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Ahluwalia(アルワリア)— インドとナイジェリアの二重ルーツと、デッドストック再構築のサステナビリティ

市場に並ぶ色彩豊かなアフリカンプリントの生地(AhluwaliaのIndianとNigerianの二重ヘリテージを象徴するイメージ)

Ahluwalia(アルワリア)は、2018年にロンドンでPriya Ahluwaliaが立ち上げたブランドです。デッドストック生地とヴィンテージ衣料を解体・再構築する手法と、インドとナイジェリアという自身の二重ルーツを軸にした意匠で、サステナビリティを掲げる若手メゾンの代表格として知られてきました。旧版の記事には、Priya Ahluwaliaの出自について「父方がインド系、母方がナイジェリア系」という記述がありましたが、複数の英語圏の一次情報を確認したところ、正しくは父がナイジェリア系、母が(ニューカッスル出身の)第二世代インド系であり、記述が逆でした。学歴についても、旧版は「University of WestminsterでBAとMAの両方を修了した」としていましたが、実際にBA(学士)を取得したのはUniversity for the Creative Arts(UCA、エプソムキャンパス)で、University of Westminsterで修了したのはMA Menswearのみです。さらに、2020年に受賞したとされていたH&M Design Awardは正しくは2019年、2021年にファイナリスト選出とされていたLVMH Prizeは正しくは2020年で、いずれも年次が1年ずれていました。本稿ではこうした点を一つずつ確認し直しながら、Ahluwaliaの歩みと現在地を、複数の英語圏の一次情報にあたり直したうえで整理してお伝えします。

創業者Priya Ahluwaliaと創業の経緯 — Sweet Lassiという出発点

Priya Ahluwaliaは1990年代前半にロンドンで生まれ、ロンドン南部のトゥーティング(Tooting)で育ちました。父はナイジェリア系、母はニューカッスル出身の第二世代インド系という家庭で、幼いころから両親それぞれの文化に触れる環境にあったと複数の英語圏メディアが伝えています。ファッションへの関心は、装いにこだわりのあった母の影響が大きかったとも紹介されています。

進学先としてまず選んだのはUniversity for the Creative Arts(UCA)のエプソムキャンパスで、ここでファッションデザインの基礎を学び、2015年にBA(学士)課程を修了しました。その後、University of Westminsterに進み、2018年にMA Menswearを修了しています。旧版の記事はBA・MAともにWestminsterで学んだとしていましたが、UCAとWestminsterという二つの教育機関を経てきたというのが正確な経緯です。

Priya Ahluwaliaの転機になったのは、2017年に家族でナイジェリア・ラゴスを訪れた際の経験でした。現地の市場で、欧米から輸出された大量の中古衣料が流通している様子を目にしたことをきっかけに、古着や繊維廃棄物がどのように国境を越えて動いているのかを調べ始めます。その関心の延長で訪れたのが、インド・デリー近郊のパニパットという街です。パニパットは世界有数のガーメントリサイクル拠点として知られ、世界中から集まった古着や繊維くずが再生繊維へと加工される現場が広がっています。Priya Ahluwaliaはこの二つの土地で撮影した写真をまとめ、2018年に自費出版の写真集「Sweet Lassi」として発表しました。旧版の記事は「Sweet Lassi」を「パンジャブ地方の刺繍やヨルバの織物の伝統を記録した写真集」と説明していましたが、実際の内容はラゴスとパニパットで見た中古衣料・繊維廃棄物の国際的な流通の実態を記録したドキュメンタリー写真集であり、テキスタイルの伝統工芸を紹介するものではありませんでした。なお、旧いブランド紹介ページの記録では刊行年を2019年とする記述もありましたが、これも2018年が正しい年です。

「Sweet Lassi」で得た気づきは、そのままUniversity of WestminsterのMA修了コレクションと、ブランド設立後最初のシーズンとなるSS19コレクションのテーマに反映されました。デッドストック生地とヴィンテージ衣料を分解し、新しい一着として組み直すという手法は、この時期から一貫してAhluwaliaというブランドの核になっています。MA修了直後の2018年、Priya Ahluwaliaは自身の姓を冠したブランドAhluwaliaをロンドンで正式に立ち上げました。

