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Maximilian Davis(マキシミリアン・デイヴィス)— トリニダード系・ジャマイカ系ルーツから、Salvatore Ferragamo指揮までの道のり

黒のシルクスリップドレスを着た黒人モデルのポートレート(Maximilian Davisのボディコンシャスなシルエットとカリブ海文化を反映したBlack eleganceの美学のイメージ)

Maximilian Davis(マキシミリアン・デイヴィス)は、英国マンチェスター出身のデザイナーが2020年に立ち上げた自身のレーベルです。旧版の記事には「Central Saint Martins BA Womenswearを2020年に卒業」という記述がありましたが、複数の海外ファッションメディアおよびTIME誌のインタビュー記事を確認したところ、正しい出身校はLondon College of Fashionでした。また旧版は「2021年にLVMH Prizeのファイナリストに選出された」としていましたが、これも事実と異なります。実際にDavisがLVMH Prizeの候補に残ったのは2022年で、しかもファイナリストではなくセミファイナリスト(準決選)の段階でした。さらに旧版は「2022年9月にSalvatore Ferragamoのクリエイティブ・ディレクターに就任した」と記していましたが、就任の発表は2022年3月14日、正式な就任日は同年3月16日付だとFerragamo公式のプレスリリースで確認できました。2022年9月はDavisがFerragamoのクリエイティブ・ディレクターとして初めてランウェイに立った、デビューコレクション(2023年春夏)発表の時期にあたります。本稿ではこうした点を一次情報で確認し直しながら、Maximilian Davisというレーベルの歩みと現在地をお伝えします。

創業者Maximilian Davisと創業経緯

Maximilian Davisは英国マンチェスターで生まれ育ちました。生年については媒体によって記載が揺れており、2022年3月のFerragamo就任報道時点の年齢を「26歳」とする記事もあれば、同年5月のインタビュー記事で「27歳」と紹介しているケースもあるため、本稿では正確な生年の断定を避けています。家庭の背景としては、父がファッションデザインを学んだ経験を持ち、母と姉がモデルの仕事をしていたこと、そして幼いころに祖母から工業用ミシンの使い方を教わったことが、複数の海外メディアのインタビューで語られています。両親はそれぞれトリニダード・トバゴとジャマイカにルーツを持ち、Davis自身もこの二つの文化的背景を自らのアイデンティティの核として繰り返し語ってきました。

London College of Fashionを卒業した後、DavisはGrace Wales Bonnerのもとでジュニアデザイナーとして経験を積んでいます。当時を振り返ったインタビューでDavisは、Wales Bonnerから「自分自身のルーツや人種について語ることを恐れない姿勢」を学んだと述べており、この経験がのちの自身のレーベルの方向性に大きな影響を与えたことがうかがえます。海外メディアの報道を総合すると、Wales Bonnerのもとでおよそ1年間フルタイムのジュニアデザイナーを務めた後、さらに数年ほどの期間、ロンドンを拠点とするMowalola、Asai、Supriya Leleといった複数の若手デザイナーのもとでフリーランスとして製作に携わったとされています。特定のブランドに専属するのではなく、規模の異なる複数の制作現場を渡り歩きながら経験を重ねたことが、2020年の自身のレーベル立ち上げの土台になったと位置づけられます。

転機となったのは2020年です。ロンドンの若手デザイナー支援プログラムとして知られるFashion Eastの創設者Lulu Kennedyのもとで、DavisはFashion Eastのラインナップに加わり、2020年秋冬シーズンにあたるS/S21のショーケースで自身のレーベルとしてのデビューを飾りました。デビューコレクションには「J’ouvert(ジュヴェ)」という名前が付けられています。これはトリニダード・カーニバルの開幕を告げる早朝の祝祭を指す言葉で、Davisは祖母を亡くした直後にこのコレクションの制作に取り組んだと語っており、祖母の故郷であるトリニダードのカーニバル文化を歴史から掘り起こし、自身のレーベルの出発点に据えました。デビューの発表にあたっては、スタイリストのIbrahim Kamaraと写真家Rafael Pavarottiが制作に加わったことも、海外メディアで紹介されました。英国のカルチャーメディアDazedは当時のDavisを「Black elegance(黒人のエレガンス)を祝福する、ロンドンの新進デザイナー」として紹介しており、デビュー時点からこの美学が明確に打ち出されていたことがわかります。

