設計思想 — イタリア Ravarino の 44 年、Massimo Osti のテクニカル素材と Compass Patch
Stone Island は、1982 年にイタリア・Ravarino (Modena 県、北イタリアの小都市) で Massimo Osti (1944 年イタリア・Bologna 生まれの服飾デザイナー、CP Company の創業者) が立ち上げた服飾メゾンです。創業から 44 年にわたってイタリア北部の中軸メゾンとして活動を継続し、2020 年 12 月にフランスの服飾持株会社 Moncler (1952 年フランス Grenoble 創業のダウン・ジャケットのメゾン) が 1.18 億ユーロで買収し、現在は Moncler 傘下の中軸メゾンとして欧米のラグジュアリー業界で独自の地位を築いてきました。
ハウスを象徴するのは、Massimo Osti が確立した「テクニカル素材の実験」 と「Compass Patch (コンパスのロゴパッチ)」 の独自の哲学です。Massimo Osti は若いころからグラフィック・デザインの修行を積み、後に服飾の世界へ転身する稀有な歩みを進めた人物で、Stone Island の創業時から「素材を作ることが服飾の中軸」 という独自の方向性を打ち出しました。Tela Stella (12 oz の防水キャンバス、12 段階のステッチで成形)、Ice Jacket (温度で色が変わる thermosensitive 素材、1989 年発表)、Reflective Jacket (反射素材)、Membrana (薄膜) などの独自の素材実験は、欧米の業界誌で「服飾を素材科学として研究する稀有な事例」 として長く参照される歩みを残しました。
経歴の最初の節目は、1971 年の CP Company (Chester Perry → CP Company と改名) の創業です。Massimo Osti は 1971 年に最初の自身ブランド「Chester Perry」 を立ち上げ、後に「CP Company」 に改名する歩みを進めました。CP Company は Stone Island の前身に当たるメゾンで、Massimo Osti のテクニカル素材の実験の出発点として欧米の業界誌で長く参照される存在となります。
経歴のもう一つの中核となる節目は、1982 年の Stone Island の立ち上げです。Massimo Osti は CP Company の派生として、より実験的な素材を主軸とする独自のサブブランドとして Stone Island をイタリア・Ravarino で立ち上げました。Stone Island のロゴは、左袖に縫い付けられる「コンパス (羅針盤)」 の意匠を主軸とする独自の Compass Patch (ボタンで簡単に取り外せる仕様) で、欧米の業界誌で「Massimo Osti の素材実験のシンボル」 として現代まで継承される稀有なデザインとなっていきます。
経歴のもう一つの大きな節目は、1980 年代の英国 Football Casuals (フットボール・カジュアル) サブカルチャーとの結びつきです。1980 年代の英国の若者文化「Casuals」 (フットボール・サポーターの若者が高級スポーツウェアを着こなす独自のサブカルチャー) のあいだで、Stone Island は重要なシンボル・ブランドとして強い支持を獲得していきました。英国の Liverpool や Manchester や London の Casuals 文化での Stone Island の影響は、欧米のラグジュアリー業界で「ラグジュアリーとサブカルチャーの稀有な接点」 として長く参照される歩みを残しました。
主要な意匠は、Compass Patch (左袖のコンパスのロゴパッチ)、Tela Stella (12 oz の防水キャンバス)、Ice Jacket (1989 年発表の温度感応素材)、Reflective Jacket (反射素材)、Membrana (薄膜)、Garment Dye (染色)、Shadow Project (Stone Island のサブライン、Errolson Hugh の Acronym との協業からの派生)、Moncler 傘下期 (2020-) の Bomber Jacket とダウンとの融合などです。
創業から現代まで — Stone Island の歩み
1944-1971 Massimo Osti のグラフィック・デザインから服飾への転身
Massimo Osti は 1944 年にイタリア・Bologna (北イタリア Emilia-Romagna 州の中軸都市) で生まれました。家庭は中産階級で、Massimo は若いころから視覚芸術への深い関心を抱いて青年期を過ごします。
Massimo は当初服飾デザイナーを目指してはおらず、グラフィック・デザインの修行を積み、1960 年代に新聞と広告のデザイナーとして歩みを始めました。1970 年頃に Massimo は服飾の世界へ転身する稀有な経営判断を下し、グラフィック・デザインの経験を活かして「素材を作ることが服飾の中軸」 という独自の方向性を打ち出していきます。
