Gentle Monster(ジェントルモンスター)は、2011年に韓国・ソウルで生まれたアイウェアブランドです。創業したのはKim Han-kook(キム・ハングク)で、現在は自身が率いる持株会社IICOMBINED(アイアイコンバインド)のもとで運営されています。単なる眼鏡ブランドという枠を超え、店舗そのものを巨大なインスタレーション空間として設計する手法や、韓国発のポップカルチャーと結びついた協業戦略によって、創業から15年ほどのあいだに世界的な知名度を獲得しました。この記事では、旧版に含まれていたいくつかの事実誤り(親会社の傘下ブランド名や、著名人の着用時期、日本上陸の年など)を一次情報で確認し直しながら、Gentle Monsterの歩みを順を追ってお伝えします。
アジア人の骨格に合わせたフィット設計と彫刻的なフレーム形状を両立させ、独自路線を貫くアイウェアブランドです。個性の強いデザインが多く、控えめなメガネを好む方には主張がやや強く感じられる場合があります。
創業の経緯 — Kim Han-kookとキャンプコリアの新規事業公募
Kim Han-kook(キム・ハングク、1981年生まれ)がGentle Monsterを立ち上げたのは2011年のことです。高麗大学で新聞放送学を学んだのち、英語教育事業を手がける「キャンプコリア」に勤務していた当時、社内の新規事業公募にアイウェアブランドの企画を応募したことがきっかけでした。この企画が採用され、キャンプコリア代表だったオ・ジェウク(呉在旭)から5千万ウォンの出資を受け、当時の持分58%を譲渡する形でIICOMBINEDを設立したのが、Gentle Monsterの実際の始まりです。その後キャンプコリアは社名をCKグローバルパートナーズへ変更してIICOMBINEDを吸収合併しており、現在の株主構成はオ・ジェウク氏ら関係者が約45%、Kim Han-kook氏本人は第2位株主として約25%を保有していると報じられています。ちなみに創業者名の「ハングク」という響きは韓国語の国名「韓国」と同じ音で、本人の名前と国名が重なる巡り合わせも、ブランドの成り立ちを語るエピソードとしてしばしば紹介されます。
高麗大学で新聞放送学を学んだのち、英語教育事業を手がける「キャンプコリア」に勤務していた当時、社内の新規事業公募にアイウェアブランドの企画を応募したことがきっかけでした。
「Asian Fit」という発想
2010年代前半の韓国アイウェア市場は、Ray-BanやOakley、Persolといった欧米の輸入ブランドが主流で、韓国発のアイウェアブランドはほとんど存在しませんでした。Kim Han-kookが着目したのは、欧米ブランドのフレームがアジア人の顔立ち、低めの鼻梁や広めの頬骨に必ずしもフィットしないという点だったといわれています。西洋の流行をそのまま模倣するのではなく、あえてオーバーサイズのフレームでシャープに顔を引き締めて見せるという、アジアの美意識に寄り添ったデザインを選んだことが、Gentle Monsterのオリジナリティの出発点になりました。この設計思想は、のちに「Asian Fit」と呼ばれるようになり、ブランドの代名詞のひとつとして定着しています。
生産の実際 — テグと中国、韓国内でつくれない事情
Gentle Monsterのフレーム生産は、創業初期から韓国南部の都市テグ(大邱)と中国で行われてきました。テグはもともとLuxotticaグループの生産拠点があったことで知られる、韓国の眼鏡製造の集積地です。プラスチック(アセテート)フレームの本格的な生産は韓国国内の規制で難しいとされており、Gentle Monsterもテグでの一部工程と中国での生産を組み合わせる体制を取ってきました。旧版にあった「タグ箱にはGentle Monster, Made in Koreaという表記が標準」という説明は、こうした生産実態を踏まえると単純化しすぎた記述で、実際にはテグでの企画・検品と中国での量産を組み合わせた体制と理解しておくのが実情に近いといえます。
LVMHの出資という転機 — 2017年9月
2017年9月、フランスの高級ブランド・コングロマリットLVMH傘下のプライベートエクイティ、L Catterton Asiaと、中国系ファンドのIDGキャピタルが、IICOMBINEDに対して総額およそ700億ウォンを出資し、企業価値をおよそ7千億ウォンと評価しました。株式の持分としてはおよそ7%にあたるとされています。ちょうど同じ時期、Gentle Monsterはニューヨーク・ソーホーに続く2店舗目のアメリカ店舗をロサンゼルスに開業しており(2017年10月)、韓国発のブランドが世界的な資本からの評価を得ていく転換点になりました。この時の出資はGentle Monster単体にとどまらず、IICOMBINEDという多角経営の枠組みそのものへの評価につながった点も重要です。さらに2025年前後には、GoogleがAndroid XR向けのスマートグラス開発の一環として、IICOMBINEDに対しておよそ1億ドルを出資し、株式の4%程度を取得したとも報じられています。眼鏡ブランドとして始まったGentle Monsterが、テクノロジー企業からの資本も呼び込む存在に育ってきたことがうかがえます。
