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NEEMIC(ニーミック)— 香港生まれ、北京を拠点に15年続く中国サステナブルファッションの先駆け

ベージュのオーバーサイズトレンチコートがハンガーに掛かっている様子。NEEMICのオーバーサイズシルエットと自然素材の質感という世界観に題材が一致

NEEMIC(ニーミック)は、2011年に香港で生まれ、翌年からは北京を拠点に活動してきた中国発のサステナブルファッションブランドです。共同創業者はハンス・マルティン・ガリカー(Hans Martin Galliker)とアミハン・ツェンプ(Amihan Zemp)の2人。高級ファッション業界で余った生地を主原料に据える手法や、湖南省の伝統的な手織り布との協業でも知られ、北京を拠点に15年にわたって活動を続けています。「静かで控えめ」という言葉で語られる作風は、過剰な装飾を避け、素材そのものの質感を生かす姿勢を貫いてきました。

香港で生まれ、北京へ拠点を移したNEEMICの出発点

NEEMICは2011年、香港で産声を上げました。中国本土でオーガニックな衣服づくりの動きを根づかせるには、実際に物事が動く場所に身を置く必要があると考えた創業者たちは、翌年には拠点を北京へ移しています。掲げていたビジョンは、美しいデザインを作ること、ファッション産業全体をよりサステナブルにすること、そして芸術的な交流の場を提供することの三つでした。

2010年代初頭の中国は、急成長する国内消費市場と、大量生産・大量廃棄型のファッション産業が同時に膨張していく時期でした。NEEMICはこうした状況のただ中で、欧州的なサステナビリティの発想を、中国という土地の素材や職人技に翻訳しながら根づかせていくという、当時としてはかなり早い時期の試みに挑んだブランドだったと言えます。

「静かで控えめ」という言葉で語られる作風は、過剰な装飾を避け、素材そのものの質感を生かす姿勢を貫いてきました。

なぜ中国でサステナブルファッションだったのか

2010年代前半の中国は、世界の縫製工場としての存在感を強める一方で、大量生産・大量廃棄型のファッション産業が抱える環境負荷や、生産現場の労働環境が国内外から厳しく問われ始めていた時期でもありました。急速な経済成長の陰で、衣料品の生産量そのものが急拡大していたからこそ、その内側からサステナビリティを実践しようとする試みには大きな意味がありました。

NEEMICが選んだのは、欧米のサステナブルブランドをそのまま輸入するのではなく、中国国内の職人や生産体制と向き合いながら、現地に根ざした形でサステナビリティを実装していくという道でした。生地の調達から縫製、販売までを北京という一つの都市で完結させる姿勢は、輸送に伴う環境負荷を抑えるという意味でも理にかなった選択だったと言えます。

当時の中国では、サステナビリティという言葉自体がまだ一般的ではなく、環境配慮型の素材を専門に扱うサプライヤーもごく限られていました。そうした土壌がない中で、ゼロから調達網を築き上げていく作業は、欧米で同種のブランドを立ち上げるよりもはるかに手間のかかる道のりだったはずです。だからこそNEEMICの15年という活動年数には、単なる時間の長さ以上の意味が込められていると言えるでしょう。

ハンス・マルティン・ガリカーとアミハン・ツェンプという二人

ビジネス面を担うハンス・マルティン・ガリカーは、スイスで有機農業を営む家庭に育ち、ITの分野にも通じていた人物です。家業を通じて自然にオーガニックという発想に親しんできた背景が、NEEMICの土台になっているとみられます。

デザインディレクターを務めるアミハン・ツェンプは、社会学を学んだのち、日本人デザイナーのブランドを中国へ輸入する仕事に携わっていた経歴を持ちます。日本のデザイナーズブランドと接してきた経験は、のちにNEEMICの作風に見られる、北欧的な質素さと日本的なミニマリズムが重なり合う感覚にもつながっているのではないでしょうか。社会学という視点を持ちながらデザインの現場に立ってきたことも、単なる見た目の美しさだけでなく、誰がどう作っているかという背景まで含めてブランドを設計する姿勢に表れているように思えます。二人はそれぞれ経営とデザインの領域を分担しながら、北京を拠点に長年ブランドを育ててきました。

高級ファッションの余剰生地と、海を渡ってきたオーガニックコットン

NEEMICの素材調達を語るうえで欠かせないのが、高級ファッション業界で使われずに余った生地を主原料とする方針です。有名メゾンの生産過程でどうしても発生してしまう余剰生地やデッドストックの生地を引き取り、新しいコレクションの主素材として編み直していく手法を、創業当初から続けてきました。廃棄されるはずだった生地に新しい役割を与えるという発想は、いまでこそ珍しくありませんが、2010年代初頭の中国ではかなり先駆的な取り組みでした。