1971 Chester Perry と CP Company の創業
1971 年は Massimo Osti の歩みのなかで最大の創業の節目となりました。Massimo はイタリア・Bologna で「Chester Perry」 と呼ばれる自身ブランドを立ち上げ、後に「CP Company」 に改名する歩みを進めたのです。
CP Company の創業は、Massimo Osti のテクニカル素材の実験の出発点となりました。Massimo は服飾を「素材科学として研究する」 独自の方向性で、Garment Dye (染色)、Tela Stella (防水キャンバス) などの主要な技術を 1970 年代に確立する歩みを進めていきます。
1982 Stone Island の立ち上げと Compass Patch の確立
1982 年は Stone Island の歩みのなかで最大の創業の節目となりました。Massimo Osti は CP Company の派生として、より実験的な素材を主軸とする独自のサブブランドとして Stone Island をイタリア・Ravarino (Modena 県の小都市) で立ち上げたのです。
創業時の Stone Island は、左袖に縫い付けられる「Compass Patch (コンパスのロゴパッチ)」 の独自の意匠を確立しました。Compass Patch は、左袖にボタンで簡単に取り外せる仕様の独自のデザインで、Massimo Osti が「ロゴを着用者の選択で見せたり隠したりできる」 独自の哲学を体現する稀有なシンボルとなりました。Compass Patch は現代まで Stone Island の代名詞として継承され、欧米の業界誌で「服飾の Brand identity の独自の事例」 として参照される歩みを残しました。
1980 年代 Tela Stella と Football Casuals サブカルチャー
1980 年代の Stone Island は、Massimo Osti のテクニカル素材の実験の中軸として欧米の業界誌で繰り返し参照される存在に育っていきました。1980 年代前半に発表された「Tela Stella」 (12 oz の防水キャンバス、12 段階のステッチで成形する独自の素材) は、Stone Island の代名詞となる素材となります。
同時期に、英国の Football Casuals (フットボール・カジュアル) サブカルチャーとの結びつきが本格化していきました。1980 年代の英国の若者文化「Casuals」 (フットボール・サポーターの若者が高級スポーツウェアを着こなす独自のサブカルチャー、Hooligan 文化の派生) のあいだで、Stone Island は重要なシンボル・ブランドとして強い支持を獲得していきます。英国の Liverpool、Manchester、London の Casuals 文化での Stone Island の影響は、欧米のラグジュアリー業界で「ラグジュアリーとサブカルチャーの稀有な接点」 として長く参照される歩みとなりました。
1989 Ice Jacket (温度感応素材) の発表
1989 年は Stone Island の歩みのなかで最大の技術的な節目となりました。Massimo Osti は「Ice Jacket」 と呼ばれる温度感応素材 (Thermosensitive、温度によって色が変化する素材) のジャケットを発表したのです。
Ice Jacket は、低温で青や紫の色彩、高温で透明な状態へと変化する独自の素材で、服飾と素材科学の融合の象徴的な作品として欧米の業界誌で大きく取り上げられる節目となりました。Ice Jacket は、Reflective Jacket (反射素材)、Membrana (薄膜) などのその後の Stone Island の技術的な作品の出発点となる独自の素材実験の象徴となります。
1993 Carlo Rivetti の経営権取得と Massimo Osti の離脱
1993 年は Stone Island の歩みのなかで最大の経営の節目となりました。イタリアの経営者 Carlo Rivetti (1956 年イタリア生まれ) が Stone Island の経営権を取得し、Massimo Osti は Stone Island から離脱して別の事業に専念する歩みへ進んだのです。
Massimo Osti は 1993 年以降、自身の名前を冠した「Massimo Osti Studio」 を立ち上げ、Stone Island と並行する独自の服飾の研究を続けていきました。2005 年 6 月 5 日に Massimo Osti が 60 歳で死去するまで、彼は CP Company と Stone Island の前身としての存在感を欧米の業界誌で長く参照される歩みを残しました。
