設計思想 — ニューヨークから届く「現代の上質なニット」
Khaiteは、2016年にCatherine Holstein(1983年生まれ、幼少期を米国南カリフォルニアと英国ロンドンの間で過ごした)がニューヨークで立ち上げたハウスです。
ハウスを象徴するのは、極めて上質なカシミアのニットと、計算された大胆な裁断の婦人服です。Catherine Holsteinは、米国の高級婦人服が「派手で目立つ意匠」と「手頃な大量生産」の二極に分かれていた状況を見て、その中間の「目立たないが極めて質の高い、長く着られる婦人服」を作るハウスを目指しました。
ハウスの服作りは、欧米の高級婦人服の伝統と米国の現代の感覚を組み合わせる手法に特徴があります。装飾を削ぎ落とし素材とシルエットだけで語る姿勢が一貫しています。イタリアの高品質なカシミアと、精度の高い米国のニット工場の技術を組み合わせ、米国の女性が日常的に着るニットとして提示しました。シルエットは大きく、肩が落ち、袖が長く、丈が膝に届く――こうした「あえて緩い」仕立てが、欧米とアジアの女性愛好家のあいだで「現代の上質なニット」の代名詞として強い支持を集めます。
Catherine Holsteinは、2022年と2023年にCFDA American Womenswear Designer of the Year(米国服飾デザイナー協会の婦人服部門の最高賞)を2年連続で受賞し、米国の現代を代表する独立系デザイナーの一人としての地位を確立しました。米国の女優Katie Holmesが2019年にニューヨークの街中でハウスのカシミアのカーディガンとブラトップの組み合わせを着用した姿を撮られたことが、ハウスの世界的な認知を一気に押し上げる契機にもなりました。
創業から現代まで — Khaiteの歩み
1983-2016 Catherine Holsteinの学生時代と最初の挑戦
Catherine Holsteinは1983年に生まれ、幼少期を米国南カリフォルニアと英国ロンドンの間で過ごしました。
南カリフォルニアと英国ロンドンを行き来する幼少期を経て、Catherineはニューヨークの Parsons School of Design に進みますが、在学中に手がけた卒業制作(ジュニアシシス)のコレクションをBarneys New Yorkがそのまま買い付けたことをきっかけに、学業を離れて自身のブランド事業に専念する道を選びます。自身の名を冠したこの最初のブランドは、Barneys New York、Saks Fifth Avenue、Kirna Zabête、Louis Bostonなど世界40店舗で取り扱われるまでに広がりましたが、2009年に活動を終えました。学生の卒業制作がそのまま百貨店バイヤーの目に留まり事業化するという出発点は、Catherineの服作りが早くから商業的な現場と地続きだったことを物語っています。
最初のブランドを終えた後、Catherineは次の挑戦までの数年間、Gap、Vera Wang、Maiyet、The Elder Statesmanといった、規模も客層もまったく異なる複数のハウスでデザイナーとしての経験を積み重ねていきます。大衆向けの量産と、ごく少数のための丁寧な仕立ての両方の現場を知ったこの期間が、後のKhaiteの「目立たないが質の高い」という設計思想の土台になったと考えられます。
2016 創業 — 新しい名前で再出発
2016年、Catherine HolsteinはホールディングカンパニーのAssembled Brandsの支援を受け、新しいハウスKhaiteをニューヨークで立ち上げました。ハウス名「Khaite」はギリシャ語のχαίτη(「長く流れる髪」を意味する単語)に由来すると同時に、Catherineの愛称「Kate」と同じ発音になる言葉遊びでもあり、最初の挑戦で自身の姓を冠したブランドとは異なる新しい出発を象徴する命名でした。自身の名前を前面に出さないこの命名の姿勢は、「デザイナー個人の物語」よりも「服そのものの質」を前に出すというKhaiteの一貫した打ち出し方とも重なります。
Khaiteの最初のラインは、上質なカシミアのニット類が中心となる構成でした。最初のブランドの経験から得た「商業的に持続する事業の設計」という学びと、複数のハウスで積んだ経験が、Khaiteの創業期の方針を形作ります。一度事業を畳んだ経験があるからこそ、拡大の速さよりも品質と持続性を優先する堅実な運営方針が最初から貫かれていました。創業初期のKhaiteは、ニューヨークの小さな体制で始まった事業でした。
欧米の高級服飾の業界誌は新しい米国のハウスとして注目を始め、米国ニューヨークの主要な高級服飾の販売店での取り扱いが徐々に広がっていきました。
2019 米国の女優Katie Holmesと「The Sweater」の写真
2019年はKhaiteの歩みのなかで最も大きな文化的な節目となりました。米国の女優Katie Holmesが、ニューヨークの街中でタクシーを拾う際にKhaiteのカシミアのカーディガンとブラトップの組み合わせを着用した姿を撮られ、その写真が世界中の主要な業界誌で繰り返し取り上げられたのです。
「The Sweater」(そのカーディガン)と呼ばれるようになったこの組み合わせは、欧米とアジアの女性愛好家のあいだで一気に話題となりました。この出来事がKhaiteが世界的に認知される最初の契機となり、以後ニューヨーク・ファッションウィークで毎シーズンのランウェイショーを行う体制へとハウスを押し上げていきます。街中でのスナップ写真1枚がハウスの認知を決定づけたという経緯は、広告やSNS戦略を主軸としない同ハウスらしい広がり方だったともいえます。
2022と2023 CFDA American Womenswear Designer of the Year