もう一つの柱が、GOTS認証(世界的なオーガニックテキスタイルの認証制度)を取得したオーガニックファブリックです。興味深いのは、その調達元が中国国内ではなく、ドイツやスイスといった中央ヨーロッパだったという点です。当時の中国国内には、認証基準を満たすオーガニック生地の供給網がまだ十分に整っておらず、ベルリンの認証生地サプライヤーを介して生地を輸入するという、国境を越えた調達網を組み上げる必要がありました。

北京の仕立て屋との協業と、フェアな労働環境への配慮

NEEMICのものづくりは、素材選びだけでなく、実際に縫製を担う人たちとの関係づくりにも表れています。すべてのアイテムは北京の地元の仕立て屋と協業しながら作られており、工賃や労働環境が公正なものになるよう配慮してきたといいます。大量生産の現場ではどうしても見えにくくなりがちな縫い手の存在を、ブランドの価値観の中心に据えている点も、NEEMICが単なる「エコな素材を使ったブランド」にとどまらない理由のひとつです。

生地の調達から縫製、そして販売までのすべてを北京という一つの都市の中で完結させる体制は、輸送コストや環境負荷を抑えられるだけでなく、生産の過程を自分たちの目で確かめられるという利点もあります。顔の見える関係の中でものづくりを続けてきたことが、結果として15年という長い活動年数につながってきたのではないでしょうか。

湖南省の手仕事、Summerwoodとの協業

NEEMICが業界内で高く評価されてきた理由のひとつが、中国国内のサプライヤー「Summerwood」との協業です。Summerwoodは、中国・湖南省で伝統的に受け継がれてきた苧麻(ちょま、ラミー)の手織り布を、天然染料で染め上げながら生産している組織です。古くからの技法とその担い手となってきたコミュニティを守ることを大切にした取り組みだといいます。

NEEMICはSummerwood経由で仕入れたこの手織りのラミー生地を、装飾を抑えたミニマルなシルエットへと落とし込んでいきます。伝統的な素材と現代的な形の組み合わせは、NEEMICというブランドの個性を形づくる大きな要素のひとつになってきました。手織りゆえに生地の幅や厚みには自然なばらつきがあり、それを欠点として隠すのではなく、そのまま活かした裁断を心がけている点にも、素材への敬意が表れています。

「静かで控えめ」という作風

NEEMICの作風は、「静かで控えめ」という言葉でしばしば語られます。過度な装飾を避けたシンプルな裁断、素材そのものの質感やテクスチャーを最大限に生かす構造、オーバーサイズで肩の力が抜けたシルエットが、ブランド全体を貫く視覚的な特徴です。色づかいもオフホワイトや淡いグレー、深いベージュといった、自然素材が本来持つ色合いを基調にしており、化学染料による鮮やかな発色は最小限に抑えられています。

一方で、北京の胡同(フートン)で目にする色鮮やかな柄物のパジャマや、中国の伝統的な意匠から着想を得た遊び心のあるディテールが差し込まれることもあります。控えめな北欧的ミニマリズムと、中国の街並みが持つ賑やかさが同居している点が、NEEMICを単なる欧州的サステナブルブランドの模倣にとどめていない理由だと言えるでしょう。

この作風がよく表れているのが、2014年に発表された秋冬コレクション「Afternoon」です。北京の会場Meridian Spaceで発表されたこのコレクションは、気負わない午後のひとときをテーマに、テント型やフレア型といった柔らかなシルエットを中心に構成されました。素材にはモヘア、アルパカ、シルクといった天然繊維が使われ、スレートグレーを背景にクリームやモカ、ごまのような色合いを重ねる配色が特徴的でした。シルク裏地を施したオーバーサイズのコートは、このコレクションを象徴する一着として紹介されています。

代表的なアイテム

NEEMICを象徴するアイテムのひとつが、モヘアやアルパカ、シルクといった天然素材を使ったオーバーサイズのロングコートです。すっきりとした裁断でありながら、素材の厚みや質感がそのまま存在感につながる一着に仕上がっています。シルクの裏地を施したモデルは、肌寒い季節に素肌の上へ直接羽織っても心地よい着心地になるよう考えられています。

Summerwoodの手織りラミー生地を使ったシャツやワンピースも、NEEMICならではのアイテムです。素材の風合いを生かした落ち感と、控えめな色合いが特徴で、一枚ごとに表情の異なる生地を楽しめます。

ボトムスでは、深いタックを取ったワイドなトラウザーズが定番です。オーバーサイズのトップスと組み合わせることを前提にした、ゆとりのあるシルエットが持ち味になっています。