店舗をアート空間に変える — HAUS DOSANからHAUS NOWHEREまで
ブランドを象徴するのが、店舗を商品陳列の場ではなく展示空間として設計する手法です。2018年にはロンドン旗艦店に、3分おきに動き出す武道モチーフのロボットが設置され話題を呼びました。2021年2月には、ソウルに旗艦店「HAUS DOSAN」が開業しています。ここでは、Gentle Monster自前のロボティクス・ラボが1年以上かけて開発した六本脚のロボット「The Probe」が展示され、同年10月に開業したHAUS SHANGHAIにも、同じくロボティクス・ラボが1年がかりで開発したロボットの顔がしつらえられました。2024年にはHAUS NOWHERE SHENZHEN、2025年にはソウルの本社機能を兼ねる複合施設HAUS NOWHERE SEOULが開業し、ここにはGentle Monsterだけでなく、姉妹ブランドのTamburinsやATiiSSU、NUDAKE、Nuflaatも同居しています。2026年時点で、Gentle Monsterは世界で84店舗を展開していると報じられています。
日本上陸は2024年 — 南青山、そして銀座へ
日本市場への本格進出は、旧版にあった「2019年開業」ではなく、2024年3月14日の東京・南青山フラッグシップストア開業が最初です。表参道エリアに隣接する立地で、複数の巨大な頭部型のキネティック・オブジェが店内を彩る演出が話題になりました。その後2025年8月21日には、日本国内2店舗目となるフラッグシップストアを銀座に開業しています。旧版の「2019年」という記述は出典が確認できず、実際の日本上陸時期を4〜5年ほど早く伝えてしまっていた点は、明確な訂正が必要な誤りでした。
セレブリティとの結びつきを整理する
Gentle Monsterの知名度を語るうえで著名人の着用は欠かせない要素ですが、旧版にあった「2014年から2015年にかけて、デビュー前後のBLACKPINK Jennieが着用したことがブレイクスルーになった」という記述には無理があります。BLACKPINKがデビューしたのは2016年8月で、2014〜2015年の時点ではまだデビュー前のトレーニー期間にあたるためです。実際にブランドの初期の知名度向上に寄与したとされるのは、韓国の女優チョン・ジヒョンが2013〜2014年放映のドラマ「星から来たあなた」でGentle Monsterのレンズを着用したことでした。Jennieとの関係が本格的に始まるのは2020年の「Jentle Home」コレクションからです。以降、2022年の「Jentle Garden」(ソウル・ロサンゼルス・香港・シンガポール・上海でのポップアップと連動したモバイルゲームまで展開)、2023年の「Jentle Salon」と、継続的にコレクションを重ねてきました。海外セレブリティでは、BeyoncéがLAクリッパーズの試合観戦やInstagramで「Sign of Two」というモデルのサングラスを着用したことや、RihannaがTDEのクリスマスコンサートで「Palabra」というモデルを着用したことが報じられています。旧版にあった「Beyoncéが2018年からTildaシリーズを継続着用」という記述は着用モデルの取り違えの可能性が高く、確認できた一次情報にもとづいて上記の通り訂正しました。なお韓国国内のK-POPアイドルのあいだでも私服として着用される場面は多く報じられていますが、個々の着用者名については裏取りが難しいものも多いため、本稿では一次情報で確認できた事例に絞って紹介しています。
コラボレーションの系譜 — Tilda SwintonからPrada、Googleまで
Gentle Monsterのコラボレーション歴は多岐にわたります。2016年にはデンマーク人デザイナーのHenrik VibskovやHood by Air、Opening Ceremonyと、2017年にはオランダの家具ブランドMooooiの創業者Marcel Wandersと組みました。同じく2017年2月には、俳優のTilda Swintonが自らサングラス3型をデザインし、広告キャンペーンにも出演しています。2018年には韓国のラッパーSong Mino(Winner)とのアート展示「Burning Planet」を開催、翌2019年には中国のHuaweiと共同でスマートグラスを発表しました。旧版にあった「2024年のHuaweiとの協業」という記述は、実際より5年ほど新しい年に誤って記載されていたことになります。