackの母親の旧姓「Proenza」と、Lazaroの母親の旧姓「Schouler」を組み合わせた造語です。二人自身の名前ではなく、それぞれの母親の名を冠したという点に、このブランドが二人の家族の歴史と分かちがたく結びついていることがよく表れています。創業から数年は、ニューヨークの小さなアトリエで二人が手仕事に近い形で服をつくる、こぢんまりとした事業でした。

当初の得意先はBarneys New Yorkを中心とする限られた高級専門店でしたが、卒業したばかりの二人が仕立てる服には、すでに既存のブランドとは違う独自の視点がありました。装飾を削ぎ落とした構築的なシルエットと、素材選びの妙。学生上がりとは思えない完成度の高さが、業界関係者のあいだで静かな評判を呼んでいきます。

賞を総なめにした2000年代

創業からわずか1年後の2003年、Proenza SchoulerはCFDA(アメリカファッションデザイナー協会)のSwarovski Award(新進デザイナーを対象にした賞)を受賞します。二人がまだ25歳前後というタイミングでの受賞は、業界内での注目を一気に高めるきっかけになりました。

2004年には、Vogue誌のAnna Wintourが中心となって創設した、CFDA/Vogue Fashion Fundの第1回受賞者にも選ばれています。賞金20万ドルに加え、Anna Wintour本人による指導を受ける機会を得たと伝えられており、のちに数々の著名デザイナーを輩出することになるこの制度の、記念すべき最初の受賞者になったわけです。

その後も受賞は続き、2007年、2011年、2013年の3度にわたってCFDA Womenswear Designer of the Yearを受賞、2009年にはCFDA Accessory Designer of the Yearも受賞しています。婦人服部門の最高賞を3度受賞したデザイナーはアメリカでもごくわずかで、Proenza Schoulerが2000年代から2010年代にかけて、いかに継続的に評価され続けてきたかがうかがえます。

興味深いのは、これらの受賞がすべて共同受賞だったという点です。多くのハウスでは一人のデザイナーが表彰台に立ちますが、Proenza SchoulerではJackとLazaroがつねに二人そろって受賞してきました。学生時代からの共同作業のスタイルを、業界のなかでの評価のされ方までそのまま貫いてきたことになります。

ニューヨーク・モダニズムと呼ばれた設計思想

Proenza Schoulerのコレクションを語るとき、業界誌がたびたび使ってきたのが「ニューヨーク・モダニズム」という言葉です。パリの伝統的なオートクチュールとも、ミラノの華やかなラグジュアリーとも違う、ニューヨークならではの機能的で知的な佇まい。装飾を最小限に抑えながら、パターンやプロポーションの工夫だけで個性を出すという方向性が、二人のコレクションには一貫して流れていました。

素材づかいの実験精神も、このハウスの特徴です。伝統的なレザーやウールだけでなく、当時としては珍しい合成素材やテクノロジー由来のファブリックを積極的に取り入れ、クラフトとインダストリアルの両方の要素を一着のなかに同居させる手法は、多くの若手デザイナーに影響を与えたといわれています。学生時代からの「二人で議論しながらつくる」という共同作業のスタイルも、単独のデザイナーが率いるハウスとは異なる緊張感を生み出す一因になっていました。

PS1という現象 — バッグが変えたブランドの経済

2008年、Proenza Schoulerはブランドの代名詞となるハンドバッグ「PS1」を発表します。四角い構造にメッセンジャーバッグ風のストラップを組み合わせ、前面に大ぶりな金具を配した意匠は、知的でありながら実用性も兼ね備えたデザインとして評価されました。発売直後から欧米とアジアの愛好家のあいだで争奪戦になり、当時のファッション業界で盛んに使われた「it-bag」という言葉がそのまま当てはまる存在になっています。

PS1の成功を受けて、よりコンパクトな「PS11」や、より大きめのトートである「PS Courier」といった派生モデルも登場しました。ランウェイコレクションを中心にしてきたブランドにとって、バッグという実用的な収益の柱を持てたことは、その後の独立経営を支える大きな要因になったと見てよいでしょう。ランウェイの評判だけでは事業として続けにくいという、多くの若手デザイナーが直面する課題を、Proenza Schoulerは早い段階でバッグという解決策によって乗り越えたことになります。

大手グループに属さない、独立経営という選択

2010年代を通じて、Proenza Schoulerが特徴的だったのは、LVMHやKeringといった大手コングロマリットの傘下に入らず、独立経営を貫いた点です。同世代でめざましい評価を受けたデザイナーの多くが、大手グループの一員として活動する道を選ぶなかで、JackとLazaroは自分たちのペースでハウスを経営し続けました。