NEEMICが似合う人、コーディネートのヒント

NEEMICはオフホワイトやグレー、ベージュといった落ち着いた色数でまとめられているため、他のブランドのアイテムとも合わせやすいのが特徴です。オーバーサイズのコートやトップスは、ボトムスをすっきりとしたシルエットでまとめることで、全体のバランスが取りやすくなります。逆にワイドトラウザーズを主役にする場合は、上半身をコンパクトにまとめると、素材の落ち感やゆとりのあるシルエットが引き立ちます。

装飾を抑えたミニマルな作りだからこそ、生地そのものの質感が仕上がりを大きく左右します。同じ型のアイテムでも一枚ごとに表情が変わるからこそ、試着や写真での確認をより丁寧に行いたいところです。Summerwoodの手織り生地を使ったアイテムは、着るたびに生地の風合いが増していくと言われており、長く使い込むことを前提にした選び方が向いています。派手なロゴやプリントに頼らないぶん、素材のよさを理解したうえで選ぶ楽しみがあるブランドだと言えるでしょう。

サステナブルの輪を広げる活動

NEEMICは自社のものづくりにとどまらず、業界全体をサステナブルな方向へ後押しする活動にも力を入れてきました。香港のオーガニックテキスタイル協会の共同設立に関わり、中国国内で有機農業を広めるネットワーク「AgraChina」にも参加しています。また、北京服装学院と連携し、中国国内で初めてとなるサステナブル生地専門のショールームの実現を目指してきたことも知られています。

2014年にはマドリード・ファッションウィークに招かれるなど、中国発のサステナブルブランドとして国際的な舞台にも顔を出してきました。世界的なデザイナーのプラットフォーム「NOT JUST A LABEL」でも扱われており、北京という一都市にとどまらない発信を続けています。近年もSNS上での発信が続いており、2026年時点でも北京を拠点に活動を継続しているとみられます。

香港のオーガニックテキスタイル協会は、繊維の生産から加工までの過程でオーガニック認証の基準を守る事業者同士が情報や知見を共有するための業界団体です。NEEMICはその共同設立に加わることで、自社の取り組みを一社にとどめず、業界全体の底上げにつなげようとしてきました。AgraChinaも同様に、中国国内で有機農業を実践する生産者同士をつなぐネットワークで、繊維の原料となる綿花などの栽培段階からサステナビリティを意識するという、川上から川下までを見渡した姿勢が読み取れます。

北京服装学院との連携も、単なる産学協力にとどまらない狙いを持った取り組みでした。中国国内でサステナブル素材だけを専門に扱うショールームが実現すれば、NEEMIC以外の新興ブランドにとっても、環境配慮型の生地に出会いやすい環境が整うことになります。自社の成長だけでなく、業界のインフラそのものを整えようとする発想は、NEEMICが単なる一ブランドではなく、中国のサステナブルファッションを牽引する存在として位置づけられてきた理由のひとつです。

北京から世界へ、卸売と国際展開

NEEMICは早い段階から、北京という一都市の中だけで完結するつもりはなかったようです。2015年春夏のコレクションを全てオーガニック素材でまとめ、中国国内はもちろん日本、中東、ヨーロッパ、北米、オーストラリアといった複数の地域への卸売展開を計画していたことが、当時のインタビューから分かっています。中国発のブランドとしては珍しく、最初からグローバルな流通を視野に入れていた点は、NEEMICの野心の大きさを物語っています。

実際の販路としては、世界的な独立系デザイナーのプラットフォーム「NOT JUST A LABEL」への出品のほか、北京と上海を中心とするセレクトショップでの取り扱いが軸になってきました。ブランド単体の知名度だけでなく、中国のサステナブルファッションを紹介する記事や特集の中で繰り返し取り上げられてきたことも、国際的な認知を広げる後押しになってきたと考えられます。

中古でNEEMICを選ぶときのポイント

NEEMICは日本国内での流通量がまだ多くなく、フリマアプリや海外の古着プラットフォームを横断して探す必要があります。とりわけSummerwoodの手織り生地を使ったアイテムは一枚ごとに個体差があるため、写真で生地の風合いや色味をよく確認したうえで選ぶことをおすすめします。

タグには「NEEMIC」のロゴと「Made in Beijing」という表記があるのが基本的な見分け方です。余剰生地を使ったアイテムは同じデザインでも生地が一枚ごとに異なることが多く、この一点物らしさこそがNEEMICを選ぶ楽しみのひとつだと言えるでしょう。オーガニックコットンを使ったベーシックなアイテムと、Summerwoodの手織り生地を使った一点物とでは風合いがまったく異なるので、どちらの魅力を求めているのかを意識して探すと選びやすくなります。