また旧版は「2021年にLVMH Prizeのファイナリストに選出された」としていましたが、これも事実と異なります。

ブランド美学 — トリニダード・カーニバル文化とセンシュアルなテーラリング

Maximilian Davisというレーベルの美学の中心にあるのは、トリニダード・カーニバルの歴史をめぐるDavis自身のリサーチです。トリニダード・カーニバルは、もともと奴隷にされた人々が強制された見世物としての側面を持つ祝祭でしたが、1834年の奴隷制廃止以降、抑圧からの解放を祝う場へと姿を変えていきました。Davisはこの歴史的な転換に着目し、19世紀のカーニバル衣装や、自身の家族が実際にトリニダードで身に着けていた同時代の装いを、現代的なウィメンズウェアの語彙に落とし込むという制作の方法を取っています。

Davis自身は自らの美学を「super sexy and elegant(とてもセクシーでエレガント)」という言葉で表現しており、体の輪郭に沿うボディコンシャスなシルエットと、緻密なテーラリングの技術を組み合わせることを一貫した軸に据えています。あるインタビューでDavisは「私たちは常に一面的にしか描かれてこなかったと感じていて、有色人種や黒人をまったく違う光の中で見せる何かを本当に作りたかった」と語っており、単に華やかな衣装を作ることではなく、黒人の身体や生き方をエレガンスの文脈の中に位置づけ直すという意図が、レーベル全体を貫いていることがわかります。旧版の記事にあった「英国の新世代の若手Blackデザイナーの中軸」といった抽象的な形容の反復は、具体的な出典を伴わない紋切り型の表現だったため、本稿ではDavis自身の発言や取材記事に基づいて記述し直しました。

この美学は、ロンドンという都市で育った移民第二世代としてのDavis自身の経験とも深く結び付いています。英国のBlackカルチャーとカリブ海の文化の両方に日常的に触れながら育った背景が、単一の様式に収まらない、複数の文化的参照点を持つ独自のデザイン言語を形作ってきたといえます。

代表アイテム・意匠

自身のレーベル期(2020年から2022年)を象徴するのは、体の線に沿うボディコンシャスなドレスと、スリップドレスを軸にしたイブニングウェアです。カリブ海の色彩感覚を思わせるカラーパレットと、緻密なドレーピングの技術を組み合わせたこれらのアイテムは、DuaLipaやRihannaといったセレブリティが着用したことでも早い段階から注目を集めました。旧版の記事にあった「シャツ」を代名詞とする記述については、複数の一次情報を確認するかぎりDavisのレーベルを特徴づける具体的な裏付けが見当たらなかったため、本稿ではボディコンシャスなドレスとイブニングウェアという、取材記事で繰り返し言及されている系統を中心に紹介しています。

(Maximilian Davis ドレス) — 自身レーベル期のボディコンシャスなシルエット

もう一つの重要な軸が、Fashion East在籍時代から続くテーラリングの技術です。Grace Wales Bonnerのもとで培った経験を土台に、Davisは硬さと柔らかさを同時に感じさせるジャケットやアウターを手がけており、これらはDavis自身の「セクシーでエレガント」という美学を、ドレス以外のアイテムでも体現するものになっています。自身のレーベルは、Ferragamoのクリエイティブ・ディレクター就任にともない、本人が「完全に専念する」ことに同意したかたちで事実上の休止状態に入ったと、就任当時の複数の海外メディアが報じています。このため、自身のレーベル名義のアイテムは2020年から2022年という短い期間に限られた、数の少ない一群として位置づけられます。

Salvatore Ferragamoとの兼務

2022年3月14日、イタリア・フィレンツェ発祥のラグジュアリーハウスSalvatore Ferragamoは、Maximilian Davisを新しいクリエイティブ・ディレクターに任命したと発表しました。就任は同月16日付で、前任のPaul Andrewの後任という位置づけです。この人事の直前、Davisは2022年のLVMH Prizeのセミファイナリストに残っていましたが、Ferragamo就任の発表を控えるかたちで同賞から辞退したことが、業界専門メディアの報道で確認できます。旧版の記事にあった「2021年のLVMH Prizeファイナリスト選出」という記述は、年・段階のいずれも事実と異なるため、本稿では採用していません。

Salvatore Ferragamoは1927年にイタリア・フィレンツェで創業した、靴づくりを起点とするラグジュアリーハウスです。自身のレーベルをFashion Eastでデビューさせてからわずか2年というタイミングで、この歴史あるイタリアの名門ハウス全体の指揮を任されたことは、当時の海外ファッションメディアの多くが異例の抜擢として報じています。マンチェスター出身でカリブ海にルーツを持つ若手デザイナーが、フィレンツェ発のヘリテージハウスの舵を取るという組み合わせ自体が、当時の欧米ファッション業界における世代交代の象徴的な出来事として位置づけられました。