ブランド設立後のAhluwaliaは、毎シーズンロンドン・ファッション・ウィークで発表を続け、SS19コレクションの発表以降、業界メディアから継続的に取り上げられる存在に育っていきました。2019年時点ですでに欧米の複数のメディアが「注目すべきメンズウェアデザイナー」として名前を挙げており、賞歴が本格化する前の段階から、デッドストックとヴィンテージを軸にした手法そのものが評価の対象になっていたことがうかがえます。

Priya Ahluwaliaはこの二つの土地で撮影した写真をまとめ、2018年に自費出版の写真集「Sweet Lassi」として発表しました。

ブランド美学 — インドとナイジェリアの二重ルーツ、サステナビリティという方法論

Ahluwaliaというブランドを特徴づけているのは、Priya Ahluwalia自身のインドとナイジェリアという二つのルーツと、廃棄される予定だった生地や衣料を新しい価値に変えるという製法上の姿勢を、切り離さずに一つの世界観として提示している点です。ラゴスとパニパットでの取材経験は単なる社会問題への関心にとどまらず、実際のコレクション制作の方法論そのものを形づくりました。

受賞歴の面でも、この姿勢は繰り返し評価されてきました。2019年には、スウェーデンのH&M Groupが主催するH&M Design Awardを受賞しています。10名のファイナリストの中から選ばれ、賞金5万ユーロを獲得したこの受賞は、H&M公式のニュースリリースをはじめ複数の業界メディアで報じられており、審査員にはVogue Germany編集長のChristiane Arpや、当時のHighsnobietyスタイルディレクターなどが名を連ねていました。旧版の記事は受賞年を2020年としていましたが、正しくは2019年です。

翌2020年には、フランスのLVMHが主催するLVMH Prizeのファイナリストに選出されています。この年はCOVID-19の影響で最終審査イベントが実施できず、通常は優勝者一人に贈られる賞金30万ユーロが、ファイナリスト全員で分配されるという異例の年でした。LVMH Prize公式サイトのPriya Ahluwaliaのプロフィールページも、この年を「2020年のファイナリスト」と明記しています。旧版の記事は「2021年にLVMH Prizeファイナリストに選出された」としていましたが、これも1年ずれた誤りでした。

2021年には、英国のBritish Fashion CouncilとGQ誌が共同で運営するBFC/GQ Designer Menswear Fundを受賞しています。賞金15万ポンドに加えて、12か月間のビジネスメンタリングプログラムと法律事務所Sheridansによる無償の法務サポートが付与される制度で、Bethany Williams、Bianca Saunders、Feng Chen Wang、Nicholas Daley、Stefan Cookeといった候補の中から満場一致で選ばれたと、University of Westminsterの公式ニュースが伝えています。旧版の記事は同じ2021年に「BFC NEWGEN MEN」という制度を受賞したとしていましたが、この名称の制度でPriya Ahluwaliaが選出されたことを裏付ける一次情報は確認できず、本稿では採用していません。同じ2021年には、英国王室が贈るQueen Elizabeth II Award for British Designも受賞しています。

翌2022年には、羊毛業界団体が主催するInternational Woolmark Prizeのファイナリストにも選出されました。この年はPeter Do、Saul Nash、フランスのEgonlab、南アフリカのMMUSOMMAXWELLなど計7組が選ばれ、各ファイナリストには賞金6万豪ドルが贈られ、その資金を使って2022年秋冬向けのメリノウール製コレクションをそれぞれ制作するという仕組みになっています。デッドストックとヴィンテージの再構築を軸にしてきたAhluwaliaが、あえて新品のウール素材を主役にした課題に挑んだという点でも、この年のファイナリスト選出は話題を集めました。ふだんは廃棄予定の生地からしか作らないブランドが、羊毛という一次生産の素材とどう向き合うかという組み合わせ自体が、審査員や業界メディアの関心を引いた形です。

代表アイテムと意匠 — デッドストックとヴィンテージの再構築

Ahluwaliaを象徴する手法は、市場で使われずに眠っていたデッドストック生地と、すでに誰かが着用したヴィンテージ衣料を解体し、パッチワークの技法で新しい一着として組み直すというものです。特に、複数のデニムを波状のパターンで縫い合わせるパッチワーク手法は、ブランドの代名詞的な意匠として複数のファッションメディアで紹介されてきました。均一に大量生産される衣料とは異なり、一着ごとに使用する生地の組み合わせが変わるため、同じ柄が二つと存在しないという性質も、このブランドらしさの一つです。