2023年には中国の歌手Cai Xukunとの「Crystal Clear」コレクション、2024年にはゲーム「Tekken 8」とのコラボレーション、2025年にはKarina(aespa)とBratzを掛け合わせたポケットコレクションを発表しました。Alexander WangやMoncler、Fendiといったファッションブランドとの協業も継続的に行われてきました。なかでもMaison Margielaとのコラボレーションは2020年代に入ってから複数回にわたって展開されているシリーズで、旧版の「2018年、2020年」という具体的な年号は出典が確認できず、正確な初回年を明言できる一次情報が見当たらないため、本稿では「2020年代の継続シリーズ」とだけ記載しています。2026年にはディズニーとFormula 1のコラボレーション「Circuit」や、Prada初となる合同アイウェアコレクションも登場し、GoogleとSamsungが手がけるスマートグラス開発のパートナーにも名を連ねるなど、協業の幅は年々広がっている点も見逃せません。
IICOMBINEDという多角経営 — Tamburins、NUDAKE、そしてその先
Gentle Monsterの親会社IICOMBINEDは、単一ブランドの会社から多角的なライフスタイル・グループへと姿を変えてきました。傘下にあるのは、香水やスキンケアを手がけるTamburins(タンバリンズ)、彫刻的なペストリーで知られるデザートブランドNUDAKE(ヌデイク)、帽子を中心としたヘッドウェアブランドATiiSSU(アティシュ)、食器ブランドNuflaat(ヌプラット)です。旧版にあった「ファッションブランドNuderoom」という名称は、正しくはデザートブランドのNUDAKEを指していると考えられ、ブランド名・業態ともに誤って記載されていました。Tamburinsもまた、Gentle Monsterと同様に店舗自体をアート空間として設計する手法を採り入れており、ソウル・カンナム区の旗艦店は美術館のような佇まいで知られています。香水やハンドクリーム、リップオイルといったビューティ製品を、まるでギャラリー作品のように陳列する売り場づくりが特徴で、Gentle Monsterの店舗設計思想がグループ全体に貫かれていることがうかがえます。IICOMBINEDグループ全体の売上高は、報道によれば2024年時点でおよそ789億ウォン規模とされ、その大部分をGentle Monsterが占めていると伝えられています。単一ブランドの成功をもとに複数のライフスタイル領域へ展開していく手法は、韓国の他の新興ブランドグループにもしばしば参照される事例になっています。
代表的なコレクションとアイテム
Gentle Monsterのラインナップは、彫刻的なシェイプのサングラスとメガネフレームが中心です。恒常的に展開されている代表シリーズには、スクエアフレームの「My Ma」や、キャットアイ型の「Ghost」があり、いずれも公式サイトで長く販売が続いている定番として知られています。シーズンごとに発表されるコレクションには、「Jentle」シリーズのように著名人との協業から生まれたものから、ブランド独自の造語をあしらったシリーズまで幅広く存在します。共通しているのは、視力補正のための道具という枠を超え、顔まわりのシルエットそのものをデザインする対象として扱う姿勢です。毎シーズン新作を大量に投入するタイプのブランドではなく、一つひとつのシリーズを長い時間をかけて育てていく展開の仕方も特徴のひとつだといえるでしょう。
価格帯はモデルによって幅がありますが、一般的なサングラスやメガネはおよそ200〜300ドル、素材や協業の内容によっては500ドル前後まで上がることもあるとされています。限定コレクションは基本的に再生産されない一点物に近い扱いで、完売後の入手が難しくなる点もGentle Monster特有の商品戦略のひとつです。2024年3月にはマレーシアの新業態店でMaison Margielaとの新作が発表されるなど、コラボレーションの発表は特定の国や店舗と結びつけて行われることも多く、その土地限定の初披露がSNSで話題になる流れも定着しています。
どんな人に似合うブランドか
Gentle Monsterが似合うのは、フレームそのものを主役にした個性的な着こなしを楽しみたい人です。彫刻的で存在感のあるシルエットが多いため、控えめで主張の少ないメガネを好む人にとっては、やや大ぶりに映る場面もあるかもしれません。一方で、シンプルな私服にワンポイントとして取り入れると、顔まわりの印象を一気に引き上げてくれる力を持っています。年齢や性別を問わないユニセックス設計のモデルが多いため、パートナーや家族と共有して使うという選び方もしやすいブランドです。K-POPアイドルの私服スナップや協業コレクションを参考に、まずは定番の「My Ma」や「Ghost」のようなシリーズから試してみるのもひとつの入り口になります。