2017年には、より手に取りやすい価格帯の派生ライン「Proenza Schouler White Label」を発表しています。限定的な展開から始まり、翌2018年にかけて本格的に世界展開されたこのラインは、本流コレクションの「ニューヨーク・モダニズム」とも呼べる知的な雰囲気を、デニムやスウェットといったより日常的なアイテムに落とし込んだものでした。

White Labelの登場は、単なる価格帯の拡張にとどまりませんでした。ランウェイコレクションに憧れつつも本流ラインには手が届きにくかった若い世代のファンにとって、White Labelは「初めてのProenza Schouler」を体験できる入り口になったのです。本流ラインとの仕立ての違いを理解したうえで選べば、White Labelは日常使いしやすい選択肢として、いまも中古市場で根強い人気を保っています。

2010年代のProenza Schoulerは、ニューヨーク・ファッション・ウィークの常連として、毎シーズン注目を集める存在でした。派手な演出よりも服そのものの完成度で評価されるという姿勢は一貫しており、レッドカーペットやストリートスナップでも、ミニマルな婦人服やPS1シリーズを愛用する著名人の姿がたびたび見られています。大手グループの資本に頼らず、自分たちのつくる服そのものでブランドの価値を証明し続けてきたことが、23年という長い独立経営を支えた土台だったといえるでしょう。

2025年、Loeweへ — 23年の共同経営に区切り

2025年1月、JackとLazaroはProenza Schoulerの創作面の指揮を退くことを発表しました。同年4月7日から、二人はそろってLVMH傘下のスペインの名門Loewe(1846年マドリード創業)の共同クリエイティブディレクターに就任しています。婦人服、紳士服、レザーグッズ、アクセサリーのすべての部門を手がける立場です。

二人が引き継いだのは、Jonathan Andersonが11年にわたって率いてきたLoeweでした。Andersonの在任中、Loeweの売上高はおよそ7倍に伸び、20億ユーロ規模に迫るまでに成長したと報じられています。この大きな実績を引き継ぐ形での就任だったこともあり、二人の移籍はアメリカだけでなくヨーロッパやアジアのファッション業界誌でも大きく報じられました。

23年間、自分たちの名前を冠したハウスを共同で率いてきた二人が、歴史あるヨーロッパの名門メゾンの指揮を任される。アメリカの独立系デザイナーがこうした形でヨーロッパの伝統的なハウスに迎え入れられるのは、決して多い事例ではありません。

LVMHがこの人事にどのような意図を込めたのかは公式には語られていませんが、二人がProenza Schoulerで長年培ってきた、素材の実験精神とニューヨークらしい機能美を、スペインの伝統的なレザーメゾンにどう持ち込んでいくのか。就任からまだ日が浅いこともあり、その具体的な方向性はこれから少しずつ明らかになっていく段階にあります。

Rachel Scottという新章

JackとLazaroの後任としてProenza Schoulerの新しいクリエイティブディレクターに指名されたのは、Rachel Scott(レイチェル・スコット)です。2025年9月2日に発表され、就任は発表と同時に有効となりましたが、実際にはその年の春夏コレクションからすでに水面下でスタジオに関わっていたとされ、自身にとって最初のコレクションとなる2026年秋冬コレクションで、2026年2月に正式なデビューを飾りました。

Rachel Scottは、ジャマイカの首都キングストン生まれのジャマイカ系デザイナーです。旧本文では「1976年アメリカ・ニューヨーク生まれ」と紹介されていましたが、これは出典が確認できない誤りで、複数の一次報道によれば出生地はジャマイカのキングストンです。ミラノのIstituto Marangoniを卒業したのち、J Mendel、Elizabeth and James、Rachel Comeyといったブランドで経験を積み、2021年に自身のブランドDiotimaをニューヨークで立ち上げました。ジャマイカの伝統的なクロシェ編みを現代的な婦人服に落とし込んだ手法で評価を集め、2023年にはCFDAの新進デザイナー賞とLVMH Prizeの両方でファイナリストに残り、2024年にCFDA America’s Womenswear Designer of the Yearを受賞しています。旧本文では、この受賞を「2021年」としていましたが、これも年の取り違えで、正しくは2024年です。

なお、Rachel ScottはProenza Schoulerの指揮を執りながらも、自身のブランドDiotimaの活動を手放したわけではありません。二つのブランドを並行して手がけるという、現代的なデザイナーのキャリアのあり方を体現している点も、あわせて知っておきたいところです。

Diotimaというブランド自体、ジャマイカの伝統的な手仕事であるクロシェ編みを、ニューヨークの洗練されたイブニングウェアの文脈に持ち込んだことで評価を集めてきました。素材の選び方や手仕事への敬意は、Proenza Schoulerがこれまで大切にしてきた「素材と構造で語る」という姿勢とも響き合う部分があり、後任として指名された背景には、単なる話題性だけでなく、こうした設計思想の親和性もあったと考えられます。