この手法をもっとも大きな規模で展開したのが、デンマークのGANNIとのコラボレーションです。両ブランドは複数回にわたって協業しており、2度目となる2022年4月には、すべてデッドストックデニムのみで作られたカプセルコレクションを発表しました。トレンチコートやデニムスーツ、カットアウトドレスなど16型からなるこのコレクションは、Priya Ahluwalia自身のルーツと90年代デニムの雰囲気、GANNIらしいシルエットを組み合わせたもので、このコラボレーションを機にPriya AhluwaliaはGANNIのクリエイティブ集団「Ganni’s Creative Collective」の一員にも迎えられています。

コラボレーションはGANNIにとどまりません。Adidas Originalsとはパリ・ファッションウィークの舞台で協業し、英国の老舗レザーブランドMulberryとは、再生レザーを使ったカプセルコレクションを制作しました。IT企業のMicrosoftとは、着なくなった衣料の寄付・アップサイクルを仲介するプラットフォーム「Circulate」を共同で開発するなど、ファッション業界の外にも活動の幅を広げています。直近では、スポーツブランドPumaとの初のスニーカーコラボレーションが2025年に発表され、定番モデル「Suede」をAhluwaliaらしい解釈でリメイクした一足が同年10月から順次発売されました。このコラボレーションは1度きりの企画ではなく、次の展開として「VS-1」というモデルをアフリカ的な配色でまとめたシリーズも予定されていると報じられており、両者の協業は継続的な取り組みとして育てられています。海外の主要セレクトショップではSSENSEが早くからAhluwaliaを取り扱い、独自の特集記事でPriya Ahluwaliaを「デッドストックの探求者」と呼んで紹介するなど、業界内での認知はコラボレーション以外の場でも着実に積み上がってきました。2024年1月には、Tolu Coker、Torishéju Dumiという同じくナイジェリアにルーツを持つ二人のデザイナーとともに、British Vogueの「Sustainability Trailblazers」特集で表紙を飾っています。旧版の記事にあった「Nigerian Wax Print Shirt」や「Vintage Cricket Sweater」といった具体的な商品名については、裏付けとなる一次情報が見当たらなかったため、本稿では採用せず、デッドストックとヴィンテージの再構築という手法そのものの説明にとどめています。素材の調達は、既存のアパレル業界で行き場を失った余剰在庫や、古着として集められた衣料を仕入れるところから始まり、そこからどのような一着を組み立てられるかをデザインチームが逆算していくという、通常のブランドとは順序が逆になった制作プロセスが特徴です。同じ生地の在庫が尽きればそのデザインは再生産されないため、シーズンをまたいで同じ柄が繰り返し登場することはほとんどありません。

どんな人に似合うブランドか

Ahluwaliaが似合うのは、一着ごとに異なる生地の組み合わせや、既製品にはない一点物らしさを楽しみたい人です。パッチワークのデニムやアウターは、それ自体が主役になる存在感を持っているため、シンプルな組み合わせの中に一枚投入するだけでコーディネート全体の印象を変えることができます。ブランドが背負う社会的なテーマ、つまり中古衣料や繊維廃棄物の国際的な流通という問題意識に共感できる人にとっても、単なる衣服以上の意味を持って着られるブランドだといえます。

一方で、均一なシルエットや無地に近いミニマルな装いを好む人にとっては、パッチワークならではの柄の主張がやや強く映るかもしれません。その場合は、GANNIとのコラボレーションのようにシルエット自体はオーソドックスに保たれたアイテムや、アウター以外の小物から試してみると、ブランドとの距離感がつかみやすくなります。サステナビリティという文脈に関心があるものの、価格帯の高いラグジュアリーブランドには抵抗があるという人にも、Ahluwaliaは比較的親しみやすい入り口の一つになり得るブランドです。メンズウェアとしての設計思想を出発点にしながらも、シルエットや丈感には性別を限定しない作りのアイテムが多く、Puma Suedeのようなスニーカーコラボレーションを含めて、幅広い層が取り入れやすいラインナップに広がっている点も付け加えておきたいところです。

中古市場でのAhluwaliaの位置づけ

Ahluwaliaを中古市場の視点から見るとき、まず押さえておきたいのは、このブランドがそもそも新品の生地をほとんど使わず、デッドストックとヴィンテージの再構築を出発点にしているという点です。つまり、Ahluwaliaの一着を中古で手に入れるという行為は、すでに一度リサイクルされた生地が、さらにもう一巡り循環していくことを意味します。ブランドが掲げるサステナビリティの理念と、古着として流通する行為そのものが矛盾なく重なり合うという点は、他の多くのブランドにはない特徴です。