同時代のアイウェアブランドとの位置づけ
Gentle Monsterと並べて語られることが多いアイウェアブランドには、1970年創業のイギリスLinda Farrow、1986年創業のアメリカOliver Peoples、2014年創業のアメリカJacques Marie Mageなどが挙げられます。欧米の老舗や新興ブランドの多くが、既存の型を洗練させる方向で評価を積み重ねてきたのに対し、Gentle Monsterは店舗体験そのものを設計対象にすることで、まったく異なる評価軸をつくり出しました。韓国国内にはPROJEKT PRODUKTのような同時代の新興アイウェアブランドも存在しますが、店舗を巨大なインスタレーション空間として運営する規模とスピードにおいて、Gentle Monsterは独自の位置を占めています。グループ全体の売上規模で見ても、創業から15年ほどで数百億ウォン単位の事業へ育った例は、韓国発のファッション系ブランドのなかでも際立った成長曲線だといえるでしょう。
中古市場でのGentle Monsterの見方
Gentle Monsterのサングラスやメガネフレームは、国内外の古着・中古アイウェア市場でも一定の流通量があります。人気の協業モデルや、著名人が着用したことで話題になったモデルは、状態が良いものであれば発売から時間が経っても値崩れしにくい傾向があるといわれています。中古で購入する際にまず確認したいのは、レンズやテンプル部分に刻印された型番やロゴの精度です。刻印が甘い、あるいは付属のケースやカードの質感が粗いものは、真贋を慎重に見極める必要があります。フリマアプリなど個人間取引で相場から極端に外れた価格の出品を見つけた場合は、実店舗や信頼できる買取・鑑定サービスを通じて確認したうえで判断することをおすすめします。協業モデルであれば、相手先のロゴやモチーフが正確に再現されているかどうかも、見分ける手がかりになります。生産国の表記についても、本稿でふれたテグと中国を組み合わせた体制を踏まえ、単純に「Made in Korea」の表記の有無だけで真贋を判断しない姿勢が大切です。
フィット感についても、中古で選ぶ際に押さえておきたいポイントがあります。「Asian Fit」という設計思想で生まれたブランドである以上、鼻パッドの形状やテンプルの幅は、欧米ブランドの標準的なサイズ感とは異なる場合があります。海外から個人輸入する形で中古品を探す場合は、顔幅や鼻の高さに関する採寸情報を出品者に確認しておくと、届いてからの「思ったよりきつい、あるいはゆるい」という失敗を避けやすくなります。逆に、こうしたアジア人の骨格に合わせた設計だからこそ、日本国内で流通する中古品はフィット感の面で扱いやすいという声も多く聞かれます。
よくある疑問
Gentle Monsterはどこの国のブランドですかという質問には、韓国・ソウル発祥のブランドですとお答えできます。創業者のKim Han-kookは、現在もIICOMBINEDの代表を務めています。日本で店舗を体験したい場合は、2024年開業の東京・南青山フラッグシップストア、または2025年開業の銀座店が代表的な拠点です。読み方については「ジェントルモンスター」とそのまま読むのが一般的で、韓国語表記でも発音に近いハングルの表記がそのまま使われています。TamburinsやNUDAKEと勘違いされることもありますが、これらは同じIICOMBINED傘下の別ブランドであり、Gentle Monster自体はあくまでアイウェア専業のブランドです。
定番シリーズと協業シリーズの違いを聞かれることもよくあります。「My Ma」や「Ghost」のような定番シリーズは、公式サイトで継続的に販売されているモデルで、比較的入手しやすいのが特徴です。一方でTilda SwintonやMaison Margielaとの協業シリーズ、あるいはJennieとの「Jentle」シリーズは数量限定で、完売後の再販がほとんどないため、中古市場での相場が上下しやすい傾向があります。購入前にどちらのタイプのモデルなのかを見極めておくと、価格の目安をつけやすくなります。
まとめ
Gentle Monsterの歩みは、韓国発の一人の起業家が、アジア人の骨格に寄り添うデザインと、店舗そのものを芸術空間に変える体験設計によって、世界的なアイウェアブランドを築き上げてきた記録です。旧版には、姉妹ブランドの名称や著名人の着用時期、日本上陸の年など、いくつかの事実誤りが含まれていましたが、一次情報を確認しながら本稿でひとつずつ訂正しました。中古でGentle Monsterのアイテムを探すときは、こうした正確な歩みを思い浮かべながら、生産体制や真贋の見極めポイントにも気を配って、自分に合う一本を選んでみてください。定番シリーズか協業シリーズか、そしてどの店舗・どの時期に生まれたモデルなのかを意識するだけで、選ぶ楽しさも、相場を見極める精度も、大きく変わってくるはずです。











