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Y-3(ワイスリー)— 山本耀司とadidasによるスポーツウェアとモードの融合

Y-3(ワイスリー)— 山本耀司とadidasによるスポーツウェアとモードの融合

山本耀司 (Yohji Yamamoto) というデザイナー

山本耀司は 1943 年 10 月 3 日に東京で生まれました。母 Fumi (フミ) は東京・新宿区の小さなアトリエで婦人服仕立てを営む dressmaker で、父は山本が生まれた直後に太平洋戦争で出征し戦死しました。母子家庭で育った山本は、母の縫製作業を日常的に間近に観察する幼少期を過ごします。

慶應義塾大学法学部に進学し 1966 年に卒業した後、母の影響で進路を変更し文化服装学院に再入学しました。1969 年の文化服装学院卒業時には、装苑賞 (So-en Award) を受賞し、業界デビュー前から注目を集めます。

GUZ編集部レビュー4.2 / 5

山本耀司とアディダスの技術力が22年続く協業を通じて磨かれており、モードとスポーツウェアの両立という点で高い完成度を持っています。オーバーサイズを前提にした設計のため、体に沿ったすっきりした着こなしを求める方にはサイズ選びに注意が要ります。

オーバーサイズを前提にした設計のため、体に沿ったすっきりした着こなしを求める方にはサイズ選びに注意が要ります。

山本耀司ブランドと「Hiroshima Chic」 期

山本は 1972 年に自身ブランド「Y’s」 を立ち上げ、1977 年には Yohji Yamamoto 本店ブランドを始動しました。1981 年 4 月、Comme des Garçons の川久保玲と並んで Paris のオートクチュール組合カレンダー外で発表したコレクションは、欧米のファッション批評を震撼させました。

全身黒、たわむシルエット、解け落ちる裾、左右非対称の構造といった、当時の Paris モード基準とは正反対のアプローチは、フランス紙 Le Figaro により「Hiroshima Chic」 と揶揄され、後に山本自身は「最大の侮辱でもあり最大の名誉でもあった」 と回想しています。

2002 年 adidas との協業発表

2002 年、山本耀司は adidas のクリエイティブパートナーシップを締結したと発表しました。adidas 側の責任者は当時の CEO Herbert Hainer で、山本側からは Yohji Yamamoto Inc. 取締役の山本理 (耀司の長女) が交渉を主導したと業界紙が報じています。

このパートナーシップは、当時としては画期的な「ラグジュアリーモードデザイナー × 大手スポーツメーカー」 の本格的協業の最初期例でした。後の Stella McCartney × adidas、Raf Simons × adidas、Pharrell × adidas、Kanye West × adidas (Yeezy)、Stüssy × Nike といった一連の協業の原型となる契約形態でした。

2003 年春夏、NYC Pier 94 でのデビュー

Y-3 の最初のショーは 2002 年 10 月、ニューヨーク Pier 94 で開催されました。コレクション名義は「Spring/Summer 2003」 で、Yohji Yamamoto 本店と並行する正式ライセンスラインとして発表されました。

「Y」 は Yohji の頭文字、「3」 は adidas の Three Stripes ロゴを指す命名で、Yohji Yamamoto Inc. と adidas AG の双方が完全な共同所有権を持つ独自構造で運営されます。Yohji 側がデザインと方向性を担い、adidas 側が技術開発、製造、グローバル流通を担う分業体制が、22 年経過した現在まで継続しています。

代表アイテム「Qasa High」 とハイテクスニーカーの系譜

Y-3 の最初の歴史的ヒットアイテムは、2013 年に発表された「Qasa High」 ハイトップスニーカーです。Yohji Yamamoto が自身のブランドで長年探究してきた「足袋 (たび) 様の二股構造」 を、adidas の Boost ソール技術と組み合わせた独自のハイテクスニーカーで、業界紙 GQ や Hypebeast から「2010 年代スニーカーカルチャー最大の一作」 と評されました。

Qasa High に続いて、Kaiwa (2018)、RUNNER 4D (2019、3D プリント・ソール)、Yohji Star Hi (2020) などのアイコニックなスニーカーシリーズを連続展開し、Y-3 のスニーカーカテゴリは現在でも世界中で長期的な需要を保ち続けています。

ロングコートとオーバーサイズシャツ、Yohji Yamamoto DNA の継承

Y-3 のアパレル展開では、Yohji Yamamoto 本店ブランドの黒中心、オーバーサイズ、解体構造といった DNA を、スポーツウェア素材で再構築する手法を一貫して採用しています。