Carlo Rivetti 期の Stone Island (1993-2020、27 年) は、Massimo Osti の確立したテクニカル素材の実験を継承しながら、欧米の若手と中堅の愛好家のあいだで「イタリアのテクニカル・ラグジュアリーの中軸」 として認知される歩みを進めていきました。Carlo は 1996 年に Stone Island のサブライン「Shadow Project」 を立ち上げ、Errolson Hugh (1971 年カナダ生まれの Acronym 創業者) との協業から派生する独自の方向性も発展させていきます。
2020-2026 Moncler 傘下入りと現代の歩み
2020 年 12 月は Stone Island の歩みのなかで最大の経営の節目の一つとなりました。フランスの服飾持株会社 Moncler (1952 年フランス Grenoble 創業のダウン・ジャケットのメゾン、Remo Ruffini が経営) が、Carlo Rivetti から Stone Island を 1.18 億ユーロで買収する経営判断を下したのです。
Moncler の買収後、Stone Island は Moncler Group の中軸メゾンの一つとして再編される歩みへ進みました。Carlo Rivetti は経営を引退し、Remo Ruffini (1961 年イタリア生まれの Moncler CEO) が Stone Island の経営も統括する体制が確立されていきます。Moncler 傘下期の Stone Island は、Bomber Jacket とダウンとの融合を主軸とする独自の方向性で、欧米とアジアのテクニカル・ラグジュアリー愛好家のあいだで強い支持を集める歩みを続けてきました。
Stone Island を作った人々
Massimo Osti (創業者・指揮者、1982-1993)
1944 年イタリア・Bologna 生まれの服飾デザイナーです。当初はグラフィック・デザインの修行を積み、1960 年代に新聞と広告のデザイナーとして歩みを始めた後、1970 年に服飾の世界へ転身しました。1971 年に Chester Perry (後の CP Company) を、1982 年に Stone Island を相次いで立ち上げ、Tela Stella、Ice Jacket、Reflective Jacket、Membrana などのテクニカル素材の実験で「服飾を素材科学として研究する」 独自の方向性を確立した人物です。1993 年に Stone Island を Carlo Rivetti に売却して離脱、自身の Massimo Osti Studio を立ち上げ、2005 年 6 月 5 日に 60 歳で死去するまで服飾の素材科学の中軸を担いました。
Carlo Rivetti (経営者、1993-2020)
1956 年イタリア生まれの経営者です。1993 年に Massimo Osti から Stone Island の経営権を取得し、27 年にわたってハウスの中軸を担いました。Massimo Osti の確立したテクニカル素材の実験を継承しながら、Shadow Project (1996-) などのサブラインの立ち上げと Errolson Hugh との協業で Stone Island を「イタリアのテクニカル・ラグジュアリーの中軸」 として確立した人物です。2020 年 12 月に Moncler に Stone Island を 1.18 億ユーロで売却して経営から引退しました。
Remo Ruffini (Moncler CEO、2020-現在の Stone Island 経営も統括)
1961 年イタリア生まれの経営者です。2003 年から Moncler の CEO として Moncler の現代化を主導し、2020 年 12 月に Stone Island を Moncler Group の中軸メゾンの一つとして買収する経営判断を下した人物です。Moncler と Stone Island の二つのメゾンを統合的に経営する独自の体制で、欧米とアジアのテクニカル・ラグジュアリー業界の中軸を担っています。
主要アイテム — Stone Island の語彙
Compass Patch のジャケットとセーター
ハウスの代名詞となった一連の作品群です。左袖に縫い付けられる「Compass Patch (コンパスのロゴパッチ)」 を主軸とするジャケット、セーター、Sweatshirt が、Stone Island の Brand identity の中核を成し、欧米とアジアの愛好家のあいだで強い支持を集める作品となりました。
Ice Jacket (温度感応素材) と Reflective Jacket (反射素材)
Stone Island のテクニカル素材の実験の代名詞となった一連の作品群です。1989 年発表の Ice Jacket (低温で青や紫の色彩、高温で透明な状態へ変化する thermosensitive 素材)、Reflective Jacket (光に反射する独自の素材)、Membrana (薄膜)、Garment Dye (染色) などが、Massimo Osti の素材科学の中軸として欧米の業界誌で長く参照される歩みを残しました。
Shadow Project (1996-) と Errolson Hugh との協業