就任から半年後の2022年9月、Davisはミラノ・ファッション・ウィークでFerragamoのクリエイティブ・ディレクターとして初めてとなるコレクション、2023年春夏を発表しました。このデビューコレクションでは、Ferragamoが1920年代から積み重ねてきた靴づくりの伝統的な技術と、Davis自身のトリニダード系・ジャマイカ系という文化的背景を組み合わせる方向性が示され、海外の主要ファッションメディアで大きく取り上げられています。2023年には、The Fashion Awardsで「British Womenswear Designer Award」を受賞したことも、Davisの評価を裏付ける出来事の一つです。

その後もDavisはFerragamoの指揮を継続しており、2026年に発表された2026年春夏コレクションでは、1920年代の自由と再生の気風を現代的に読み替えるという方向性が示され、ハーレム・ルネサンスや「Africana」ムーブメントを参照した装飾的なテーラリングが披露されました。続く2026年秋冬コレクションでも1920年代というテーマの掘り下げが続き、1954年にSalvatore Ferragamo本人がデザインしたフラットシューズを起点にした新作の靴が発表されるなど、ハウスのアーカイブと自身の美学を接続する試みが継続的に行われています。2025年2月には、Ferragamoの経営陣交代をめぐる報道の中でDavis自身の去就を推測する記事も一部で見られましたが、本稿執筆時点までにDavis自身の退任を伝える一次情報は確認できておらず、2026年の複数コレクション発表を踏まえるかぎり、現在も継続してクリエイティブ・ディレクターを務めていると判断しています。

Ferragamoでの仕事は、著名人の着用実績という面でも存在感を増しています。2023年、BeyoncéはRenaissanceワールドツアーの中でジューンティーンス(奴隷解放を記念する米国の祝日)に合わせ、黒人デザイナーの作品のみを身に着けるという趣旨のもと、Davis期のFerragamoの衣装を選んでいます。2025年のメット・ガラでは、Kylie JennerがDavis期のFerragamoによるルックを着用したことも報じられました。旧版の記事にあった「Zendaya」「Jodie Turner-Smith」の着用については、複数の情報源を確認したものの裏付けとなる一次情報が見当たらなかったため、本稿では採用していません。

どんな人に似合うか

自身のレーベル期のMaximilian Davisは、体の線を強調するボディコンシャスなドレスやイブニングウェアが軸になっているため、華やかな場での存在感を重視する人に向いています。控えめなミニマルさよりも、色彩とドレーピングで語る装いを好む人にとって、相性のよいレーベルだといえます。一方でFerragamo期のDavisは、ハウスの伝統的なテーラリングやシューズづくりの技術を土台にしているため、より落ち着いた大人の装いの中に、トリニダード系・ジャマイカ系の文化的な要素をさりげなく取り入れたいという人に向いています。

ロンドン発の若手ブランドが持つ、身体性や人種的アイデンティティに正面から向き合う姿勢に共感する人にとっても、Maximilian Davisは単なる一着以上の意味を持つレーベルです。カリブ海の歴史や文化への関心を入り口に、レーベルの背景を知った上で着るという楽しみ方も向いているといえるでしょう。逆に、装飾性の低いベーシックなワードローブを求める人には、自身のレーベル期のドレス類はやや個性の強い選択になるため、Ferragamo期の落ち着いたテーラードアイテムから試してみるという選び方も検討に値します。

中古市場での位置づけ

中古・古着市場でMaximilian Davisを探す場合、自身のレーベル名義のアイテムは2020年から2022年というごく短い期間にしか作られていない点をまず押さえておく必要があります。Ferragamo就任にともないレーベルの活動が休止状態に入ったことから、この時期のドレスやイブニングウェアは流通量そのものが限られており、状態のよい個体を見つけること自体が容易ではありません。旧版の記事にあった具体的な円建ての価格帯については、裏付けとなる一次情報が確認できなかったため、本稿では採用していません。

もう一つの軸は、DavisがクリエイティブディレクターとしてデザインしたFerragamoのアイテムです。こちらはFerragamo本体の中古市場の中に位置づけられ、フリマアプリやVestiaire Collectiveのような海外の委託販売プラットフォーム、国内の古着店やセレクトショップの一部などで流通しています。Ferragamoというハウス全体の中古流通量に比べると、Davis期に限定した個体を見分けるにはコレクションのシーズン(2023年春夏以降)を確認する必要があり、購入時には販売元の説明やタグの記載を照らし合わせることをおすすめします。