2022年、Catherine Holsteinは米国の業界の最高位の栄誉であるCFDA American Womenswear Designer of the Year(米国服飾デザイナー協会の婦人服部門の最高賞)を受賞します。
2023年には2年連続で同賞を受賞し、Catherine Holsteinは米国の現代を代表する独立系デザイナーの一人としての地位を確立しました。同賞を2年連続で受賞したデザイナーは米国の業界のなかでも限られており、Catherineの歩みが業界全体から評価された証となりました。一度は自身のブランドを畳んだ経験を持つデザイナーが、この栄誉ある賞を連続受賞するという軌跡は、米国服飾業界のなかでも異例の再起の物語として語られています。
2023 ソーホーの旗艦店開店
2023年2月16日、Khaiteはニューヨーク・ソーホー地区のマーサー・ストリート165番地に初の直営旗艦店をオープンしました。ソーホーの文化的な遺産へのオマージュを込めた内装が話題となり、英国ロンドン、フランスのパリ、東京の主要な販売店でも安定した存在感を確保してきました。
2020年代のKhaiteの代表的な意匠は、カシミアのカーディガン(「The Sweater」として知られる)、ブラトップとカーディガンの組み合わせ、革のオーバーサイズのジャケット、革のレギンス、ダブルブレストのウールのコート、大きめのシルエットのデニムなど、素材もシルエットも幅広いラインナップです。これらは欧米とアジアの女性愛好家のあいだで「Khaiteの語彙」として認知され、ハウスの商業的な広がりを支える意匠となりました。
Khaiteを作った人々
Catherine Holstein(創業者、2016-現在)
1983年生まれ、幼少期を米国南カリフォルニアと英国ロンドンの間で過ごした人物です。ニューヨークのParsons School of Design在学中にBarneys New Yorkが卒業制作コレクションを買い付けたことをきっかけに学業を離れ、自身の名を冠した最初のブランドを世界40店舗で展開しましたが2009年に活動を終えました。その後Gap、Vera Wang、Maiyet、The Elder Statesmanで経験を積み、2016年にKhaiteをニューヨークで立ち上げました。2022年と2023年にCFDA American Womenswear Designer of the Yearを2年連続で受賞し、米国の現代を代表する独立系デザイナーの一人としての地位を確立しています。
代表アイテム — Khaiteの語彙
カシミアのカーディガン(「The Sweater」)
ハウスの代名詞となった意匠です。2019年に米国の女優Katie Holmesがニューヨークの街中で着用した姿が世界中の業界誌で繰り返し取り上げられ、欧米とアジアの女性愛好家のあいだで「Khaiteのカーディガン」として一気に認知されました。イタリアの高品質なカシミアと米国のニット工場の技術を組み合わせた、肩が落ちて袖が長い「あえて緩い」仕立てが特徴です。
革のオーバーサイズジャケットとレギンス
Khaiteのもう一つの代名詞となった意匠です。硬質なレザーを大きなシルエットで仕立てるジャケットと、身体に沿うレギンスの組み合わせは、カシミアのニットとは対照的な「もう一つのKhaiteの顔」として、欧米とアジアの女性愛好家のあいだで定番の着方となりました。柔らかなニットと硬質なレザーという振れ幅の広さこそが、Khaiteを単なる「ニットのハウス」に留めない要因になっています。
中古市場でのKhaite
Khaiteの中古市場は、複数の軸で形成されています。カシミアのカーディガン(The Sweater)、革のオーバーサイズジャケットとレギンス、大きめのシルエットのデニム――これらが日本国内でも取引されています。
日本ではフリマアプリ、メルカリ、Vestiaire Collective、ZOZO USED、それから東京・青山や表参道の古着店での流通が中心です。The Sweaterは特に人気が高く、中古市場でも高値で取引される傾向があります。カラーやサイズ違いのバリエーションも豊富なため、状態の良い個体を見つけたら早めに検討するのがおすすめです。同一デザインでも生地や仕立ての年次で細部が異なるため、相場は出品状況で変動します。購入時は個別に最新価格を確認することをおすすめします。
まとめ — 10年の歩み、最初の挑戦の終わりからCFDA連続受賞とソーホー旗艦店まで
Khaiteの歩みを10年でまとめると、次のような節目に整理できます。1983年に生まれたCatherine Holsteinは、Parsons School of Design在学中に手がけた卒業制作をBarneys New Yorkが買い付けたことをきっかけに、自身の名を冠した最初のブランドを世界40店舗で展開しましたが2009年に終えました。Gap、Vera Wang、Maiyet、The Elder Statesmanで経験を積んだ後、2016年にAssembled Brandsの支援を受けKhaiteを立ち上げます。2019年のKatie Holmesの「The Sweater」の写真がハウスを世界的に押し上げ、2022年と2023年にCFDA American Womenswear Designer of the Yearを2年連続で受賞、2023年2月にはニューヨーク・ソーホーに旗艦店をオープンしました。
中古市場ではカシミアのカーディガンと革のオーバーサイズジャケットを軸に日本国内でも取引され、米国の現代を代表する高級婦人服ハウスとして支持を集めてきました。Khaiteの10年に及ぶ歩みは、「一度は挑戦を終えたデザイナーが、複数のハウスでの経験を経て新しい名前で再出発し、上質なニットという一点突破で米国婦人服の頂点に上り詰めた事例」として、今後も参照され続けるはずです。