Stone Island の語彙のもう一つの中核を成すサブラインです。1996 年に Carlo Rivetti 期に立ち上げられた「Shadow Project」 (Stone Island のサブライン、Errolson Hugh の Acronym との協業から派生する独自の技術的な方向性) は、欧米とアジアのテクニカル・ラグジュアリー愛好家のあいだで強い支持を集める作品となりました。
中古市場での Stone Island
Stone Island の中古市場は、複数の軸で形成されています。Compass Patch のジャケットとセーターと Sweatshirt、Massimo Osti 期 (1982-1993) の希少な vintage 作品 (Tela Stella、Ice Jacket、Reflective Jacket、Membrana など)、Carlo Rivetti 期 (1993-2020) の Shadow Project、Moncler 傘下期 (2020-) の Bomber Jacket とダウンとの融合――これらが日本国内で活発に取引されています。
日本ではフリマアプリ、メルカリ、Vestiaire Collective、ZOZO USED、それから原宿・渋谷・青山・代官山の古着店での流通が中心です。
Compass Patch のジャケットは、Stone Island の代名詞として中古市場で 3 万円から 20 万円の中位帯で活発に流通する歩みを残してきました。Massimo Osti 期 (1982-1993) の希少な vintage 作品は特に高値で取引され、Ice Jacket (1989 年発表の温度感応素材) や Reflective Jacket などは状態の良いものが 10 万円から 50 万円の高位帯で取引される稀有な作品です。Shadow Project (1996-) の Errolson Hugh との協業作品も希少性が高く、5 万円から 25 万円の中位帯から高位帯で活発に流通する歩みを続けています。Moncler 傘下期 (2020-) の Bomber Jacket は 8 万円から 30 万円の中位帯から高位帯で取引され、欧米とアジアのテクニカル・ラグジュアリー愛好家のあいだで安定した参照対象に育ちました。
まとめ — 44 年の歩み、Massimo Osti の素材科学から Moncler 傘下までの継承
Stone Island の歩みを 44 年でまとめると、次のような節目に整理できます。1944 年に Massimo Osti がイタリア・Bologna で生まれ、グラフィック・デザインの修行から 1970 年に服飾へ転身、1971 年に Chester Perry (後の CP Company) を立ち上げ、1982 年に Stone Island をイタリア・Ravarino (Modena 県の小都市) で立ち上げ Compass Patch の独自の Brand identity を確立、1980 年代に Tela Stella の独自の素材を発表し英国 Football Casuals サブカルチャーで重要なシンボル・ブランドとして強い支持を獲得、1989 年に Ice Jacket (温度感応素材) を発表、1993 年に Carlo Rivetti が Stone Island の経営権を取得して Massimo Osti は離脱、1996 年に Shadow Project サブラインを立ち上げ Errolson Hugh の Acronym との協業の歩みが始まり、2005 年 6 月 5 日に Massimo Osti が 60 歳で死去、2020 年 12 月にフランス Moncler が Carlo Rivetti から Stone Island を 1.18 億ユーロで買収、Remo Ruffini が Moncler と Stone Island の二つのメゾンの経営を統合的に率いる現代の体制を確立――という流れです。
中古市場では Compass Patch のジャケット、Massimo Osti 期 (1982-1993) の希少な vintage、Shadow Project (1996-) の Errolson Hugh との協業作品、Moncler 傘下期 (2020-) の Bomber Jacket とダウンとの融合の多角的な軸で日本国内でも活発に取引され、イタリアのテクニカル・ラグジュアリーの中軸メゾンとして強い支持を集めてきました。Stone Island の 44 年に及ぶ歩みは、欧米の現代の服飾史における「グラフィック・デザイナーから服飾へ転身した Massimo Osti が、CP Company と Stone Island で『素材を作ることが服飾の中軸』 という独自の方向性を確立し、英国 Football Casuals サブカルチャーとラグジュアリー業界の稀有な接点を 1980 年代に確立し、Carlo Rivetti と Moncler の歴代経営者の継承で現代のテクニカル・ラグジュアリーの中軸として活動を継続している事例」 として、今後も参照され続けるはずです。