見分け方の実務面では、自身のレーベル期の意匠には、体に沿うボディコンシャスなシルエットとカリブ海を思わせるカラーパレットという特徴がある一方、Ferragamo期のDavisの仕事にはハウスの伝統的な「F」のモチーフや、靴づくりの技術に根差したディテールが色濃く表れています。同じデザイナーの仕事であっても、自身のレーベル期とFerragamo期とでは参照している文脈がまったく異なるため、購入前にどちらの時期のアイテムかを見極めておくと、値付けの妥当性も判断しやすくなります。

Ferragamo期のアイテムを中古で探す場合は、ハウスとしての正規の真贋確認手段(シリアル番号やタグの表記など)を、購入前に販売元へ確認することをおすすめします。Ferragamoは100年近い歴史を持つハウスであるため、同じ「F」のロゴを用いた製品でもクリエイティブ・ディレクターごとに意匠の傾向が大きく異なります。Davisがデビューした2023年春夏コレクション以降のシーズンかどうかをタグや型番から確認できれば、前任のPaul Andrew期などそれ以前のシーズンと混同するリスクを減らせます。自身のレーベル期のアイテムについては、そもそもの流通量が少なくフリマアプリでの出品自体が稀であるため、見つかった際には製作時期(2020年から2022年のいずれのシーズンか)を出品者に確認しておくと安心です。

よくある疑問

Maximilian DavisはCentral Saint Martins出身ですか

いいえ、複数の海外ファッションメディアおよびTIME誌のインタビュー記事を確認したかぎり、正しい出身校はLondon College of Fashionです。旧版の記事にあった「Central Saint Martins BA Womenswear」という記述は、裏付けとなる一次情報が見当たらなかったため、本稿では採用していません。

Salvatore Ferragamoのクリエイティブ・ディレクターにはいつ就任しましたか

Ferragamo公式の発表によれば、就任の発表は2022年3月14日、正式な就任日は同年3月16日付です。よく語られる「2022年9月就任」という情報は、実際にはDavisがクリエイティブ・ディレクターとして初めてランウェイに立った、2023年春夏コレクションのデビュー発表の時期を指しており、就任日そのものとは異なります。

自身のレーベルは現在も続いていますか

2022年のFerragamo就任にともない、Davisは自身のレーベルを休止し、Ferragamoの仕事に専念することに同意したと当時の複数の海外メディアが報じています。本稿執筆時点までに、自身のレーベルの再開を伝える一次情報は確認できていません。

自身のレーベル期とFerragamo期で作風はどう変わりましたか

自身のレーベル期(2020年から2022年)は、カリブ海の文化的背景を色濃く反映したボディコンシャスなドレスやイブニングウェアが中心で、Davis個人の物語性がそのまま作品に表れていました。一方でFerragamo期は、1927年創業のイタリアの名門ハウスが積み重ねてきた靴づくりとテーラリングの伝統を土台にしながら、そこにDavis自身のトリニダード系・ジャマイカ系の文化的な視点を重ねるという、ハウスと個人の両方の文脈を同時に扱う仕事に性格が変わっています。2026年の春夏・秋冬コレクションで見られる1920年代へのまなざしも、Ferragamoというハウスのアーカイブを起点にした展開だといえます。

まとめ — トリニダード系・ジャマイカ系ルーツから、Salvatore Ferragamo指揮までの道のり

Maximilian Davisの歩みを一次情報で確認し直すと、英国マンチェスターで育ったDavisが、London College of Fashionを卒業した後にGrace Wales Bonnerのもとで経験を積み、2020年にFashion Eastのもとで自身のレーベルをデビューさせたという流れが見えてきます。デビューコレクション「J’ouvert」に込められた、祖母の故郷であるトリニダードのカーニバル文化への視線と、体の線を強調するセンシュアルなテーラリングという美学は、その後のFerragamoでの仕事にも通底しています。旧版の記事にあった出身校の誤り、LVMH Prizeをめぐる年と段階の誤り、そしてFerragamo就任日と初コレクション発表日の混同については、本稿であらためて整理しました。

2022年3月のFerragamo就任以降、Davisは自身のレーベルを休止しながらハウスの指揮を継続しており、2026年に発表された春夏・秋冬の両コレクションからも、その仕事が現在進行形で続いていることが確認できます。中古市場では、数の限られた自身のレーベル期のアイテムと、Ferragamo本体の流通の中に位置づけられるDavis期のアイテムという、性格の異なる二つの軸が存在します。どちらの時期のものを探しているのかを最初に整理しておくことが、Maximilian Davisというレーベルを古着として楽しむ上での出発点になるはずです。

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