実際の流通面では、パッチワーク技法を用いたデニムやアウターが一点物に近い性質を持つため、同じ個体が二つと存在しないという希少性が、中古市場での価値の一因になっています。日本国内ではフリマアプリやVestiaire Collectiveのような海外の委託販売プラットフォーム、セレクトショップの古着コーナーなどが主な入手経路になりますが、流通量自体はまだ限られており、状態のよい個体に出会えたら早めに検討する価値があるブランドだといえます。旧版の記事にあった具体的な中古価格帯(円単位の金額)については、裏付けとなる一次情報が確認できなかったため、本稿では採用していません。

購入時に確認しておきたいのは、パッチワークに使われている生地の種類やタグの状態です。デッドストック生地とヴィンテージ衣料の組み合わせという製法上、同じシーズンのアイテムでも一着ごとに縫製やパッチの配置が異なることが珍しくありません。GANNIとのコラボレーションのように協業先のブランドタグが併記されているアイテムもあるため、単独のAhluwaliaタグと協業ラインのタグを見分けておくと、購入後の扱いに迷いにくくなります。デッドストック生地を使った衣類は、経年による色褪せや生地の劣化の進み方が新品由来の生地と異なる場合があるため、写真だけで状態を判断せず、可能であれば実店舗やイベントで実物の風合いを確認してから購入を決めるという慎重さも役に立ちます。

よくある疑問

Ahluwaliaは何年にH&M Design Awardを受賞しましたか

正しくは2019年です。H&M Groupの公式ニュースリリースをはじめ複数の業界メディアが、Priya Ahluwaliaが2019年のH&M Design Awardを受賞し、賞金5万ユーロを獲得したと報じています。旧版の記事は2020年としていましたが、正しい受賞年は2019年です。

LVMH Prizeでは優勝したのですか、それともファイナリストですか

ファイナリストです。2020年のLVMH Prizeでファイナリストの一人に選出されましたが、優勝者に選ばれたわけではありません。この年はCOVID-19の影響で通常の最終審査が行えず、賞金30万ユーロがファイナリスト全員で分配されるという特殊な年でした。旧版の記事は選出年を2021年としていましたが、正しくは2020年です。

Priya Ahluwaliaの出身国やルーツはどこですか

本人はロンドン生まれ、ロンドン育ちの英国人デザイナーです。父がナイジェリア系、母がニューカッスル出身の第二世代インド系という家庭に生まれ、この二つのルーツを自身のコレクションの世界観に反映させています。旧版の記事にあった「父方がインド系、母方がナイジェリア系」という説明は、複数の一次情報を確認する限り逆であることが確認できました。

Priya Ahluwaliaはどこの大学を卒業しましたか

BA(学士)はUniversity for the Creative Arts(UCA)のエプソムキャンパスで2015年に修了し、その後University of WestminsterのMA Menswearを2018年に修了しています。旧版の記事はBA・MAともにUniversity of Westminsterで学んだとしていましたが、BAを取得したのはUCAであり、Westminsterで学んだのはMA課程のみです。

まとめ

Ahluwaliaの歩みを一次情報で確認し直すと、2017年のラゴスとパニパットへの旅から生まれた写真集「Sweet Lassi」を出発点に、Priya Ahluwaliaがデッドストック生地とヴィンテージ衣料の再構築という独自の手法を築き、2018年のブランド設立から2019年のH&M Design Award、2020年のLVMH Prizeファイナリスト、2021年のBFC/GQ Designer Menswear FundとQueen Elizabeth II Award for British Designという評価を積み重ねてきた過程が見えてきます。旧版の記事にあった学歴や出自の順序の誤り、受賞年の1年のずれ、実在が確認できない賞の名称や商品名といった記述は、一次情報を確認する限り事実と異なっていたため、本稿であらためて整理しました。GANNIやMulberry、Puma、Microsoftとの協業を通じて活動の幅を広げながらも、サステナビリティという創業当初からの姿勢を保ち続けている点は変わっていません。パッチワークならではの一点物らしさや、循環という理念と地続きの中古流通のあり方も踏まえたうえで、Ahluwaliaというブランドとの付き合い方を考えてみてください。

編集方針について — この記事は GUZ FASHION 編集部のIMPORT BRANDカテゴリの編集方針に沿って制作されています。

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