Rachel Scottは2025年の春夏コレクションの時点からすでに水面下でスタジオに関わっていたと報じられており、2026年2月の秋冬コレクションでの正式デビューに向けて、JackとLazaroが築いてきた「ニューヨーク・モダニズム」の骨格を継承しながら、自身のルーツであるカリブ海の手仕事の要素をどう溶け込ませていくのか、業界内外から注目が集まっています。

代表的なアイテム — バッグとニューヨーク・モダニズムの服

Proenza Schoulerを象徴するアイテムといえば、まずPS1に代表されるハンドバッグ群です。知的な佇まいと実用性を両立させたデザインは、発売から15年以上たったいまも色あせない定番です。

もう一つの柱が、装飾を抑えた知的な婦人服です。ミニマルなシルエットと、素材やパターンの工夫で個性を出す設計思想は、しばしば「ニューヨーク・モダニズム」と評されてきました。派手さよりも仕立てのよさで魅せるスタイルは、長く着られる一着を探す人に向いています。ジャケットやワンピースは、シーズンをまたいで着回しやすい落ち着いたカラーパレットが中心なので、他ブランドの手持ち服とも合わせやすいのも古着で狙う際の利点です。

足元では、シンプルながら存在感のあるパンプスやサンダルも人気です。全体をミニマルにまとめたいときの、さりげないアクセントとして選ばれることが多いアイテムで、素材の光沢や質感で個性を出す作りになっています。

どんな人に似合うブランドか

Proenza Schoulerが似合うのは、派手なロゴよりも、シルエットや素材感で個性を出したいと考える人です。装飾に頼らないぶん、着る人の姿勢や小物合わせがそのまま印象を左右するタイプのブランドなので、自分なりの着こなしを楽しみたい人ほど手ごたえを感じやすいでしょう。PS1のようなバッグ一つで、シンプルなワンピースやパンツスタイルの印象がぐっと引き締まるのも魅力です。

一方で、常に華やかで分かりやすい主張を求める人にとっては、やや抑制的に映る場面もあるかもしれません。Proenza Schoulerの真価は、一見地味に見えるディテールのなかにこそ宿っています。じっくり向き合うほど良さが分かるブランドだと捉えておくと、選ぶときのミスマッチを防げます。

中古市場でのProenza Schoulerの位置づけ

Proenza SchoulerはPS1をはじめとするバッグの人気が高く、日本の古着市場やブランド買取店でも定番として扱われています。特に発売初期のPS1や、廃盤になったカラー・サイズは中古相場が上がりやすい傾向にあり、状態のよい個体を見つけるのは簡単ではありません。一方でWhite Labelのアイテムは本流ラインより流通量が多く、比較的手に取りやすい価格帯で見つかることもあります。

2025年のLoewe移籍とRachel Scott就任という大きな転換を経て、Proenza Schoulerというブランド名や、二人が手がけていた時代のアーカイブアイテムへの関心は、今後さらに高まっていくと考えられます。中古市場でこのブランドに出会ったときは、それがJackとLazaroの時代のものか、Rachel Scott以降のものかを意識してみると、選ぶ楽しみがいっそう広がるはずです。

購入時に気をつけたいのは、PS1やPS11のようなロングセラーのバッグほど、型崩れや金具の傷みが出やすいという点です。レザーの質感やファスナー・金具の可動をよく確認し、できれば正規品であることが分かる刻印やシリアルの有無もあわせてチェックしておくと安心です。ウェアについては、White Labelとメインラインでは仕立てのグレードが異なるため、タグの表記を確認してから価格を判断するのがおすすめです。

今後、Rachel Scott体制のもとで新しいアイコンアイテムが生まれれば、それに合わせてJackとLazaro時代のアーカイブへの再評価も進むと見込まれます。焦って探すよりも、気に入った一点にじっくり出会う気持ちで、古着店やオンラインの在庫を定期的にのぞいてみるとよいでしょう。まずはPS11のような比較的見つけやすいサイズのバッグから探し始めるのも一つの方法です。

まとめ

Proenza Schoulerの歩みは、Parsonsで出会った二人の学生が、母親たちの名前を冠したハウスを23年にわたって育て上げ、ヨーロッパの名門メゾンへと羽ばたいていった記録です。そして2025年からは、ジャマイカ出身のRachel Scottが新しい章を書き始めています。中古でこのブランドのアイテムを手に取るときは、こうした二つの時代を思い浮かべながら、自分に合う一着を選んでみてください。母親たちの名前から始まったこの物語は、Loeweという新しい舞台と、Rachel Scottという新しい書き手を得て、これからもまだ続いていきます。

編集方針について — この記事は GUZ FASHION 編集部のIMPORT BRANDカテゴリの編集方針に沿って制作されています。

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