海外の古着プラットフォームでは、北京や香港発のブランドとして分類されていることもあれば、単に「サステナブルファッション」というくくりで扱われていることもあります。検索する際はブランド名の英字表記のほか、共同創業者の名前を組み合わせて探すと、思わぬ形で出品を見つけられることもあります。生地に個体差がある以上、可能であれば実物の写真を複数枚確認し、色味や織りの状態を自分の目で見極めることをおすすめします。

よくある疑問

NEEMICはどこの国のブランドなのかという質問をよく耳にしますが、2011年に香港で創業し、翌年から北京を拠点に活動してきた中国発のブランドです。共同創業者のハンス・マルティン・ガリカーはスイスの有機農業を営む家庭の出身で、アミハン・ツェンプは社会学を学んだのちに日本のデザイナーズブランドを中国へ輸入する仕事に携わっていました。ヨーロッパ的な視点と中国という土地の素材や職人技が組み合わさっている点が、このブランドらしさだと言えます。中国国内で完全に生まれ育ったブランドというより、複数の文化圏の視点が交差する場所から生まれたブランドだと捉えると理解しやすいかもしれません。

なぜモンゴルの伝統文化と結びつけて紹介されることがあるのかという疑問も見かけますが、これは誤った情報です。NEEMICの素材面での協業先は湖南省のSummerwoodであり、モンゴルとの関連を示す一次情報は確認できませんでした。似た響きの別の話題と混同された情報が広まった可能性があるため、この記事ではモンゴルとの関連には触れていません。

今も活動しているのかという点も気になるところでしょう。NEEMICは近年もオンライン上での発信を続けており、2026年時点でも北京を拠点とするブランドとして活動しているとみられます。ただし日本国内での知名度はまだ高くないため、中古で出会える機会自体は限られており、見つけたときには思い切って手に取ってみる価値があるブランドだと言えます。

サイズ感やレディース中心かどうかという質問についても触れておきます。NEEMICはこれまでウィメンズを中心に展開してきたブランドで、オーバーサイズを前提にしたシルエットが多いため、普段よりワンサイズ小さめを選ぶとちょうど良いことがあります。中古で購入する際は、採寸情報を必ず確認することをおすすめします。

他のサステナブルブランドとの違いを聞かれることもあります。欧米には、フランスのデッドストック生地を使ったアップサイクルで知られるMarine Serreのように、余剰素材を軸にするブランドがほかにも存在します。NEEMICがそうしたブランドと一線を画すのは、中国の湖南省という特定の地域に根ざした伝統的な手仕事と、北京という現場に立脚した独立経営を組み合わせている点です。欧米発のサステナブルブランドが多い中で、中国という土地から生まれ育ってきた稀有な事例だと言えるでしょう。

NEEMICと似た活動をしているブランドはあるのかという質問もときどき寄せられます。中国国内には、上海発のKlee Kleeのように、同じくサステナビリティを掲げて活動する同時代のブランドがいくつか存在します。ただしNEEMICのように、特定の省の伝統的な手仕事と、遠くヨーロッパから輸入したオーガニック生地という、性質の異なる二つの調達網を同時に運用してきたブランドは多くありません。地に足のついた地域密着と、国際的な視点を両立させてきたことが、このブランドの独自性だと言えるでしょう。

まとめ

NEEMICは、香港で生まれ北京へと拠点を移しながら、高級ファッション業界の余剰生地と湖南省の伝統的な手織り布という、性質の異なる二つの素材を軸に据えてきたブランドです。ハンス・マルティン・ガリカーとアミハン・ツェンプという、経営とデザインで役割を分けた二人の歩みが、15年という長い時間をかけてブランドを育ててきました。ドイツやスイスから生地を取り寄せるという地道な調達網づくりも、当時の中国にオーガニック生地の供給網がなかったからこその工夫だったと言えます。

「静かで控えめ」という言葉に象徴される作風と、廃棄されるはずだった生地に新しい命を吹き込むという発想は、いま振り返るとかなり早い時期からサステナビリティに取り組んできた証だと言えます。2014年の「Afternoon」コレクションに見られたモヘアやアルパカ、シルクの柔らかな質感は、今もNEEMICらしさを語るうえで欠かせない要素です。北京の仕立て屋との協業や、湖南省の職人が受け継いできた手織りの技術など、一つひとつの工程に人の手の存在がはっきりと見える点も、大量生産では得られない魅力になっています。

中古で出会う機会は多くありませんが、一枚ごとに表情の異なる生地を持つアイテムに巡り会えたときは、香港から北京へと歩んできたNEEMICの15年に思いを馳せながら手に取ってみてください。派手さはなくとも、素材と作り手への敬意が積み重なった一着だと分かれば、長く大切に着続けたくなるはずです。

編集方針について — この記事は GUZ FASHION 編集部のIMPORT BRANDカテゴリの編集方針に沿って制作されています。

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