主軸となるアイテムは、ナイロンテックスのロングコート、ジョガー仕様のテーパードパンツ、オーバーサイズシャツとクルーネックスウェット、フードとフライト・パイロットアウター、テクスタイル・カーゴパンツです。素材は、adidas が提供するハイテク機能素材 (Climacool、Primeknit、Boost、Adiprene) と、Yohji 側が選定した日本産ハイエンド・ファブリック (フランス機織りリネン、岡山産ジャパニーズデニム、京都の絹混素材) を組み合わせる独自調達体制を取ります。

GUZ編集部レビュー4.3 / 5

足袋のような二股構造とブーストソールを組み合わせた意匠は、スニーカーカルチャーの節目として話題を集めた完成度の高さがあります。個性の強いシルエットゆえ、保守的な装いとの相性はやや選ぶ面があります。

オリンピックとアスリート顧客

Y-3 は 2010 年代後半以降、各種スポーツの国際大会で着用されるユニフォームのデザインを担当する事例が増えました。スペインの男子サッカーチーム Real Madrid (2014 から 2015 シーズンの遠征アウェイ・ジャージ)、米国の体操オリンピック代表 (2016 リオ五輪)、フランスのフェンシング代表 (2024 パリ五輪) などが Y-3 デザインのコンペティション・ユニフォームを着用してきました。

公の場で Y-3 アパレルを着用したセレブには、Pharrell Williams、Kanye West (Ye)、Jay-Z、Drake、A$AP Rocky、Justin Bieber、坂本龍一、ビョーク、Tilda Swinton、Cate Blanchett などが含まれます。

旗艦店とグローバル展開

Y-3 の旗艦店は、東京・青山、ニューヨーク・SoHo、ロンドン・Mayfair、ミラノ・Brera、Paris Marais の五都市に展開されています。各店舗は山本耀司自身が空間設計に関与し、Yohji 本店ブランドのコンセプト・ストアと統一感のある黒中心のミニマルな空間が特徴です。

EC 展開は、Y-3 公式オンラインストア (y-3.com) に加えて、adidas 公式 EC、SSENSE、MATCHESFASHION、Net-a-Porter、Selfridges、Browns、Dover Street Market などのグローバル EC で取扱されています。

22 周年 (2024) と将来展望

2024 年に Y-3 は創業 22 周年を迎え、過去のアーカイブから抜粋した「Y-3 Made in Germany」 限定シリーズを記念リリースしました。このシリーズは、Y-3 の初期アイテムを当時の Germany 製造工場で再生産するという特殊な企画で、コレクター層から大きな反響を得ました。

山本耀司本人は 2024 年時点で 81 歳ですが、依然として Yohji Yamamoto 本店と Y-3 の両方の最終的なデザイン承認を担っています。後継体制については Yohji Yamamoto Inc. 内部で長女の山本理を中心に進められており、Y-3 についても adidas との契約延長交渉が継続中と報じられています。

ヴィンテージ古着市場での Y-3 の見方

Y-3 はヴィンテージ古着市場で安定した流通量を持ち、特にスニーカーカテゴリは継続的な需要があります。中古価格帯は、Qasa High が 25,000 円から 60,000 円台、Kaiwa が 18,000 円から 40,000 円台、RUNNER 4D が 40,000 円から 100,000 円台、アパレルではロングコートが 35,000 円から 80,000 円台、オーバーサイズシャツが 15,000 円から 40,000 円台で取引される事例が観察されます。

タグは「Y-3」 の刺繍ロゴと「Made in Germany」 「Made in China」 「Made in Vietnam」 の生産国表示が混在します。コレクター層は 2003 年から 2010 年までの初期 Made in Germany ロットを特に高評価する傾向があり、二次流通でも他年代より一段高い価格が付きます。

サイズ表記は欧州式 (XS、S、M、L、XL、XXL) で、Yohji DNA を反映した意図的なオーバーサイズ設計のため、サイズ表記より 1 段下を選ぶ場合もあります。

同時代のラグジュアリー × スポーツ系プロダクトとの位置づけ

同時代で並べやすいラグジュアリー × スポーツ系のプロダクトは、Stella McCartney for adidas (2004 年創業、女性向けスポーツウェア)、Raf Simons for adidas Originals (2013-2018 のスニーカーコラボ期)、Kim Jones for Air Jordan (2020-)、Pharrell Williams for Louis Vuitton (2023-)、そして Junya Watanabe Comme des Garçons MAN の Nike コラボシリーズ などです。

これらと並べたときの Y-3 の独自性は、創業から 22 年経過した現在も継続している長期パートナーシップであり、業界で唯一無二の長寿例として記録されています。多くの「ラグジュアリー × スポーツ」 協業が 3 年から 7 年で終了する中で、Yohji Yamamoto と adidas の関係は両者の信頼関係と独立した経営判断の継続を象徴する稀有な事例です。

編集方針について — この記事は GUZ FASHION 編集部のDOMESTIC BRANDカテゴリの編集方針に沿って制作されています。

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